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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1804.02145
Honda et al. (2018)
Mid-infrared Multi-wavelength Imaging of Ophiuchus IRS 48 Transitional Disk
(へびつかい座 IRS 48 遷移円盤の中間赤外線多波長撮像)
Oph IRS 48 (へびつかい座 IRS 48) は ハービッグ Ae 星である.この天体の周囲の円盤は,内側のダスト空洞と,方位角方向に偏ったダストの分布を示す.ここでは,この天体の 8.56 - 24.6 µm の間の 8 個の中間赤外波長での新しい観測画像を提供する.観測は,8.2 m すばる望遠鏡の COMICS を使用した.
N バンド (7 - 13 µm) の画像は,フラックス分布は中心にピークがあり,わずかに空間的な広がりを持つという特徴を示した.一方で Q バンド (17 - 25 µm) での画像は,非対称な二重ピーク構造を西と東方向にそれぞれ持っている.
18.8 µm と 24.6 µm での画像を用い,これらの西と東のピークでのダスト温度を 135 ± 22 K と推定した.従って,円盤の非対称はダスト温度の違いに起因するものではない可能性がある.
今回の結果を過去のモデリングの研究と比較した結果,内側円盤は外側円盤と向きが揃っていると結論付けた.内側の光学的に厚い円盤が作る影は,外側円盤からの中間赤外線での熱放射の構造に大きな影響をもたらす.
このタイプの天体の周りには多様な星周円盤がある.
これらの円盤に対する,空間的に分解されていないスペクトルエネルギー分布 (spectral energy distribution, SED) の測定からは,いくつかの天体は円盤の内側に空洞が形成されていることが分かっている.このような円盤は,前遷移円盤 (pre-transitional disk) や遷移円盤 (transitional disk) と呼ばれる.
最近の高空間分解能観測では,渦状腕やワープ構造,方位角方向に偏った構造など,より複雑な円盤構造が検出されている.
例えば,円盤中での例えばダスト成長 (Tanaka et al. 2005,Dullemond & Dominik 2005,Birnstiel et al. 2012),光蒸発 (Clarke et al. 2001,Alexander et al. 2006),磁気回転不安定 (Chiang & Murray-Clay 2007),恒星や準恒星質量の伴星との力学的相互作用 (Lin & Papaloizou 1979,Lin & Papaloizou 1979,Artymowicz & Lubow 1994) である.
これらの他にも,形成中の惑星も円盤に空洞を形成する可能性がある (Lin & Papaloizou 1986,Bryden et al. 1999,Zhu et al. 2011,Rice et al. 2006,Zhu et al. 2012,Pinilla et al. 2012).
しかし近赤外線放射と電波放射は,円盤内側の温かいダストの特性を適切に制約することができない,それに対して中間赤外線での観測は,内側領域からの熱放射を検出することが出来る.またこの波長は,地上からの観測で高空間分解能での観測が可能である.
この天体では,ALMA を用いて非常に非対称なサブミリメートル波長でのダスト連続波放射が検出されている (van der Marel et al. 2013).このような方位角方向に偏ったフラックス分布は,局所的なガス圧極大領域への粒子の捕獲によって説明できる可能性がある.
この天体の初めての分解観測は,Very Large Telescope (VLT) の VISIR を用いて,波長 8.6, 9.0, 11.3, 11.9, 18.7 μm で行われた (Geers et al. 2007a) で.N バンド (7.5 - 13 µm) では,放射は中心星の場所で強いピークを示す,これは多環芳香族炭化水素 (polyciclic aromatic hydrocarbons, PAHs) か,あるいは非常に小さい炭素質粒子 (very small carbonaecous grains, VSGs) のどちらか,あるいはこれら両方が大部分の放射の起源だと考えられる.
一方で,18.7 µm 波長の画像ではリング状の構造が検出されている,リング状構造の半径は 60 AU で,円盤中心に空洞が存在する.この観測結果は,中心星から 60 AU 以内では µm サイズのダストがほとんど欠如していることを示唆している (Maaskant et al. 2013).
その後多数の観測が行われて解析が行われたが,円盤の構造の解釈には差異がある.
