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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1801.09569
Brogi et al. (2018)
Exoplanet atmospheres with GIANO. I. Water in the transmission spectrum of HD 189733b
(GIANO での系外惑星大気 I.HD 189733b の透過スペクトル中の水)
ここでは,新しいデザインの分光器,特に観測できるスペクトル範囲が大きいものによって,小さい部類の望遠鏡設備での系外惑星の特徴付けを可能にすることを示す.
Telescopio Nazionale Galileo の近赤外線分光器 GIANO を用いて HD 189733b のトランジットを 2 回観測した.
地球大気での吸収 (telluric absorption) とは対照的に,系外惑星の透過スペクトルは,惑星の軌道運動の変化によってトランジットの最中に変化する.この変化を用いて,スペクトル中に系外惑星のシグナルを保ちつつ,地球大気によるスペクトルの影響の除去を行った.後者のスペクトルは,line-by-line 輻射輸送計算を介して計算された惑星大気のテンプレートモデルと,残差スペクトルの相互相関を用いて抽出した.
その結果,5.5 σ の水準で HD 189733b の大気中の水蒸気の存在を検出した.
検出に用いたシグナルは,2 夜の観測のうち最初の 1 夜のものだけから測定を行った.人工信号を注入して復元することにより,2 夜目における非検出は取得したデータの品質が悪いことが原因である可能性が示唆された.
測定された惑星の透過スペクトルの強度は,Very Large Telescope (VLT) の CRIRES を用いて取得したものと,分子吸収線に見られた強い変動を除いて完全に一致した.
arXiv:1801.09569
Brogi et al. (2018)
Exoplanet atmospheres with GIANO. I. Water in the transmission spectrum of HD 189733b
(GIANO での系外惑星大気 I.HD 189733b の透過スペクトル中の水)
概要
近赤外線波長での高分散分光観測 (R > 20000) は,系外惑星大気の組成や構造,循環パターンを理解するために使われてきた.しかし,高分散スペクトル中のシグナルを測定するために必要とされる光子数が多いため,観測は主に最も大きな部類の地上望遠鏡に占められてきた.ここでは,新しいデザインの分光器,特に観測できるスペクトル範囲が大きいものによって,小さい部類の望遠鏡設備での系外惑星の特徴付けを可能にすることを示す.
Telescopio Nazionale Galileo の近赤外線分光器 GIANO を用いて HD 189733b のトランジットを 2 回観測した.
地球大気での吸収 (telluric absorption) とは対照的に,系外惑星の透過スペクトルは,惑星の軌道運動の変化によってトランジットの最中に変化する.この変化を用いて,スペクトル中に系外惑星のシグナルを保ちつつ,地球大気によるスペクトルの影響の除去を行った.後者のスペクトルは,line-by-line 輻射輸送計算を介して計算された惑星大気のテンプレートモデルと,残差スペクトルの相互相関を用いて抽出した.
その結果,5.5 σ の水準で HD 189733b の大気中の水蒸気の存在を検出した.
検出に用いたシグナルは,2 夜の観測のうち最初の 1 夜のものだけから測定を行った.人工信号を注入して復元することにより,2 夜目における非検出は取得したデータの品質が悪いことが原因である可能性が示唆された.
測定された惑星の透過スペクトルの強度は,Very Large Telescope (VLT) の CRIRES を用いて取得したものと,分子吸収線に見られた強い変動を除いて完全に一致した.
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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1801.08142
Leconte (2018)
Why compositional convection cannot explain substellar objects sharp spectral type transitions
(なぜ組成対流が準恒星天体の鋭いスペクトル型遷移を説明できないか)
Tremblin et al. では,これらの遷移に伴うまだ説明されていない特徴の幾つかは,天体の光球付近での温度勾配の減少によって説明できるという説を提案している.この説では,温度勾配が小さく等温的な温度分布を説明するために,組成対流の一種であるフィンガー型対流 (fngering convection) に似た流体不安定が起きていることを要請する.このような流体不安定は,先述の化学的遷移によるガスの平均分子量の変化によって引き起こされる.
ここでは,もし大気中に乱流輸送が存在する場合,実際にはその領域の温度勾配が”増加"することを既存の議論を用いて示す.
「組成対流によって温度勾配が減少する」という誤った解釈は,対流は温度ではなく,エントロピー (温位 potential temperature) を混合・均質化するという事実に由来する.従って輸送が増加すると,初期に成層した大気中での乱流は,フィンガー型対流やその他のタイプの組成対流であっても,実際にはエネルギーを内側に輸送する.
そのためこれらの過程は,準恒星天体の大気中の温度勾配の減少による遷移に伴って観測されるスペクトルの特徴を説明することが出来ない.スペクトルの特徴を説明するための最良の方法は,これらの遷移での雲の微視的な物理と力学的特性のさらなる理解であろう.
全体の浮力勾配が負の場合,これは通常の全対流 (overturning convection) の形で現れる (Ledoux 1947).そうでない場合は,他の過程,例えば化学過程や拡散などによっても微妙な不安定が生じ,混合が促進される可能性がある.
地球におけるよく知られている例はフィンガリング不安定 (fingering instability) である.
例えば,海洋表面からの蒸発によって,より冷たく新鮮な水の層の上に,暖かく塩分の多い水が乗っている状態の場合,ソルトフィンガー (salt finger) が形成される (Stern 1960,Schmitt 2001).
