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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1809.01048
Hartman et al. (2018)
HATS-60b - HATS-69b: Ten Transiting Planets From HATSouth
(HATS-60b - HATS-69b:HATSouth からの 10 個のトランジット惑星)
発見された惑星は,質量はスーパーネプチューンの < 0.191 木星質量を持つ HATS-62b から,スーパージュピターの 5.47 木星質量を持つ HATS-66b までの範囲にある.サイズは 0.94 木星半径と土星程度のサイズを持つ HATS-69b から,1.69 木星半径の膨張した半径を持つ HATS-67b までの範囲である.また軌道周期は 1.6092 - 7.8180 日の範囲である.
中心星の質量は 0.89 - 1.56 太陽質量,実視等級は V = 12.276 - 14.095 である.
スーパーネプチューン HATS-62b は,木星よりも半径が大きい惑星の中では,これまで見つかっているものの中で最も軽い惑星である.
Gaia DR2 の年周視差から算出される距離と,広帯域測光観測の結果に基づくと,HATS-62, 64, 65 の 3 つの系は,撮像観測では分解されていない連星を伴っている可能性がある.
半径:1.460 太陽半径
光度:2.006 太陽光度
有効温度:5690 K
金属量:[Fe/H] = 0.334
年齢:75.3 億歳
距離:494.7 pc
質量:0.650 木星質量
半径:1.194 木星半径
平均密度:0.472 g cm-3
軌道長半径:0.04710 AU
平衡温度:1529 K
半径:1.667 太陽半径
光度:2.340 太陽光度
有効温度:5541 K
金属量:[Fe/H] = 0.241
年齢:89.3 億歳
距離:694.2 pc
質量:3.40 木星質量
半径:1.201 木星半径
平均密度:2.43 g cm-3
軌道長半径:0.07904 AU
平衡温度:1226.9 K
軌道周期は 7.8 日とやや長い.HATSouth サーベイで発見された惑星の中では,2 番目に長周期の惑星である.
中心星 HATS-61 はやや年老いており,主系列段階から離れかかっている.この恒星の現在の光度は,ゼロ年齢主系列 (zero-age main sequence, ZAMS) の段階の推定光度よりも 2.7 倍ほど明るい.
従って,比較的長周期であるにもかかわらず,惑星の平衡温度は 1226.9 K と高い.
1.201 木星半径というサイズは,観測されている平衡温度と半径の相関関係と整合的である.
Enoch et al. (2012) による平衡温度と惑星半径の経験的関係からは,1.12 木星半径になるべきと予測される.仮に惑星の平衡温度を,ZAMS の段階で期待される温度に変えた場合,同じ軌道長半径で期待される惑星半径は,平衡温度-半径関係の上端に位置する 1.02 木星半径と予想される.
HATS-61b は再膨張したスーパージュピターである可能性がある.これは,中心星がより明るくなるに連れ,惑星サイズが膨張するというモデルである (Lopez & Fortney 2016,Grunblatt et al. 2016,Hartman et al. 2016).
ただし,ある平衡温度と質量に対して予測される惑星半径における内因性の分散の大きさを考慮すると,この結論は確定的なものではない.
半径:0.923 太陽半径
光度:0.667 太陽光度
有効温度:5453 K
金属量:[Fe/H] = 0.141
年齢:80.0 億歳
距離:515.9 pc
質量:< 0.191 木星質量
半径:1.032 木星半径
平均密度:0.139 g cm-3
軌道長半径:0.04186 AU
平衡温度:1231.3 K
この惑星は,発見されている中で最も大きいスーパーネプチューン質量の惑星である.
HATS-62b 以外の,木星より大きな半径を持ち質量が軽い惑星には,0.18 木星質量,1.37 木星半径の WASP-127b (Lam et al. 2017),0.195 木星質量,1.37 木星半径の KELT-11b (Pepper et al. 2017) がある.
