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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1801.04274
MacLeod et al. (2018)
Planetary Engulfment in the Hertzsprung--Russell Diagram
(ヘルツシュプルング・ラッセル図における惑星飲み込み)
ここでは,中心星に飲み込まれた惑星の軌道減衰によって生み出される力と,恒星の光度の比較を行った.
惑星の軌道減衰による力は,中心星のエンベロープによって飲み込まれた惑星にはたらく摩擦によって生み出される.恒星が巨星分枝へ進化していくと,そのエンベロープの密度も減少し,軌道減衰によって注入されるパワーもおおよそ \(L_{\rm decay}\propto R_{*}^{-9/2}\) でスケーリングされる.しかし巨星の光度は,巨星分枝の進化の間に増加する.
これらの相反するスケーリングは,\(L_{\rm decay}=L_{*}\) となる所で交差する.
ここでは,ヘルツシュプルング・ラッセル図 (HR 図) の等時線に沿った惑星の飲み込みを考慮した.
その結果.惑星質量が木星質量程度の場合,そのような交差は,\(L_{*}\approx 10^{2}L_{\odot}\) もしくは軌道長半径 0.1 au の場合に発生することを見出した.この近接巨大惑星の飲み込み,例えばホットジュピターの飲み込みが発生する場合は \(L_{\rm decay}>>L_{*}\) になる一方.ウォームジュピターのようなより遠方の惑星 (a ~ 0.5 au) の場合は,\(L_{\rm decay}<<L_{*}\) という小さな擾乱が加わるのみであることが分かった.
この結果を元に,巨星分枝に沿ったパラメータ空間で,惑星との相互作用が中心星に大きなエネルギー的な擾乱を与える様子を HR 図上に描画した.
その後のコモンエンベロープ期 (common envelope phase,外層を共有する段階) では,伴星 (ここでは飲み込まれた惑星) の軌道は,周囲のエンベロープとの相互作用による摩擦に応答して縮小する (Paczynski 1976).
惑星の軌道エネルギーの注入は,恒星エンベロープ内でのエネルギー源となる.このエネルギー源と,輻射と対流によって既に恒星エンベロープに輸送されている恒星中心部での核燃焼のエネルギーの相対的な大きさに依存して,この追加のエネルギーは擾乱や大規模な外乱を与えうる.
飲み込まれた惑星が恒星に与える影響については,これまでに多くの研究が存在する.例えば,惑星飲み込みの際のガス動力学 (Sandquistet al. 1998,Staff et al. 2016),飲み込みに引き続く恒星の進化 (Soker et al. 1984,Siess & Livio 1999,Metzger et al. 2017など) である.
さらに,惑星の飲み込みによって角運動量が恒星のエンベロープに与えられ,恒星の自転を加速する可能性や (Soker 1998,Siess & Livio 1999,Zhang & Penev 2014,Privitera et al. 2016など),恒星の磁場を増幅する可能性 (Privitera et al. 2016),惑星物質による恒星表面組成の汚染 (Sandquist et al. 1998,Siess & Livio 1999,Sandquist et al. 2002,Aguilera-G ́omez et al. 2016) についても研究されている.
また,恒星からの噴出物からの過渡的現象の発生の際の,惑星飲み込みイベントの役割推定 (Soker & Tylenda 2006,Metzger et al. 2012,Yamazaki et al. 2017),あるいは噴出物からの惑星状星雲の形状への影響 (De Marco & Soker 2011) などについての研究も存在する.
ここでは,飲み込みに際した惑星軌道減衰のエネルギーと,恒星の光度の比較を行った.
2. 惑星の飲み込みが巨星分枝星のエネルギーを大きく乱すかどうかは,惑星の特徴 (質量と距離) と,中心星の半径が惑星の軌道長半径のサイズになった時の中心星の光度に依存する.惑星の軌道減衰の力は,恒星サイズの増加に伴って鋭く減少し,\(L_{\rm decay}\propto R_{*}^{-9/2}\) という依存性を持つ.これは膨張に伴って恒星エンベロープの密度が減少することが原因である.一方で,低質量の巨星では光度は半径の増加に伴って鋭く上昇し,\(L_{*}\propto R^{3/2}\) という依存性を持つ.この逆向きのスケーリングから,いずれこれらが交差することがわかる.
3. 軌道長半径が 0.1 au 程度未満の巨大惑星の場合は,\(L_{\rm decay}>>L_{*}\) となる.より遠方の惑星では \(L_{\rm decay}<<L_{*}\) となる.このことは,ホットジュピターは飲み込みに際して中心星に一定の影響を与えるが,0.1 - 1 au 程度のウォームジュピターの場合はそうではないということを示唆している.年齢が 109-10 年で光度が 102 太陽光度の進化した恒星は,木星型惑星の飲み込みにより \(L_{\rm decay}\approx L_{*}\) になる.
4. \(L_{\rm decay}= L_{*}\) の臨界条件を満たす天体の半径を計算した.その結果,飲み込まれる天体の半径として,巨星分枝の転回点においてはわずか 10 km 程度の天体で条件を満たすことが分かった.
5. エネルギーが注入されるタイムスケールは,中心星が転回点に近い時に飲み込まれる木星型惑星の軌道周期一周分のオーダーから,巨星分枝の先端での 104 周分まで変化する.最小の半径の天体は \(N_{\rm decay}<<1\) で短命である (\(N_{\rm decay}\) は軌道減衰の間に公転する回数に相当する).