Maaskant et al. (2013) は,空洞内の内側構造として,光学的に薄いハロー構造の存在を提案した.一方,Bruderer et al. (2014) と Follette et al. (2015) は光学的に厚い円盤の存在を示唆している.
arXiv:1804.02145
Honda et al. (2018)
Mid-infrared Multi-wavelength Imaging of Ophiuchus IRS 48 Transitional Disk
(へびつかい座 IRS 48 遷移円盤の中間赤外線多波長撮像)
概要
ハービッグ Ae/Be 星 (Herbig Ae/Be star) まわりの遷移円盤 (transitional disk) は,円盤進化と惑星形成という文脈で興味深い研究対象である.Oph IRS 48 (へびつかい座 IRS 48) は ハービッグ Ae 星である.この天体の周囲の円盤は,内側のダスト空洞と,方位角方向に偏ったダストの分布を示す.ここでは,この天体の 8.56 - 24.6 µm の間の 8 個の中間赤外波長での新しい観測画像を提供する.観測は,8.2 m すばる望遠鏡の COMICS を使用した.
N バンド (7 - 13 µm) の画像は,フラックス分布は中心にピークがあり,わずかに空間的な広がりを持つという特徴を示した.一方で Q バンド (17 - 25 µm) での画像は,非対称な二重ピーク構造を西と東方向にそれぞれ持っている.
18.8 µm と 24.6 µm での画像を用い,これらの西と東のピークでのダスト温度を 135 ± 22 K と推定した.従って,円盤の非対称はダスト温度の違いに起因するものではない可能性がある.
今回の結果を過去のモデリングの研究と比較した結果,内側円盤は外側円盤と向きが揃っていると結論付けた.内側の光学的に厚い円盤が作る影は,外側円盤からの中間赤外線での熱放射の構造に大きな影響をもたらす.
ハービッグ Ae/Be 星と遷移円盤
円盤の観測
ハービッグ Ae/Be 星は,おうし座 T 型星 (T Tauri star) の中間質量星版 (2 太陽質量程度以上) に相当するものであり,スペクトル型が A と B のものを指す (Herbig 1960,Waters & Waelkens 1998).このタイプの天体の周りには多様な星周円盤がある.
これらの円盤に対する,空間的に分解されていないスペクトルエネルギー分布 (spectral energy distribution, SED) の測定からは,いくつかの天体は円盤の内側に空洞が形成されていることが分かっている.このような円盤は,前遷移円盤 (pre-transitional disk) や遷移円盤 (transitional disk) と呼ばれる.
最近の高空間分解能観測では,渦状腕やワープ構造,方位角方向に偏った構造など,より複雑な円盤構造が検出されている.
円盤構造の起源
このような原始惑星系円盤中の内側のでのギャップや凹みの理論的な解釈としては,様々なモデルが提案されている.例えば,円盤中での例えばダスト成長 (Tanaka et al. 2005,Dullemond & Dominik 2005,Birnstiel et al. 2012),光蒸発 (Clarke et al. 2001,Alexander et al. 2006),磁気回転不安定 (Chiang & Murray-Clay 2007),恒星や準恒星質量の伴星との力学的相互作用 (Lin & Papaloizou 1979,Lin & Papaloizou 1979,Artymowicz & Lubow 1994) である.
これらの他にも,形成中の惑星も円盤に空洞を形成する可能性がある (Lin & Papaloizou 1986,Bryden et al. 1999,Zhu et al. 2011,Rice et al. 2006,Zhu et al. 2012,Pinilla et al. 2012).
中間赤外線観測の重要性
これまでに,十から二十の (前)遷移円盤が研究されてきた.これらの多くは,補償光学を用いた近赤外線での観測と,高分解能の電波波長での撮像観測である.これらの観測は,円盤の詳細な構造を明らかにするのに大きな貢献を果たした,しかし近赤外線放射と電波放射は,円盤内側の温かいダストの特性を適切に制約することができない,それに対して中間赤外線での観測は,内側領域からの熱放射を検出することが出来る.またこの波長は,地上からの観測で高空間分解能での観測が可能である.
へびつかい座 IRS 48
へびつかい座 IRS 48 (Oph IRS 48,別名 WLY 2-48) は,へびつかい座ロー領域 (ρ Ophi region) にある A0 星である (Wilking et al. 1989).距離は 120 pc.質量は 2.0 - 2.5 太陽質量,推定年齢は 500 - 1500 万歳である (Brown et al. 2012,Follette et al. 2015).この天体では,ALMA を用いて非常に非対称なサブミリメートル波長でのダスト連続波放射が検出されている (van der Marel et al. 2013).このような方位角方向に偏ったフラックス分布は,局所的なガス圧極大領域への粒子の捕獲によって説明できる可能性がある.