これらの下向きに動く finger は,塩分が拡散するよりも速く拡散で熱を失い,沈降を続ける.
例えば炭素の化学反応を考えると,深い場所あるいは高温な場所は一酸化炭素が主体,高い場所あるいは低温の場所はメタンが主体となる.この時の反応は CO + 3H2 ↔ CH4 + H2O である.
一酸化炭素が主体の高温大気からメタンが主体の低温な大気への漸進的な遷移は,スペクトル型の L-T 遷移としてよく知られている (Kirkpatric 2015,Cushing 2014).
この遷移の難しい点は,この遷移の鋭さと,様々なクラスの天体において遷移が発生する色-等級図上での場所が変化することである (例えば,高重力褐色矮星と低重力の直接撮像惑星での遷移の発生場所の違い (Marley et al. 2012)).
準恒星天体の大気中での様々な種類の雲の存在は,これらの様々な特徴を説明するための最もシンプルな仮説のひとつであり続けているが,これらの雲モデルには依然としていくつかの自由パラメータが含まれている (Charnay et al. 2017).
この雲モデルにおける自由パラメータを減らすため,Tremblin et al. (2016) は雲無しモデルを提案している,
例えば L-T 遷移周辺の単一の大気での化学平衡は,低温の高層大気はメタン豊富で,下部にある一酸化炭素豊富な大気と比べて高い平均分子量を持つという状態を必然的に伴うことを指摘している.その結果,フィンガリングに類似しているが化学過程に結びついている組成対流がいくつかの褐色矮星で発生することを議論している.
また同様の過程が若いガス惑星でも発生しうることを指摘している (Tremblin et al. 2017).
理想気体の場合,温位 \(\theta\) を用いるほうが直感的である.
\[\theta\equiv T\left(\frac{p_{0}}{p}\right)^{R/c_{p}}\]
ここで,\(p\) と \(p_{0}\) は,現在の場所での圧力と,参照のための任意の水準での圧力である.また \(R\) は比気体定数である.
温位は \(ds=c_{p} d\ln\theta\) を介して繋がっているので,\(\theta\) は断熱運動によって輸送された物理量でもある.温位の勾配は温度勾配と関連している.
\[\nabla_{\theta}\equiv\frac{d\ln\theta}{d\ln p}=\frac{d\ln T}{d\ln p}-\frac{R}{c_{p}}\equiv\nabla_{T}-\nabla_{\rm ad}\]
ここで \(\nabla_{\rm ad}\) は通常の断熱温度勾配である.そのため,温位勾配は超断熱勾配である.
定義により,いかなる乱流混合もエントロピーを均一化する傾向にあり,従って温位も \(\nabla_{\theta}\rightarrow 0\) になるまで均一化される.その結果として,混合の後の大気は断熱分布に従う傾向にある.つまり \(\nabla_{T}=\nabla_{\rm ad}\) である.これはまさに対流がどのようにはたらくかを意味しており,対流はエントロピーと温位を均一化し,超断熱性を取り除く.
熱的に安定な成層大気では,温位勾配は負になる.つまり \(\nabla_{T}<\nabla_{\rm ad}\) である.しかし,どのような混合も断熱構造を復元する傾向にある.もちろん,混合の結果として生じる分布が断熱構造にどの程度従うかは,先験的には決定することはできず,混合の強度に依存する.
従って,温度勾配は混合によって等温構造に向かって減少するのではなく,断熱構造に向かって増加することが分かる.結果として,組成対流は Tremblin et al. (2015, 2016, 2017) で提案されているような減少した温度勾配を説明することが出来ず.真逆の結果になる.
フィンガリングによる混合が無い場合.対流圏では温度勾配は断熱温度勾配に従う.成層圏での温度勾配は,定義により熱的に安定な成層構造に従う.つまり成層圏では準断熱的な温度勾配になる.
しかし一酸化炭素とメタンの遷移が発生する付近では,大気の平均分子量は対流圏界面より上で増加することが期待される.組成勾配が成層圏で組成対流を引き起こすのに十分な大きさであった場合,対流による混合は組成とエントロピーを均一化し,従って温位も均一化される.これは温度勾配を自然に断熱温度勾配に戻そうとする.そのため,温度分布は等温的ではなくなる.どれだけ断熱温度勾配に近くなるかは,混合の強度に依存する.
そのため,仮に化学組成勾配が褐色矮星や巨大惑星の大気の対流圏より上層を不安定化するとすると,これは Tremblin et al. (2015, 2016, 2017) で主張されているような,より等温的な温度勾配には結びつかない.それどころか,対流による混合は温度勾配を増加させ,同じ有効温度であれば内部の温度はより高温になる.
arXiv:1801.08142
Leconte (2018)
Why compositional convection cannot explain substellar objects sharp spectral type transitions
(なぜ組成対流が準恒星天体の鋭いスペクトル型遷移を説明できないか)
概要
褐色矮星と若い巨大惑星が冷却するにつれ,これらの天体は複数の化学的な遷移を経験する.例えば,一酸化炭素が豊富な L 型矮星から,メタンが豊富な T 型矮星への遷移である.これらの化学的転移はスペクトルの遷移を伴うが,スペクトルの遷移の鋭さは化学組成の変化のみでは説明できないことが分かっている.Tremblin et al. では,これらの遷移に伴うまだ説明されていない特徴の幾つかは,天体の光球付近での温度勾配の減少によって説明できるという説を提案している.この説では,温度勾配が小さく等温的な温度分布を説明するために,組成対流の一種であるフィンガー型対流 (fngering convection) に似た流体不安定が起きていることを要請する.このような流体不安定は,先述の化学的遷移によるガスの平均分子量の変化によって引き起こされる.
