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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:2001.10867
Timmermann et al. (2020)
Radial velocity constraints on the long-period transiting planet Kepler-1625 b with CARMENES
(CARMENES を用いた長周期トランジット惑星ケプラー1625b の視線速度の制約)

概要

ケプラー1625 は,その周りを公転する木星サイズの惑星候補ケプラー1625b が大きな系外衛星を持つシグナルを示したことによって注目されている.しかし惑星であるケプラー1625b の質量は独立には決定されておらず,この天体が惑星であるかどうかはこれまで実証されていなかった.さらに,軌道周期が 287 日のこの惑星のようなケプラーの長周期の木星サイズの惑星候補は,偽陽性確率が大きいことが知られている.そのため,ケプラー1625b が惑星であることの独立した確認を行うことは特に重要である.

ここでは惑星 (およびその仮説上の衛星) による視線速度シグナルを検出するか,あるいは場合によっては,トランジットする天体 (もしくは 2 天体の合計質量) の質量の上限値を与えることを目的とした観測を行った.CARMENES を用いてケプラー1625 のスペクトルを 22 セット取得した,そのうち 20 セットが解析に使用できるものであった.観測は 2017 年 10 月から 2018 年 10 月の間の 7 夜に行われ,ケプラー1625b の軌道一周分の 125% をカバーした.

恒星の視線速度と不定性を処理する自動パイプライン Spectral Radial Velocity Analyser (SERVAL) を使用して解析した.その後,視線速度曲線を単独惑星のケプラー軌道でフィットした.

その結果,単独の惑星が円軌道にあるという仮定のもとで惑星の上限質量を導出した.このシナリオでは,1σ,2σ,3σ の上限値でそれぞれ 2.90,7.15,11.60 木星質量という上限値を与えた.軌道離心率と近点を自由パラメータにしたフィッティングも行い,こちらでも惑星質量であることを示唆する結果が得られたが,こちらは統計的な確実性は高くない.

今回の結果は,ケプラー1625b が惑星である強い証拠を提示するものであり,確認された系外惑星の中では 10 番目に長周期の惑星となる.今回のデータ中では,惑星で観測されているトランジット時刻変動を引き起こしうるような,より短周期の 2 番目の惑星の存在については結論を出すことはできなかった.

ケプラー1625 系について

ケプラー1625 (KIC4760478, KOI-5084) は,その惑星 ケプラー1625b の周囲に系外衛星が存在する可能性があると提唱されたことで有名になった (Teachey et al. 2018,Teachey & Kipping 2018).もしこれが確認されれば,系外衛星の初めての発見例となる.しかし現在のところ,検出されたシグナルが系外衛星によるものだとする解釈に関しては議論がある (Rodenbeck et ak. 2018,Heller et al. 2019,Kreidberg et al. 2019).

ここでは系外衛星の問題から立ち戻り,ケプラー1625b が実際に惑星であるかどうかという調査を行った.
検出された惑星候補が偽陽性である確率を惑星半径の関数として調査した研究では,6-22 地球半径の木星サイズの範囲では偽陽性確率が 17.7% と最も高くなる (Fressin et al. 2013).また恒星および惑星の半径測定の不定性の組み合わせから,ケプラー1625b は褐色矮星やあるいは非常に低質量の恒星である可能性すらあるとの報告もされている (Heller 2018).

Teachey et al. (2019) での,ケプラーとハッブル宇宙望遠鏡を用いたトランジット測光のベイズ解析では,惑星質量の事前分布は 2.99 木星質量をピークとし,中央値を 3.91 木星質量としている.これは,FORECASTER ソフトウェアでの経験的な確率的な質量・半径関係と,光力学モデルでフィットした衛星と惑星の質量比を介した惑星質量の FORECASTER による計算の 2 つに基づいている.中心星が 1.079 太陽質量と仮定すると,3 木星質量の惑星が 287 日周期にいる場合の視線速度振幅は 88 m s-1 となる.

議論

今回の観測では視線速度のシグナルはほぼ非検出であり.ここから惑星質量に上限を与えた.

視線速度の変動がほぼ非検出であったことから,検出されたトランジットが天体物理学的な偽陽性であったという可能性も依然として存在する.しかし Morton et al. (2016) では,Kepler-1625b が食連星や階層的な食連星,もしくは背景や前景の食連星による偽陽性である確率は 8.5 × 10-3 としている.さらに,検出されたトランジットシグナルが対象の恒星に起因している可能性は 1 であるとされている.またトランジットの経過は,ケプラー1625 を公転する木星サイズの天体によるものとしてよくモデル化されている.これは衛星を持つとした場合も持たないとした場合も同様である.

残る可能性は,ケプラー1625 の周囲をトランジットしている木星サイズの天体というものだけであり,今回の観測で得られた質量の上限値を考慮すると,惑星の質量範囲内であると考えられる.

系外衛星の証拠とされるケプラー1625b のトランジット時刻変動は,さらなる別の短周期の惑星が存在することによっても説明されうる (Heller et al. 2019).今回の観測では,そのような天体の存在は否定されなかった.この仮説は,新しくより高品質の,短周期惑星に感度のある視線速度観測で検証されるだろう.例えば,数週間にわたる集中的な観測などによって検証が可能であると考えられる.

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