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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1805.05240
Mol Lous et al. (2018)
A search for transiting planets in the β Pictoris system
(がか座ベータ星系でのトランジット惑星の探査)
β Pic (がか座ベータ星) は,明るい (V = 3.86) 近傍の若い恒星で,周囲にデブリ円盤と巨大ガス惑星を持っていることが分かっている.惑星であるがか座ベータ星b は数十年の軌道周期で公転している.また,惑星と円盤はどちらも視線方向に対して edge-on (円盤面の縁の方向から見ている状態) になっている.
ここでは,がか座ベータ星をトランジットする惑星が存在しないかどうかの探査を行った.具体的には,がか座ベータ星b の軌道と同一平面上にある,軌道周期が 30 日未満のトランジット惑星を探査した.
BRITE-Constellation nanosatellite BRITE-Heweliusz のデータから,惑星のトランジットの調査を行った.測光データの解析には Box-Fitting Least Squares Algorithm (BLS) を使用した.この手法の感度は,Bad-Ass Transit Model cAlculatioN (BATMAN) コードを用いた人工的な惑星トランジットシグナルの入力によって有効化されている.
その結果,BRITE-Constellation のデータセットからは,惑星のトランジットシグナルは発見されなかった.
観測結果より,軌道周期が 5 日未満かつ,0.6 木星半径より大きな半径を持つトランジット惑星の存在は否定される.また,軌道周期 10 日未満かつ 0.75 木星半径より大きい惑星の存在も否定され.軌道周期 20 日未満かつ 1.05 木星半径より大きい惑星の存在も否定された.
arXiv:1805.05240
Mol Lous et al. (2018)
A search for transiting planets in the β Pictoris system
(がか座ベータ星系でのトランジット惑星の探査)
概要
ケプラーによる探査では,これまでに 365 個を超える複数惑星系が検出されており,それらの大部分はほぼ同一平面上を公転している.もし複数惑星系中のある惑星が恒星をトランジットしている場合,その系内の他の惑星も同じく恒星をトランジットする可能性が高い.β Pic (がか座ベータ星) は,明るい (V = 3.86) 近傍の若い恒星で,周囲にデブリ円盤と巨大ガス惑星を持っていることが分かっている.惑星であるがか座ベータ星b は数十年の軌道周期で公転している.また,惑星と円盤はどちらも視線方向に対して edge-on (円盤面の縁の方向から見ている状態) になっている.
ここでは,がか座ベータ星をトランジットする惑星が存在しないかどうかの探査を行った.具体的には,がか座ベータ星b の軌道と同一平面上にある,軌道周期が 30 日未満のトランジット惑星を探査した.
BRITE-Constellation nanosatellite BRITE-Heweliusz のデータから,惑星のトランジットの調査を行った.測光データの解析には Box-Fitting Least Squares Algorithm (BLS) を使用した.この手法の感度は,Bad-Ass Transit Model cAlculatioN (BATMAN) コードを用いた人工的な惑星トランジットシグナルの入力によって有効化されている.
その結果,BRITE-Constellation のデータセットからは,惑星のトランジットシグナルは発見されなかった.
観測結果より,軌道周期が 5 日未満かつ,0.6 木星半径より大きな半径を持つトランジット惑星の存在は否定される.また,軌道周期 10 日未満かつ 0.75 木星半径より大きい惑星の存在も否定され.軌道周期 20 日未満かつ 1.05 木星半径より大きい惑星の存在も否定された.
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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1805.04429
van Lieshout et al. (2018)
Exoplanet recycling in massive white-dwarf debris discs
(重い白色矮星デブリ円盤での系外惑星リサイクリング)
ここでは,そのような白色矮星周りの円盤が非常に重い場合の進化を調べる.円盤の前駆天体が,地球型惑星,月,または準惑星サイズの天体であった場合に,重い円盤が形成され得る.
デブリ円盤が物理的に薄く平坦な構造を持っていると仮定する.土星の環のような構造がその例である,この場合の円盤進化は,ポインティング・ロバートソン抵抗か,粘性拡散によって支配される.ここでの円盤の実効粘性は,自己重力によって引き起こされるウェイク構造に起因する.
デブリ円盤の質量が 1026 g より重い場合,潮汐破壊領域の外側部分に位置している円盤領域では,進化は粘性拡散によって支配され,円盤の質量は内側と外側の両方へ輸送される.
