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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1805.06722
Sengupta et al. (2018)
Polarization of Trappist-1 by the Transit of its Planets
(惑星のトランジットによる TRAPPIST-1 の偏光)
恒星大気中にあるダスト粒子によって恒星からの光は散乱される.そのため,可視光から近赤外線までの波長域で大きな直線偏光が生み出される,しかし,恒星円盤面で平均された恒星全体の検出可能な偏光は,球対称であるためゼロになる.
しかし恒星の周りにある惑星が恒星面をトランジットすることによって非対称性が生じるため,惑星の軌道位相に依存して変化する偏光が発生する.偏光が最も大きくなるのは,惑星トランジットの ingress (食の始まり) と egress (食の終わり) の段階の,inner contact の時である (※注:恒星の円と惑星の円が内接している状態).
既知の恒星と惑星の物理パラメータ,また自己無撞着な M8 矮星の雲の多い大気モデルを用いて,トランジット偏光プロファイルと,TRAPPIST-1 のそれぞれの惑星のトランジット時,および 2 個の惑星の同時トランジットの最中に期待される偏光の大きさを計算した.
その結果,期待される偏光の大きさは,いくつかの既存の装置の検出限界以内であることが分かった.もし実際にトランジット時の偏光が確認された場合,それは今回の予測を裏付けるものとなり,時間分解した撮像偏光観測は,雲の多い大気を持つ超低温矮星の周りの,小さい惑星を検出して特徴付けを行うための有望な手段となる.
arXiv:1805.06722
Sengupta et al. (2018)
Polarization of Trappist-1 by the Transit of its Planets
(惑星のトランジットによる TRAPPIST-1 の偏光)
概要
TRAPPIST-1 は,複数の惑星を持つ恒星の中のうち,その恒星大気中に凝縮物の雲が形成されるほどの十分に低い温度である,初めてかつ唯一の恒星である.そのためこの恒星は,L 型や晩期 M 型を恒星の周りを公転する系外惑星や,直接撮像されている自ら光っている系外ガス惑星を公転する系外衛星を検出する手段としての,偏光撮像観測の効率を検証するためのユニークな機会を与えてくれる.恒星大気中にあるダスト粒子によって恒星からの光は散乱される.そのため,可視光から近赤外線までの波長域で大きな直線偏光が生み出される,しかし,恒星円盤面で平均された恒星全体の検出可能な偏光は,球対称であるためゼロになる.
しかし恒星の周りにある惑星が恒星面をトランジットすることによって非対称性が生じるため,惑星の軌道位相に依存して変化する偏光が発生する.偏光が最も大きくなるのは,惑星トランジットの ingress (食の始まり) と egress (食の終わり) の段階の,inner contact の時である (※注:恒星の円と惑星の円が内接している状態).
既知の恒星と惑星の物理パラメータ,また自己無撞着な M8 矮星の雲の多い大気モデルを用いて,トランジット偏光プロファイルと,TRAPPIST-1 のそれぞれの惑星のトランジット時,および 2 個の惑星の同時トランジットの最中に期待される偏光の大きさを計算した.
その結果,期待される偏光の大きさは,いくつかの既存の装置の検出限界以内であることが分かった.もし実際にトランジット時の偏光が確認された場合,それは今回の予測を裏付けるものとなり,時間分解した撮像偏光観測は,雲の多い大気を持つ超低温矮星の周りの,小さい惑星を検出して特徴付けを行うための有望な手段となる.
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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1805.05355
Becker et al. (2018)
Discovery and Dynamical Analysis of an Extreme Trans-Neptunian Object with a High Orbital Inclination
(大きな軌道傾斜角を持った極端な太陽系外縁天体の発見と力学的解析)
発見時は太陽から 55 AU の位置にあり,絶対等級 Hr = 4.3 である.
1110 日間に渡る観測結果からこの天体の現在の軌道を決定した.