ここでは,もし大気中に乱流輸送が存在する場合,実際にはその領域の温度勾配が”増加"することを既存の議論を用いて示す.
「組成対流によって温度勾配が減少する」という誤った解釈は,対流は温度ではなく,エントロピー (温位 potential temperature) を混合・均質化するという事実に由来する.従って輸送が増加すると,初期に成層した大気中での乱流は,フィンガー型対流やその他のタイプの組成対流であっても,実際にはエネルギーを内側に輸送する.
そのためこれらの過程は,準恒星天体の大気中の温度勾配の減少による遷移に伴って観測されるスペクトルの特徴を説明することが出来ない.スペクトルの特徴を説明するための最良の方法は,これらの遷移での雲の微視的な物理と力学的特性のさらなる理解であろう.
組成勾配と組成対流
流体の密度が少なくとも 2 つの要素に依存している時,例えば温度と組成に依存している場合,組成勾配は熱的に安定な成層した物質中においても乱流混合を引き起こすことがある.これは,組成対流 (compositional convection) あるいは混合と呼ばれる現象である.全体の浮力勾配が負の場合,これは通常の全対流 (overturning convection) の形で現れる (Ledoux 1947).そうでない場合は,他の過程,例えば化学過程や拡散などによっても微妙な不安定が生じ,混合が促進される可能性がある.
地球におけるよく知られている例はフィンガリング不安定 (fingering instability) である.
例えば,海洋表面からの蒸発によって,より冷たく新鮮な水の層の上に,暖かく塩分の多い水が乗っている状態の場合,ソルトフィンガー (salt finger) が形成される (Stern 1960,Schmitt 2001).
これらの下向きに動く finger は,塩分が拡散するよりも速く拡散で熱を失い,沈降を続ける.
準恒星天体のスペクトル遷移
準恒星天体の大気では,混合が非常に効率的で無い限り,必然的に大気の様々な部分が非常に異なる化学組成を持った状態になる (Zahnle & Marley 2014).例えば炭素の化学反応を考えると,深い場所あるいは高温な場所は一酸化炭素が主体,高い場所あるいは低温の場所はメタンが主体となる.この時の反応は CO + 3H2 ↔ CH4 + H2O である.
一酸化炭素が主体の高温大気からメタンが主体の低温な大気への漸進的な遷移は,スペクトル型の L-T 遷移としてよく知られている (Kirkpatric 2015,Cushing 2014).
この遷移の難しい点は,この遷移の鋭さと,様々なクラスの天体において遷移が発生する色-等級図上での場所が変化することである (例えば,高重力褐色矮星と低重力の直接撮像惑星での遷移の発生場所の違い (Marley et al. 2012)).
準恒星天体の大気中での様々な種類の雲の存在は,これらの様々な特徴を説明するための最もシンプルな仮説のひとつであり続けているが,これらの雲モデルには依然としていくつかの自由パラメータが含まれている (Charnay et al. 2017).
この雲モデルにおける自由パラメータを減らすため,Tremblin et al. (2016) は雲無しモデルを提案している,
例えば L-T 遷移周辺の単一の大気での化学平衡は,低温の高層大気はメタン豊富で,下部にある一酸化炭素豊富な大気と比べて高い平均分子量を持つという状態を必然的に伴うことを指摘している.その結果,フィンガリングに類似しているが化学過程に結びついている組成対流がいくつかの褐色矮星で発生することを議論している.
また同様の過程が若いガス惑星でも発生しうることを指摘している (Tremblin et al. 2017).
シンプルな混合の議論
圧縮性ガスでは,大気中を断熱的に動く流体素片は内部エネルギー (温度) を輸送しないが,specific entropy 比エントロピー \(s\) を輸送する.理想気体の場合,温位 \(\theta\) を用いるほうが直感的である.
\[\theta\equiv T\left(\frac{p_{0}}{p}\right)^{R/c_{p}}\]
ここで,\(p\) と \(p_{0}\) は,現在の場所での圧力と,参照のための任意の水準での圧力である.また \(R\) は比気体定数である.
温位は \(ds=c_{p} d\ln\theta\) を介して繋がっているので,\(\theta\) は断熱運動によって輸送された物理量でもある.温位の勾配は温度勾配と関連している.
\[\nabla_{\theta}\equiv\frac{d\ln\theta}{d\ln p}=\frac{d\ln T}{d\ln p}-\frac{R}{c_{p}}\equiv\nabla_{T}-\nabla_{\rm ad}\]
ここで \(\nabla_{\rm ad}\) は通常の断熱温度勾配である.そのため,温位勾配は超断熱勾配である.
定義により,いかなる乱流混合もエントロピーを均一化する傾向にあり,従って温位も \(\nabla_{\theta}\rightarrow 0\) になるまで均一化される.その結果として,混合の後の大気は断熱分布に従う傾向にある.つまり \(\nabla_{T}=\nabla_{\rm ad}\) である.これはまさに対流がどのようにはたらくかを意味しており,対流はエントロピーと温位を均一化し,超断熱性を取り除く.
