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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1804.05334
Močnik et al. (2018)
WASP-104b is Darker than Charcoal
(WASP-104b は木炭より暗い)

概要

ケプラー K2 ミッションの Campaign 14 得られたデータの解析から,ホットジュピターを持つ恒星 WASP-104 の光度曲線中の位相曲線変動を検出した.

位相曲線からは ellipsoidal modulation (※注釈:惑星の潮汐力によって恒星が楕円体状に変形することによる光度変化) が高い信頼度で検出され,これは理論的な予測ともよく一致する.一方で,ドップラービーミングと惑星表面での反射の変動は暫定的な検出に留まった.

可視光での WASP-104b の幾何学的アルベドは,95% の信頼度で 0.03 より低いという値が得られた.そのためこの惑星は,知られている中で最も反射率が低い惑星の一つである.

取得した光度曲線は,恒星の自転に伴う変動も示した.恒星の自転周期は,23 日もしくは 46 日程度だと考えられる.

また観測データから,この惑星系のパラメータを更新し,トランジット時刻変動と継続時間変動への厳しい上限値を与えた.また,惑星による黒点掩蔽イベント,WASP-104b 以外の他のトランジット惑星が存在する可能性への上限を与えた.

WASP-104 系について

WASP-104 は等級が V = 11.1 の G8 主系列星である (Smith et al. 2014).過去の観測では,95% の信頼度で自転による変動は非検出であり,変動の上限は 4 mmag であった.

この恒星はホットジュピター WASP-104b を持っており,軌道周期 1.76 日,円軌道,1.3 木星質量,1.1 木星半径である.他のホットジュピターと異なり,膨張した半径を持たない.

主な結果

TTV と TDV の非検出

光度曲線からは,トランジット時刻変動 (transit timing variation, TTV) とトランジット継続時間変動 (transit duration variation, TDV) に関して,統計的に有意な変動が存在する証拠は認められなかった.それぞれの変動の半振幅への上限値として,TTV は 20 秒,TDV は 47 秒を与え,周期の上限値は 80 日未満とした.

TTV の上限値からは,WASP-104b と 2:1 共鳴の 10% 以内にいる,円軌道を持つ 23 地球質量以上の非トランジット惑星は存在しないことが示唆される.

恒星の自転の検出

恒星の自転による変動も検出された.46 (+15, -7) 日,23.4 ± 2.7 日の 2 つの周期性を検出し,前者のほうが大きいピークを示した.自転周期はこのどちらかであると考えられる.また,10.5 日周期でも小さいピークが検出された.

K2 によるこの天体の観測期間は 80 日程度であり,46 日はその観測期間ベースラインの半分より長いため,周期としては信頼性が低い.もし 23 日周期が恒星の真の自転周期であれば,46 日と 10.5 日のシグナルは,恒星の自転周期の 2 倍と半分のエイリアスだと解釈することが可能である.

Smith et al. (2014) では自転による変動は検出されていなかったが,Smith et al. (2014) による半振幅の上限は 4mmag であったため,これは驚くべきことではない.今回得られた変動の振幅は 400 ppm であり,彼らの検出閾値は K2 データでの検出よりも 1 桁大きいものである.

黒点の掩蔽および他惑星の非検出

また,惑星による黒点の掩蔽は発生していないと結論づけた.恒星の自転による変動が存在することは,恒星表面には黒点が存在する事を示唆している.しかし,惑星が黒点を掩蔽した証拠は検出されなかった.

WASP-104b 以外の他のトランジット惑星の検出もされなかった.0.5 - 30 日周期の,統計的に有意なシグナルは発見されず,WASP-104b 以外の惑星によるトランジット深さの上限値として 110 ppm という値を与えた.

結論

WASP-104b と同様に非常に暗い表面を持つ惑星には,TrES-2b が例として挙げられる.この惑星の可視光での幾何学的アルベドは,ケプラーで得られた位相曲線変動が全て惑星表面での反射によるものとした場合,0.025 ± 0.007 となる (Kipping & Spiegel 2011).また惑星からの熱放射の影響を加味した場合は,幾何学的アルベドは 1% よりも低くなりうることも報告されている.

その他には HAT-P-7b があり,可視光での幾何学的アルベドは 0.03 程度以下と推定されている.これは,ケプラーでの二次食の検出に基づく推定値である (Morris et al. 2013).

一般に,ホットジュピターの可視光での幾何学的アルベドは,広い範囲の値を持ちうることが指摘されている (Sheets & Deming 2017).これは,雲の特性を左右している惑星の温度に依存している (Sudarsky et al. 2000).ホットジュピターの典型的な可視光での幾何学的アルベドは 0.1 のオーダーであり (Schwartz & Cowan 2015),これはホットスーパーアース・ホットネプチューンよりも統計的に低い値である (Demory 2014).大気モデルによると,この低いアルベドは,ホットジュピター大気中のアルカリ金属および TiO,VO の存在に起因する可能性があると考えられている.これらの物質は,可視光の波長で大きな吸収を起こす (Demory et al. 2011).

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