この天体の初めての分解観測は,Very Large Telescope (VLT) の VISIR を用いて,波長 8.6, 9.0, 11.3, 11.9, 18.7 μm で行われた (Geers et al. 2007a) で.N バンド (7.5 - 13 µm) では,放射は中心星の場所で強いピークを示す,これは多環芳香族炭化水素 (polyciclic aromatic hydrocarbons, PAHs) か,あるいは非常に小さい炭素質粒子 (very small carbonaecous grains, VSGs) のどちらか,あるいはこれら両方が大部分の放射の起源だと考えられる.
一方で,18.7 µm 波長の画像ではリング状の構造が検出されている,リング状構造の半径は 60 AU で,円盤中心に空洞が存在する.この観測結果は,中心星から 60 AU 以内では µm サイズのダストがほとんど欠如していることを示唆している (Maaskant et al. 2013).
その後多数の観測が行われて解析が行われたが,円盤の構造の解釈には差異がある.
Maaskant et al. (2013) は,空洞内の内側構造として,光学的に薄いハロー構造の存在を提案した.一方,Bruderer et al. (2014) と Follette et al. (2015) は光学的に厚い円盤の存在を示唆している.
PR
論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1804.02183
Georgakarakos et al. (2018)
Giant planets: good neighbors for habitable worlds?
(巨大惑星:ハビタブル惑星の良い隣人か?)
例えば,重い惑星が存在すると惑星コアの形成が促進され,後に地球類似惑星の領域へ向かう小惑星と彗星の流入量に影響を与える可能性がある.さらに巨大惑星は,惑星軌道への重力的な影響により,地球型惑星の気候に間接的に影響を与える可能性もある.
ここでは,巨大惑星を持つことが知られており,物理パラメータがよく特徴付けられている 147 個の系外惑星系についての調査を行った,その結果,もし巨大惑星とハビタブルゾーンの惑星の双方が安定な軌道を持っている場合であっても,"巨大な隣人" (giant neighbors) が存在する場合は,地球型惑星がハビタブルに保たれる可能性が減少することを見出した.
しかし一部の少数の惑星系では,地球型惑星が高い気候慣性 (climate inertia) を持っている場合であれば,ハビタブルゾーンの範囲を僅かに増加.させることが分かった.
arXiv:1804.02183
Georgakarakos et al. (2018)
Giant planets: good neighbors for habitable worlds?
(巨大惑星:ハビタブル惑星の良い隣人か?)
概要
巨大惑星の存在は,様々な方法で居住可能性のある惑星に影響を及ぼす.例えば,重い惑星が存在すると惑星コアの形成が促進され,後に地球類似惑星の領域へ向かう小惑星と彗星の流入量に影響を与える可能性がある.さらに巨大惑星は,惑星軌道への重力的な影響により,地球型惑星の気候に間接的に影響を与える可能性もある.
ここでは,巨大惑星を持つことが知られており,物理パラメータがよく特徴付けられている 147 個の系外惑星系についての調査を行った,その結果,もし巨大惑星とハビタブルゾーンの惑星の双方が安定な軌道を持っている場合であっても,"巨大な隣人" (giant neighbors) が存在する場合は,地球型惑星がハビタブルに保たれる可能性が減少することを見出した.
しかし一部の少数の惑星系では,地球型惑星が高い気候慣性 (climate inertia) を持っている場合であれば,ハビタブルゾーンの範囲を僅かに増加.させることが分かった.
論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1804.01623
Bento et al. (2018)
HATS-39b, HATS-40b, HATS-41b, and HATS-42b: Three Inflated Hot Jupiters and a Super-Jupiter Transiting F Stars
(HATS-39b,HATS-40b,HATS-41b,HATS-42b:F 型星をトランジットする 3 つの膨張ホットジュピターとスーパージュピター)
HATS-39b は質量が 0.63 木星質量で,半径は 1.57 木星半径と大きく膨張しているため,将来の透過光分光観測の良い対象となる.
HATS-41b は非常に重い惑星で,質量は 9.7 木星質量である,これまで発見数がまだ少ない,5 木星質量より重いホットジュピターの一つである.この惑星の中心星は,トランジット惑星を持つ恒星の中では最も高い金属量を持つ ([Fe/H] = 0.470).また惑星はおそらく離心率のある軌道を持っている.惑星質量が大きく,中心星は比較的若い (13.4 億歳) ということから,この惑星の軌道はまだ潮汐力によって円軌道化されきっていないという事を示している可能性がある.
