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日々の感想などどうでもよいことを書き連ねるためだけのブログ。
論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1803.09264
Huélamo et al. (2018)
Searching for Hα emitting sources around MWC758: SPHERE/ZIMPOL high-contrast imaging
(MWC758 まわりの Hα 放射源の探査:SPHERE/ZIMPOL 高コントラスト撮像)

概要

MWC 758 は,周囲に遷移円盤 (transitional disk) を持った若い恒星である.この円盤は,内側に空洞があり,さらに原始惑星の存在によると思われる渦状腕を持っている.

最近,L’ バンドでの高分解能観測によって,この天体の周りに原始惑星候補天体が検出された.候補天体は中心星から 111 mas 程度の距離の,円盤内部の空洞の内側に位置しており,平均の位置角は ~ 165.5” である.

ここでは,可視光領域でのスペクトル角微分撮像を用いて,この天体の円盤内にある,質量を獲得している最中の原始惑星候補天体の検出を試みた.特に,検出されている惑星候補天体の位置での放射を探査した.
観測には,Very Large Telescope (VLT) に設置されている SPHERE/ZIMPOL を用い,Hα 線と,それに隣接する連続波成分の同時補償光学観測を行った.

観測データを解析したところ,観測対象周辺での Hα 線は検出されなかった.BHa フィルターを用いたコントラスト曲線から,111 mas での位置における放射の 5σ の上限値として,~ 7.6 mag という値を与えた.
このコントラストは,Hα 線の光度 \(L_{\rm H_{\alpha}}\) は 111 mas の位置で 5 × 10-5 太陽光度であることを意味している.

第一近似として,古典的Tタウリ星と同様に \(L_{\rm H_{\alpha}}\) は降着光度にスケールすると仮定すると,原始惑星候補天体の降着光度の推定値は 3.7 × 10-4 太陽光度未満となる.この値は,惑星候補天体 (MWC 758b) の推定質量 0.5 - 5 木星質量に対して,質量降着率が 3.4 × (10-8 - 10-9) 太陽質量/年未満であることを示唆している.これは,惑星の平均半径を 1.1 木星半径とした場合の推定値である.そのためこの推定は,周惑星円盤の内縁が木星半径とした場合の,降着する周惑星降着モデルの予測と整合的である.

ZIMPOL で得られた線光度は,これらのモデルで円盤の切り取り半径が 3.2 木星半径以下の場合に予測される Hα 放射の上限と整合的である.

ZIMPOL 画像の中にはいかなる Hα 放射源が検出されなかったため,L’ バンドで検出されていた放射源の性質を明らかにすることは出来ない.おそらくは,原始惑星もしくは円盤構造の非対称性のいずれかが原因だろうと考えられる.

MWC 758 について

MWC 758 の概要

MWC 758 (別名:HD 36112,HIP25793) は,推定年齢が 300万 ± 200 万歳 (Meeus et al. 2012) の,Herbig Ae star (ハービッグ Ae 星) である.ヒッパルコスの観測による推定距離は 279 pc だが (van Leeuwen 2007),最新の Gaia によるデータでは 151 pc (Gaia Collaboration et al. 2010) と推定されている.

この天体は,赤外線とサブミリ波で空間分解された遷移円盤を持つ (Chapillon et al. 2008,Isella et al. 2010,Andrews et al. 2011,Grady et al. 2013,Marino et al. 2015).

MWC 758 まわりの遷移円盤

Benisty et al. (2015) では,SPHERE/IRDIS 赤外偏光観測が Y バンド (1.04 µm) で行われた.

この観測では,空間分解されたいくつかの非軸対称構造を円盤中に検出している.この構造は中心星から 26 au の距離まで存在している (最新の Gaia による距離の測定値を採用すると ~ 14 au までに修正される).また,完全に物質が枯渇した空洞は検出されなかった.
さらに,過去に HiCIAO による撮像観測で Grady et al. (2013) によって報告されていた,2 つの渦状腕構造を確認されている.

モデル化を行った結果,内側の空洞にいる惑星は大きな opening angle を持つ渦状腕を生成する事ができないと結論付けられている.その一方で,外側に伴星がいるとするモデルは,観測されているこれらの円盤構造をよく説明する (Dong et al. 2015など).

より最近では,Boehler et al. (2017) によって ALMA を用いたサブミリ波観測が行われ,半径 40 au 程度の大きなダストの空洞の存在,ゆがんだ内側円盤の存在を示す兆候,および円盤の外側領域での 2 つのダスト塊の存在が報告されている.

円盤詳細構造の形成原因

この円盤構造全体を説明するための仮説として,2 つの巨大惑星の存在が提案されている,1 つは円盤内側の空洞を形成するための内側領域に存在する惑星,もう 1 つは渦状腕を説明するための外側惑星である.

興味深いことに,Reggiani et al. (2017) はサブミリ波での空洞の中に,点源の存在を報告している,これは中心星から ~ 111 mas の位置にあり,検出したのは L バンドでの観測であった.著者らが説明しているように,この放射は円盤内に埋め込まれた原始惑星によって引き起こされている可能性があるものの,円盤構造の非対称性に伴っている可能性も否定できない.仮に原始惑星が放射源だとした場合,観測と周惑星円盤降着モデル (Zhu 2015) とを比較すると,惑星質量が 0.5 - 5 木星質量,惑星への質量降着率が 10-7 - 10-9 太陽質量/年とすると観測結果を説明できる.

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