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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1712.01911
Van Grootel et al. (2017)
Stellar parameters for TRAPPIST-1
(TRAPPIST-1 の恒星パラメータ)

概要

TRAPPIST-1 は,7 個のトランジットする地球サイズの惑星を持つ超低温矮星である.現在や次世代の望遠鏡を用いて,これらの惑星の大気特性.居住可能性を含む表層環境,惑星内部組成を網羅的に特徴付けることが可能であると期待される.ただし,これを達成するためには,恒星 TRAPPIST-1 の正確なモデリングが必要である.

ここでは新しい測定結果と進化モデルに基づいて,この恒星のパラメータの更新を行い,その結果を発見論文と比較した.


まず,TRAPPIST-1 の視差を 82.4 ± 0.8 mas と測定した.これは 2013 年 - 2016 年の間の TRAPPIST 望遠鏡と Liverpool Telecsope での 188 期の観測に基づく結果である.
改定された視差の値より,この恒星の光度は (5.22 ± 0.19) × 10^-4 太陽光度と推定された.これは過去の推定値と近いが,精度はほぼ二倍である.

次に恒星質量の推定値の更新を行った.
これには 2 つのアプローチを行った.恒星進化モデルからの質量の推定と,力学的質量が分かっている同様の超低温矮星から導かれた経験的質量を用いるものである.後者の力学的質量は,位置天文的連星 (astrometric binaries) にある超低温矮星の観測から測定されたものである.

これら 2 つの推定質量をモンテカルロ手法を用いて結合し,恒星質量の半経験的な推定を行った.また,この質量をトランジット観測から得られた恒星の密度と組み合わせて恒星の半径を推定した.さらに改訂した光度と半径から,恒星の有効温度も推定した.

最終的な結果は,0.089 ± 0.006 太陽質量,0.121 ± 0.003 太陽半径,有効温度は 2516 ± 41 K である.

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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1712.01285
Garhart et al. (2017)
Spitzer Secondary Eclipses of Qatar-1b
(Qatar-1b のスピッツァー二次食)

概要

ホットジュピター Qatar-1b の Ks バンドでの過去の二次食観測では,この惑星の昼側の温度が非常に高いことが示唆されている.これは,惑星内での熱の再分配が小さいことを示している.
また軌道がやや偏心しているという示唆もあり,この系内にあるかもしれない別の惑星から影響を受けている可能性もある.

ここでは,スピッツァー宇宙望遠鏡を用いた Qatar-1b の二次食 (secondary eclipse) の観測から,この惑星の昼側の温度と軌道離心率についての研究を行った.スピッツァー宇宙望遠鏡の IRAC を用いて,3.6, 4.5 µm の波長で二次食の観測を行った.


観測の結果,3.6 µm での二次食深さは 0.149 ± 0.051%,4.5 µm は 0.273 ± 0.049% であった.

惑星を黒体と仮定して,今回の観測データと最近の Ks バンドでの二次食観測の結果をフィッティングしたところ,惑星の昼側の輝度温度は 1506 K と推定された.この惑星へのモデル大気との比較からは,経度方向の熱の再分配は,大気が昼夜で完全に一様な状態と,熱が全く分配されない状態の中間程度の度合いであることが示唆された.

そのため,この惑星の新しいスペクトルがモデル大気の予測と大きく逸脱していない限り,昼側の温度は過去の地上観測の Ks バンドでの観測から示唆される温度 (1885 K) ほど高くはない.

また,スピッツァー宇宙望遠鏡での平均の中心位相から軌道離心率を求めた所,円軌道と整合的であった.

Qatar-1b について

この惑星は,Qatar Exoplanet Survey (QES,Alsubai et al. 2011) で発見された初めての惑星である.
金属量豊富な K 型矮星を 1.42 日周期で 0.023 AU の距離を公転している.惑星質量は 1.33 木星質量で,半径は 1.18 木星半径である (Covino et al. 2013).

また Ks バンドで二次食 (惑星が恒星の背後に隠れる現象) が検出されており,この観測からはこの惑星がわずかに軌道離心率を持つことが示唆されている (Cruz et al. 2016).過去の Ks バンドの二次食観測は Canada-France-Hawaii Telescope で行われた (Croll et al. 2015).この観測では離心率の証拠は得られず.