軌道長半径はおよそ 450 AU,軌道離心率は 0.92,軌道傾斜角は 54° である.これらの軌道要素から,この天体は現在発見されている中で最も極端な軌道を持つ TNO のひとつと言える.
この天体の軌道安定性と軌道進化についての議論を,太陽系内の 4 つの巨大惑星の影響を考慮して行った.その結果この天体が,軌道長半径の急速な拡散と,より拘束された離心率と傾斜角の変化を含む,豊かな力学的な挙動を示すことが判明した.
また Planet Nine 仮説に基づいた,長期的な軌道安定性と軌道進化の振る舞いについても考察した,その結果,この天体は Planet Nine の存在に関する状況証拠の一例となりうることが分かった.
arXiv:1805.05355
Becker et al. (2018)
Discovery and Dynamical Analysis of an Extreme Trans-Neptunian Object with a High Orbital Inclination
(大きな軌道傾斜角を持った極端な太陽系外縁天体の発見と力学的解析)
概要
太陽系外縁天体 (trans-Neptunian object, TNO) 2015 BP519 の発見と,その力学的解析について報告する.これは extreme Trans-Neptunian Object に属する天体であり,Dark Energy Survey での観測から発見された.発見時は太陽から 55 AU の位置にあり,絶対等級 Hr = 4.3 である.
1110 日間に渡る観測結果からこの天体の現在の軌道を決定した.
軌道長半径はおよそ 450 AU,軌道離心率は 0.92,軌道傾斜角は 54° である.これらの軌道要素から,この天体は現在発見されている中で最も極端な軌道を持つ TNO のひとつと言える.
この天体の軌道安定性と軌道進化についての議論を,太陽系内の 4 つの巨大惑星の影響を考慮して行った.その結果この天体が,軌道長半径の急速な拡散と,より拘束された離心率と傾斜角の変化を含む,豊かな力学的な挙動を示すことが判明した.
また Planet Nine 仮説に基づいた,長期的な軌道安定性と軌道進化の振る舞いについても考察した,その結果,この天体は Planet Nine の存在に関する状況証拠の一例となりうることが分かった.
論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1805.05925
Sarkis et al. (2018)
HATS-59b,c: A Transiting Hot Jupiter and a Cold Massive Giant Planet Around a Sun-Like Star
(HATS-59b,c:太陽類似星周りのトランジットホットジュピターと冷たい重い巨大惑星)
今回発見されたのは,HATS-59b と HATS-59c の 2 惑星である.内側を公転している,トランジットするホットジュピターと,外側を公転している冷たく重い巨大惑星の 2 つで,後者は視線速度法を用いて検出された.
中心星 HATS-59 は,等級が V = 13.951 で太陽に似た恒星である.質量は 1.038 太陽質量,半径は 1.036 太陽半径である.
内側の惑星は離心軌道にあり,軌道周期は 5.416081 日,外側の惑星は円軌道で,最小質量が 12.70 木星質量,軌道周期 1422 日である.
多くの惑星系ではホットジュピターは単独で存在している場合が多いが,この系はトランジットするホットジュピターの他に,重い外側の伴星を持っている.そのため,この系の構造は惑星移動過程を理解する上で興味深い研究対象である.
金属量:[Fe/H] = 0.180
質量:1.038 太陽質量
半径:1.036 太陽半径
光度:0.99 太陽光度
年齢:43 億歳
距離:654 pc
軌道離心率:0.129
質量:0.806 木星質量
半径:1.126 木星半径
密度:0.70 g cm-3
軌道長半径:0.06112 AU
平衡温度:1128 K
軌道離心率:0.083 未満
最小質量:12.70 木星質量
軌道長半径:2.504 AU
平衡温度:175.9 K
arXiv:1805.05925
Sarkis et al. (2018)
HATS-59b,c: A Transiting Hot Jupiter and a Cold Massive Giant Planet Around a Sun-Like Star
(HATS-59b,c:太陽類似星周りのトランジットホットジュピターと冷たい重い巨大惑星)
概要
HATSouth ネットワークでの複数惑星系の発見について報告する.今回発見されたのは,HATS-59b と HATS-59c の 2 惑星である.内側を公転している,トランジットするホットジュピターと,外側を公転している冷たく重い巨大惑星の 2 つで,後者は視線速度法を用いて検出された.