半径:1.070 太陽半径
光度:1.026 太陽光度
有効温度:5626 K
金属量:[Fe/H] = 0.081
年齢:104 億歳
距離:634.4 pc
質量:< 0.96 木星質量
半径:1.207 木星半径
平均密度:0.67 g cm-3
軌道長半径:0.04026 AU
平衡温度:1398.3 K
半径:2.113 太陽半径
光度:7.43 太陽光度
有効温度:6560 K
金属量:[Fe/H] = 0.208
年齢:18.62 億歳
距離:1087 pc
質量:0.93 木星質量
半径:1.674 木星半径
平均密度:0.244 g cm-3
軌道長半径:0.06560 AU
平衡温度:1797 K
半径:1.296 太陽半径
光度:2.34 太陽光度
有効温度:6276 K
金属量:[Fe/H] = 0.233
年齢:14.2 億歳
距離:491 pc
質量:0.793 木星質量
半径:1.479 木星半径
平均密度:0.304 g cm-3
軌道長半径:0.04511 AU
平衡温度:1623 K
半径:1.851 太陽半径
光度:5.86 太陽光度
有効温度:6606 K
金属量:[Fe/H] = -0.034
年齢:22.9 億歳
距離:1542 pc
質量:5.5 木星質量
半径:1.50 木星半径
平均密度:2.04 g cm-3
軌道長半径:0.04709 AU
平衡温度:1999 K
このようなタイプの惑星は比較的希少である.NASA Exoplanet Archive 中では,HATS-66b より重いトランジット惑星は 20 個のみが存在する.
Schlaufman (2018) は,スーパージュピター質量の惑星に関して,中心星の金属量と惑星の存在頻度の間に相関が見られないことから,4 木星質量よりも重い天体はコア降着ではなく円盤不安定を介して形成された可能性について議論している.従って,4 - 10 木星質量の天体は惑星というよりも褐色矮星により近いと言える.
HATS-66b は,太陽金属量に近い金属量を持つ恒星を公転している.
惑星半径は 1.50 木星半径と,この質量にしては大きな半径を持っている.これは,惑星の平衡温度が 1999 K と高いことと整合的である.
半径:1.441 太陽半径
光度:3.54 太陽光度
有効温度:6605 K
金属量:[Fe/H] = 0.339
年齢:4.4 億歳
距離:983 pc
質量:1.477 木星質量
半径:1.694 木星半径
平均密度:0.373 g cm-3
軌道長半径:0.03036 AU
平衡温度:2196 K
半径:1.769 太陽半径
光度:3.94 太陽光度
有効温度:6122 K
金属量:[Fe/H] = 0.163
年齢:31.4 億歳
距離:619 pc
質量:1.286 木星質量
半径:1.284 木星半径
平均密度:0.759 g cm-3
軌道長半径: 0.05053 AU
平衡温度:1750 K
半径:0.8785 太陽半径
光度:0.4813 太陽光度
有効温度:5137 K
金属量:[Fe/H] = 0.377
年齢:80 億歳
距離:420.3 pc
質量:< 0.577 木星質量
半径:0.945 木星半径
平均密度:0.46 g cm-3
軌道長半径: 0.03211 AU
平衡温度:1295.7 K
arXiv:1809.01048
Hartman et al. (2018)
HATS-60b - HATS-69b: Ten Transiting Planets From HATSouth
(HATS-60b - HATS-69b:HATSouth からの 10 個のトランジット惑星)
概要
HATSouth サーベイによる,10 個のトランジット系外惑星の発見について報告する.発見された惑星は,質量はスーパーネプチューンの < 0.191 木星質量を持つ HATS-62b から,スーパージュピターの 5.47 木星質量を持つ HATS-66b までの範囲にある.サイズは 0.94 木星半径と土星程度のサイズを持つ HATS-69b から,1.69 木星半径の膨張した半径を持つ HATS-67b までの範囲である.また軌道周期は 1.6092 - 7.8180 日の範囲である.
中心星の質量は 0.89 - 1.56 太陽質量,実視等級は V = 12.276 - 14.095 である.
スーパーネプチューン HATS-62b は,木星よりも半径が大きい惑星の中では,これまで見つかっているものの中で最も軽い惑星である.
Gaia DR2 の年周視差から算出される距離と,広帯域測光観測の結果に基づくと,HATS-62, 64, 65 の 3 つの系は,撮像観測では分解されていない連星を伴っている可能性がある.
