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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1810.03693
Gibson et al. (2018)
Revisiting the potassium feature of WASP-31b at high-resolution
(高分散での WASP-31b のカリウムの特徴の再検討)

概要

系外惑星スペクトルの時系列観測の解析と解釈は,現在の我々の系外惑星大気の理解において重大な問題であり続けている.これは,装置の系統的な影響を理解することにおける複雑さが原因である.

過去のホットジュピター WASP-31b の低分散分光の透過光観測では,相反する結果が得られている,ハッブル宇宙望遠鏡での観測では,4.2σ の高い信頼度で強いカリウムの吸収が検出されている.しかしその後の地上望遠鏡 Very Large Telescope を用いた分光測光観測では,カリウムの吸収の特徴は検出されなかった.

ここでは,R > 80000 の高分散分光観測の結果を報告する.観測には UVES 分光器を用いており,先述の観測結果の解釈の食い違いを解決することを目的としている.異なるトランジット光度曲線を用いてカリウムの特徴の集中的な探査を行い,また惑星の視線速度を積分した.

今回の観測では,ハッブル宇宙望遠鏡で存在が報告された信頼水準でのカリウムの吸収は検出されなかったカリウムの特徴が検出されなかったとする VLT の観測と整合的な結果であった

微分光度曲線深さは 0.00031 と測定され,ラインのコア部分での深さの上限値を 3σ の信頼度で 0.007 と制約を与えた.


これらの結果は,最も安定した宇宙空間での装置を用いた観測であっても,装置系統の理解には依然として大きな制限があり,低分散データから狭帯域バンドの特徴を抽出する際には注意が必要であるということを示している.代替の装置と方法論を用いて系外惑星の特徴を確認することが優先であり,また系統の限界に直面することは,我々の将来的な系外惑星大気の理解にとっては不可欠なことである.

観測

観測は VLT に搭載されている UV-Visual Echelle Spectrograph (UVES) を用いて行った.

WASP-31b は膨張半径を持ったホットジュピターで,Anderson et al. (2011) で発見された.質量は 0.48 木星質量,半径は 1.55 木星半径であり,F 型の中心星を 3.4 日周期で公転している.

この惑星は,ハッブル宇宙望遠鏡と,VLT の FOcal Reducer and low dispersion Spectrograph 2 (FORS2) で可視光の透過スペクトルが取得されている.どちらのデータセットも連続波の吸収では整合的な値が得られている.雲 (波長依存性の無い散乱) とヘイズ (レイリー散乱) の形で,大気中のエアロゾルの兆候が明らかされている (Sing et al. 2015,Gibson et al. 2017).

しかしハッブル宇宙望遠鏡の STIS を用いた観測では,雲層の上でのカリウムの検出を報告しているが,FORS2 の観測では高い信頼度でカリウムの特徴の存在を否定している.

ハッブル宇宙望遠鏡はこれまでに,ホットジュピター大気の最も大きなサーベイを行ってきており,可視光透過スペクトル観測の最も安定な装置であることが示されている.さらに WASP-39b 大気中のナトリウムの特徴はハッブル宇宙望遠鏡によって検出され,後に地上からの FORS2 での観測でも確認されている (Nikolov et al. 2016).また,いくつかのその他の特徴も STIS で検出され.後に確認されている.

その一方で,なぜ大きなカリウムのシグナルが FORS2 観測では隠されてしまっているのかを説明することは非常に困難である.一つの可能性は,分解されていない地球大気による影響が,シグナルの大部分が集中しているコア部分の強い特徴を隠しているというものである (Gibson et al. 2017).この場合はシグナルはハッブルで測定されたものよりずっと大きくなるため,高分解能では容易に測定できる.

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