6. 飲み込みによって突発する光度は,光学的に厚い恒星エンベロープを介する輻射輸送によって伝えられ,特に \(L_{\rm decay}>L_{*}\) の場合は \(L_{\rm decay}\) には一致しない.
中心星による惑星の飲み込みは一般的な現象であるが,現在の発生率は低く,銀河系内では 1 年に 0.1 - 1 回程度のオーダーである.そのため今回の研究は,100 太陽光度未満の巨星分枝の下部で進化している恒星に注目し,伴星との相互作用の長期にわたる観測的特徴を調べるための動機づけとなる.
arXiv:1801.04274
MacLeod et al. (2018)
Planetary Engulfment in the Hertzsprung--Russell Diagram
(ヘルツシュプルング・ラッセル図における惑星飲み込み)
概要
大部分の太陽類似星は惑星を持っていることが分かっている.多くの惑星の軌道は中心星に近く,中心星が巨星分枝 (giant branch) の段階に進化すると中心星に飲み込まれる.ここでは,中心星に飲み込まれた惑星の軌道減衰によって生み出される力と,恒星の光度の比較を行った.
惑星の軌道減衰による力は,中心星のエンベロープによって飲み込まれた惑星にはたらく摩擦によって生み出される.恒星が巨星分枝へ進化していくと,そのエンベロープの密度も減少し,軌道減衰によって注入されるパワーもおおよそ \(L_{\rm decay}\propto R_{*}^{-9/2}\) でスケーリングされる.しかし巨星の光度は,巨星分枝の進化の間に増加する.
これらの相反するスケーリングは,\(L_{\rm decay}=L_{*}\) となる所で交差する.
ここでは,ヘルツシュプルング・ラッセル図 (HR 図) の等時線に沿った惑星の飲み込みを考慮した.
その結果.惑星質量が木星質量程度の場合,そのような交差は,\(L_{*}\approx 10^{2}L_{\odot}\) もしくは軌道長半径 0.1 au の場合に発生することを見出した.この近接巨大惑星の飲み込み,例えばホットジュピターの飲み込みが発生する場合は \(L_{\rm decay}>>L_{*}\) になる一方.ウォームジュピターのようなより遠方の惑星 (a ~ 0.5 au) の場合は,\(L_{\rm decay}<<L_{*}\) という小さな擾乱が加わるのみであることが分かった.
この結果を元に,巨星分枝に沿ったパラメータ空間で,惑星との相互作用が中心星に大きなエネルギー的な擾乱を与える様子を HR 図上に描画した.
進化した恒星による惑星の飲み込み
恒星が主系列段階から進化すると,半径は大きく増大する.軌道長半径が au スケールである惑星天体は,中心星が成長するに伴って中心星のエンベロープに飲み込まれる(Villaver & Livio 2009; Schlaufman & Winn 2013).その後のコモンエンベロープ期 (common envelope phase,外層を共有する段階) では,伴星 (ここでは飲み込まれた惑星) の軌道は,周囲のエンベロープとの相互作用による摩擦に応答して縮小する (Paczynski 1976).
惑星の軌道エネルギーの注入は,恒星エンベロープ内でのエネルギー源となる.このエネルギー源と,輻射と対流によって既に恒星エンベロープに輸送されている恒星中心部での核燃焼のエネルギーの相対的な大きさに依存して,この追加のエネルギーは擾乱や大規模な外乱を与えうる.
飲み込まれた惑星が恒星に与える影響については,これまでに多くの研究が存在する.例えば,惑星飲み込みの際のガス動力学 (Sandquistet al. 1998,Staff et al. 2016),飲み込みに引き続く恒星の進化 (Soker et al. 1984,Siess & Livio 1999,Metzger et al. 2017など) である.
さらに,惑星の飲み込みによって角運動量が恒星のエンベロープに与えられ,恒星の自転を加速する可能性や (Soker 1998,Siess & Livio 1999,Zhang & Penev 2014,Privitera et al. 2016など),恒星の磁場を増幅する可能性 (Privitera et al. 2016),惑星物質による恒星表面組成の汚染 (Sandquist et al. 1998,Siess & Livio 1999,Sandquist et al. 2002,Aguilera-G ́omez et al. 2016) についても研究されている.
また,恒星からの噴出物からの過渡的現象の発生の際の,惑星飲み込みイベントの役割推定 (Soker & Tylenda 2006,Metzger et al. 2012,Yamazaki et al. 2017),あるいは噴出物からの惑星状星雲の形状への影響 (De Marco & Soker 2011) などについての研究も存在する.
ここでは,飲み込みに際した惑星軌道減衰のエネルギーと,恒星の光度の比較を行った.
結果のまとめ
1. 惑星にはたらく力は,中心星に飲み込まれた惑星の軌道を減衰させる.2. 惑星の飲み込みが巨星分枝星のエネルギーを大きく乱すかどうかは,惑星の特徴 (質量と距離) と,中心星の半径が惑星の軌道長半径のサイズになった時の中心星の光度に依存する.惑星の軌道減衰の力は,恒星サイズの増加に伴って鋭く減少し,\(L_{\rm decay}\propto R_{*}^{-9/2}\) という依存性を持つ.これは膨張に伴って恒星エンベロープの密度が減少することが原因である.一方で,低質量の巨星では光度は半径の増加に伴って鋭く上昇し,\(L_{*}\propto R^{3/2}\) という依存性を持つ.この逆向きのスケーリングから,いずれこれらが交差することがわかる.