中心星 HATS-59 は,等級が V = 13.951 で太陽に似た恒星である.質量は 1.038 太陽質量,半径は 1.036 太陽半径である.
内側の惑星は離心軌道にあり,軌道周期は 5.416081 日,外側の惑星は円軌道で,最小質量が 12.70 木星質量,軌道周期 1422 日である.
多くの惑星系ではホットジュピターは単独で存在している場合が多いが,この系はトランジットするホットジュピターの他に,重い外側の伴星を持っている.そのため,この系の構造は惑星移動過程を理解する上で興味深い研究対象である.
パラメータ
HATS-59
有効温度:5670 K金属量:[Fe/H] = 0.180
質量:1.038 太陽質量
半径:1.036 太陽半径
光度:0.99 太陽光度
年齢:43 億歳
距離:654 pc
HATS-59b
軌道周期:5.41081 日軌道離心率:0.129
質量:0.806 木星質量
半径:1.126 木星半径
密度:0.70 g cm-3
軌道長半径:0.06112 AU
平衡温度:1128 K
HATS-59c
軌道周期:1422 日軌道離心率:0.083 未満
最小質量:12.70 木星質量
軌道長半径:2.504 AU
平衡温度:175.9 K
論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1805.04774
Persson et al. (2018)
An 8 Mearth super-Earth in a 2.2 day orbit around the K5V star K2-216
(K5V 星 K2-216 まわりの 2.2 日軌道にある 8 地球質量スーパーアース)
撮像観測からは,中心星は単独星であることを確認した.ここでの解析にから,中心星はやや活発な K5V 星で,0.70 太陽質量,0.72 太陽半径だと推定される.
惑星 K2-216b は,1.8 地球半径,2.17 日周期の惑星である.これらの値は Mayo et al. (2018) で得られた値と整合的であった.
推定質量は,2 つのモデルで整合的な結果が得られた.Gaussian process regression では 7.4 地球質量,”floating chunk offset” からは 7.9 地球質量と推定される.これらのことから,この惑星はスーパーアースであることが示唆される.
惑星への中心星からの入射フラックスは,地球の日射量の 247 倍程度である.
この惑星のパラメータは,小さい惑星の半径分布のギャップの中間,もしくはすぐ下に位置している.平均密度は,この惑星が岩石組成であることと整合的であり,惑星の主成分は鉄とマグネシウムシリケイトだと予想される.この惑星は,大気を引き剥がされた残骸のコア部分であり,その大気を失った惑星のうちで最大のもののひとつであると考えられる.
arXiv:1805.04774
Persson et al. (2018)
An 8 Mearth super-Earth in a 2.2 day orbit around the K5V star K2-216
(K5V 星 K2-216 まわりの 2.2 日軌道にある 8 地球質量スーパーアース)
概要
ケプラーの K2 ミッションの Campaign 8 のデータの中から,K2-216b を惑星候補天体として同定した.これはスーパーアース質量の天体である.この惑星は最近,Mayo et al. (2018) によっても確認されたものである.撮像観測からは,中心星は単独星であることを確認した.ここでの解析にから,中心星はやや活発な K5V 星で,0.70 太陽質量,0.72 太陽半径だと推定される.
惑星 K2-216b は,1.8 地球半径,2.17 日周期の惑星である.これらの値は Mayo et al. (2018) で得られた値と整合的であった.
