×
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1709.01732
Kiefer et al. (2017)
Detection of a repeated transit signature in the light curve of the enigma star KIC 8462852: a 928-day period?
(謎めいた恒星 KIC 8462852 の光度曲線中の繰り返しのトランジットシグナルの検出:926 日周期?)
観測されている減光のパターンは,彗星の塵の尾によるトランジットがあった場合に発生する吸収特性に類似している.そのため,奇妙な減光の説明として,系外彗星 (exocomet) シナリオが提唱されている.
ここでは,ケプラーの測光観測データを再解析し,新しい高精度の光度曲線を抽出した.その結果,同定した 22 回のフラックス減光イベントのうち,2 イベントが明確な類似性を示す事を発見した.
この 2 つのイベントは 928.25 日離れて発生し,4.4 日に渡って継続し,この時の恒星の光度は 1000 ppm 減少する.これらのイベントの光度曲線は,巨大なリングを持つ天体による掩蔽.あるいは,ダスト生成率が 105 - 106 kg/s である,半ダースの系外彗星の連続したトランジットによって説明可能である.
これらの 2 つの類似した減光イベントが同じ天体のトランジットに関連していると仮定すると,周期は 928.25 日となる.この周期を元にした次のトランジットは 2017 年 3 月に発生することが期待されていたが,悪天候のため地上からの分光観測はできなかった.その次のイベントは 2019 年の 10 月 3 - 8 日の間に起きると予測される.
ケプラーの測光データから,奇妙な光度曲線を示していることが判明している.この減光は,深さが最大で ~ 20%である (Boyajian et al. 2016).KIC 8462852 は一般的な F 型星だと考えられており,この奇妙な振る舞いの説明として,恒星自身の不安定性である可能性は排除される.
この頻繁な,しかし非周期的な減光の説明として最も有名なシナリオは,星周物質がトランジットしているというものである.星周物質の候補としては,彗星や (Boyajian et al. 2016など),微惑星の破片 (Bodman & Quillen 2016) が考えられている.
この状況は β Pic (がか座ベータ星) で見られるシグナルと類似していて,がか座ベータ星の場合も系外彗星によると考えると説明できる (Ferlet et al. 1987など).しかしがか座ベータ星のケースとは対照的に,KIC 8462852 は年齡が若くなく (10 億歳),またがか座ベータ星では見られている星周ガスやダストは赤外線では検出されていない.
arXiv:1709.01732
Kiefer et al. (2017)
Detection of a repeated transit signature in the light curve of the enigma star KIC 8462852: a 928-day period?
(謎めいた恒星 KIC 8462852 の光度曲線中の繰り返しのトランジットシグナルの検出:926 日周期?)
概要
謎めいた恒星 KIC 8462852 は,それぞれ相関がないと思われるタイミングでの短く深いの減光を起こしていることが,ケプラーの奇妙な光度曲線の解析から明らかになっている.しかし中心星の特性は,奇妙な減光を起こすことを覗いては,静穏な 10 億歳の F3V 星に典型的なものである.観測されている減光のパターンは,彗星の塵の尾によるトランジットがあった場合に発生する吸収特性に類似している.そのため,奇妙な減光の説明として,系外彗星 (exocomet) シナリオが提唱されている.
ここでは,ケプラーの測光観測データを再解析し,新しい高精度の光度曲線を抽出した.その結果,同定した 22 回のフラックス減光イベントのうち,2 イベントが明確な類似性を示す事を発見した.
この 2 つのイベントは 928.25 日離れて発生し,4.4 日に渡って継続し,この時の恒星の光度は 1000 ppm 減少する.これらのイベントの光度曲線は,巨大なリングを持つ天体による掩蔽.あるいは,ダスト生成率が 105 - 106 kg/s である,半ダースの系外彗星の連続したトランジットによって説明可能である.
これらの 2 つの類似した減光イベントが同じ天体のトランジットに関連していると仮定すると,周期は 928.25 日となる.この周期を元にした次のトランジットは 2017 年 3 月に発生することが期待されていたが,悪天候のため地上からの分光観測はできなかった.その次のイベントは 2019 年の 10 月 3 - 8 日の間に起きると予測される.
KIC 8462852 について
KIC 8462852 は,スペクトル型が F3V の,454 pc の距離にある恒星である (Hippke et al. 2016).ケプラーの測光データから,奇妙な光度曲線を示していることが判明している.この減光は,深さが最大で ~ 20%である (Boyajian et al. 2016).KIC 8462852 は一般的な F 型星だと考えられており,この奇妙な振る舞いの説明として,恒星自身の不安定性である可能性は排除される.
この頻繁な,しかし非周期的な減光の説明として最も有名なシナリオは,星周物質がトランジットしているというものである.星周物質の候補としては,彗星や (Boyajian et al. 2016など),微惑星の破片 (Bodman & Quillen 2016) が考えられている.
この状況は β Pic (がか座ベータ星) で見られるシグナルと類似していて,がか座ベータ星の場合も系外彗星によると考えると説明できる (Ferlet et al. 1987など).しかしがか座ベータ星のケースとは対照的に,KIC 8462852 は年齡が若くなく (10 億歳),またがか座ベータ星では見られている星周ガスやダストは赤外線では検出されていない.
※関連記事
天文・宇宙物理関連メモ vol.144 Marengo et al. (2015) 奇妙な光度曲線を示す KIC 8462852の赤外線測光観測
天文・宇宙物理関連メモ vol.475 Ballesteros et al. (2017) KIC 8462852 の奇妙な減光はトロヤ群天体によるとする可能性について
天文・宇宙物理関連メモ vol.144 Marengo et al. (2015) 奇妙な光度曲線を示す KIC 8462852の赤外線測光観測
天文・宇宙物理関連メモ vol.475 Ballesteros et al. (2017) KIC 8462852 の奇妙な減光はトロヤ群天体によるとする可能性について
PR
この記事のトラックバックURL
この記事へのトラックバック
天文・宇宙物理関連メモ vol.70 Boyajian et al. (2015) KIC 8462852の奇妙な光度曲線の解析