熱的に安定な成層大気では,温位勾配は負になる.つまり \(\nabla_{T}<\nabla_{\rm ad}\) である.しかし,どのような混合も断熱構造を復元する傾向にある.もちろん,混合の結果として生じる分布が断熱構造にどの程度従うかは,先験的には決定することはできず,混合の強度に依存する.
従って,温度勾配は混合によって等温構造に向かって減少するのではなく,断熱構造に向かって増加することが分かる.結果として,組成対流は Tremblin et al. (2015, 2016, 2017) で提案されているような減少した温度勾配を説明することが出来ず.真逆の結果になる.
フィンガリングによる混合が無い場合.対流圏では温度勾配は断熱温度勾配に従う.成層圏での温度勾配は,定義により熱的に安定な成層構造に従う.つまり成層圏では準断熱的な温度勾配になる.
しかし一酸化炭素とメタンの遷移が発生する付近では,大気の平均分子量は対流圏界面より上で増加することが期待される.組成勾配が成層圏で組成対流を引き起こすのに十分な大きさであった場合,対流による混合は組成とエントロピーを均一化し,従って温位も均一化される.これは温度勾配を自然に断熱温度勾配に戻そうとする.そのため,温度分布は等温的ではなくなる.どれだけ断熱温度勾配に近くなるかは,混合の強度に依存する.
結論
安定な成層大気が組成対流に晒された場合,あるいはいかなる種類の乱流混合を経験した場合,エネルギーは下向きに輸送され,温度勾配は断熱温度勾配に向かって増加することを示した.そのため,仮に化学組成勾配が褐色矮星や巨大惑星の大気の対流圏より上層を不安定化するとすると,これは Tremblin et al. (2015, 2016, 2017) で主張されているような,より等温的な温度勾配には結びつかない.それどころか,対流による混合は温度勾配を増加させ,同じ有効温度であれば内部の温度はより高温になる.
論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1801.07753
O’Gorman et al. (2018)
A search for radio emission from exoplanets around evolved stars
(進化した恒星まわりの系外惑星からの電波放射の探査)
それと比べると,進化した恒星からの大きな質量放出は,大きな軌道長半径を持つ系外惑星から検出可能な電波を放射させることが出来ると考えられる.
ここでは,太陽に比べて大きな電離した質量放出を持つ進化した恒星の場合,惑星表面の磁場強度が > 50 G の場合は,Low Frequency Array (LOFAR) の 150 MHz (波長 2 m) で惑星からの電波放射が検出できることを初めて指摘する.
また,進化した恒星 β Gem (ふたご座ベータ星,ポルックス),ι Dra (りゅう座イオタ星),β UMi (こぐま座ベータ星) を公転する,3 つの長周期惑星 (> 1 au) の電波観測を,150 MHz の波長で LOFAR を用いて行った.
その結果,どの系からも電波放射は検出されなかった.しかしそれぞれの観測から,惑星からの電波放射に対して 3 σ の上限として 0.98,0.87,0.57 mJy という値を与えた.
今回の結果は非検出であったが,これらの厳しい上限値は,系外惑星のメートル波長での電波放射を探る道具としての LOFAR の能力を強調するものである.
距離:10.4 pc
半径:8.8 太陽半径
質量:1.9 太陽質量
惑星の最小質量:2.9 木星質量
軌道長半径:1.7 au
期待される電波放射:14.6 mJy
観測の結果,電波放射の検出は無し.3 σ での上限値は 0.98 mJy.
距離:31.0 pc
半径:12.9 太陽半径
質量:1.8 太陽質量
惑星の最小質量:12.6 木星質量
軌道長半径:1.3 au
期待される電波放射 1.7 mJy
観測の結果,電波放射の検出は無し.3 σ での上限値は 0.87 mJy.
距離:40.1 pc
半径:42.1 太陽半径
質量:1.4 太陽質量
惑星の最小質量:6.1 木星質量
軌道長半径:1.4 au
期待される電波放射:0.1 mJy
観測の結果,電波放射の検出は無し.3 σ での上限値は 0.57 mJy.
Winglee et al. (1986) は,準恒星質量の伴星 (褐色矮星や惑星) の存在が疑われる,M 型の近傍の主系列星 6 個を,VLA の 1400 MHz と 333 MHz の波長で観測した.その結果,3 σ で 0.3 mJy (1400 MHz) と 30 mJy (333 MHz) の上限を与えた.
Bastian et al. (2000) は,同じく VLA を用いて系外惑星を持つことが分かっている 7 個の主系列星を観測した.観測波長は 1465 MHz と 333 MHz で,また 1 個の系は 74 MHz での観測も行われた.
この観測での典型的な 3 σ の上限値は,1465 MHz で 0.06 - 0.2 mJy,333 MHz で 3 - 30 mJy,74 MHz で 150 mJy であった.
Lazio & Farrell (2007) は,ホットジュピターを持つ F7V 型の主系列星 τ Boo (うしかい座タウ星) を VLA の 74 MHz 波長で観測した.その結果,3 σ の上限値として ~ 300 mJy という値を与えた.