推定質量は,2 つのモデルで整合的な結果が得られた.Gaussian process regression では 7.4 地球質量,”floating chunk offset” からは 7.9 地球質量と推定される.これらのことから,この惑星はスーパーアースであることが示唆される.
惑星への中心星からの入射フラックスは,地球の日射量の 247 倍程度である.
この惑星のパラメータは,小さい惑星の半径分布のギャップの中間,もしくはすぐ下に位置している.平均密度は,この惑星が岩石組成であることと整合的であり,惑星の主成分は鉄とマグネシウムシリケイトだと予想される.この惑星は,大気を引き剥がされた残骸のコア部分であり,その大気を失った惑星のうちで最大のもののひとつであると考えられる.
論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
Evidence of a plume on Europa from Galileo magnetic and plasma wave signatures
Jia et al. (2018)
Evidence of a plume on Europa from Galileo magnetic and plasma wave signatures
(ガリレオの磁場とプラズマ波の特徴からのエウロパの噴出物の証拠)
しかし,これまでの全ての望遠鏡による検出は,データの感度限界で行われているため,その場観測による噴出の兆候に関する研究が必要である.
ここでは,エウロパからの噴出 (plume,プルーム) のその場観測からの証拠を,木星探査機ガリレオがエウロパに最近接遭遇した時に得られた,磁場とプラズマ波の観測結果から検出したことを報告する.
この時のガリレオのフライバイでは,エウロパ表面から高度 400 km 以下の距離にまで接近した.この最中にガリレオの磁気計が,およそ 1000 km スケールの磁場の回転と,200 nT を超える磁場の減少を記録した.また,Plasma Wave Spectrometer では,短いが一定のプラズマ密度の増加を示す結果が得られ,強い局在波放射を記録した.
磁場とプラズマ波が測定された場所,期間および変動は,もしハッブル宇宙望遠鏡の画像から示唆される特徴を持ったプルームがエウロパの熱的異常領域から噴出していた場合,エウロパと木星の共回転プラズマの相互作用と整合的であることを示す.
これは,エウロパにプルームが存在することの,強い独立した証拠である.
Magnetometer (MAG) データは,ガリレオの 8 年間のミッションの最中にあったエウロパへの合計 8 回の接近の際に取得された,しかしこれらの接近のうち,エウロパ表面から 400 km 以下の距離にまで接近したのは 2 回のみであり,それぞれ E12 と E26 がそれに該当する.
400 km という高度は,過去の観測によって報告されているプルームが,プラズマや磁場の特徴に影響を及ぼしうる高さである.
E12 と E26 の 2 回とも,エウロパの後行半球 (公転方向とは反対側の半球) に接近し,E12 では得るの赤道付近,E26 では南半球の高緯度領域に接近した.短時間の間に大きな振幅の擾乱が,最近接の際に記録されており,これは磁場の急激な減少を伴うものであった.
プルームがエウロパのプラズマ相互作用に及ぼしうる影響についての過去の研究では,E26 の最中の磁場の擾乱は,噴出物由来の大気の非均一性に起因することが示唆されている.
ここでは,E12 の最近接フライバイ最中の MAG データ中の局所的な特徴が,ガリレオがエウロパ表面付近から上昇する噴出物を横切った際に発生する事が期待される擾乱と完全に一致することを示す.
近接遭遇はエウロパ表面からの高度 206 km まで接近し,その際の時刻は UT 12:03:20 である.
UT 12:00 - 12:03 の間に,磁場の 3 成分の大きな変化が 3 分間に渡って観測された.最近接遭遇のおよそ 1 分前に,わずか 16 秒の間に磁場が数百 nT 変化した.
エウロパに対するガリレオの相対速度が 6 km/s であることを考慮すると,3 分という時間は ~ 1000 km のスケールに相当する.このスケールは,ハッブル宇宙望遠鏡で撮像されたプルームの高度 400 km 程度での,典型的なスケールと同程度である.
