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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1911.09673
Piro & Vissapragada (2019)
Exploring Whether Super-Puffs Can Be Explained as Ringed Exoplanets
(スーパーパフは環を持った系外惑星として説明できるかどうかの調査)
このような広がった大気を持つ惑星を,現在の進化モデルで説明するのは難しい.これは,そのような惑星は大気の光蒸発の影響を受けやすいためである.
ここではスーパーパフの成因として別の説明を考える.つまり,惑星が環を持っているために大きな半径に見えるという仮説である.この仮説は,スーパーパフのトランジットスペクトルが特徴に欠けている理由も自然に説明することができる.
この仮説は,スーパーパフとされる全ての天体を説明することはできないものの,現在参照可能なデータのある特定のスーパーパフを説明可能であることを見出した.
スーパーパフの軌道半径は中心星に近いことから,環は氷組成ではなく岩石組成である必要がある.このことは想定される環の半径への制約を与え,環が空隙の多い物質で構成されていない限り,ケプラー51b, 51c, 51d, 79d の大きなサイズを環で説明するのは難しい.
さらに,ケプラー18d, 223d, 223e の潮汐固定のタイムスケールは短いため,これらの天体は非常に低速で自転していると考えられる.その場合惑星の扁平度は小さくなり,惑星の周りの環は中心星の影響によって歪められる.
ケプラー87c と 177c の見かけの大きさは環で説明できる可能性が高いが,この仮説を検証するためには ~10 ppm の測光精度が要求される.
ここでの議論では環で説明できる可能性は低いとしたものの,ケプラー18d, 223d, 223e の周りの環の存在は,50-150 ppm の測光でより簡単に検証可能である.また最近発見されたスーパーパフ惑星 HIP 41378f についても触れる.
スーパーパフのに関しては,研究者によって定義が異なることに注意が必要である.例えば,質量は 10 地球質量未満という厳密な境界を与えている研究者もいる (Lee 2019,Jontof-Hutter 2019など).ここではより寛容な基準として,15 地球質量程度以下の惑星を含めることとする.
理論的な予想よりも大きな半径を持つこれらの惑星は,従来のホットジュピターの膨張半径の問題とある程度類似している.しかしホットジュピターの膨張半径は惑星の平衡温度と強い相関があり (Miller & Fortney 2011など),より低温なスーパーパフに同じメカニズムを拡張できないことを意味する.
いくつかのスーパーパフ系は若く,そのためこのような惑星はまだ収縮中であるために膨張して見えるという可能性はある (Libby-Roberts et al. 2019).しかしスーパーパフとされる惑星を持つ系の大部分は年老いており,系の年齢が若いという理由だけでは説明できない.
分厚いエンベロープ説は他にも問題点があり,光蒸発によって惑星からの大きな質量放出を経験してしまうという点である.
しかしこの惑星のトランジット継続時間が長いため,検証に必要な位相のカバーをするための日程調整が難しい観測対象である.
arXiv:1911.09673
Piro & Vissapragada (2019)
Exploring Whether Super-Puffs Can Be Explained as Ringed Exoplanets
(スーパーパフは環を持った系外惑星として説明できるかどうかの調査)
概要
発見数が増えている興味深い惑星の分類として,「スーパーパフ」(super-puffs) と呼ばれる,質量の割に非常に大きな半径を持ち,そのために密度が低い (≦0.3 g cm-3) ものがある.このような広がった大気を持つ惑星を,現在の進化モデルで説明するのは難しい.これは,そのような惑星は大気の光蒸発の影響を受けやすいためである.
ここではスーパーパフの成因として別の説明を考える.つまり,惑星が環を持っているために大きな半径に見えるという仮説である.この仮説は,スーパーパフのトランジットスペクトルが特徴に欠けている理由も自然に説明することができる.
この仮説は,スーパーパフとされる全ての天体を説明することはできないものの,現在参照可能なデータのある特定のスーパーパフを説明可能であることを見出した.
スーパーパフの軌道半径は中心星に近いことから,環は氷組成ではなく岩石組成である必要がある.このことは想定される環の半径への制約を与え,環が空隙の多い物質で構成されていない限り,ケプラー51b, 51c, 51d, 79d の大きなサイズを環で説明するのは難しい.