パラメータ
HATS-60 系
HATS-60
質量:1.0988 太陽質量半径:1.460 太陽半径
光度:2.006 太陽光度
有効温度:5690 K
金属量:[Fe/H] = 0.334
年齢:75.3 億歳
距離:494.7 pc
HATS-60b
軌道周期:3.560827 日質量:0.650 木星質量
半径:1.194 木星半径
平均密度:0.472 g cm-3
軌道長半径:0.04710 AU
平衡温度:1529 K
HATS-61 系
HATS-61
質量:1.075 太陽質量半径:1.667 太陽半径
光度:2.340 太陽光度
有効温度:5541 K
金属量:[Fe/H] = 0.241
年齢:89.3 億歳
距離:694.2 pc
HATS-61b
軌道周期:7.817954 日質量:3.40 木星質量
半径:1.201 木星半径
平均密度:2.43 g cm-3
軌道長半径:0.07904 AU
平衡温度:1226.9 K
HATS-61 系の特徴
HATS-61b は 3.40 木星質量のスーパージュピターである.軌道周期は 7.8 日とやや長い.HATSouth サーベイで発見された惑星の中では,2 番目に長周期の惑星である.
中心星 HATS-61 はやや年老いており,主系列段階から離れかかっている.この恒星の現在の光度は,ゼロ年齢主系列 (zero-age main sequence, ZAMS) の段階の推定光度よりも 2.7 倍ほど明るい.
従って,比較的長周期であるにもかかわらず,惑星の平衡温度は 1226.9 K と高い.
1.201 木星半径というサイズは,観測されている平衡温度と半径の相関関係と整合的である.
Enoch et al. (2012) による平衡温度と惑星半径の経験的関係からは,1.12 木星半径になるべきと予測される.仮に惑星の平衡温度を,ZAMS の段階で期待される温度に変えた場合,同じ軌道長半径で期待される惑星半径は,平衡温度-半径関係の上端に位置する 1.02 木星半径と予想される.
HATS-61b は再膨張したスーパージュピターである可能性がある.これは,中心星がより明るくなるに連れ,惑星サイズが膨張するというモデルである (Lopez & Fortney 2016,Grunblatt et al. 2016,Hartman et al. 2016).
ただし,ある平衡温度と質量に対して予測される惑星半径における内因性の分散の大きさを考慮すると,この結論は確定的なものではない.
HATS-62 系
HATS-62
質量:0.9113 太陽質量半径:0.923 太陽半径
光度:0.667 太陽光度
有効温度:5453 K
金属量:[Fe/H] = 0.141
年齢:80.0 億歳
距離:515.9 pc
HATS-62b
軌道周期:3.2768838 日質量:< 0.191 木星質量
半径:1.032 木星半径
平均密度:0.139 g cm-3
軌道長半径:0.04186 AU
平衡温度:1231.3 K
HATS-62 系の特徴
HATS-62b の推定質量の 95% 信頼度での上限値は 0.191 木星質量である.また,質量の推定値は 0.123 木星質量である.この惑星は,発見されている中で最も大きいスーパーネプチューン質量の惑星である.
HATS-62b 以外の,木星より大きな半径を持ち質量が軽い惑星には,0.18 木星質量,1.37 木星半径の WASP-127b (Lam et al. 2017),0.195 木星質量,1.37 木星半径の KELT-11b (Pepper et al. 2017) がある.
※関連記事
天文・宇宙物理関連メモ vol.293 Lam et al. (2016) WASP-127b, WASP 136b, WASP-138b の発見
天文・宇宙物理関連メモ vol.281 Pepper et al. (2016) 明るい準巨星まわりの膨張惑星 KELT-11b の発見
この大きな半径を持つスーパーネプチューンが,軌道長半径-質量ダイアグラム上で近接巨大ガス惑星の低質量側の領域に位置しているのは偶然ではないだろう.この惑星は sub-Jovian desert (木星より軽い惑星が欠乏している領域) の上端に位置しており (Mazeh et al. 2016など),また,ガス惑星の進行中の高離心率での軌道移動における,潮汐破壊限界の位置をトレースしている可能性がある (Owen & Lai 2018).天文・宇宙物理関連メモ vol.293 Lam et al. (2016) WASP-127b, WASP 136b, WASP-138b の発見
天文・宇宙物理関連メモ vol.281 Pepper et al. (2016) 明るい準巨星まわりの膨張惑星 KELT-11b の発見
HATS-63 系
HATS-63
質量:0.931 太陽質量半径:1.070 太陽半径
