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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1812.02773
Hooton et al. (2018)
A ground-based NUV secondary eclipse observation of KELT-9b
(KELT-9b の地上からの近紫外線二次食観測)
この惑星の平衡温度は 4000 Kを 超え.水素分子の多くは解離しており,昼側の大気には金属原子が存在している.そのためガス惑星と言うよりは K 型星に類似した特徴を持っている.
この惑星の単一の二次食を,La Palma にある Observatorio del Roque de los Muchachos の Isaac Newton Telescope (INT) に設置された Wide Field Camera で観測した.この望遠鏡は口径 2.5 メートルである.
この観測は,惑星大気中のでレイリー散乱に敏感な観測ウィンドウである U バンドで実施された.観測日時は 2017 年 7 月 20 日である.
その結果,二次食のシグナルは検出されなかったが,3σ の二次食深さの上限値として 181 ppm という値を導出した.この結果を元に,大気の ~ 30 mbar 高度での昼側の温度を 4995 K と制約した.
この惑星の幾何アルベドの観測的上限値として 0.14 を与えたが,理論モデルでは実際の値はこれよりも H- による不透明度の影響で更に低くなることが示唆される.この結果は,その他のより低温な類似した惑星のアルベドの傾向と類似したものであり,それらの大部分は昼側への入射光のうち非常に小さい量のみを反射する.
この研究は,INT のような 2 メートル規模の地上望遠鏡による近紫外線での二次食研究の可能性を示すものである.これまでの類似の観測は宇宙空間の機器によって行われてきた.
近赤外線波長とより長波長側では,ホットジュピターからのフラックスは熱放射が主な起源である.この波長域での熱放射の測定からは,惑星の全球的な熱の再分配や大気の温度逆転層,大気変動などを探ることができる.
一方で可視光や短波長では熱放射起源のホットジュピターからの放射は急激に減少し,中心星の放射光の反射が主要な起源となる.
長波長側でのホットジュピターからの熱放射の検出は現在の観測機器でも行われているが,可視光でのホットジュピターからの反射光の研究の大部分は,非検出に終わっている.この結果は,可視光における散乱が雲なし大気におけるアルカリ金属の吸収で抑制されるという予測と整合的である (Sudarsky et al. 2000,Burrows et al. 2008).
しかし Bell et al. (2017) では WASP-12b (~2500 K) での近紫外線の反射光は非検出という結果が報告されている.また Evans et al. (2013) は HD 189733b (~1200 K) の 190-450 nm での幾何アルベドを 0.40 ± 0.12 と測定した (この波長域は U バンドの波長と被っている).
これらの研究は,最も強く輻射を受けている惑星は大気中に雲を持っていないという理論研究と整合的である.また HD 189733b は大気中に雲を持っていそうであるという研究とも整合的である.
Hoeijmakers et al. (2018) では,惑星のトランジット時の高分散スペクトルから,大気中から Fe,Fe+,Ti+ の特徴を高い信頼度で検出した.この観測では,惑星の大気温度は昼夜境界で 4000 K を超えていることが示唆された.
また,z’ バンドの食の観測では,昼側の温度は 4600 K と推定され (Collins et al. 2019),これは K4 型の恒星に相当する温度である.そのため U バンドでの二次食の深さは 50 ppm を超えると予想されている.
arXiv:1812.02773
Hooton et al. (2018)
A ground-based NUV secondary eclipse observation of KELT-9b
(KELT-9b の地上からの近紫外線二次食観測)
概要
KELT-9b は,スペクトル型が B9.5/A0 型の恒星の周りを 1.49 日周期で公転しているのが発見された惑星である.比類のないレベルの紫外線輻射を中心星から受けており,ウルトラホットジュピターという種類に分類されるこの惑星の平衡温度は 4000 Kを 超え.水素分子の多くは解離しており,昼側の大気には金属原子が存在している.そのためガス惑星と言うよりは K 型星に類似した特徴を持っている.
