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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1805.07498
Konishi et al. (2018)
Probing Signatures of a Distant Planet around the Young T-Tauri Star CI Tau Hosting a Possible Hot Jupiter
(ホットジュピターを持っている可能性がある若いおうし座 T 型星 CI Tau 周りの遠方惑星の特徴の探査)
外側の擾乱天体の存在を探査するために,おうし座 CI 星周りの原始惑星系円盤を,Atacama Large Millimeter/submillimeter Array (ALMA) を用いて波長 1.3 mm でのダスト連続波で観測した.
その結果,円盤中の中心星から ~ 0”.8 の位置に,ギャップ構造を発見した.
非軸対称の表面輝度分布を仮定すると,ギャップの半径は 104.5 ± 1.6 au,ギャップの幅は 36.9 ± 2.9 au と推定される.ギャップ周囲の輝度温度は,それ以外の円盤領域よりも ~ 2.3 K 低温である.
永年重力不安定とダスト捕獲などのギャップ形成機構が,この天体の円盤のギャップ構造を説明可能であると考えられる.
未発見の惑星によって観測されたギャップ構造が形成されたというシナリオは否定できないが,離心軌道を持つホットジュピターと遠方惑星の 2 つが,若いおうし座 CI 星の周りに同時に存在することは,重力散乱シナリオでは説明が難しいと考えられる.
ギャップが惑星によって形成されたものだと仮定すると,モデル化した表面輝度画像におけるギャップの幅と深さから,惑星質量は ~ 0.25 木星質量から ~ 0.8 木星質量の間であると推定される.この推定質量は,高コントラスト直接撮像観測での現在の検出限界よりも低い値である.
若い古典的おうし座 T 型星 (classical T-Tauri star) であるおうし座 CI 星 は,離心軌道を持つホットジュピターの起源だけではなく,遠方惑星の存在の可能性を探査するためのユニークな惑星系である.
arXiv:1805.07498
Konishi et al. (2018)
Probing Signatures of a Distant Planet around the Young T-Tauri Star CI Tau Hosting a Possible Hot Jupiter
(ホットジュピターを持っている可能性がある若いおうし座 T 型星 CI Tau 周りの遠方惑星の特徴の探査)
概要
年齢が 200 万歳の T-Tauri star (おうし座 T 型星) である,CI Tau (おうし座 CI 星) まわりの,遠距離惑星の兆候を探査した.この天体では,ホットジュピター候補天体が軌道離心率 ~ 0.3 の離心軌道で検出されている (最小質量は 8.1 木星質量).外側の擾乱天体の存在を探査するために,おうし座 CI 星周りの原始惑星系円盤を,Atacama Large Millimeter/submillimeter Array (ALMA) を用いて波長 1.3 mm でのダスト連続波で観測した.
その結果,円盤中の中心星から ~ 0”.8 の位置に,ギャップ構造を発見した.
非軸対称の表面輝度分布を仮定すると,ギャップの半径は 104.5 ± 1.6 au,ギャップの幅は 36.9 ± 2.9 au と推定される.ギャップ周囲の輝度温度は,それ以外の円盤領域よりも ~ 2.3 K 低温である.
永年重力不安定とダスト捕獲などのギャップ形成機構が,この天体の円盤のギャップ構造を説明可能であると考えられる.
未発見の惑星によって観測されたギャップ構造が形成されたというシナリオは否定できないが,離心軌道を持つホットジュピターと遠方惑星の 2 つが,若いおうし座 CI 星の周りに同時に存在することは,重力散乱シナリオでは説明が難しいと考えられる.
ギャップが惑星によって形成されたものだと仮定すると,モデル化した表面輝度画像におけるギャップの幅と深さから,惑星質量は ~ 0.25 木星質量から ~ 0.8 木星質量の間であると推定される.この推定質量は,高コントラスト直接撮像観測での現在の検出限界よりも低い値である.
若い古典的おうし座 T 型星 (classical T-Tauri star) であるおうし座 CI 星 は,離心軌道を持つホットジュピターの起源だけではなく,遠方惑星の存在の可能性を探査するためのユニークな惑星系である.