円盤外側に拡散していく物質がロッシュ限界を超えて流れた場合,これらは新しい (小)惑星へと凝集する.これは,土星の環の外縁で進行している moonlet (小衛星) の形成過程と類似したものである.
新しく形成された小衛星は,円盤と角運動量を交換することで外側へ移動し,小衛星同士の相互衝突を介してより大きな天体へと集積していく.結果的に,円盤物質のロッシュ限界半径からの流出によって,元々の円盤質量の 10% が新たな天体形成としてリサイクルされる.
大部分のケースでは最終的に,円盤の外縁と 2:1 平均運動共鳴と近い状態になっている,単独の大きな天体になる.従って,例えば潮汐破壊されたスーパーアースが再利用されることによって,20 - 100 億歳の白色矮星のハビタブルゾーン内に位置する,軌道周期 10 時間程度の地球質量の天体が形成され得る.
円盤内でのリサイクリング過程は,ロッシュ限界のすぐ外側でのより小さい天体の集まりを形成する場合もある.これは最近存在することが主張されている,WD 1145+017 まわりの小惑星を説明する可能性がある.
arXiv:1805.04429
van Lieshout et al. (2018)
Exoplanet recycling in massive white-dwarf debris discs
(重い白色矮星デブリ円盤での系外惑星リサイクリング)
概要
数十個の白色矮星は,ダストのデブリからなる星周円盤を持つことが分かっている.これらは,恒星が持っていた惑星系の残骸に起源を持つ,岩石天体の潮汐破壊によって形成されたと考えられる.ここでは,そのような白色矮星周りの円盤が非常に重い場合の進化を調べる.円盤の前駆天体が,地球型惑星,月,または準惑星サイズの天体であった場合に,重い円盤が形成され得る.
デブリ円盤が物理的に薄く平坦な構造を持っていると仮定する.土星の環のような構造がその例である,この場合の円盤進化は,ポインティング・ロバートソン抵抗か,粘性拡散によって支配される.ここでの円盤の実効粘性は,自己重力によって引き起こされるウェイク構造に起因する.
デブリ円盤の質量が 1026 g より重い場合,潮汐破壊領域の外側部分に位置している円盤領域では,進化は粘性拡散によって支配され,円盤の質量は内側と外側の両方へ輸送される.
円盤外側に拡散していく物質がロッシュ限界を超えて流れた場合,これらは新しい (小)惑星へと凝集する.これは,土星の環の外縁で進行している moonlet (小衛星) の形成過程と類似したものである.
新しく形成された小衛星は,円盤と角運動量を交換することで外側へ移動し,小衛星同士の相互衝突を介してより大きな天体へと集積していく.結果的に,円盤物質のロッシュ限界半径からの流出によって,元々の円盤質量の 10% が新たな天体形成としてリサイクルされる.
大部分のケースでは最終的に,円盤の外縁と 2:1 平均運動共鳴と近い状態になっている,単独の大きな天体になる.従って,例えば潮汐破壊されたスーパーアースが再利用されることによって,20 - 100 億歳の白色矮星のハビタブルゾーン内に位置する,軌道周期 10 時間程度の地球質量の天体が形成され得る.
円盤内でのリサイクリング過程は,ロッシュ限界のすぐ外側でのより小さい天体の集まりを形成する場合もある.これは最近存在することが主張されている,WD 1145+017 まわりの小惑星を説明する可能性がある.
論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1805.03221
van Terwisga et al. (2018)
V1094 Sco: a rare giant multi-ringed disk around a T Tauri star
(さそり座V1094星:おうし座 T 型星まわりの希少な巨大複数リング円盤)
ここでは,ALMA の Band 6 (234 GHz) と Band 7 (328 GHz) を用いて,0.3” の分解能で,K6 星の V1094 Sco (さそり座V1094星) を観測した.この星は Lupus III 領域内に存在している.
観測結果を元に,この星の周りにある円盤の構造を解析した.また,円盤の内側 150 AU 以内のスペクトル指数を決定した.
ALMA 連続波データは,2 つのギャップ・リングペアを持つ,非常に広がった円盤が存在していることを示している.ギャップは中心星から 100 AU と 170 AU に位置しており,明るいリング構造は 130 AU と 220 AU にそれぞれ位置している.