3. 軌道長半径が 0.1 au 程度未満の巨大惑星の場合は,\(L_{\rm decay}>>L_{*}\) となる.より遠方の惑星では \(L_{\rm decay}<<L_{*}\) となる.このことは,ホットジュピターは飲み込みに際して中心星に一定の影響を与えるが,0.1 - 1 au 程度のウォームジュピターの場合はそうではないということを示唆している.年齢が 109-10 年で光度が 102 太陽光度の進化した恒星は,木星型惑星の飲み込みにより \(L_{\rm decay}\approx L_{*}\) になる.
4. \(L_{\rm decay}= L_{*}\) の臨界条件を満たす天体の半径を計算した.その結果,飲み込まれる天体の半径として,巨星分枝の転回点においてはわずか 10 km 程度の天体で条件を満たすことが分かった.
5. エネルギーが注入されるタイムスケールは,中心星が転回点に近い時に飲み込まれる木星型惑星の軌道周期一周分のオーダーから,巨星分枝の先端での 104 周分まで変化する.最小の半径の天体は \(N_{\rm decay}<<1\) で短命である (\(N_{\rm decay}\) は軌道減衰の間に公転する回数に相当する).
6. 飲み込みによって突発する光度は,光学的に厚い恒星エンベロープを介する輻射輸送によって伝えられ,特に \(L_{\rm decay}>L_{*}\) の場合は \(L_{\rm decay}\) には一致しない.
中心星による惑星の飲み込みは一般的な現象であるが,現在の発生率は低く,銀河系内では 1 年に 0.1 - 1 回程度のオーダーである.そのため今回の研究は,100 太陽光度未満の巨星分枝の下部で進化している恒星に注目し,伴星との相互作用の長期にわたる観測的特徴を調べるための動機づけとなる.
PR
論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1801.04379
Adamów et al. (2018)
Tracking Advanced Planetary Systems (TAPAS) with HARPS-N. VI. HD 238914 and TYC 3318-01333-1 - two more Li-rich giants with planets
(HAPRS-N での Tracking Advanced Planetary Systems (TAPAS).VI.HD 238914 と TYC 3318-01333-1ー惑星を持つさらなる 2 個のリチウム豊富巨星)
このプロジェクトの目標は,まずは最もリチウム豊富な巨星の視線速度変動データを取得して,その周りに存在する可能性のある,低質量の準恒星伴星を探査することである.さらに,取得したスペクトルの解析から,これらの恒星の進化状態を調べることである.
また,HD 181368 と HD 188214 の 2 つの恒星に関しては,Very Large Telescope (VLT) の UVES を用いた観測から,ベリリウムの存在度を調べた.
今回の発見は,以下の通りである.
i) リチウム豊富な巨星 2 個のまわりに,新しい惑星系を発見した.恒星はそれぞれ,HD 238914 と TYC 3318-01333-1 であり,後者は連星系である
ii) リチウム豊富な巨星 HD 181368 が連星であることを明らかにした.
iii) 現在のところ観測フェーズは位相のすべてをカバーしていないが,TYC 3663-01966-1 と TYC 3105-00152-1 のまわりに,惑星質量の伴星の存在が示唆された
iv) BD+48 740 に関する,過去の観測結果を確認し,また天体の軌道要素を更新した.
v) HD 181368 と HD 188214 において,リチウムの豊富さとベリリウムの存在度の間には関連が見られなかったこと.
観測した 15 個のリチウム豊富巨星のうち,7 つの恒星で,恒星質量の伴星か,惑星の可能性がある伴星を発見した.リチウム豊富な巨星が連星である頻度は,今回のサンプル中では通常の範囲内であると思われる.
しかし惑星の存在頻度は,一般的なサンプルの 2 倍程度の値であることが示唆された.これは,恒星が伴星を持つことと,巨星が大きなリチウム存在度を示すことの間に何らかの関係がある可能性を示唆している.
また,リチウム豊富な巨星に付随する伴星の大部分は,大きな軌道離心率を持つことも発見した.
初のリチウム豊富巨星は,その仮説が提唱された 25 年後に発見された (Wallerstein & Sneden 1982).
これまでに 150 個を超えるリチウム豊富星が発見されている. (ここでのリチウム豊富の基準は A(Li) > 1.5).これらの天体の多くはリチウム豊富天体として定義されるが,なぜ 100 個に 1 つの割合で存在する巨星が大きなリチウム存在度を持っているのかは,依然として不明である.
リチウム豊富巨星は多様性を持っている.これらの多くは,赤色巨星分枝 (red giant branch, RGB) に位置している (Lebzelter et al. 2012).また,いくつかはヘルツシュプルング・ラッセル図上の転回点 (turn-off point) に位置する恒星や水平分枝星 (horizontal branch star) として同定されている (Koch et al. 2011).
さらにいくつかの恒星では,高いリチウム存在度はスペクトルに赤外超過を伴うことが指摘されている (Bharat Kumar et al. 2015など).
リチウム豊富巨星まわりの系外惑星は,Adamów et al. (2012) で初めて候補天体が報告されている.
これまでの所,惑星を持っていると思われるリチウム豊富巨星は数例のみが報告されている.
こぐま座8番星 (8 UMi, HD 133086, Kumar et al. 2011,Lee et al.2015),NGC 2423 3 (Carlberg et al. 2016),NGC 2423 と NGC 4349 星団の中にいる 2 つの巨星 (Delgado Mena et al. 2016) である.
リチウムが豊富になる要因については他にも様々な仮説がある.例えば,リチウム豊富なガスが,近接連星系におけるより進化した伴星から輸送されることでリチウム豊富になる可能性がある (Sackmann & Boothroyd 1999).