プラズマ波スペクトルは Plasma Wave Spectrometer (PWS) で取得された.これにより,短いタイムスケールの磁場の擾乱と同時に発生する,孤立した変化の存在が明らかになった.強い放射の周波数における突然の短時間のジャンプは,局在したプラズマ源によるものと整合的だと解釈できる.そのため,磁場の擾乱は局在したプルームを通過したことによって引き起こされたという仮説が支持される.
シミュレーションモデルは,O+ (磁気圏のプラズマ由来) と O2+ (エウロパ起源のイオン),および電子流体を別々に追うものである.また,エウロパ大気中で起きる電離,電荷交換,再結合を含む.
プルームを考慮したモデルと,していないモデルで比較を行った.その結果全体的には,シミュレーションは平滑化した観測データとよく一致した,ただし非常に小さい振幅の衝撃波 shocklet は再現されなかった.
これまでのハッブル宇宙望遠鏡での観測では,エウロパからの水と思われる噴出物の存在が観測されていましたが,これは過去に木星探査機ガリレオがエウロパに接近した際の磁場とプラズマの観測データから,噴出物の存在を検出したという報告です.
噴出物のある位置での磁場とプラズマの密度の急激な変化が観測されましたが,水や水に由来する成分が直接検出されたわけではないため,論文中ではあくまで plume が検出された,という表現にとどまっています.
この研究結果は,エウロパからの水の噴出の可能性が高まったとしてニュースにも取り上げられました.
Evidence of a plume on Europa from Galileo magnetic and plasma wave signatures
Jia et al. (2018)
Evidence of a plume on Europa from Galileo magnetic and plasma wave signatures
(ガリレオの磁場とプラズマ波の特徴からのエウロパの噴出物の証拠)
概要
木星の衛星エウロパの氷の表層は,全球的な海洋の上に存在していると考えられている.ハッブル宇宙望遠鏡を用いたエウロパの観測では,エウロパ表面からの水の噴出と考えられる兆候が検出されており,これは表層下に海が存在するという理論を支持している.しかし,これまでの全ての望遠鏡による検出は,データの感度限界で行われているため,その場観測による噴出の兆候に関する研究が必要である.
ここでは,エウロパからの噴出 (plume,プルーム) のその場観測からの証拠を,木星探査機ガリレオがエウロパに最近接遭遇した時に得られた,磁場とプラズマ波の観測結果から検出したことを報告する.
この時のガリレオのフライバイでは,エウロパ表面から高度 400 km 以下の距離にまで接近した.この最中にガリレオの磁気計が,およそ 1000 km スケールの磁場の回転と,200 nT を超える磁場の減少を記録した.また,Plasma Wave Spectrometer では,短いが一定のプラズマ密度の増加を示す結果が得られ,強い局在波放射を記録した.
磁場とプラズマ波が測定された場所,期間および変動は,もしハッブル宇宙望遠鏡の画像から示唆される特徴を持ったプルームがエウロパの熱的異常領域から噴出していた場合,エウロパと木星の共回転プラズマの相互作用と整合的であることを示す.
これは,エウロパにプルームが存在することの,強い独立した証拠である.
ガリレオのエウロパ接近観測
ガリレオの接近観測の概要
過去のハッブル宇宙望遠鏡での観測画像によると,プルームはエウロパの固体表面から ~ 200 km の高さまで上昇しているように思われる.これらのうちエウロパの赤道に近いものは,比較的表面温度が高い領域の中にある,エウロパの後行半球の赤道の南に位置している.またその他にも,後行縁のプルームに関連しているかもしれない,独特の特徴の存在が報告されている.Magnetometer (MAG) データは,ガリレオの 8 年間のミッションの最中にあったエウロパへの合計 8 回の接近の際に取得された,しかしこれらの接近のうち,エウロパ表面から 400 km 以下の距離にまで接近したのは 2 回のみであり,それぞれ E12 と E26 がそれに該当する.