さらに,ケプラー18d, 223d, 223e の潮汐固定のタイムスケールは短いため,これらの天体は非常に低速で自転していると考えられる.その場合惑星の扁平度は小さくなり,惑星の周りの環は中心星の影響によって歪められる.
ケプラー87c と 177c の見かけの大きさは環で説明できる可能性が高いが,この仮説を検証するためには ~10 ppm の測光精度が要求される.
ここでの議論では環で説明できる可能性は低いとしたものの,ケプラー18d, 223d, 223e の周りの環の存在は,50-150 ppm の測光でより簡単に検証可能である.また最近発見されたスーパーパフ惑星 HIP 41378f についても触れる.
スーパーパフ惑星について
スーパーパフと呼ばれる,推定密度が 0.3 g cm-3 以下の非常に低密度な系外惑星が次々と発見されている.スーパーパフのに関しては,研究者によって定義が異なることに注意が必要である.例えば,質量は 10 地球質量未満という厳密な境界を与えている研究者もいる (Lee 2019,Jontof-Hutter 2019など).ここではより寛容な基準として,15 地球質量程度以下の惑星を含めることとする.
理論的な予想よりも大きな半径を持つこれらの惑星は,従来のホットジュピターの膨張半径の問題とある程度類似している.しかしホットジュピターの膨張半径は惑星の平衡温度と強い相関があり (Miller & Fortney 2011など),より低温なスーパーパフに同じメカニズムを拡張できないことを意味する.
いくつかのスーパーパフ系は若く,そのためこのような惑星はまだ収縮中であるために膨張して見えるという可能性はある (Libby-Roberts et al. 2019).しかしスーパーパフとされる惑星を持つ系の大部分は年老いており,系の年齢が若いという理由だけでは説明できない.
分厚いエンベロープ説は他にも問題点があり,光蒸発によって惑星からの大きな質量放出を経験してしまうという点である.
※関連記事
天文・宇宙物理関連メモ vol.1091 Wang & Dai (2019) スーパーパフとサブネプチューンの透過スペクトルへのダストの多い大気流出の影響
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結論と議論
- スーパーパフが大きな半径を持つ理由が惑星周りの環であるとすると,ケプラー18d, 87c, 223d, 223e の環は岩石組成である必要がある.ケプラー117c は氷と岩石の境界線に位置する.
- 惑星は,環が歪むのを防ぐために十分に扁平である必要がある.そのためケプラー51c, 51d, 79d, 87c, 177c は環で説明が可能な有望な候補である.これはこれらの惑星では自転の潮汐同期時間が長いことと,環が歪むのを防ぐのに必要な J2 が小さいからである.
- 環が存在したとしても,スーパーパフの元となる惑星にはかなりの量のガスエンベロープが存在している必要がある.そうでない場合,自転の潮汐同期のタイムスケールが短くなりすぎてしまい,環が歪むのを防ぐのに必要な J2 の値が低くなってしまう.
- 総合すると,環はスーパーパフの全てを説明できるわけではないが,ケプラー87c, 177c は環で説明できる可能性がある.ケプラー18d, 223d, 223e は,ここで推定したよりも自転が速い場合は興味深い対象である.ケプラー79c は,もし環の物質が特に空隙率の高いものであった場合のみ,環で説明できる.
- 環のトランジットでの検出は,より高い密度 (≳0.2 g cm-3) を持つスーパーパフか,観測による見かけの半径と実際の推定惑星半径に大きな比率があるものであれば検証が容易である.このため,仮説の検証にはケプラー18d, 51b, 51c, 51d, 223d, 223e が適している.
- より低密度 (≦0.1 g cm-3) で小さい比率のもの,例えばケプラー79d, 87c は環を検出するのが難しい.
- HIP 41378f を除くと,現在の地上望遠鏡と宇宙望遠鏡は,環の仮説を検証するのに十分な観測精度がない.ケプラーで発見されたスーパーパフについては,検証を行うためにはジェイムス・ウェッブ宇宙望遠鏡の打ち上げを待たなければならない.
しかしこの惑星のトランジット継続時間が長いため,検証に必要な位相のカバーをするための日程調整が難しい観測対象である.
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天文・宇宙物理関連メモ vol.1236 Libby-Roberts et al. (2019) スーパーパフ惑星ケプラー51b と d の特徴に欠けた透過スペクトル