金属量:[Fe/H] = 0.000
等級:V = 12.746
質量:1.379 太陽質量
半径:1.621 太陽半径
光度:4.37 太陽光度
年齢:20.6 億歳
距離:773 pc
質量:0.63 木星質量
半径:1.57 木星半径
平均密度:0.202 g cm-3
軌道長半径:0.06007 AU
平衡温度:1645 K
金属量:[Fe/H] = 0.010
等級:V = 13.377
質量:1.561 太陽質量
半径:2.26 太陽半径
光度:8.0 太陽光度
年齢:20.7 億歳
距離:1431 pc
質量:1.59 木星質量
半径:1.58 木星半径
平均密度:0.49 g cm-3
軌道長半径:0.04997 AU
平衡温度:2101 K
金属量:[Fe/H] = 0.470
等級:V = 12.681
質量:1.496 太陽質量
半径:1.71 太陽半径
光度:4.5 太陽光度
年齢:13.4 億歳
距離:800 pc
軌道離心率:0.38 ± 0.11
質量:9.7 木星質量
半径:1.33 木星半径
平均密度:5.1 g cm-3
軌道長半径:0.0583 AU
平衡温度:1710 K
金属量:[Fe/H] = 0.220
等級:V = 13.617
質量:1.273 太陽質量
半径:1.48 太陽半径
光度:2.66 太陽光度
年齢:32.6 億歳
距離:942 pc
質量:1.88 木星質量
半径:1.40 木星半径
平均密度:0.83 g cm-3
軌道長半径:0.03689 AU
平衡温度:1856 K
低質量の恒星に対しては,恒星の金属量と巨大惑星の存在頻度の関係性が知られていた (Santos et al. 2004,Fischer & Valenti 2005).
一方で Santos et al. (2017) による最近の研究では,実際には,4 木星質量以上と以下の質量を持つ 2 つの異なる惑星の集団が存在することが示唆されている.
大きな質量を持つ惑星の大部分は,質量の大きな恒星の周りで発見される (そして恒星はしばしば主系列段階から進化している).先行研究ではこの点についてさらに詳細に探査し,低質量の惑星に対しては見られている中心星金属量への依存性が,4 木星質量より大きい惑星については見られないと結論付けている.
さらに平均的には,重い巨大惑星は軽い巨大惑星と比べてわずかに低金属量な恒星の周りを公転しており,同様の質量を持つ平均的な散在星の金属量分布と整合的であるとしている.
これらの特徴は,低質量・高質量の 2 つの惑星の集団は,異なる機構で形成されたと解釈できる.すなわち,低質量の惑星はコア降着過程 (Perri & Cameron 1974,Mizuno 1980,Kennedy & Kenyon 2008) で,大質量の惑星は円盤不安定が役割を果たすその他の過程 (Cameron 1978,Boss 1998,Rafikov 2005,Nayakshin 2017) で形成されたというものである.
arXiv:1804.01623
Bento et al. (2018)
HATS-39b, HATS-40b, HATS-41b, and HATS-42b: Three Inflated Hot Jupiters and a Super-Jupiter Transiting F Stars
(HATS-39b,HATS-40b,HATS-41b,HATS-42b:F 型星をトランジットする 3 つの膨張ホットジュピターとスーパージュピター)
概要
HATSouth サーベイでの 4 つのホットジュピターの検出を報告する.発見されたものは,やや明るい (12.5 < V < 13.7),F 型矮星を公転する短周期 (2-5 日) の惑星である.惑星の半径はどれも同程度だが,質量と密度は一桁以上異なる.HATS-39b は質量が 0.63 木星質量で,半径は 1.57 木星半径と大きく膨張しているため,将来の透過光分光観測の良い対象となる.
HATS-41b は非常に重い惑星で,質量は 9.7 木星質量である,これまで発見数がまだ少ない,5 木星質量より重いホットジュピターの一つである.この惑星の中心星は,トランジット惑星を持つ恒星の中では最も高い金属量を持つ ([Fe/H] = 0.470).また惑星はおそらく離心率のある軌道を持っている.惑星質量が大きく,中心星は比較的若い (13.4 億歳) ということから,この惑星の軌道はまだ潮汐力によって円軌道化されきっていないという事を示している可能性がある.
