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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1912.03599
Eldridge et al. (2019)
Weighing in on black hole binaries with BPASS: LB-1 does not contain a 70M⊙ black hole
(BPASS によるブラックホール連星の質量測定:LB-1 は 70 太陽質量のブラックホールを含んでいない)

概要

最近発見が報告された 70 太陽質量の非常に重いブラックホール候補天体の存在は,現在の恒星風と対不安定型超新星からの理解とは相容れないものである.ここではこの系の観測結果の異なる解釈について調査を行った.

BPASS v2.2 恒星・種族合成モデルを調べることで.LB-1 系で観測された特徴に一致するものを探した.その結果,LB-1 系の観測に一致する連星進化モデルを見出した.Gaia の観測で報告されている距離で,より一般的な質量である 4-7 太陽質量のブラックホールを持つモデルに一致した.

また,連星の運動が Gaia の観測データを用いた距離決定を誤ったものにする可能性についての調査を行った.その結果,Gaia によって得られた距離は正確であり,LB-1 の連星系までの距離は Gaia によって測定されたものが整合的であることが分かった.

結果として,LB-1 系にあるブラックホールは当初指摘されたように極端な質量を持つブラックホールである可能性は非常に低い.そのかわりに,我々の銀河系内で形成されることが予想される,典型的な恒星質量のブラックホール連星である可能性が高い.

70 太陽質量ブラックホールについて

Liu et al. (2019) によって,70 太陽質量と非常に重いブラックホール候補天体の検出が主張された.このような質量のブラックホールは,現在の理論では予想されないものである.太陽金属量の環境の場合,恒星風による質量放出が非常に強く,ブラックホールの前駆体である恒星が質量を失ってしまうため,超新星に形成されるブラックホールは 10 太陽質量未満になる.

Liu et al. (2019) では.3 つの主要な議論から観測結果は重いブラックホールが存在するとの解釈がもっともらしいとの主張を行っている.
1 つ目は,広い Hα 線の放射は,見えないコンパクトな天体の近くにあるケプラー円盤から来ており,速度の半振幅は 6.4 km s-1,視線方向から ~15° の低い傾斜角で観測しているというものである.2 つ目は,伴星の天体としてもっともらしい推測は 8.5 太陽質量の主系列星であるというものであり,これは視線速度の半振幅が 52.8 km s-1 であることに起因している.3 つ目は,Gaia によって報告された天体の視差は 2 倍間違っており,この天体までの距離は 2.14 kpc ではなく 4.23 kpc だという主張である.

これらの主張のうち最初のものは,Hα 線のスペクトル分布の正しい解釈に依存している.この特徴は,伴星の間にある円盤ではない物質の流れやホットスポット,非対称構造などに起因する複雑さが存在するため,問題のある解釈だと考えられる.

また,コンパクト天体が活発に物質を降着していて,したがってブラックホールの存在を確実にトレースできるような,緩和した対称な円盤が存在しているという明確な証拠が無い.静穏な状態にあるよく調査された降着ブラックホールでも,Hα 線の分布は一般に複雑であり,通常はブラックホールを確実にトレースすることは出来ない.

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