光度:1.026 太陽光度
有効温度:5626 K
金属量:[Fe/H] = 0.081
年齢:104 億歳
距離:634.4 pc
HATS-63b
軌道周期:3.0566528 日質量:< 0.96 木星質量
半径:1.207 木星半径
平均密度:0.67 g cm-3
軌道長半径:0.04026 AU
平衡温度:1398.3 K
HATS-64 系
HATS-64
質量:1.562 太陽質量半径:2.113 太陽半径
光度:7.43 太陽光度
有効温度:6560 K
金属量:[Fe/H] = 0.208
年齢:18.62 億歳
距離:1087 pc
HATS-64b
軌道周期:4.908896 日質量:0.93 木星質量
半径:1.674 木星半径
平均密度:0.244 g cm-3
軌道長半径:0.06560 AU
平衡温度:1797 K
HATS-65 系
HATS-65
質量:1.269 太陽質量半径:1.296 太陽半径
光度:2.34 太陽光度
有効温度:6276 K
金属量:[Fe/H] = 0.233
年齢:14.2 億歳
距離:491 pc
HATS-65b
軌道周期:3.1051602 日質量:0.793 木星質量
半径:1.479 木星半径
平均密度:0.304 g cm-3
軌道長半径:0.04511 AU
平衡温度:1623 K
HATS-66 系
HATS-66
質量:1.406 太陽質量半径:1.851 太陽半径
光度:5.86 太陽光度
有効温度:6606 K
金属量:[Fe/H] = -0.034
年齢:22.9 億歳
距離:1542 pc
HATS-66b
軌道周期:3.141439 日質量:5.5 木星質量
半径:1.50 木星半径
平均密度:2.04 g cm-3
軌道長半径:0.04709 AU
平衡温度:1999 K
HATS-66 系の特徴
HATS-66b は重いスーパージュピター惑星である.このようなタイプの惑星は比較的希少である.NASA Exoplanet Archive 中では,HATS-66b より重いトランジット惑星は 20 個のみが存在する.
Schlaufman (2018) は,スーパージュピター質量の惑星に関して,中心星の金属量と惑星の存在頻度の間に相関が見られないことから,4 木星質量よりも重い天体はコア降着ではなく円盤不安定を介して形成された可能性について議論している.従って,4 - 10 木星質量の天体は惑星というよりも褐色矮星により近いと言える.
HATS-66b は,太陽金属量に近い金属量を持つ恒星を公転している.
惑星半径は 1.50 木星半径と,この質量にしては大きな半径を持っている.これは,惑星の平衡温度が 1999 K と高いことと整合的である.
HATS-67 系
HATS-67
質量:1.441 太陽質量半径:1.441 太陽半径
光度:3.54 太陽光度
有効温度:6605 K
金属量:[Fe/H] = 0.339
年齢:4.4 億歳
距離:983 pc
HATS-67b
軌道周期:1.6091789 日質量:1.477 木星質量
半径:1.694 木星半径
平均密度:0.373 g cm-3
軌道長半径:0.03036 AU
平衡温度:2196 K
HATS-67 系の特徴
HATS-67b は,平衡温度が 2196 K と推定され,既知のホットジュピターの中では最も高温な部類になる.またこれは驚くべきことではないが,1.694 木星半径と大きく膨張した半径を持つ.HATS-68 系
HATS-68
質量:1.337 太陽質量半径:1.769 太陽半径
光度:3.94 太陽光度
有効温度:6122 K
金属量:[Fe/H] = 0.163
年齢:31.4 億歳
距離:619 pc
HATS-68b
軌道周期:3.5862234 日質量:1.286 木星質量
半径:1.284 木星半径
平均密度:0.759 g cm-3
軌道長半径: 0.05053 AU
平衡温度:1750 K
HATS-69 系
HATS-69
質量:0.892 太陽質量半径:0.8785 太陽半径
光度:0.4813 太陽光度
有効温度:5137 K
金属量:[Fe/H] = 0.377
年齢:80 億歳
距離:420.3 pc
HATS-69b
軌道周期:2.2252577 日質量:< 0.577 木星質量
半径:0.945 木星半径
平均密度:0.46 g cm-3
軌道長半径: 0.03211 AU
平衡温度:1295.7 K
HATS-69 系の特徴
HATS-62b と同様に,ホットサターンである HATS-69b も同じく sub-Jovian desert の境界付近に位置している.しかしこの惑星の半径は,この惑星の質量を考えると例外的なものではない.PR
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