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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1805.07992
Nakatani et al. (2018)
Radiation hydrodynamics simulations of photoevaporation of protoplanetary disks II: Metallicity dependence of UV and X-ray photoevaporation
(原始惑星系円盤の光蒸発の輻射流体力学シミュレーション II:UV と X 線光蒸発の金属量依存性)
以前の論文から,X 線による電離と加熱を含めることで化学モデルをアップデートした.円盤の光蒸発率の金属量依存性を研究した,特に,中心星からの X 線輻射の重要性を検証した.
金属量として太陽と同じ金属量を仮定した基準ケースでは,中心星からの紫外線輻射のみを考慮した場合と比較した場合,X 線の効果を取り入れても光蒸発率には大きな変化をもたらさなかった.
金属量が太陽より少ないパラメータ範囲では,太陽金属量の 10-1.5 倍より大きい範囲では,光蒸発率は金属量の減少に伴って増加する.これは,円盤物質の不透明度が減少するためである.この結果は,円盤の寿命は低金属量の環境では短いという,観測的な傾向と整合的である.
対照的に,太陽金属量の 10-1.5 倍よりもさらに金属量が少ないパラメータ領域では,光蒸発率は減少する.これは,遠紫外線による光電子加熱効率は金属量に依存するのに対し,ダストとガスの衝突冷却の効果は低金属量でも依然として効率的であるためである.円盤内部での冷却は光蒸発を抑制する.
しかし,中心星からの X 線輻射を考慮することで,光蒸発率は大きく増加する,
特に 10-2 太陽金属量では.X 線の輻射自体は光蒸発による強い流出を駆動しないものの,X 線は円盤の中性領域の深くまで到達してその場所の電離度を上げ,粒子の正電荷を減少させる.その結果,遠紫外線輻射による光電子加熱の効果が X 線によって強化され,円盤の光蒸発を増幅させる.
arXiv:1805.07992
Nakatani et al. (2018)
Radiation hydrodynamics simulations of photoevaporation of protoplanetary disks II: Metallicity dependence of UV and X-ray photoevaporation
(原始惑星系円盤の光蒸発の輻射流体力学シミュレーション II:UV と X 線光蒸発の金属量依存性)
概要
光蒸発 (photoevaporation) している円盤の輻射流体力学シミュレーションを,円盤の金属量を広い範囲で変更して行った.金属量は,太陽金属量の 10-3 - 100.5 の範囲で変更した.円盤の進化を,流体力学,輻射輸送,非平衡化学を解くことで 5000 年以上の時間に渡って追った.以前の論文から,X 線による電離と加熱を含めることで化学モデルをアップデートした.円盤の光蒸発率の金属量依存性を研究した,特に,中心星からの X 線輻射の重要性を検証した.
金属量として太陽と同じ金属量を仮定した基準ケースでは,中心星からの紫外線輻射のみを考慮した場合と比較した場合,X 線の効果を取り入れても光蒸発率には大きな変化をもたらさなかった.
金属量が太陽より少ないパラメータ範囲では,太陽金属量の 10-1.5 倍より大きい範囲では,光蒸発率は金属量の減少に伴って増加する.これは,円盤物質の不透明度が減少するためである.この結果は,円盤の寿命は低金属量の環境では短いという,観測的な傾向と整合的である.
対照的に,太陽金属量の 10-1.5 倍よりもさらに金属量が少ないパラメータ領域では,光蒸発率は減少する.これは,遠紫外線による光電子加熱効率は金属量に依存するのに対し,ダストとガスの衝突冷却の効果は低金属量でも依然として効率的であるためである.円盤内部での冷却は光蒸発を抑制する.
しかし,中心星からの X 線輻射を考慮することで,光蒸発率は大きく増加する,
特に 10-2 太陽金属量では.X 線の輻射自体は光蒸発による強い流出を駆動しないものの,X 線は円盤の中性領域の深くまで到達してその場所の電離度を上げ,粒子の正電荷を減少させる.その結果,遠紫外線輻射による光電子加熱の効果が X 線によって強化され,円盤の光蒸発を増幅させる.