George & Stevenson (2007) では,2 つの若い主系列星に対して,系外惑星からの放射に 3 σ で ~ 14 mJy 上限を与えた.一方で Hallinan et al. (2013) は 40 時間の τ Boo の観測から,わずか ~ 1.2 mJy という 3 σ の上限値を与えている.
Sirothia et al. (2014) は 175 個の系外惑星系の電波サーベイ観測を行った.ここでは,放射は中間値が ~ 25 mJy の 3 σ の上限値を与えている.Sirothia et al. (2014) では 4 個の電波源が,惑星と非常に近い位置に検出されている.しかし背景の電波源である可能性は排除できておらず,惑星からの放射かは不明である.
Lecavelier des Etangs et al. (2011, 2013) も,GMRT を用いて,主系列星を公転する 2 個のホットジュピターと 1 個のホットネプチューンを観測している.その結果,弱い (3 σ で ~ 3 - 4 mJy) 放射を,2 つの惑星の近くに検出している.しかしこの放射は,画像中のノイズピークと整合的に見え,確実な検出ではない.
Murphy et al. (2015) は,17 個の系外惑星系をターゲットにし,3 σ で 15.2 - 112.5 mJy という上限値を与えている.
Lynch et al. (2017) は同じく MWA を用いて,若い星形成領域にある数百万歳程度の恒星を公転する系外惑星をターゲットにした観測を行った.その結果,3 σ の流速密度上限は,大きく偏光した放射に対して 4 mJy にまで制限されている.
arXiv:1801.07753
O’Gorman et al. (2018)
A search for radio emission from exoplanets around evolved stars
(進化した恒星まわりの系外惑星からの電波放射の探査)
概要
これまでの系外惑星からの電波放射の研究の大部分は,短周期惑星,つまりいわゆるホットジュピターと呼ばれるタイプの惑星に注目したものであった.しかし,これらの惑星は自転が潮汐的に固定されており,観測で用いられているような低い周波数 (典型的には 150 MHz 以上) での電子サイクロトロンメーザー放射を起こすような十分に強い磁場は生成できないと考えられる.それと比べると,進化した恒星からの大きな質量放出は,大きな軌道長半径を持つ系外惑星から検出可能な電波を放射させることが出来ると考えられる.
ここでは,太陽に比べて大きな電離した質量放出を持つ進化した恒星の場合,惑星表面の磁場強度が > 50 G の場合は,Low Frequency Array (LOFAR) の 150 MHz (波長 2 m) で惑星からの電波放射が検出できることを初めて指摘する.
また,進化した恒星 β Gem (ふたご座ベータ星,ポルックス),ι Dra (りゅう座イオタ星),β UMi (こぐま座ベータ星) を公転する,3 つの長周期惑星 (> 1 au) の電波観測を,150 MHz の波長で LOFAR を用いて行った.
その結果,どの系からも電波放射は検出されなかった.しかしそれぞれの観測から,惑星からの電波放射に対して 3 σ の上限として 0.98,0.87,0.57 mJy という値を与えた.
今回の結果は非検出であったが,これらの厳しい上限値は,系外惑星のメートル波長での電波放射を探る道具としての LOFAR の能力を強調するものである.
進化した恒星まわりの惑星からの電波観測
観測に関しては,系外惑星を持つ事が分かっている巨星を探査した.これらの恒星はセンチメートル波での熱放射は弱く,また非熱的な放射は存在しない事が報告されている (O’Gorman et al. 2017).そのため 150 MHz の波長での恒星の放射は完全に無視できる (1 µJy 未満) と期待される.観測した対象
β Gem 系
スペクトル型:K0III距離:10.4 pc
半径:8.8 太陽半径
質量:1.9 太陽質量
惑星の最小質量:2.9 木星質量
軌道長半径:1.7 au
期待される電波放射:14.6 mJy
観測の結果,電波放射の検出は無し.3 σ での上限値は 0.98 mJy.
ι Dra 系
スペクトル型:K2III距離:31.0 pc
半径:12.9 太陽半径
質量:1.8 太陽質量
惑星の最小質量:12.6 木星質量
軌道長半径:1.3 au
期待される電波放射 1.7 mJy
観測の結果,電波放射の検出は無し.3 σ での上限値は 0.87 mJy.
β UMi 系
スペクトル型:K4III距離:40.1 pc
半径:42.1 太陽半径
質量:1.4 太陽質量
惑星の最小質量:6.1 木星質量
軌道長半径:1.4 au
期待される電波放射:0.1 mJy
観測の結果,電波放射の検出は無し.3 σ での上限値は 0.57 mJy.
過去の系外惑星の電波観測
過去の観測では,数多くの観測にも関わらず系外惑星からの電波の確定した検出報告は存在しない.VLA を用いた観測
系外惑星からの電波放射の初めての感度のある探査は,Very Large Array (VLA) を用いて行われた.Winglee et al. (1986) は,準恒星質量の伴星 (褐色矮星や惑星) の存在が疑われる,M 型の近傍の主系列星 6 個を,VLA の 1400 MHz と 333 MHz の波長で観測した.その結果,3 σ で 0.3 mJy (1400 MHz) と 30 mJy (333 MHz) の上限を与えた.
Bastian et al. (2000) は,同じく VLA を用いて系外惑星を持つことが分かっている 7 個の主系列星を観測した.観測波長は 1465 MHz と 333 MHz で,また 1 個の系は 74 MHz での観測も行われた.