ダスト連続波放射は中心星から 300 AU の距離にまで広がっているのが検出された.この様子は IM Lup (おおかみ座IM星) と類似しているが,この感度と分解能で発見されているおおかみ座領域の若い天体周りの円盤の典型値よりも,ファクター 5 大きい値である.
中心星から 35 AU 以内の,円盤の明るい中心領域は,1 mmの 波長ではおそらく光学的に厚く,輝度温度はわずか 13 K である.またスペクトル指数は,内側円盤と一番目のリングの間,一番目のギャップの位置で増加する.
円盤の中心平面の温度が低いため,円盤中でのリングとギャップの形成の背後にあるメカニズムとして,スノーラインが役割を果たしているという可能性は排除できる.
この天体のような大きな円盤サイズは珍しく,おおかみ座領域で発見されている円盤のうち,中心星から 200 AU を超えて連続波成分を放射しているものはわずか 2.1 ± 1.5% である.大きな初期円盤人口,遷移円盤,系外惑星の関連性についても議論する.
Gaia で測定されたこの天体までの距離は 153 ± 1 pc である (Gaia Collaboration et al. 2018),ここでは天体までの距離として 150 pc を使用している.なお,Gaia 以前では 200 pc と推定されており,それに基づく推定光度は 1.95 太陽光度とされていた.
この天体のスペクトルエネルギー分布 (spectral energy distribution, SED) モデリングからは,低温で重たい円盤を持っていることが示唆されており,奇妙な天体として認識されていた (Tsukagoshi et al. 2011).
ハーシェル宇宙望遠鏡による観測では,遠赤外線波長の大きな超過が検出されている (Bustamante et al. 2015).また直接撮像による伴星探査では,75 AU 以遠における ~ 10 木星質量を超える天体は存在しないと結論付けられている (Joergens et al. 2001; Uyama et al. 2017).
・2 つの明るいリング構造が中心星から 130 AU,220 AU に検出され,これらは 100 AU,170 AU の位置にあるギャップに隔てられている.
・中心星から 200 AU を超えたところまで連続波成分を持つ円盤は珍しく,類似した大きな円盤を持っている天体はおおかみ座領域では ~ 2%.
・スペクトル指数の半径方向の変動は,円盤の明るいコアでの光学的に厚い放射と整合的.スペクトル指数は一番目のギャップの位置で増加し,一番目のリングに向かって再び減少する,これはリング中での粒子の効率的な成長の結果である可能性がある.
・光学的に厚い放射の温度および独立した円盤モデルに基いて推定したリングの位置での円盤中心平面でのダスト温度は,スノーラインによってリング形成を説明するには低温すぎることが判明した.そのため,デッドゾーンのみが形成メカニズムとして期待出来ると考えられる.しかし,重力不安定やギャップ中の ~ 10 木星質量程度の惑星の存在によって形成された可能性は否定できない.
・おおかみ座領域における,100 AU 以遠まで連続波放射がある初期円盤の数は,5 - 13 木星質量の巨大惑星で 100 - 1000 AU にいる頻度よりも十分大きいと思われる.
arXiv:1805.03221
van Terwisga et al. (2018)
V1094 Sco: a rare giant multi-ringed disk around a T Tauri star
(さそり座V1094星:おうし座 T 型星まわりの希少な巨大複数リング円盤)
概要
これまでの観測で,原始惑星系円盤中の多様なリング状のダスト構造が検出されているが,その起源と存在頻度は不明である.ここでは,ALMA の Band 6 (234 GHz) と Band 7 (328 GHz) を用いて,0.3” の分解能で,K6 星の V1094 Sco (さそり座V1094星) を観測した.この星は Lupus III 領域内に存在している.
観測結果を元に,この星の周りにある円盤の構造を解析した.また,円盤の内側 150 AU 以内のスペクトル指数を決定した.
ALMA 連続波データは,2 つのギャップ・リングペアを持つ,非常に広がった円盤が存在していることを示している.ギャップは中心星から 100 AU と 170 AU に位置しており,明るいリング構造は 130 AU と 220 AU にそれぞれ位置している.
ダスト連続波放射は中心星から 300 AU の距離にまで広がっているのが検出された.この様子は IM Lup (おおかみ座IM星) と類似しているが,この感度と分解能で発見されているおおかみ座領域の若い天体周りの円盤の典型値よりも,ファクター 5 大きい値である.