パラメータ
HATS-39 系
HATS-39
有効温度:6572 K金属量:[Fe/H] = 0.000
等級:V = 12.746
質量:1.379 太陽質量
半径:1.621 太陽半径
光度:4.37 太陽光度
年齢:20.6 億歳
距離:773 pc
HATS-39b
軌道周期:4.5776348 日質量:0.63 木星質量
半径:1.57 木星半径
平均密度:0.202 g cm-3
軌道長半径:0.06007 AU
平衡温度:1645 K
HATS-40 系
HATS-40
有効温度:6460 K金属量:[Fe/H] = 0.010
等級:V = 13.377
質量:1.561 太陽質量
半径:2.26 太陽半径
光度:8.0 太陽光度
年齢:20.7 億歳
距離:1431 pc
HATS-40b
軌道周期:3.2642736 日質量:1.59 木星質量
半径:1.58 木星半径
平均密度:0.49 g cm-3
軌道長半径:0.04997 AU
平衡温度:2101 K
HATS-41 系
HATS-41
有効温度:6424 K金属量:[Fe/H] = 0.470
等級:V = 12.681
質量:1.496 太陽質量
半径:1.71 太陽半径
光度:4.5 太陽光度
年齢:13.4 億歳
距離:800 pc
HATS-41b
軌道周期:4.193649 日軌道離心率:0.38 ± 0.11
質量:9.7 木星質量
半径:1.33 木星半径
平均密度:5.1 g cm-3
軌道長半径:0.0583 AU
平衡温度:1710 K
HATS-42 系
HATS-42
有効温度:6060 K金属量:[Fe/H] = 0.220
等級:V = 13.617
質量:1.273 太陽質量
半径:1.48 太陽半径
光度:2.66 太陽光度
年齢:32.6 億歳
距離:942 pc
HATS-42b
軌道周期:2.2921020 日質量:1.88 木星質量
半径:1.40 木星半径
平均密度:0.83 g cm-3
軌道長半径:0.03689 AU
平衡温度:1856 K
議論
今回発見された惑星の中で,特に興味深いのは HATS-41b である.中心星の HATS-41 は,トランジット惑星を持つ恒星としては,これまでで最も高い金属量を持っている.低質量の恒星に対しては,恒星の金属量と巨大惑星の存在頻度の関係性が知られていた (Santos et al. 2004,Fischer & Valenti 2005).
一方で Santos et al. (2017) による最近の研究では,実際には,4 木星質量以上と以下の質量を持つ 2 つの異なる惑星の集団が存在することが示唆されている.
大きな質量を持つ惑星の大部分は,質量の大きな恒星の周りで発見される (そして恒星はしばしば主系列段階から進化している).先行研究ではこの点についてさらに詳細に探査し,低質量の惑星に対しては見られている中心星金属量への依存性が,4 木星質量より大きい惑星については見られないと結論付けている.
さらに平均的には,重い巨大惑星は軽い巨大惑星と比べてわずかに低金属量な恒星の周りを公転しており,同様の質量を持つ平均的な散在星の金属量分布と整合的であるとしている.
これらの特徴は,低質量・高質量の 2 つの惑星の集団は,異なる機構で形成されたと解釈できる.すなわち,低質量の惑星はコア降着過程 (Perri & Cameron 1974,Mizuno 1980,Kennedy & Kenyon 2008) で,大質量の惑星は円盤不安定が役割を果たすその他の過程 (Cameron 1978,Boss 1998,Rafikov 2005,Nayakshin 2017) で形成されたというものである.
論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1804.01869
Almenara et al. (2018)
SOPHIE velocimetry of Kepler transit candidates XVIII. Radial velocity confirmation, absolute masses and radii, and origin of the Kepler-419 multiplanetary system
(ケプラートランジット候補の SOPHIE 速度測定 XVIII.ケプラー419 複数惑星系の視線速度確認,絶対的質量と半径,および起源)
内側にあるのは 3 木星質量の惑星ケプラー419b で,69.8 日周期でトランジットを起こしている.また,軌道離心率は大きい.また 7.5 木星質量のトランジットしない外側の惑星ケプラー419c が,ケプラー419b のトランジット時刻変動 (transit timing variation, TTV) から検出されている.こちらは軌道周期が 675 日で,やや離心率が大きい軌道を持つ.
ここでは, SOPHIE 分光器を用いた 2 年以上に渡る測定から,新しい視線速度測定データを取得した.その結果,両惑星を共に明確に検出した.