また,高速なリチウム生成は超新星爆発に伴って発生する (Woosley & Weaver 1995).もし恒星が別の超新星で放出された物質を降着した場合,その恒星のリチウムの存在度は増加する.
さらに,恒星が主系列を離れて RGB に進化した段階で,惑星が恒星に飲み込まれる可能性がある.RGB 段階における恒星半径の大幅な増大と,恒星表面付近の対流層の拡大が,周囲を公転する惑星との潮汐相互作用を増加させる (Villaver & Livio 2009).
進化した恒星の周りに近接惑星があまり発見されていないことも,惑星の飲み込みが惑星系の進化において一般的な過程であることを示唆している.この過程は太陽系もその例外ではない (Villaver & Livio 2009, Privitera et al. 2016).
金属量:[Fe/H] = -0.06
光度:log (L/Lsun) = 0.83
質量:0.86 太陽質量
半径:6.45 太陽半径
自転周期:134 日
リチウム存在度:A(Li) = 2.07
軌道離心率:0.7524
最小質量:220 木星質量
軌道長半径:10.7 au
この恒星について,恒星活動の兆候は見られなかった.
この天体が伴星を持つ可能性について調査した結果,軌道周期が1000 日程度の惑星質量天体が 2 つ,非常に細長い軌道で存在するという解を得た.しかし軌道配置的に不安定である可能性があり,これが正しい解かどうかは疑問が残る.
異なるフィッティングからは,より長周期で細長い軌道にある,恒星質量の伴星が存在するという解を得た.
金属量:[Fe/H] = -0.13
光度:log (L/Lsun) = 1.64
質量:1.09 太陽質量
半径:10.33 太陽半径
自転周期:746 日
リチウム存在度:A(Li) = 2.07
軌道離心率:0.76
最小質量:1.7 木星質量
軌道長半径:1.7 au
この天体に関しては,過去の 15 回の観測に加え,11 回の新しい別の測定と,今回の観測で得られた 16 回分のデータを合わせて解析した.新しい解析から,過去の観測結果を確認した.
この系は,非常に細長い楕円形の軌道にある,最小質量が 1.7 木星質量の伴星天体を持つ.
金属量:[Fe/H] = 0.25
光度:log (L/Lsun) = 1.85
質量:1.47 太陽質量
半径:12.73 太陽半径
自転周期:257 日
リチウム存在度:A(Li) = 1.99
軌道離心率:0.56
最小質量:6.0 木星質量
軌道長半径:5.7 au
この恒星では,恒星活動の兆候は見られなかった.また,惑星質量の天体が存在することを確認した.
金属量:[Fe/H] = -0.06
光度:log (L/Lsun) = 1.21
質量:1.19 太陽質量
半径:5.90 太陽半径
自転周期:198 日
リチウム存在度:A(Li) = 1.51
軌道離心率:0.098
最小質量:3.42 木星質量
軌道長半径:1.414 au
視線速度には線形の傾向と周期的な変化の両方が見られ,低質量の伴星が存在すると解釈される.
この系は,やや楕円の軌道にある,最小質量 3.42 木星質量の天体を持つ.
金属量:[Fe/H] = -0.26
光度:log (L/Lsun) = 2.26
質量:2.88 太陽質量
半径:17.66 太陽半径
自転周期:330 日
リチウム存在度:A(Li) = 1.41
軌道離心率:0.48
最小質量:1.33 木星質量
軌道長半径:0.72 au
明確に視線速度に変動が見られ,これは恒星自身の振動由来のみではない.また,恒星活動に関する観測的証拠はなく,視線速度は変動は伴星が存在することによるドップラーシフト由来だと考えられる.
伴星のケプラー運動由来とみなして視線速度データをフィットすると,比較的恒星に近い軌道で楕円軌道にある惑星が存在するという解を得た.
現在のところ,軌道位相の全てをカバー出来ていないため,将来観測で確定させる事が必要である.
金属量:[Fe/H] = -0.14
光度:log (L/Lsun) = 1.66
質量:1.22 太陽質量
半径:10.62 太陽半径
自転周期:282 日
リチウム存在度:A(Li) = 2.86
軌道離心率:0.78
最小質量:4.6 木星質量
軌道長半径:1.02 au
視線速度に,別の要因から予想されるものよりも大きな変動が見られた.また,恒星活動の兆候は見られず,変動の原因は伴星によるものだと考えられる.
ケプラー運動を仮定すると,339.5 日周期の軌道に,最小質量が 4.6 木星質量の天体が存在し,軌道離心率は 0.781 であるという解を得た.こちらも位相の全てをカバー出来ていないため,将来観測で確定させる事が必要である.
arXiv:1801.04379
Adamów et al. (2018)
Tracking Advanced Planetary Systems (TAPAS) with HARPS-N. VI. HD 238914 and TYC 3318-01333-1 - two more Li-rich giants with planets
(HAPRS-N での Tracking Advanced Planetary Systems (TAPAS).VI.HD 238914 と TYC 3318-01333-1ー惑星を持つさらなる 2 個のリチウム豊富巨星)
概要
3.6 m Telescopio Nazionale Galileo での HAPRS-N 分光器を用いた,系外惑星探査の最新の結果について報告する.これは Tracking Advanced Planetary Systems (TAPAS) プロジェクトの一環であり,最もリチウムが豊富な部類の巨星 15 個を重点的に探査するというものである.このプロジェクトの目標は,まずは最もリチウム豊富な巨星の視線速度変動データを取得して,その周りに存在する可能性のある,低質量の準恒星伴星を探査することである.さらに,取得したスペクトルの解析から,これらの恒星の進化状態を調べることである.