中心星から 35 AU 以内の,円盤の明るい中心領域は,1 mmの 波長ではおそらく光学的に厚く,輝度温度はわずか 13 K である.またスペクトル指数は,内側円盤と一番目のリングの間,一番目のギャップの位置で増加する.
円盤の中心平面の温度が低いため,円盤中でのリングとギャップの形成の背後にあるメカニズムとして,スノーラインが役割を果たしているという可能性は排除できる.
この天体のような大きな円盤サイズは珍しく,おおかみ座領域で発見されている円盤のうち,中心星から 200 AU を超えて連続波成分を放射しているものはわずか 2.1 ± 1.5% である.大きな初期円盤人口,遷移円盤,系外惑星の関連性についても議論する.
さそり座V1094星について
この恒星はスペクトル型が K6 で,1.7 太陽光度である.Gaia で測定されたこの天体までの距離は 153 ± 1 pc である (Gaia Collaboration et al. 2018),ここでは天体までの距離として 150 pc を使用している.なお,Gaia 以前では 200 pc と推定されており,それに基づく推定光度は 1.95 太陽光度とされていた.
この天体のスペクトルエネルギー分布 (spectral energy distribution, SED) モデリングからは,低温で重たい円盤を持っていることが示唆されており,奇妙な天体として認識されていた (Tsukagoshi et al. 2011).
ハーシェル宇宙望遠鏡による観測では,遠赤外線波長の大きな超過が検出されている (Bustamante et al. 2015).また直接撮像による伴星探査では,75 AU 以遠における ~ 10 木星質量を超える天体は存在しないと結論付けられている (Joergens et al. 2001; Uyama et al. 2017).
主な結論
・連続波成分の放射は中心星から 300 AU にまで広がっている.これは他のおおかみ座領域の円盤よりファクター 5 大きいが,サイズとしてはよく研究されているおおかみ座IM星周りの円盤と近い.・2 つの明るいリング構造が中心星から 130 AU,220 AU に検出され,これらは 100 AU,170 AU の位置にあるギャップに隔てられている.
・中心星から 200 AU を超えたところまで連続波成分を持つ円盤は珍しく,類似した大きな円盤を持っている天体はおおかみ座領域では ~ 2%.
・スペクトル指数の半径方向の変動は,円盤の明るいコアでの光学的に厚い放射と整合的.スペクトル指数は一番目のギャップの位置で増加し,一番目のリングに向かって再び減少する,これはリング中での粒子の効率的な成長の結果である可能性がある.
・光学的に厚い放射の温度および独立した円盤モデルに基いて推定したリングの位置での円盤中心平面でのダスト温度は,スノーラインによってリング形成を説明するには低温すぎることが判明した.そのため,デッドゾーンのみが形成メカニズムとして期待出来ると考えられる.しかし,重力不安定やギャップ中の ~ 10 木星質量程度の惑星の存在によって形成された可能性は否定できない.
・おおかみ座領域における,100 AU 以遠まで連続波放射がある初期円盤の数は,5 - 13 木星質量の巨大惑星で 100 - 1000 AU にいる頻度よりも十分大きいと思われる.
論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1805.03466
Chakraborty et al. (2018)
Evidence of a Sub-Saturn around EPIC~211945201
(EPIC 211945201 まわりのサブサターンの証拠)
EPIC 211945201b はケプラーの K2 ミッションの Campaign 5 と 16 において,惑星候補として検出された.しかし VESPA コードを用いた偽陽性確率計算と測光データを合わせた結果からは,惑星によるシグナルだと確定させるのには不十分であった.
ここでは,EPIC 211945201 の高分散分光フォローアップ観測を,PARAS 分光器を用いて行った,420 日にわたる観測から,合計 19 セットの視線速度データを得た.
解析の結果,シグナルが食連星系によるとする可能性を否定,サブサターン惑星の存在を 2σ で確認した.
惑星質量の上限値は 42 地球質量と推定される.半径の測定値およびこの質量の上限値から,土星に近い密度であると推定される.質量と半径の測定結果に基づいて,全質量中の 60 - 70% が重元素であるという,モデル依存の暫定的な結果を得た.