論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1805.07044
Kamiaka et al. (2018)
Reliability of stellar inclination estimated from asteroseismology: analytical criteria, mock simulations and Kepler data analysis
(星震学から推定された恒星傾斜の信頼性:解析的基準,模擬シミュレーションとケプラーデータ解析)
星震学的な手法はケプラーのデータに広く適用されているが,その信頼性は重点的に評価されていない.ここでは \(i_{\star}\) の太陽型星の星震学からの推定の精度を,3000 のシミュレートしたパワースペクトルを用いて評価した.
その結果,パワースペクトルのシグナルノイズ比が低い場合,傾斜角が大きい恒星に対しては系統的に過小評価を,傾斜角が小さい恒星に対しては系統的に過大評価を誘起することを見出した.
星震学での推定の信頼性について,解析的な閾値を導出した,高いシグナルノイズ比の場合のみ,\(i_{\star}\) が 20 - 80° の範囲で信頼できる測定ができることが示唆される.
また,94 個のケプラーで観測された主系列星・太陽類似星を解析して傾斜角を測定した.このうち 33 個は惑星を持つ恒星である.今回の信頼性基準に基づくと,これらの 3 分の 1 (惑星を持つ恒星 9 個,持たない恒星 22 個) は正確な傾斜角の測定が出来ていると考えられる.
ここでの星震学的な \(v\sin i_{\star}\) の推定と,分光学的な測定とを比較した.後者の手法は恐らく,大局的な乱流のモデリングに起因する大きな不定性の影響を受ける.特に,射影した自転速度 \(v\sin i_{\star}\) が 5 km/s 程度以下の場合は影響が大きい.これはこれまでの主張と一致する,
従って,低速で自転する恒星に対する,分光学的と測光学的変動からの測定の組み合わせによる恒星の傾斜角の推定結果は,注意深く解釈する必要がある.
arXiv:1805.07044
Kamiaka et al. (2018)
Reliability of stellar inclination estimated from asteroseismology: analytical criteria, mock simulations and Kepler data analysis
(星震学から推定された恒星傾斜の信頼性:解析的基準,模擬シミュレーションとケプラーデータ解析)
概要
太陽型星の星震学 (asteroseismology) の発展により,恒星の傾き角度 \(i_{\star}\) が推定できるようになった.これにより,トランジットする惑星系での spin-orbit 角 (恒星の自転軸と惑星の公転軸の成す角度) を,”射影した” spin-orbit 角度 \(\lambda\) を推定するためのよく確立された手法であるロシター効果と相補的に評価できるようになった.星震学的な手法はケプラーのデータに広く適用されているが,その信頼性は重点的に評価されていない.ここでは \(i_{\star}\) の太陽型星の星震学からの推定の精度を,3000 のシミュレートしたパワースペクトルを用いて評価した.
その結果,パワースペクトルのシグナルノイズ比が低い場合,傾斜角が大きい恒星に対しては系統的に過小評価を,傾斜角が小さい恒星に対しては系統的に過大評価を誘起することを見出した.
星震学での推定の信頼性について,解析的な閾値を導出した,高いシグナルノイズ比の場合のみ,\(i_{\star}\) が 20 - 80° の範囲で信頼できる測定ができることが示唆される.
また,94 個のケプラーで観測された主系列星・太陽類似星を解析して傾斜角を測定した.このうち 33 個は惑星を持つ恒星である.今回の信頼性基準に基づくと,これらの 3 分の 1 (惑星を持つ恒星 9 個,持たない恒星 22 個) は正確な傾斜角の測定が出来ていると考えられる.
ここでの星震学的な \(v\sin i_{\star}\) の推定と,分光学的な測定とを比較した.後者の手法は恐らく,大局的な乱流のモデリングに起因する大きな不定性の影響を受ける.特に,射影した自転速度 \(v\sin i_{\star}\) が 5 km/s 程度以下の場合は影響が大きい.これはこれまでの主張と一致する,
従って,低速で自転する恒星に対する,分光学的と測光学的変動からの測定の組み合わせによる恒星の傾斜角の推定結果は,注意深く解釈する必要がある.