また,HD 181368 と HD 188214 の 2 つの恒星に関しては,Very Large Telescope (VLT) の UVES を用いた観測から,ベリリウムの存在度を調べた.
今回の発見は,以下の通りである.
i) リチウム豊富な巨星 2 個のまわりに,新しい惑星系を発見した.恒星はそれぞれ,HD 238914 と TYC 3318-01333-1 であり,後者は連星系である
ii) リチウム豊富な巨星 HD 181368 が連星であることを明らかにした.
iii) 現在のところ観測フェーズは位相のすべてをカバーしていないが,TYC 3663-01966-1 と TYC 3105-00152-1 のまわりに,惑星質量の伴星の存在が示唆された
iv) BD+48 740 に関する,過去の観測結果を確認し,また天体の軌道要素を更新した.
v) HD 181368 と HD 188214 において,リチウムの豊富さとベリリウムの存在度の間には関連が見られなかったこと.
観測した 15 個のリチウム豊富巨星のうち,7 つの恒星で,恒星質量の伴星か,惑星の可能性がある伴星を発見した.リチウム豊富な巨星が連星である頻度は,今回のサンプル中では通常の範囲内であると思われる.
しかし惑星の存在頻度は,一般的なサンプルの 2 倍程度の値であることが示唆された.これは,恒星が伴星を持つことと,巨星が大きなリチウム存在度を示すことの間に何らかの関係がある可能性を示唆している.
また,リチウム豊富な巨星に付随する伴星の大部分は,大きな軌道離心率を持つことも発見した.
リチウム豊富な巨星について
リチウム豊富巨星の特徴
中心星による惑星の飲み込みによって恒星の大気中のリチウム存在度が大きくなるという仮説は, Alexander (1967) によって提唱された.この理論の提唱は,いかなるヘリウム豊富星 (巨星を含む) や系外惑星が発見されるよりも前になされている.初のリチウム豊富巨星は,その仮説が提唱された 25 年後に発見された (Wallerstein & Sneden 1982).
これまでに 150 個を超えるリチウム豊富星が発見されている. (ここでのリチウム豊富の基準は A(Li) > 1.5).これらの天体の多くはリチウム豊富天体として定義されるが,なぜ 100 個に 1 つの割合で存在する巨星が大きなリチウム存在度を持っているのかは,依然として不明である.
リチウム豊富巨星は多様性を持っている.これらの多くは,赤色巨星分枝 (red giant branch, RGB) に位置している (Lebzelter et al. 2012).また,いくつかはヘルツシュプルング・ラッセル図上の転回点 (turn-off point) に位置する恒星や水平分枝星 (horizontal branch star) として同定されている (Koch et al. 2011).
さらにいくつかの恒星では,高いリチウム存在度はスペクトルに赤外超過を伴うことが指摘されている (Bharat Kumar et al. 2015など).
リチウム豊富巨星まわりの系外惑星は,Adamów et al. (2012) で初めて候補天体が報告されている.
これまでの所,惑星を持っていると思われるリチウム豊富巨星は数例のみが報告されている.
こぐま座8番星 (8 UMi, HD 133086, Kumar et al. 2011,Lee et al.2015),NGC 2423 3 (Carlberg et al. 2016),NGC 2423 と NGC 4349 星団の中にいる 2 つの巨星 (Delgado Mena et al. 2016) である.
リチウム豊富巨星の形成要因
特別な環境下,例えば恒星の対流層と水素燃焼殻の間に効率的な混合がある場合では,リチウム生成をもたらす化学反応連鎖が起きる可能性がある (Cameron & Fowler 1971).これは,ヘルツシュプルング・ラッセル図における,光度関数のバンプ部分で発生する可能性がある.つまり,RGB 星は自らリチウムを生み出す可能性があることを示唆している (Adamów et al. 2014).リチウムが豊富になる要因については他にも様々な仮説がある.例えば,リチウム豊富なガスが,近接連星系におけるより進化した伴星から輸送されることでリチウム豊富になる可能性がある (Sackmann & Boothroyd 1999).
また,高速なリチウム生成は超新星爆発に伴って発生する (Woosley & Weaver 1995).もし恒星が別の超新星で放出された物質を降着した場合,その恒星のリチウムの存在度は増加する.
さらに,恒星が主系列を離れて RGB に進化した段階で,惑星が恒星に飲み込まれる可能性がある.RGB 段階における恒星半径の大幅な増大と,恒星表面付近の対流層の拡大が,周囲を公転する惑星との潮汐相互作用を増加させる (Villaver & Livio 2009).
進化した恒星の周りに近接惑星があまり発見されていないことも,惑星の飲み込みが惑星系の進化において一般的な過程であることを示唆している.この過程は太陽系もその例外ではない (Villaver & Livio 2009, Privitera et al. 2016).
パラメータ
HD 181368 系
HD 181368
有効温度:4852 K金属量:[Fe/H] = -0.06
光度:log (L/Lsun) = 0.83
質量:0.86 太陽質量
半径:6.45 太陽半径
自転周期:134 日
リチウム存在度:A(Li) = 2.07
HD 181368b
軌道周期:12977.6 日軌道離心率:0.7524
最小質量:220 木星質量
軌道長半径:10.7 au
HD 181368 系の詳細
合計 27 回の観測から視線速度データを取得した.この恒星について,恒星活動の兆候は見られなかった.