この観測での典型的な 3 σ の上限値は,1465 MHz で 0.06 - 0.2 mJy,333 MHz で 3 - 30 mJy,74 MHz で 150 mJy であった.
Lazio & Farrell (2007) は,ホットジュピターを持つ F7V 型の主系列星 τ Boo (うしかい座タウ星) を VLA の 74 MHz 波長で観測した.その結果,3 σ の上限値として ~ 300 mJy という値を与えた.
GMRT を用いた観測
Giant Metrewave Radio Telescope (GMRT) を用いた 150 MHz での観測も行われている.George & Stevenson (2007) では,2 つの若い主系列星に対して,系外惑星からの放射に 3 σ で ~ 14 mJy 上限を与えた.一方で Hallinan et al. (2013) は 40 時間の τ Boo の観測から,わずか ~ 1.2 mJy という 3 σ の上限値を与えている.
Sirothia et al. (2014) は 175 個の系外惑星系の電波サーベイ観測を行った.ここでは,放射は中間値が ~ 25 mJy の 3 σ の上限値を与えている.Sirothia et al. (2014) では 4 個の電波源が,惑星と非常に近い位置に検出されている.しかし背景の電波源である可能性は排除できておらず,惑星からの放射かは不明である.
Lecavelier des Etangs et al. (2011, 2013) も,GMRT を用いて,主系列星を公転する 2 個のホットジュピターと 1 個のホットネプチューンを観測している.その結果,弱い (3 σ で ~ 3 - 4 mJy) 放射を,2 つの惑星の近くに検出している.しかしこの放射は,画像中のノイズピークと整合的に見え,確実な検出ではない.
MWA を用いた観測
より最近では,Murchison Widefield Array (MWA) が同じく 150 MHz 波長で系外惑星の電波放射の探査を行っている.Murphy et al. (2015) は,17 個の系外惑星系をターゲットにし,3 σ で 15.2 - 112.5 mJy という上限値を与えている.
Lynch et al. (2017) は同じく MWA を用いて,若い星形成領域にある数百万歳程度の恒星を公転する系外惑星をターゲットにした観測を行った.その結果,3 σ の流速密度上限は,大きく偏光した放射に対して 4 mJy にまで制限されている.
論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1801.07959
Soto et al. (2018)
EPIC229426032 b and EPIC246067459 b: discovery of a highly inflated and a 'regular' pair of transiting hot Jupiters from K2
(EPIC229426032b と EPIC246067459b:K2 からの大きく膨張したものと '通常' のトランジットホットジュピターのペアの発見)
惑星の検出は,ケプラー K2 ミッションの Campaign 11 と 12 における測光データを元にしている.また,これらの恒星の視線速度データを,HARPS, FEROS, CORALIE 分光器で取得して特徴付けを行った.
EPIC 229426032b と EPIC 246067459b はそれぞれ,1.36,0.86 木星質量,1.63, 1.30 木星半径,軌道周期 2.18, 3.2 日である.
EPIC 229426032b は,大きく膨張した半径を持つ.一方で EPIC 246067459b は,この惑星が受けている強い輻射を考えると,理論モデルと整合的な半径を持っている.
これらの惑星の発見は,惑星大気の物理や惑星膨張を引き起こしている要因だけでなく,惑星形成と進化を研究するための良い対象である.特に EPIC 229426032b は,非常に膨張しているだけでなく中心星が明るい (V = 11.6) ため,フォローアップ研究に向いている.
スペクトル型:F6V
質量:1.28 太陽質量
半径:1.43 太陽半径
有効温度:6257 K
金属量:[Fe/H] = 0.14
年齢:25.5 億歳
自転周期:5.11 日
質量:1.36 木星質量
半径:1.63 木星半径
平均密度:0.38 g cm-3
軌道長半径:0.036 AU
平衡温度:1915 K
日射量:3.05 × 109 erg s-1 cm-2
スペクトル型:G2V
質量:1.19 太陽質量
半径:1.59 太陽半径
有効温度:5630 K
金属量:[Fe/H] = 0.34
年齢:56.3 億歳
質量:0.86 木星質量
半径:1.30 木星半径
平均密度:0.56 g cm-3
軌道長半径:0.046 AU
平衡温度:1587 K
日射量:1.44 × 109 erg s-1 cm-2
その結果,EPIC 229426032b は,モデルから期待されるよりもずっと大きい半径を持っていることが分かった.
ホットジュピターの半径膨張と中心星の輻射の関連性についての先行研究が存在する (Demory & Seager 2011, Laughlin et al. 2011など).それらによると,日射量が 2 × 108 erg s-1 cm-2 の閾値よりも大きい場合は膨張半径を持つ.今回発見された惑星は,両方ともこの閾値より上の日射量を受けている.
EPIC 246067459b に関しては,水素・ヘリウム主体で固体コアを持たないと考えた場合,Fortney et al. (2007) のモデルと整合した半径を持っている.そのため,この惑星は膨張していないと考えることが出来る.
このことは,この惑星が閾値よりも大きな入射フラックスを受けているという事実を考えると珍しいことである.これに対するもっともらしい説明は,この惑星は金属量が多い (コアかエンベロープ,あるいはその両方に) というものである.しかし実際には惑星は膨張しており,純粋な水素ヘリウム主体の惑星であるという “印象” を与える (つまり,本来はもっと小さい半径を持っているはずだったが,半径膨張の効果によって一見整合的な半径になっている).