これまでに存在が確定している惑星のうち,10 - 70 地球質量,4 - 8 地球半径の間にあり,質量と半径が 50% かそれより良い精度で測定されている惑星は数が少なく,今回の発見はその一員に加わる重要な惑星である (この惑星を含めて 23 個のみ)
半径:1.38 太陽半径
有効温度:6025 K
金属量:[Fe/H] = 0.1
年齢:39.9 億歳
距離:182.6 pc
軌道長半径:0.148 AU
質量:27 (+14, -12.6) 地球質量
半径:6.12 地球半径
密度:0.65 g cm-3
Petigura et al. (2018) による惑星半径の推定は 6.0 地球半径であり,Mayo et al. (2018) での推定は 5.85 地球半径であった,これらはトランジットのデータのみから推定している.Yu et al. (2018) では 5.3 地球半径としている.
VESPA コードの解析では,トランジット状シグナルが惑星によって引き起こされているという仮説の偽陽性確率が 1% を超え,食連星由来である可能性は ~2% とされた.そのため,高分散分光観測での視線速度測定を行い,シグナルが惑星由来と確認した.
arXiv:1805.03466
Chakraborty et al. (2018)
Evidence of a Sub-Saturn around EPIC~211945201
(EPIC 211945201 まわりのサブサターンの証拠)
概要
EPIC 211945201 周りにサブサターン惑星が存在する強い証拠について報告する.またシグナルが惑星によるものだと確認した.EPIC 211945201b はケプラーの K2 ミッションの Campaign 5 と 16 において,惑星候補として検出された.しかし VESPA コードを用いた偽陽性確率計算と測光データを合わせた結果からは,惑星によるシグナルだと確定させるのには不十分であった.
ここでは,EPIC 211945201 の高分散分光フォローアップ観測を,PARAS 分光器を用いて行った,420 日にわたる観測から,合計 19 セットの視線速度データを得た.
解析の結果,シグナルが食連星系によるとする可能性を否定,サブサターン惑星の存在を 2σ で確認した.
惑星質量の上限値は 42 地球質量と推定される.半径の測定値およびこの質量の上限値から,土星に近い密度であると推定される.質量と半径の測定結果に基づいて,全質量中の 60 - 70% が重元素であるという,モデル依存の暫定的な結果を得た.
これまでに存在が確定している惑星のうち,10 - 70 地球質量,4 - 8 地球半径の間にあり,質量と半径が 50% かそれより良い精度で測定されている惑星は数が少なく,今回の発見はその一員に加わる重要な惑星である (この惑星を含めて 23 個のみ)
パラメータ
EPIC 211945201
質量:1.18 太陽質量半径:1.38 太陽半径
有効温度:6025 K
金属量:[Fe/H] = 0.1
年齢:39.9 億歳
距離:182.6 pc
EPIC 211945201b
軌道周期:19.49213 日軌道長半径:0.148 AU
質量:27 (+14, -12.6) 地球質量
半径:6.12 地球半径
密度:0.65 g cm-3
EPIC 211945201 系について
K2 Campaign 5 のデータからは,単一のトランジットが検出され,軌道周期は 19.49179 日と推定された (Mayo et al. 2018).また Campaign 16 からは 19.492036 日周期での検出が報告された (Yu et al. 2018).Petigura et al. (2018) による惑星半径の推定は 6.0 地球半径であり,Mayo et al. (2018) での推定は 5.85 地球半径であった,これらはトランジットのデータのみから推定している.Yu et al. (2018) では 5.3 地球半径としている.
VESPA コードの解析では,トランジット状シグナルが惑星によって引き起こされているという仮説の偽陽性確率が 1% を超え,食連星由来である可能性は ~2% とされた.そのため,高分散分光観測での視線速度測定を行い,シグナルが惑星由来と確認した.
論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1805.03102
Casasayas-Barris et al. (2018)
Na I and Hα absorption features in the atmosphere of MASCARA-2b/KELT-20b
(MASCARA-2b/KELT-20b の大気中の Na I と Hα 吸収の特徴)
その結果,わずか 1 回の観測から,ナトリウム原子 Na I 二重線と Hα 線の特徴を,大気中から明確に分解することが出来た.
特に,ナトリウム原子 Na I 二重線を中心とする 2 つのスペクトル特徴を分解した,平均の吸収深さは 0.75 Å のバンド幅で 0.17%であり,コントラストは D2 が 0.44% と D1 が 0.37% であった.
Na I 透過光度曲線も計算され,大きな Rossiter-McLaughlin (RM) 効果を示すことが分かった.0.75 Å 帯域での Na I トランジット吸収が 0.20%,最終的な透過スペクトルからの測定された吸収深さの値と整合する.