この天体が伴星を持つ可能性について調査した結果,軌道周期が1000 日程度の惑星質量天体が 2 つ,非常に細長い軌道で存在するという解を得た.しかし軌道配置的に不安定である可能性があり,これが正しい解かどうかは疑問が残る.
異なるフィッティングからは,より長周期で細長い軌道にある,恒星質量の伴星が存在するという解を得た.
BD+48 740 系
BD+48 740
有効温度:4534 K金属量:[Fe/H] = -0.13
光度:log (L/Lsun) = 1.64
質量:1.09 太陽質量
半径:10.33 太陽半径
自転周期:746 日
リチウム存在度:A(Li) = 2.07
BD+48 740b
軌道周期:733 日軌道離心率:0.76
最小質量:1.7 木星質量
軌道長半径:1.7 au
BD+48 740 系の詳細
この系は,初めて惑星を持つ可能性があることが報告されたリチウム豊富巨星である (Adamów et al. 2012).リチウム豊富の原因は,惑星の飲み込みである可能性がある.この天体に関しては,過去の 15 回の観測に加え,11 回の新しい別の測定と,今回の観測で得られた 16 回分のデータを合わせて解析した.新しい解析から,過去の観測結果を確認した.
この系は,非常に細長い楕円形の軌道にある,最小質量が 1.7 木星質量の伴星天体を持つ.
HD 238914 系
HD 238914
有効温度:4769 K金属量:[Fe/H] = 0.25
光度:log (L/Lsun) = 1.85
質量:1.47 太陽質量
半径:12.73 太陽半径
自転周期:257 日
リチウム存在度:A(Li) = 1.99
HD 238914b
軌道周期:4100 日軌道離心率:0.56
最小質量:6.0 木星質量
軌道長半径:5.7 au
HD 238914 系の詳細
合計で 86 回の観測データを取得した.この観測期間は合計で 3944 日にわたる.この恒星では,恒星活動の兆候は見られなかった.また,惑星質量の天体が存在することを確認した.
TYC 3318-01333-1 系
TYC 3318-01333-1
有効温度:4776 K金属量:[Fe/H] = -0.06
光度:log (L/Lsun) = 1.21
質量:1.19 太陽質量
半径:5.90 太陽半径
自転周期:198 日
リチウム存在度:A(Li) = 1.51
TYC 3318-01333-1b
軌道周期:562 日軌道離心率:0.098
最小質量:3.42 木星質量
軌道長半径:1.414 au
TYC 3318-01333-1 系の詳細
合計 28 回の観測を行った.この観測期間は合計で 3514 日の範囲にわたる.視線速度には線形の傾向と周期的な変化の両方が見られ,低質量の伴星が存在すると解釈される.
この系は,やや楕円の軌道にある,最小質量 3.42 木星質量の天体を持つ.
TYC 3663-01966-1 系
TYC 3663-01966-1
有効温度:5068 K金属量:[Fe/H] = -0.26
光度:log (L/Lsun) = 2.26
質量:2.88 太陽質量
半径:17.66 太陽半径
自転周期:330 日
リチウム存在度:A(Li) = 1.41
TYC 3663-01966-1b
軌道周期:130.48 日軌道離心率:0.48
最小質量:1.33 木星質量
軌道長半径:0.72 au
TYC 3663-01966-1 系の詳細
合計 32 回の観測を行った.明確に視線速度に変動が見られ,これは恒星自身の振動由来のみではない.また,恒星活動に関する観測的証拠はなく,視線速度は変動は伴星が存在することによるドップラーシフト由来だと考えられる.
伴星のケプラー運動由来とみなして視線速度データをフィットすると,比較的恒星に近い軌道で楕円軌道にある惑星が存在するという解を得た.
現在のところ,軌道位相の全てをカバー出来ていないため,将来観測で確定させる事が必要である.
TYC 3105-00152-1 系
TYC 3105-00152-1
有効温度:4673 K金属量:[Fe/H] = -0.14
光度:log (L/Lsun) = 1.66
質量:1.22 太陽質量
半径:10.62 太陽半径
自転周期:282 日
リチウム存在度:A(Li) = 2.86
TYC 3105-00152-1b
軌道周期:339.5 日軌道離心率:0.78
最小質量:4.6 木星質量
軌道長半径:1.02 au
TYC 3105-00152-1 系の詳細
合計 30 回の観測を行った.視線速度に,別の要因から予想されるものよりも大きな変動が見られた.また,恒星活動の兆候は見られず,変動の原因は伴星によるものだと考えられる.
ケプラー運動を仮定すると,339.5 日周期の軌道に,最小質量が 4.6 木星質量の天体が存在し,軌道離心率は 0.781 であるという解を得た.こちらも位相の全てをカバー出来ていないため,将来観測で確定させる事が必要である.
論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1801.03502
Malavolta et al. (2018)
An ultra-short period rocky super-Earth with a secondary eclipse and a Neptune-like companion around K2-141
(K2-141 まわりの二次食を伴う超短周期岩石スーパーアースと海王星的な伴星)
それぞれの形成シナリオによって,予測される USP 惑星の組成は根本的に異なる.そのため,未だ限られた数しか発見されていない,精密で正確な質量・密度の測定値を持つ USP 惑星の個数を増やすことは非常に重要である.