得られた視線速度データを,ケプラーの測光データと合わせて解析した.視線速度のデータを含めることで,TTV データ単独で解析した場合に特有の,\(MR^{-3}\) の縮退を解くことが出来る.そのため,恒星・惑星の半径と,質量の絶対値の測定を行うことが可能になる.
恒星と内側惑星ケプラー419b の半径は,それぞれ 12% と 13% の不定性で決定出来た.また,恒星,ケプラー419b,ケプラー419c の質量の不定性は,それぞれ 35%,24%,35% となった.これは,単一の主星の系におけるこの技術を用いた測定としては最も精密な測定である.
トランジットする惑星の質量は,中心星の質量よりも良い精度で決定される.このことは,動力学的に相互作用をする惑星系で視線速度と光度曲線を一緒にモデル化することは,恒星に関する情報に制限されること無く,恒星と惑星の両方の物理量を特徴付け出来る事を示す結果である.
一方で,惑星の軌道周期比と離心率からは,この惑星系がパラメータ推定のためのスイートスポットにあることが分かる.もしおよそ 2 倍のトランジットが観測されていれば,トランジットする惑星の質量は,自身の TTV を用いて測定されていた可能性がある.
また,この系の起源についても議論する.この惑星系は,軌道の整列に関連した,同一平面の高軌道離心率永年固定点付近にいることを示す.これが内側の軌道の円軌道化を阻害している.その他の殆どの相対的な極点の配置をとっていた場合,ケプラー419b の軌道は軌道長半径 0.03 au の円軌道になっていたと考えられる.このことは,複数惑星系での大きな相互軌道傾斜角の必要がないホットジュピターを形成する機構を示唆している.
内側の ケプラー419b は,ケプラーによる測光観測からトランジット法で検出された (Borucki et al. 2011).軌道周期は 69.7 日,半径は 1.0 木星半径と推定されている.この惑星のサイズと軌道周期は,巨大惑星の ‘Period Valley' の中に存在している (Udry et al. 2003,Batygin et al. 2016).
また,ケプラー419b の 1 時間程度のオーダーの強い TTV が検出されている (Ford et al. 2012,Dawson et al. 2012).Dawson et al. (2012) による解析では,この惑星の TTV は,外側に軌道離心率が大きい天体が存在し,この天体によって軌道に擾乱が与えられているとすると説明することが出来る.しかしこの段階では,外側天体の軌道や質量を制約することは出来なかった,これは,トランジットの観測回数が不十分だったからである.
また Dawson et al. (2012) では,photoeccentric effect からトランジット惑星が e = 0.81 程度の大きな離心率を持つことが明らかにされた.中心星はの特性も明らかにされ,高速で自転する F7 星,自転周期は 4.6 日と測定された.
数年後の Mazeh et al. (2015) によるケプラー測光データの解析では,自転周期は 4.53 日と測定された.
Dawson et al. (2014) は,さらなるケプラーデータから TTV の解析を行った (この天体のすべてのトランジットデータを使用).その結果,外側にいる擾乱天体はトランジットを起こしていない天体であり,ケプラー419c は 7.3 ± 0.4 木星質量,軌道離心率は 0.184,軌道周期 675.47 日と測定された.
また 20 セットの視線速度データから,ケプラー419b の質量は 2.5 木星質量と測定された.
この系の注目すべき点は,ほぼ同一平面 2 つの惑星が存在し,内側の惑星が非常に大きな離心率を持っているという特徴である.高軌道離心率の惑星を説明するためには,通常は大きな軌道傾斜角を持った天体が想定される.そのためこの系は,既存の理論に対して疑問を投げかける存在である.
arXiv:1804.01869
Almenara et al. (2018)
SOPHIE velocimetry of Kepler transit candidates XVIII. Radial velocity confirmation, absolute masses and radii, and origin of the Kepler-419 multiplanetary system
(ケプラートランジット候補の SOPHIE 速度測定 XVIII.ケプラー419 複数惑星系の視線速度確認,絶対的質量と半径,および起源)
概要
ケプラー419 はケプラーによる測光観測で発見された惑星系であり,2 つの重い巨大惑星を持つ.内側にあるのは 3 木星質量の惑星ケプラー419b で,69.8 日周期でトランジットを起こしている.また,軌道離心率は大きい.また 7.5 木星質量のトランジットしない外側の惑星ケプラー419c が,ケプラー419b のトランジット時刻変動 (transit timing variation, TTV) から検出されている.こちらは軌道周期が 675 日で,やや離心率が大きい軌道を持つ.