さらに,木星質量と木星より重い惑星を持つ恒星の金属量の違いも発見されている.木星質量の惑星を持つ恒星は,非常に大きな質量の惑星を持つ恒星よりもかなり金属量が豊富である.この報告は,後により高い統計的信頼性で確認されている (Santos et al. 2017).今回の系も,非常に金属量が豊富な恒星であるように思われる.
一方で EPIC 246067459b は,木星に煮た質量を持ち,半径は 1.30 木星半径である.
この惑星は惑星の半径膨張が起きるのに十分な日射量を受けているにも関わらず,半径は理論モデルと整合的である.これはこの惑星のコア質量がゼロより大きな値を持っているか,エンベロープの金属量が多いか,あるいはその両方で説明でき,これは本来の半径 (つまり膨張がなかった場合の半径) が観測されている値よりも小さい膨張した系であることを示唆している.
arXiv:1801.07959
Soto et al. (2018)
EPIC229426032 b and EPIC246067459 b: discovery of a highly inflated and a 'regular' pair of transiting hot Jupiters from K2
(EPIC229426032b と EPIC246067459b:K2 からの大きく膨張したものと '通常' のトランジットホットジュピターのペアの発見)
概要
EPIC 229426032 と EPIC 246067459 を公転する 2 つのホットジュピターの発見を報告する.惑星の検出は,ケプラー K2 ミッションの Campaign 11 と 12 における測光データを元にしている.また,これらの恒星の視線速度データを,HARPS, FEROS, CORALIE 分光器で取得して特徴付けを行った.
EPIC 229426032b と EPIC 246067459b はそれぞれ,1.36,0.86 木星質量,1.63, 1.30 木星半径,軌道周期 2.18, 3.2 日である.
EPIC 229426032b は,大きく膨張した半径を持つ.一方で EPIC 246067459b は,この惑星が受けている強い輻射を考えると,理論モデルと整合的な半径を持っている.
これらの惑星の発見は,惑星大気の物理や惑星膨張を引き起こしている要因だけでなく,惑星形成と進化を研究するための良い対象である.特に EPIC 229426032b は,非常に膨張しているだけでなく中心星が明るい (V = 11.6) ため,フォローアップ研究に向いている.
パラメータ
EPIC 229426032 系
EPIC 229426032
距離:468 pcスペクトル型:F6V
質量:1.28 太陽質量
半径:1.43 太陽半径
有効温度:6257 K
金属量:[Fe/H] = 0.14
年齢:25.5 億歳
自転周期:5.11 日
EPIC 229426032b
軌道周期:2.18057 日質量:1.36 木星質量
半径:1.63 木星半径
平均密度:0.38 g cm-3
軌道長半径:0.036 AU
平衡温度:1915 K
日射量:3.05 × 109 erg s-1 cm-2
EPIC 246067459 系
EPIC 246067459
距離:453 pcスペクトル型:G2V
質量:1.19 太陽質量
半径:1.59 太陽半径
有効温度:5630 K
金属量:[Fe/H] = 0.34
年齢:56.3 億歳
EPIC 246067459b
軌道周期:3.20466 日質量:0.86 木星質量
半径:1.30 木星半径
平均密度:0.56 g cm-3
軌道長半径:0.046 AU
平衡温度:1587 K
日射量:1.44 × 109 erg s-1 cm-2
議論
惑星半径の理論モデルとの比較
Fortney et al. (2007) による,水素・ヘリウム主体のガス惑星のモデルと質量半径を比較した.その結果,EPIC 229426032b は,モデルから期待されるよりもずっと大きい半径を持っていることが分かった.
ホットジュピターの半径膨張と中心星の輻射の関連性についての先行研究が存在する (Demory & Seager 2011, Laughlin et al. 2011など).それらによると,日射量が 2 × 108 erg s-1 cm-2 の閾値よりも大きい場合は膨張半径を持つ.今回発見された惑星は,両方ともこの閾値より上の日射量を受けている.
EPIC 246067459b に関しては,水素・ヘリウム主体で固体コアを持たないと考えた場合,Fortney et al. (2007) のモデルと整合した半径を持っている.そのため,この惑星は膨張していないと考えることが出来る.
このことは,この惑星が閾値よりも大きな入射フラックスを受けているという事実を考えると珍しいことである.これに対するもっともらしい説明は,この惑星は金属量が多い (コアかエンベロープ,あるいはその両方に) というものである.しかし実際には惑星は膨張しており,純粋な水素ヘリウム主体の惑星であるという “印象” を与える (つまり,本来はもっと小さい半径を持っているはずだったが,半径膨張の効果によって一見整合的な半径になっている).
金属量との相関
軌道周期が 100 日未満の巨大ガス惑星は,より長周期の巨大ガス惑星を持つ恒星よりも金属量が豊富な恒星の周りを公転しているという傾向がある (Jenkins et al. 2017).さらに,木星質量と木星より重い惑星を持つ恒星の金属量の違いも発見されている.木星質量の惑星を持つ恒星は,非常に大きな質量の惑星を持つ恒星よりもかなり金属量が豊富である.この報告は,後により高い統計的信頼性で確認されている (Santos et al. 2017).今回の系も,非常に金属量が豊富な恒星であるように思われる.