ここでは K2-141 (EPIC 246393474) を公転する 0.28 日周期の惑星の特徴付けと,その外側の 7.7 日周期の grazing transit (中心星をかすめるようにトランジットする) 配置の惑星の存在の確認を行った.
ケプラーの K2 ミッションで取得された光度曲線から,惑星半径を導出した.また HARPS-N での高精度視線速度観測から,質量の測定を行った.
K2-141b は半径が 1.51 地球半径,質量は 5.08 地球質量で,岩石組成で厚い大気を持たないとするモデルと整合する.
K2-141c はおそらく海王星類似の惑星だが,トランジットが grazing であったことと,中心星の視線速度変動が検出されなかったことから,惑星の密度には強い制限を与えられなかった,
また K2-141b の二次食と位相曲線変動の検出についても報告する.観測された位相変動は,惑星のケプラーバンドパスにおける幾何学的アルベドが 0.30 であるか,あるいは惑星表面からの ~ 3000 K の熱放射でモデル化することが出来る.この 2 つのシナリオを見分けるためには,長波長でのフォローアップ観測が必要である.
半径:0.681 太陽半径
質量:0.708 太陽質量
光度:\(\log\left(L_{\rm s}/L_{\rm sun}\right)\) = -0.75
有効温度:4599 K
金属量:[Fe/H] = -0.06
距離:61 pc
半径:1.51 地球半径
質量:5.08 地球質量
平均密度:8.2 g cm-3
半径:7.0 地球半径
質量:7.4 地球質量未満
arXiv:1801.03502
Malavolta et al. (2018)
An ultra-short period rocky super-Earth with a secondary eclipse and a Neptune-like companion around K2-141
(K2-141 まわりの二次食を伴う超短周期岩石スーパーアースと海王星的な伴星)
概要
Ultra-short period (USP,超短周期) 惑星は,軌道周期が 1 日よりも短い低質量の惑星を指す分類である.USP 惑星の起源は未だ不明で,ミニネプチューンサイズの惑星の光蒸発,あるいはその場形成がもっともらしい仮説である.それぞれの形成シナリオによって,予測される USP 惑星の組成は根本的に異なる.そのため,未だ限られた数しか発見されていない,精密で正確な質量・密度の測定値を持つ USP 惑星の個数を増やすことは非常に重要である.
ここでは K2-141 (EPIC 246393474) を公転する 0.28 日周期の惑星の特徴付けと,その外側の 7.7 日周期の grazing transit (中心星をかすめるようにトランジットする) 配置の惑星の存在の確認を行った.
ケプラーの K2 ミッションで取得された光度曲線から,惑星半径を導出した.また HARPS-N での高精度視線速度観測から,質量の測定を行った.
K2-141b は半径が 1.51 地球半径,質量は 5.08 地球質量で,岩石組成で厚い大気を持たないとするモデルと整合する.
K2-141c はおそらく海王星類似の惑星だが,トランジットが grazing であったことと,中心星の視線速度変動が検出されなかったことから,惑星の密度には強い制限を与えられなかった,
また K2-141b の二次食と位相曲線変動の検出についても報告する.観測された位相変動は,惑星のケプラーバンドパスにおける幾何学的アルベドが 0.30 であるか,あるいは惑星表面からの ~ 3000 K の熱放射でモデル化することが出来る.この 2 つのシナリオを見分けるためには,長波長でのフォローアップ観測が必要である.
パラメータ
K2-141
別名:EPIC 246393474半径:0.681 太陽半径
質量:0.708 太陽質量
光度:\(\log\left(L_{\rm s}/L_{\rm sun}\right)\) = -0.75
有効温度:4599 K
金属量:[Fe/H] = -0.06
距離:61 pc
K2-141b
軌道周期:0.2893244 日半径:1.51 地球半径
質量:5.08 地球質量
平均密度:8.2 g cm-3
K2-141c
軌道周期:7.74850 日半径:7.0 地球半径
質量:7.4 地球質量未満
論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1801.03874
Christiansen et al. (2018)
The K2-138 System: A Near-Resonant Chain of Five Sub-Neptune Planets Discovered by Citizen Scientists
(K2-128 系:市民科学者によって発見された共鳴鎖に近い 5 個のサブネプチューン惑星)
観測の結果,この恒星はコンパクトな軌道配置にある 5 個の小さい惑星を持つ事が判明した.
軌道周期はそれぞれ 2.35 日,3.56 日,5.40 日,8.26 日,12.76 日で,それぞれが 3:2 共鳴に近い,途切れていない共鳴鎖 (resonant chain) を形成している.
K2 のトランジット時刻精度では,共鳴鎖にある惑星に期待される 2 - 5 分のトランジット時刻変動は検出されていない.しかい,例えばスピッツァー宇宙望遠鏡や将来の CHEOPS での高頻度観測によって,トランジット時刻変動を観測可能だろうと考えられる.
推定される惑星の質量は,高精度の視線速度測定で測定することが可能な範囲である.従って K2-138 系は,視線速度とトランジット時刻変動の両方から推定される質量を比較するための良いベンチマークとなるだろう.
今回発見された K2-138 まわりの系外惑星は,Zooniverse platform での Exoplanet Explorer プロジェクトに参加している市民科学者による,初めての系外惑星の発見例である.