論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1805.06898
Rosenthal et al. (2018)
Gas-Assisted Growth of Protoplanets in a Turbulent Medium
(乱流物質中でのガスに促進された原始惑星の成長)
ここではペブル降着の order of magnitude モデルを提案する.このモデルは,小さい天体の平均速度に対する乱流の影響,連星捕獲の半径,原始惑星に降着できる小さい天体のサイズを計算するものである.また,粒子のスケールハイトに対する乱流の影響も含んでおり,これは過去の研究でも行われている.
その結果,高質量レジームでは乱流は原始惑星の急速な成長を阻害しないことを見出した.暴走ガス降着を引き起こすのに必要な限界質量 (10 地球質量程度) への最後の doubling time は,強い乱流があった場合 (α ≳ 10-2) でも,円盤寿命より短い時間になる.
成長タイムスケールは原始惑星系円盤の局所的な特性に極めて敏感である一方,パラメータ空間の広い範囲に渡って,大きいコアの成長タイムスケールは,適切な小天体が存在すれば円盤の寿命より短くなる.
一方で小さい質量の場合には乱流の影響は明白である.強い乱流が存在する場合,成長タイムスケールは,コア質量が 10-2 - 10-1 地球質量より大きくなるまでは,ガス円盤の寿命より長くなる.
連星捕獲が終わる ”Flow Isolation Mass” は,ここでのモデルの枠組みから自然に現れる.また,この質量の軌道間隔への依存性は,太陽系のコアの軌道長半径分布に類似していることにも言及する.
arXiv:1805.06898
Rosenthal et al. (2018)
Gas-Assisted Growth of Protoplanets in a Turbulent Medium
(乱流物質中でのガスに促進された原始惑星の成長)
概要
ペブル降着は,惑星コアの成長タイムスケールを減少させるための有望な過程であり,これにより大きな軌道距離でのガス惑星の形成を可能にする.しかし円盤中の乱流は,このガスに促進される原始惑星の成長効率を減少させ得る.ここではペブル降着の order of magnitude モデルを提案する.このモデルは,小さい天体の平均速度に対する乱流の影響,連星捕獲の半径,原始惑星に降着できる小さい天体のサイズを計算するものである.また,粒子のスケールハイトに対する乱流の影響も含んでおり,これは過去の研究でも行われている.
その結果,高質量レジームでは乱流は原始惑星の急速な成長を阻害しないことを見出した.暴走ガス降着を引き起こすのに必要な限界質量 (10 地球質量程度) への最後の doubling time は,強い乱流があった場合 (α ≳ 10-2) でも,円盤寿命より短い時間になる.
成長タイムスケールは原始惑星系円盤の局所的な特性に極めて敏感である一方,パラメータ空間の広い範囲に渡って,大きいコアの成長タイムスケールは,適切な小天体が存在すれば円盤の寿命より短くなる.
一方で小さい質量の場合には乱流の影響は明白である.強い乱流が存在する場合,成長タイムスケールは,コア質量が 10-2 - 10-1 地球質量より大きくなるまでは,ガス円盤の寿命より長くなる.
連星捕獲が終わる ”Flow Isolation Mass” は,ここでのモデルの枠組みから自然に現れる.また,この質量の軌道間隔への依存性は,太陽系のコアの軌道長半径分布に類似していることにも言及する.
論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1805.07328
Diamond-Lowe et al. (2018)
Ground-based optical transmission spectroscopy of the small, rocky exoplanet GJ 1132b
(小さい岩石系外惑星 GJ 1132b の地上からの可視光透過スペクトル)
これまでの系外惑星大気の研究の大部分は,ホットジュピターとホットネプチューンに集中していた.しかし最近は,小さい岩石系外惑星が小さい太陽系近傍の恒星をトランジットしているのが発見されており,岩石惑星の大気研究の対象として適している.