さらに,Hα 線を中心とする二番目のスペクトルの特徴も検出した.このコントラストは 0.6% であり,0.75 Å 帯域で吸収深さは 0.59% であった.この結果は,透過光度曲線での吸収と整合的であった.また,有効半径は 1.20 木星半径に対応する.
最終的な透過スペクトルのシグナルノイズ比は,各ラインに対して異なる温度分布を当てはめるには十分な精度ではないが,各ラインのコントラストを説明するためには,この惑星の平衡温度である 2260 K よりも高い温度が必要であることが分かった.特に,Na I 線コアは 4310 K,Hα 線は 4330 K が必要である.
この惑星は,他の A 型星を公転している惑星と同様に,中心星から大きな紫外線エネルギーを受けている.このエネルギーが水素原子を励起して Hα 線での吸収を生み,大気の拡大と蒸発に繋がっている.透過スペクトル中のその他のバルマー線の観測は,この惑星の大気の温度構造の決定を可能にし,大気散逸率の計算と共に大気の寿命の計算が可能となるだろう.
この惑星の場合,未検出の残りの特徴は Hβ と Hγ 線だが,これらは今回の観測では統計的に有意ではなかった.今回の Na I と Hα の発見を確定するためには,さらなるトランジット観測が必要である.また Hβ 線と Hγ 線の惑星大気による吸収の存在を探索するのに十分なシグナルノイズ比を得るためにも,同じくさらなる観測が必要である.
arXiv:1805.03102
Casasayas-Barris et al. (2018)
Na I and Hα absorption features in the atmosphere of MASCARA-2b/KELT-20b
(MASCARA-2b/KELT-20b の大気中の Na I と Hα 吸収の特徴)
概要
HARPS-N の高分散分光装置 (R = 11500) を用いて,系外惑星 MASCARA-2b/KELT-20b のトランジットを 1 回観測した.この惑星は強く輻射を受けている惑星である.その結果,わずか 1 回の観測から,ナトリウム原子 Na I 二重線と Hα 線の特徴を,大気中から明確に分解することが出来た.
特に,ナトリウム原子 Na I 二重線を中心とする 2 つのスペクトル特徴を分解した,平均の吸収深さは 0.75 Å のバンド幅で 0.17%であり,コントラストは D2 が 0.44% と D1 が 0.37% であった.
Na I 透過光度曲線も計算され,大きな Rossiter-McLaughlin (RM) 効果を示すことが分かった.0.75 Å 帯域での Na I トランジット吸収が 0.20%,最終的な透過スペクトルからの測定された吸収深さの値と整合する.
さらに,Hα 線を中心とする二番目のスペクトルの特徴も検出した.このコントラストは 0.6% であり,0.75 Å 帯域で吸収深さは 0.59% であった.この結果は,透過光度曲線での吸収と整合的であった.また,有効半径は 1.20 木星半径に対応する.
最終的な透過スペクトルのシグナルノイズ比は,各ラインに対して異なる温度分布を当てはめるには十分な精度ではないが,各ラインのコントラストを説明するためには,この惑星の平衡温度である 2260 K よりも高い温度が必要であることが分かった.特に,Na I 線コアは 4310 K,Hα 線は 4330 K が必要である.
この惑星は,他の A 型星を公転している惑星と同様に,中心星から大きな紫外線エネルギーを受けている.このエネルギーが水素原子を励起して Hα 線での吸収を生み,大気の拡大と蒸発に繋がっている.透過スペクトル中のその他のバルマー線の観測は,この惑星の大気の温度構造の決定を可能にし,大気散逸率の計算と共に大気の寿命の計算が可能となるだろう.
この惑星の場合,未検出の残りの特徴は Hβ と Hγ 線だが,これらは今回の観測では統計的に有意ではなかった.今回の Na I と Hα の発見を確定するためには,さらなるトランジット観測が必要である.また Hβ 線と Hγ 線の惑星大気による吸収の存在を探索するのに十分なシグナルノイズ比を得るためにも,同じくさらなる観測が必要である.
天文・宇宙物理関連メモ vol.755 Mayo et al. (2018) ケプラー K2 ミッションデータ中からの 95 個の新惑星の検出
天文・宇宙物理関連メモ vol.815 Yu et al. (2018) K2 Campaign 16 からの惑星候補