光度:V = 12.2,K = 10.3
スペクトル型:K1V
有効温度:5378 K
金属量:[Fe/H] = 0.16
半径:0.86 太陽半径
質量:0.93 太陽質量
距離:183 pc
軌道長半径:0.03380 AU
半径:1.57 地球半径
日射量:地球の 486 倍
軌道長半径:0.04454 AU
半径:2.52 地球半径
日射量:地球の 279 倍
軌道長半径:0.05883 AU
半径:2.66 地球半径
日射量:地球の 160 倍
軌道長半径:0.07807 AU
半径:3.29 地球半径
日射量:地球の 91.1 倍
軌道長半径:0.10430 AU
半径:2.81 地球半径
日射量:地球の 51.0 倍
arXiv:1801.03874
Christiansen et al. (2018)
The K2-138 System: A Near-Resonant Chain of Five Sub-Neptune Planets Discovered by Citizen Scientists
(K2-128 系:市民科学者によって発見された共鳴鎖に近い 5 個のサブネプチューン惑星)
概要
K2-138 は,適度に明るく (V = 12.2,K = 10.3),主系列の K 型星である,この恒星は,ケプラーの K2 ミッションの Campaign 12 の期間に観測された.観測の結果,この恒星はコンパクトな軌道配置にある 5 個の小さい惑星を持つ事が判明した.
軌道周期はそれぞれ 2.35 日,3.56 日,5.40 日,8.26 日,12.76 日で,それぞれが 3:2 共鳴に近い,途切れていない共鳴鎖 (resonant chain) を形成している.
K2 のトランジット時刻精度では,共鳴鎖にある惑星に期待される 2 - 5 分のトランジット時刻変動は検出されていない.しかい,例えばスピッツァー宇宙望遠鏡や将来の CHEOPS での高頻度観測によって,トランジット時刻変動を観測可能だろうと考えられる.
推定される惑星の質量は,高精度の視線速度測定で測定することが可能な範囲である.従って K2-138 系は,視線速度とトランジット時刻変動の両方から推定される質量を比較するための良いベンチマークとなるだろう.
今回発見された K2-138 まわりの系外惑星は,Zooniverse platform での Exoplanet Explorer プロジェクトに参加している市民科学者による,初めての系外惑星の発見例である.
パラメータ
K2-138
別名:EPIC 245950175光度:V = 12.2,K = 10.3
スペクトル型:K1V
有効温度:5378 K
金属量:[Fe/H] = 0.16
半径:0.86 太陽半径
質量:0.93 太陽質量
距離:183 pc
K2-138b
軌道周期:2.35322 日軌道長半径:0.03380 AU
半径:1.57 地球半径
日射量:地球の 486 倍
K2-138c
軌道周期:3.55897 日軌道長半径:0.04454 AU
半径:2.52 地球半径
日射量:地球の 279 倍
K2-138d
軌道周期:5.40478 日軌道長半径:0.05883 AU
半径:2.66 地球半径
日射量:地球の 160 倍
K2-138e
軌道周期:8.26144 日軌道長半径:0.07807 AU
半径:3.29 地球半径
日射量:地球の 91.1 倍
K2-138f
軌道周期:12.75759 日軌道長半径:0.10430 AU
半径:2.81 地球半径
日射量:地球の 51.0 倍
論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1801.03384
Müller et al. (2018)
On the diversity in mass and orbital radius of giant planets formed via disk instability
(円盤不安定を介して形成される巨大惑星の質量と軌道半径の多様性について)
より現実的なギャップ形成基準を適用した場合,惑星による円盤のギャップは稀にしか形成されないという結果となった,この結果は,原始惑星クランプの生存率とその物理特性 (質量・半径・動径距離) に大きな影響を与える.
形成された原始惑星クランプのうち最後まで生存するポピュレーションは,小さい軌道半径ではより軽いものが多くなることが示唆された.また,生き残るクランプのポピュレーションは,モデルの仮定と使用するパラメータに敏感であることも分かった.選択するパラメータによって,原始惑星は 0.01 - 16 木星質量の質量範囲を占め,軌道間隔としては,中心星の近くを公転するか,75 AU 程度の遠方を公転するかであった.また,重いものについては 10 - 30 AU の範囲にスイートスポットがある.
しかし,今回考慮したすべての場合において,非常に遠方での重い巨大惑星の形成は少なく,これは現在の直接撮像サーベイと定性的に一致する結果である.
arXiv:1801.03384
Müller et al. (2018)
On the diversity in mass and orbital radius of giant planets formed via disk instability
(円盤不安定を介して形成される巨大惑星の質量と軌道半径の多様性について)
概要
中心星から 80 - 120 AU の距離で発生する円盤不安定によって形成される,原始惑星クランプの半解析的種族合成モデルを提案する.ここでは,様々なクランプの密度分布,初期質量関数,原始惑星系円盤モデル,恒星質量,円盤へのギャップ形成基準を考慮した.より現実的なギャップ形成基準を適用した場合,惑星による円盤のギャップは稀にしか形成されないという結果となった,この結果は,原始惑星クランプの生存率とその物理特性 (質量・半径・動径距離) に大きな影響を与える.
形成された原始惑星クランプのうち最後まで生存するポピュレーションは,小さい軌道半径ではより軽いものが多くなることが示唆された.また,生き残るクランプのポピュレーションは,モデルの仮定と使用するパラメータに敏感であることも分かった.選択するパラメータによって,原始惑星は 0.01 - 16 木星質量の質量範囲を占め,軌道間隔としては,中心星の近くを公転するか,75 AU 程度の遠方を公転するかであった.また,重いものについては 10 - 30 AU の範囲にスイートスポットがある.
しかし,今回考慮したすべての場合において,非常に遠方での重い巨大惑星の形成は少なく,これは現在の直接撮像サーベイと定性的に一致する結果である.