GJ 1132b は,半径 1.2 地球半径,質量 1.6 地球質量の惑星である.中心星 GJ 1133 は M 型星であり,太陽系から 12 パーセク離れた位置にある.この惑星のトランジットを 5 回観測した.観測には,Magellan Clay Telescope と LDSS3C 多天体分光装置を用いた.
ベストフィットのトランジットパラメータを決定する際に,白色光の光度曲線と,波長で区切った光度曲線の両方を使用して解析を行った.また惑星大気の透過スペクトルを得るために,光度曲線を 20 nm 幅の波長バンドに分割して解析した.
今回の観測の結果,この惑星の大気が,雲を持たず,金属量が太陽の 10 倍程度である可能性は 3.7 σ の信頼度で否定された,また,水蒸気が 10%,水素分子が 90% という組成の大気である可能性は 3.5 σ で否定された.
今回のデータからは,この惑星の大気の透過スペクトルは明確な特徴を示さなかった.したがってこの惑星は,高分子量の大気を持っているか,あるいは大気を持たないかのどちらかであることが示唆される.ただしここでは大気中のエアロゾルの存在の可能性は考慮していない.
今回の結果は,GJ 1132b 程度の質量と日射量の惑星では,水素分子主体のガスエンベロープを保持することができないことを示唆するこれまでの理論的な研究と一致する.
GJ 1132b は 1.2 地球半径,1.6 地球質量であり.質量と半径からは,地球と金星に似た,鉄と岩石主体の組成と整合的である (Berta-Thompson et al. 2015).
探査対象は低平均分子量の大気の特徴だが,水素そのものは強い吸収源ではないため,透過スペクトルから検出するのは難しい.その代わりに,大気成分はよく混合していると仮定して,トレーサーとなる分子,例えば水やメタンなどの特徴を捉えることを目指す.これらの分子は,可視光から近赤外の波長で大きな吸収断面積を持つ.
さらなる観測データを得た場合に,高い平均分子量の大気がある可能性を否定できるのか,あるいは同じ結論により少ないデータで到達できるのかを検証するために,テストケースの解析を行った.
その結果,低平均分子量の大気の存在を高い信頼度で排除するためには,今回得た 5 回のトランジットのデータ全てが必要であることが分かった.
理論的には,最も高い平均分子量を持つ大気 (ここでは,太陽金属量の 1000 倍で,水蒸気が 100% の大気) を持つ可能性を排除するためには,8 回のトランジット観測が必要である,この推定値は最小値だが,ここではフォトンノイズ限界を達成していないため,誤差の大きさは分析に用いるデータセットの数の平方根分は減少しない.
将来の超巨大望遠鏡を用いた観測の場合は,地球型系外惑星の大気の検出と特徴付けが視野に入る.
ケプラーで得られた大量の系外惑星のデータには,1.6 地球半径よりも小さい近接惑星は岩石主体であり,低密度のエンベロープを持っているものは欠乏しているという統計的な証拠がある (Rogers 2015,Fulton et al. 2017).
その結果,この惑星の大気は薄く,生命由来ではない酸素分子を主成分としていると推定した.このような大気は,以下のように生成しうる.
まず,この惑星大気中の水蒸気は中心星からの強い紫外線により,水素と酸素に光解離する.水素は宇宙空間へと散逸し,この際にいくらかの酸素も一緒に散逸していく.ただし水素と酸素では散逸率が異なることと,酸素は惑星内部に持ち去られる過程があることにより,いくらかの酸素は酸素分子を形成して大気中に残ることが可能となる.
この過程に,窒素分子や二酸化炭素などの更なる大気ガスを含んだモデリングは興味深い研究対象である.
もし大気が酸素分子主体の場合は,現在の装置での検出は難しい.これは,酸素主体の大気は平均分子量が比較的大きいことだけではなく,酸素はスペクトルの特徴に乏しいことも原因である.
幸い,酸素分子の光解離はオゾン分子の生成につながる.オゾン分子は形状が非対称性であるため,大きな振幅のスペクトル特徴を生み出し,検出には適している.