ここでは, SOPHIE 分光器を用いた 2 年以上に渡る測定から,新しい視線速度測定データを取得した.その結果,両惑星を共に明確に検出した.
得られた視線速度データを,ケプラーの測光データと合わせて解析した.視線速度のデータを含めることで,TTV データ単独で解析した場合に特有の,\(MR^{-3}\) の縮退を解くことが出来る.そのため,恒星・惑星の半径と,質量の絶対値の測定を行うことが可能になる.
恒星と内側惑星ケプラー419b の半径は,それぞれ 12% と 13% の不定性で決定出来た.また,恒星,ケプラー419b,ケプラー419c の質量の不定性は,それぞれ 35%,24%,35% となった.これは,単一の主星の系におけるこの技術を用いた測定としては最も精密な測定である.
トランジットする惑星の質量は,中心星の質量よりも良い精度で決定される.このことは,動力学的に相互作用をする惑星系で視線速度と光度曲線を一緒にモデル化することは,恒星に関する情報に制限されること無く,恒星と惑星の両方の物理量を特徴付け出来る事を示す結果である.
一方で,惑星の軌道周期比と離心率からは,この惑星系がパラメータ推定のためのスイートスポットにあることが分かる.もしおよそ 2 倍のトランジットが観測されていれば,トランジットする惑星の質量は,自身の TTV を用いて測定されていた可能性がある.
また,この系の起源についても議論する.この惑星系は,軌道の整列に関連した,同一平面の高軌道離心率永年固定点付近にいることを示す.これが内側の軌道の円軌道化を阻害している.その他の殆どの相対的な極点の配置をとっていた場合,ケプラー419b の軌道は軌道長半径 0.03 au の円軌道になっていたと考えられる.このことは,複数惑星系での大きな相互軌道傾斜角の必要がないホットジュピターを形成する機構を示唆している.
背景
ケプラー419 (KOI-1474) 系は,2 つの惑星を持つ惑星系である.内側の ケプラー419b は,ケプラーによる測光観測からトランジット法で検出された (Borucki et al. 2011).軌道周期は 69.7 日,半径は 1.0 木星半径と推定されている.この惑星のサイズと軌道周期は,巨大惑星の ‘Period Valley' の中に存在している (Udry et al. 2003,Batygin et al. 2016).
また,ケプラー419b の 1 時間程度のオーダーの強い TTV が検出されている (Ford et al. 2012,Dawson et al. 2012).Dawson et al. (2012) による解析では,この惑星の TTV は,外側に軌道離心率が大きい天体が存在し,この天体によって軌道に擾乱が与えられているとすると説明することが出来る.しかしこの段階では,外側天体の軌道や質量を制約することは出来なかった,これは,トランジットの観測回数が不十分だったからである.
また Dawson et al. (2012) では,photoeccentric effect からトランジット惑星が e = 0.81 程度の大きな離心率を持つことが明らかにされた.中心星はの特性も明らかにされ,高速で自転する F7 星,自転周期は 4.6 日と測定された.
数年後の Mazeh et al. (2015) によるケプラー測光データの解析では,自転周期は 4.53 日と測定された.
Dawson et al. (2014) は,さらなるケプラーデータから TTV の解析を行った (この天体のすべてのトランジットデータを使用).その結果,外側にいる擾乱天体はトランジットを起こしていない天体であり,ケプラー419c は 7.3 ± 0.4 木星質量,軌道離心率は 0.184,軌道周期 675.47 日と測定された.
また 20 セットの視線速度データから,ケプラー419b の質量は 2.5 木星質量と測定された.
この系の注目すべき点は,ほぼ同一平面 2 つの惑星が存在し,内側の惑星が非常に大きな離心率を持っているという特徴である.高軌道離心率の惑星を説明するためには,通常は大きな軌道傾斜角を持った天体が想定される.そのためこの系は,既存の理論に対して疑問を投げかける存在である.
論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1804.01913
Clark et al. (2018)
Thermal emission of WASP-48b in the Ks-band
(Ks バンドでの WASP-48b の熱放射)
光度曲線から,Ks バンドでの惑星-主星コントラスト比を 0.136 ± 0.014% と測定した.これは過去に測定されていた値である 0.109 ± 0.027% と一致するものである.