400 km という高度は,過去の観測によって報告されているプルームが,プラズマや磁場の特徴に影響を及ぼしうる高さである.
E12 と E26 の 2 回とも,エウロパの後行半球 (公転方向とは反対側の半球) に接近し,E12 では得るの赤道付近,E26 では南半球の高緯度領域に接近した.短時間の間に大きな振幅の擾乱が,最近接の際に記録されており,これは磁場の急激な減少を伴うものであった.
プルームがエウロパのプラズマ相互作用に及ぼしうる影響についての過去の研究では,E26 の最中の磁場の擾乱は,噴出物由来の大気の非均一性に起因することが示唆されている.
ここでは,E12 の最近接フライバイ最中の MAG データ中の局所的な特徴が,ガリレオがエウロパ表面付近から上昇する噴出物を横切った際に発生する事が期待される擾乱と完全に一致することを示す.
磁場とプラズマ波変動の検出
E12 のデータは,1997 年 12 月 16 日に取得された.磁場強度とプラズマ密度がエウロパ上流で非常に高く,磁場の変動のタイムスケールは数分であった.近接遭遇はエウロパ表面からの高度 206 km まで接近し,その際の時刻は UT 12:03:20 である.
UT 12:00 - 12:03 の間に,磁場の 3 成分の大きな変化が 3 分間に渡って観測された.最近接遭遇のおよそ 1 分前に,わずか 16 秒の間に磁場が数百 nT 変化した.
エウロパに対するガリレオの相対速度が 6 km/s であることを考慮すると,3 分という時間は ~ 1000 km のスケールに相当する.このスケールは,ハッブル宇宙望遠鏡で撮像されたプルームの高度 400 km 程度での,典型的なスケールと同程度である.
プラズマ波スペクトルは Plasma Wave Spectrometer (PWS) で取得された.これにより,短いタイムスケールの磁場の擾乱と同時に発生する,孤立した変化の存在が明らかになった.強い放射の周波数における突然の短時間のジャンプは,局在したプラズマ源によるものと整合的だと解釈できる.そのため,磁場の擾乱は局在したプルームを通過したことによって引き起こされたという仮説が支持される.
シミュレーションとの比較
E12 で得られた特徴がプルームによるという仮説を検証するため,多流体の 3 次元磁気流体シミュレーションを行った.シミュレーションモデルは,O+ (磁気圏のプラズマ由来) と O2+ (エウロパ起源のイオン),および電子流体を別々に追うものである.また,エウロパ大気中で起きる電離,電荷交換,再結合を含む.
プルームを考慮したモデルと,していないモデルで比較を行った.その結果全体的には,シミュレーションは平滑化した観測データとよく一致した,ただし非常に小さい振幅の衝撃波 shocklet は再現されなかった.
※関連記事
天文・宇宙物理関連メモ vol.324 Sparks et al. (2016) 遠紫外線観測によるエウロパからの噴出の検出
天文・宇宙物理関連メモ vol.567 Trumbo et al. (2017) エウロパのプルーム領域の ALMA による温度観測
天文・宇宙物理関連メモ vol.324 Sparks et al. (2016) 遠紫外線観測によるエウロパからの噴出の検出
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これまでのハッブル宇宙望遠鏡での観測では,エウロパからの水と思われる噴出物の存在が観測されていましたが,これは過去に木星探査機ガリレオがエウロパに接近した際の磁場とプラズマの観測データから,噴出物の存在を検出したという報告です.
噴出物のある位置での磁場とプラズマの密度の急激な変化が観測されましたが,水や水に由来する成分が直接検出されたわけではないため,論文中ではあくまで plume が検出された,という表現にとどまっています.
この研究結果は,エウロパからの水の噴出の可能性が高まったとしてニュースにも取り上げられました.
天文・宇宙物理関連メモ vol.755 Mayo et al. (2018) ケプラー K2 ミッションデータ中からの 95 個の新惑星の検出