まとめ
EPIC 229426032b は非常に大きな半径を持つホットジュピターである,中心星 EPIC 229426032 は明るいため,さらなる大気研究を行うための良い候補である.一方で EPIC 246067459b は,木星に煮た質量を持ち,半径は 1.30 木星半径である.
この惑星は惑星の半径膨張が起きるのに十分な日射量を受けているにも関わらず,半径は理論モデルと整合的である.これはこの惑星のコア質量がゼロより大きな値を持っているか,エンベロープの金属量が多いか,あるいはその両方で説明でき,これは本来の半径 (つまり膨張がなかった場合の半径) が観測されている値よりも小さい膨張した系であることを示唆している.
論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1801.07320
David et al. (2018)
Discovery of a Transiting Adolescent Sub-Neptune Exoplanet in the Cas-Tau Association with K2
(K2 による Cas-Tau アソシエーション中のトランジットする若いサブネプチューン系外惑星の発見)
若い/年老いた年齢層の恒星群のそれぞれに属する系外惑星は,惑星の進化のタイムスケールに制約を与えるのを目的とした研究のベンチマークとして特に有用である.そのようなタイムスケールは,惑星の軌道移動,半径の重力収縮,あるいは大気の光蒸発などに関与しうる.
ここでは,低質量の恒星 EPIC 247267267 のケプラー K2 ミッションでの測光観測から,トランジットするサブネプチューンの偶然の発見を報告する.
複数の年齢指標からは,68% の信頼度で EPIC 247267267 の年齢は 5000 万 - 5 億歳の範囲と推定される.しかし EPIC 247267267 の運動学に基づくと,この恒星は Cas-Tau アソシエーションに属している可能性があるということを指摘する.Cas-Tau アソシエーションの推定年齢は 4600 万 ± 800 万歳である.このアソシエーションの新しい年齢推定は,主系列の転回点付近にいる可能性が高いメンバーの色-等級ダイアグラムに基づいたものである.
発見された惑星 EPIC 247267267b のサイズは 3.0 ± 0.5 地球半径であり,この系の若い年齢から,この惑星は惑星大気の光蒸発モデルのケーススタディとして興味深い対象である.光蒸発モデルでは,惑星の初期進化段階での大きな大気の質量放出が予測される.
有効温度:4108 K
金属量:[Fe/H] = -0.06
自転周期:8.88 日
半径:0.64 太陽半径
質量:0.65 太陽質量
光度:0.105 太陽光度
半径:3.01 地球半径
軌道長半径:0.0482 AU
日射量:地球の 45.3 倍
平衡温度:655 K (アルベド 0.3 を仮定)
arXiv:1801.07320
David et al. (2018)
Discovery of a Transiting Adolescent Sub-Neptune Exoplanet in the Cas-Tau Association with K2
(K2 による Cas-Tau アソシエーション中のトランジットする若いサブネプチューン系外惑星の発見)
概要
系外惑星の特性と存在頻度における恒星の年齢の影響はあまり理解が進んでいない.これは,若い惑星の発見数が少ないことと,大部分の系外惑星の中心星は年齢決定に不定性があることに起因している.若い/年老いた年齢層の恒星群のそれぞれに属する系外惑星は,惑星の進化のタイムスケールに制約を与えるのを目的とした研究のベンチマークとして特に有用である.そのようなタイムスケールは,惑星の軌道移動,半径の重力収縮,あるいは大気の光蒸発などに関与しうる.
ここでは,低質量の恒星 EPIC 247267267 のケプラー K2 ミッションでの測光観測から,トランジットするサブネプチューンの偶然の発見を報告する.
複数の年齢指標からは,68% の信頼度で EPIC 247267267 の年齢は 5000 万 - 5 億歳の範囲と推定される.しかし EPIC 247267267 の運動学に基づくと,この恒星は Cas-Tau アソシエーションに属している可能性があるということを指摘する.Cas-Tau アソシエーションの推定年齢は 4600 万 ± 800 万歳である.このアソシエーションの新しい年齢推定は,主系列の転回点付近にいる可能性が高いメンバーの色-等級ダイアグラムに基づいたものである.
発見された惑星 EPIC 247267267b のサイズは 3.0 ± 0.5 地球半径であり,この系の若い年齢から,この惑星は惑星大気の光蒸発モデルのケーススタディとして興味深い対象である.光蒸発モデルでは,惑星の初期進化段階での大きな大気の質量放出が予測される.
パラメータ
EPIC 247267267
距離:79 pc有効温度:4108 K
金属量:[Fe/H] = -0.06
自転周期:8.88 日
半径:0.64 太陽半径
質量:0.65 太陽質量
光度:0.105 太陽光度
EPIC 247267267b
軌道周期:4.79507 日半径:3.01 地球半径
軌道長半径:0.0482 AU
日射量:地球の 45.3 倍
平衡温度:655 K (アルベド 0.3 を仮定)
天文・宇宙物理関連メモ vol.191 Tremblin et al. (2016) 褐色矮星とガス惑星大気中での化学組成不安定
天文・宇宙物理関連メモ vol.448 Tremblin et al. (2017) 温位の移流によるホットジュピターの異常半径の再現