この惑星の単一の二次食を,La Palma にある Observatorio del Roque de los Muchachos の Isaac Newton Telescope (INT) に設置された Wide Field Camera で観測した.この望遠鏡は口径 2.5 メートルである.
この観測は,惑星大気中のでレイリー散乱に敏感な観測ウィンドウである U バンドで実施された.観測日時は 2017 年 7 月 20 日である.
その結果,二次食のシグナルは検出されなかったが,3σ の二次食深さの上限値として 181 ppm という値を導出した.この結果を元に,大気の ~ 30 mbar 高度での昼側の温度を 4995 K と制約した.
この惑星の幾何アルベドの観測的上限値として 0.14 を与えたが,理論モデルでは実際の値はこれよりも H- による不透明度の影響で更に低くなることが示唆される.この結果は,その他のより低温な類似した惑星のアルベドの傾向と類似したものであり,それらの大部分は昼側への入射光のうち非常に小さい量のみを反射する.
この研究は,INT のような 2 メートル規模の地上望遠鏡による近紫外線での二次食研究の可能性を示すものである.これまでの類似の観測は宇宙空間の機器によって行われてきた.
背景
二次食による系外惑星の大気観測
惑星が恒星の背後に隠れる二次食という現象を観測することによって,惑星の大気を探ることができる.近赤外線波長とより長波長側では,ホットジュピターからのフラックスは熱放射が主な起源である.この波長域での熱放射の測定からは,惑星の全球的な熱の再分配や大気の温度逆転層,大気変動などを探ることができる.
一方で可視光や短波長では熱放射起源のホットジュピターからの放射は急激に減少し,中心星の放射光の反射が主要な起源となる.
長波長側でのホットジュピターからの熱放射の検出は現在の観測機器でも行われているが,可視光でのホットジュピターからの反射光の研究の大部分は,非検出に終わっている.この結果は,可視光における散乱が雲なし大気におけるアルカリ金属の吸収で抑制されるという予測と整合的である (Sudarsky et al. 2000,Burrows et al. 2008).
近紫外線波長での二次食観測
これまでは,ホットジュピターの近紫外線での二次食観測はハッブル宇宙望遠鏡の STIS を用いて行われてきた.この波長帯ではアルカリ金属による吸収が弱く,またレイリー散乱の散乱断面積がより大きいため,反射光を探るのに適している.しかし Bell et al. (2017) では WASP-12b (~2500 K) での近紫外線の反射光は非検出という結果が報告されている.また Evans et al. (2013) は HD 189733b (~1200 K) の 190-450 nm での幾何アルベドを 0.40 ± 0.12 と測定した (この波長域は U バンドの波長と被っている).
これらの研究は,最も強く輻射を受けている惑星は大気中に雲を持っていないという理論研究と整合的である.また HD 189733b は大気中に雲を持っていそうであるという研究とも整合的である.
KELT-9b について
最近発見された KELT-9b の平衡温度 4050 K (Gaudi et al. 2017) は,既知の系外惑星の中では最も高い.軌道周期,中心星のスペクトル型などを考慮すると,これまでに知られている系外惑星の中で最も強く紫外線輻射を受けている惑星である.Hoeijmakers et al. (2018) では,惑星のトランジット時の高分散スペクトルから,大気中から Fe,Fe+,Ti+ の特徴を高い信頼度で検出した.この観測では,惑星の大気温度は昼夜境界で 4000 K を超えていることが示唆された.
また,z’ バンドの食の観測では,昼側の温度は 4600 K と推定され (Collins et al. 2019),これは K4 型の恒星に相当する温度である.そのため U バンドでの二次食の深さは 50 ppm を超えると予想されている.
※関連記事
天文・宇宙物理関連メモ vol.488 Scott Gaudi et al. (2017) 表面温度が 4600 K のホットジュピター KELT-9b の発見
天文・宇宙物理関連メモ vol.976 Hoeijmakers et al. (2018) ウルトラホットジュピター KELT-9b 大気での鉄とチタンの検出
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天文・宇宙物理関連メモ vol.586 Bell et al. (2017) WASP-12b の二次食観測と非常に低いアルベド