金星の場合は二酸化炭素の厚い大気を持ち,タイタンは大気中に検出可能な量のメタンを含んでいる.これらの分子は観測可能なスペクトルの特徴を持つ.
もしこれらの分子が GJ 1132b に存在した場合,オンラインの Pand Exo コード (Batalha et al. 2017,Morley et al. 2017) を用いて計算すると,ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡で 10 回のトランジット観測を行えば検出可能であると予測される.
より遠方にある地球型惑星は大気探査の対象として適している可能性がある.例えば LHS 1140b は,日射量が地球の 0.46 倍であり,また高い表面重力を持つ.そのため,大量の大気散逸を経験していない可能性がある (Dittmann et al. 2017).
arXiv:1805.07328
Diamond-Lowe et al. (2018)
Ground-based optical transmission spectroscopy of the small, rocky exoplanet GJ 1132b
(小さい岩石系外惑星 GJ 1132b の地上からの可視光透過スペクトル)
概要
太陽系の地球型惑星は,金星・火星・地球のように高分子量の大気を持っているか,あるいは水星のように大気を持たないかのどちらかである.これが地球型惑星にとって典型的な状態なのか,あるいは太陽系特有の状態なのかについて,現在のところは十分な観測的情報が存在しない.これまでの系外惑星大気の研究の大部分は,ホットジュピターとホットネプチューンに集中していた.しかし最近は,小さい岩石系外惑星が小さい太陽系近傍の恒星をトランジットしているのが発見されており,岩石惑星の大気研究の対象として適している.
GJ 1132b は,半径 1.2 地球半径,質量 1.6 地球質量の惑星である.中心星 GJ 1133 は M 型星であり,太陽系から 12 パーセク離れた位置にある.この惑星のトランジットを 5 回観測した.観測には,Magellan Clay Telescope と LDSS3C 多天体分光装置を用いた.
ベストフィットのトランジットパラメータを決定する際に,白色光の光度曲線と,波長で区切った光度曲線の両方を使用して解析を行った.また惑星大気の透過スペクトルを得るために,光度曲線を 20 nm 幅の波長バンドに分割して解析した.
今回の観測の結果,この惑星の大気が,雲を持たず,金属量が太陽の 10 倍程度である可能性は 3.7 σ の信頼度で否定された,また,水蒸気が 10%,水素分子が 90% という組成の大気である可能性は 3.5 σ で否定された.
今回のデータからは,この惑星の大気の透過スペクトルは明確な特徴を示さなかった.したがってこの惑星は,高分子量の大気を持っているか,あるいは大気を持たないかのどちらかであることが示唆される.ただしここでは大気中のエアロゾルの存在の可能性は考慮していない.
今回の結果は,GJ 1132b 程度の質量と日射量の惑星では,水素分子主体のガスエンベロープを保持することができないことを示唆するこれまでの理論的な研究と一致する.
GJ 1132b について
中心星の GJ 1132 はスペクトル型が M4.5V である,GJ 1132b は 1.2 地球半径,1.6 地球質量であり.質量と半径からは,地球と金星に似た,鉄と岩石主体の組成と整合的である (Berta-Thompson et al. 2015).
探査対象は低平均分子量の大気の特徴だが,水素そのものは強い吸収源ではないため,透過スペクトルから検出するのは難しい.その代わりに,大気成分はよく混合していると仮定して,トレーサーとなる分子,例えば水やメタンなどの特徴を捉えることを目指す.これらの分子は,可視光から近赤外の波長で大きな吸収断面積を持つ.
地球型系外惑星大気の地上からの検出について
今回のデータリダクションでは,地球型系外惑星の大気を地上観測から検出する試みにおける困難さが提示された.系外惑星大気によるシグナルが小さく,トランジット深さは 0.24% であり,さらに地球大気による変動の大きさが 0.02% である.また今回の観測では,フォトンノイズ限界に到達しなかった.さらなる観測データを得た場合に,高い平均分子量の大気がある可能性を否定できるのか,あるいは同じ結論により少ないデータで到達できるのかを検証するために,テストケースの解析を行った.