このデータを,H バンドのデータ,スピッツァー宇宙望遠鏡の 3.6, 4.5 µm バンドパスでのデータ,視線速度データ,トランジット光度曲線と合わせてフィッティングを行った.それを元に,この惑星系のパラメータを更新し,WASP-48b の昼側大気のスペクトルエネルギー分布 (spectral energy distribution, SED) を構築した.
得られた SED を惑星大気モデルと比較した結果,大気中に温度逆転が存在するものと,温度逆転が存在しないものの両方ともに観測データとは整合的な結果を示すことが分かった.
また,惑星の軌道は円軌道と整合的である (3σ で離心率 e < 0.072).
温度逆転 (themal inversion) は,惑星の高層大気において,低圧 (上空) の方に向かって温度が上昇することを指す.この温度逆転は,いくつかのホットジュピターに存在すると主張されている (Machalek et al. 2008など).
温度逆転を持つとされる惑星の原型は HD 209458b (Knutson et al. 2008) である.しかしその後の同じ惑星の観測では,温度逆転の存在には疑問が投げかけられている (Diamond-Lowe et al. 2014,Schwarz et al. 2015,Line et al. 2016).
O’Rourke et al. (2014) は,H, Ks バンドとスピッツァー宇宙望遠鏡の 3.6, 4.5 µm での WASP-48b からの熱放射を検出した.また観測からこの惑星の昼面の SED を調べ,大気中に強い温度逆転は存在しないと結論づけた.
ここでは,3.6 m 口径の Canada-France Hawaii Telescope の Wide-field Infra-red Camera を用いて 2012 年 8 月 6 日に取得したデータを解析した.
arXiv:1804.01913
Clark et al. (2018)
Thermal emission of WASP-48b in the Ks-band
(Ks バンドでの WASP-48b の熱放射)
概要
ホットジュピター WASP-48b の,Ks バンドでの熱放射の検出について報告する.3.6 m 口径の Canada-France Hawaii Telescope の Wide-field Infra-red Camera を使用して,中心星による惑星の掩蔽 (二次食) の観測を行った.光度曲線から,Ks バンドでの惑星-主星コントラスト比を 0.136 ± 0.014% と測定した.これは過去に測定されていた値である 0.109 ± 0.027% と一致するものである.
このデータを,H バンドのデータ,スピッツァー宇宙望遠鏡の 3.6, 4.5 µm バンドパスでのデータ,視線速度データ,トランジット光度曲線と合わせてフィッティングを行った.それを元に,この惑星系のパラメータを更新し,WASP-48b の昼側大気のスペクトルエネルギー分布 (spectral energy distribution, SED) を構築した.
得られた SED を惑星大気モデルと比較した結果,大気中に温度逆転が存在するものと,温度逆転が存在しないものの両方ともに観測データとは整合的な結果を示すことが分かった.
また,惑星の軌道は円軌道と整合的である (3σ で離心率 e < 0.072).
ホットジュピターの温度逆転層
温度逆転層の検出と疑義
惑星の昼側大気の SED から,惑星大気の組成や温度構造を知ることが出来る.温度逆転 (themal inversion) は,惑星の高層大気において,低圧 (上空) の方に向かって温度が上昇することを指す.この温度逆転は,いくつかのホットジュピターに存在すると主張されている (Machalek et al. 2008など).
温度逆転を持つとされる惑星の原型は HD 209458b (Knutson et al. 2008) である.しかしその後の同じ惑星の観測では,温度逆転の存在には疑問が投げかけられている (Diamond-Lowe et al. 2014,Schwarz et al. 2015,Line et al. 2016).
WASP-48b 大気の温度逆転層
WASP-48b はホットジュピターであり,0.98 木星質量,1.67 木星半径で,軌道周期が 2.1 日である.中心星 WASP-48 は F 型星で,1.19 太陽質量,1.75 太陽半径である (Enoch et al. 2011).O’Rourke et al. (2014) は,H, Ks バンドとスピッツァー宇宙望遠鏡の 3.6, 4.5 µm での WASP-48b からの熱放射を検出した.また観測からこの惑星の昼面の SED を調べ,大気中に強い温度逆転は存在しないと結論づけた.
ここでは,3.6 m 口径の Canada-France Hawaii Telescope の Wide-field Infra-red Camera を用いて 2012 年 8 月 6 日に取得したデータを解析した.
天文・宇宙物理関連メモ vol.258 Line et al. (2016) HD 209458b での温度逆転層の否定