その結果,低平均分子量の大気の存在を高い信頼度で排除するためには,今回得た 5 回のトランジットのデータ全てが必要であることが分かった.
理論的には,最も高い平均分子量を持つ大気 (ここでは,太陽金属量の 1000 倍で,水蒸気が 100% の大気) を持つ可能性を排除するためには,8 回のトランジット観測が必要である,この推定値は最小値だが,ここではフォトンノイズ限界を達成していないため,誤差の大きさは分析に用いるデータセットの数の平方根分は減少しない.
将来の超巨大望遠鏡を用いた観測の場合は,地球型系外惑星の大気の検出と特徴付けが視野に入る.
GJ 1132b の理論的な大気
GJ 1132b の特徴
GJ 1132b は半径が 1.2 地球半径と小さく,日射量は地球の 19 倍と高いため,もしこの惑星が低平均分子量の大気を持っていた場合は驚くべきことである.理論進化モデルと恒星からの極端紫外線照射による質量損失モデルに基づくと,この惑星は水素・ヘリウム主体のエンベロープを保持するのは不可能であると予想される (Lopez & Fortney 2013).ケプラーで得られた大量の系外惑星のデータには,1.6 地球半径よりも小さい近接惑星は岩石主体であり,低密度のエンベロープを持っているものは欠乏しているという統計的な証拠がある (Rogers 2015,Fulton et al. 2017).
酸素主体の大気を持つ可能性
Schaefer et al. (2016) は,GJ 1132b の大気と内部の結合を含めたモデルを構築した.ここでの結合とは,大気と惑星内部との間での酸素の交換である.その結果,この惑星の大気は薄く,生命由来ではない酸素分子を主成分としていると推定した.このような大気は,以下のように生成しうる.
まず,この惑星大気中の水蒸気は中心星からの強い紫外線により,水素と酸素に光解離する.水素は宇宙空間へと散逸し,この際にいくらかの酸素も一緒に散逸していく.ただし水素と酸素では散逸率が異なることと,酸素は惑星内部に持ち去られる過程があることにより,いくらかの酸素は酸素分子を形成して大気中に残ることが可能となる.
この過程に,窒素分子や二酸化炭素などの更なる大気ガスを含んだモデリングは興味深い研究対象である.
もし大気が酸素分子主体の場合は,現在の装置での検出は難しい.これは,酸素主体の大気は平均分子量が比較的大きいことだけではなく,酸素はスペクトルの特徴に乏しいことも原因である.
幸い,酸素分子の光解離はオゾン分子の生成につながる.オゾン分子は形状が非対称性であるため,大きな振幅のスペクトル特徴を生み出し,検出には適している.
その他の大気成分の可能性
また,別の分子主体の大気を持つ可能性もある.金星の場合は二酸化炭素の厚い大気を持ち,タイタンは大気中に検出可能な量のメタンを含んでいる.これらの分子は観測可能なスペクトルの特徴を持つ.
もしこれらの分子が GJ 1132b に存在した場合,オンラインの Pand Exo コード (Batalha et al. 2017,Morley et al. 2017) を用いて計算すると,ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡で 10 回のトランジット観測を行えば検出可能であると予測される.
GJ 1132b およびその他の地球型惑星の大気観測の可能性
この惑星の日射量を考えると,高平均分子量の大気を持っているか,あるいは大気を持たないかのどちらかだろうと予測される.これは TRAPPIST-1 の惑星たちにも言えることである (Gillon et al. 2017,de Wit et al. 2018).より遠方にある地球型惑星は大気探査の対象として適している可能性がある.例えば LHS 1140b は,日射量が地球の 0.46 倍であり,また高い表面重力を持つ.そのため,大量の大気散逸を経験していない可能性がある (Dittmann et al. 2017).
天文・宇宙物理関連メモ vol.123 Berta-Thompson et al. (2015) 太陽近傍での岩石惑星 GJ 1132bの発見