Alsubai et al. (2011) では,軌道離心率については円軌道がもっともらしい (離心率はほぼ 0 である) としたが,上限値として 0.24 という値を与えた.

von Essen et al. (2013) はこの系の長期間のトランジット時刻変動を 190 日に渡って観測し,この系内に二番目の天体が存在する可能性を示唆した.この仮説上の二つ目の惑星が,Qatar-1b の軌道離心率を,潮汐円軌道化に対抗して維持している可能性がある.

しかし他の 2 つのトランジット解析では,トランジット時刻変動が存在する証拠についての結論は得られていないか,あるいはトランジット時刻変動の非検出を報告している (Mislis et al. 2015,Maciejewski et al. 2015).

また,Cruz et al. (2016) ではこの惑星の二次食の深さから,昼側の輝度温度が 1885 K であると推定した.

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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1712.01823
Ćuk et al. (2017)
1I/`Oumuamua as a Tidal Disruption Fragment From a Binary Star System
(連星系の潮汐破壊破片としての 1I/オウムアムア)

概要

1I/‘Oumuamua (オウムアムア) は,初めて発見された恒星間小天体である (Bacci et al. 2017).この天体はおそらく 100 m 程度のサイズを持つ.

彗星かと思われた当初の予想に反してこの天体はいかなる活動性も示さず,非常に細長い形状を持つ (Meech et al. 2017).また,減衰していないタンブリング状態の自転を示す (Fraser et al. 2017).

一方でこの天体の軌道は,局所星と共に動いており,比較的近傍の系からの低速度での放出があった場合に期待される特徴を示す (Mamajek 2017).


ここでは,オウムアムアは 100 m サイズの恒星間天体の典型的な例であると仮定し,その起源について考察を行った.

主系列星周りの惑星系の内側から小天体を放出される過程を考えると,巨大惑星による放出は比較的効率が良くない.非揮発性の物質を主成分とする天体を系から放出するという観点では,連星系が条件的により適している.

また,オウムアムアは衝突ポピュレーションの一員ではないと考えられる.このことは,詳細図の小惑星とオウムアムアの間の大きな違いを説明することが出来る.
現実的な衝突ポピュレーション中では 100 m サイズの小天体はわずかな質量しか占めないことが予想され,破壊的な遭遇で惑星全体が破壊される際のイベントが,100 m サイズの恒星間天体のポピュレーションの中で主要である可能性がある.

太陽や木星とは異なり,赤色矮星は非常に高密度で,地球型惑星を潮汐的に完全に破壊出来る可能性がある.ここでは,オウムアムアの起源は潮汐的に破壊された惑星の破片であり,その後に連星系内の高密度な天体によって系から放出されたと考えると,その特性を説明できると結論付けた.

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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1712.00457
Bryan et al. (2017)
Constraints on the Spin Evolution of Young Planetary-Mass Companions
(若い惑星質量伴星の自転進化への制約)

概要

若い星形成領域のサーベイ観測によって,若い恒星周りに存在する惑星質量天体 (planetary mass objects,13 木星質量未満) の発見数が増加している.これらの天体が惑星的に形成されたものなのか (つまり,星周円盤から形成されたのか),あるいは星形成過程の低質量側の存在なのかについては,未だに議論が継続している.

ここでは,3 つの若い (2 - 300 Myr) 惑星質量伴星の自転速度を測定するための高分散分光観測を行った.観測から得られた結果を,データが公開されている別の 2 つの同様の天体の自転速度と合わせて解析し,これらの天体の自転の分布を調べた.

この分布を,質量が 20 木星質量未満の 6 つの褐色矮星の自転の測定値と比較した結果,これらの分布はお互いに区別ができないことが分かった.このことは,これらの 2 つのポピュレーションは同じ機構で形成されたことを示唆しているか.あるいは,これらの天体の自転速度を制御している機構は,天体の形成過程とは独立であることを示唆している.

どちらのポピュレーションでも,自転周期はその天体のブレイクアップ速度 (遠心力で破壊される億度) よりも十分低速であり,質量降着終了後の数億年の間に渡って大きくは進化しないことが示された.
このことは,自転周期は質量降着の後期段階の最中に決まることを示唆しており,これはおそらくは周惑星円盤との相互作用によるものである可能性がある.

今回の結果は,若い惑星質量天体の角運動量の進化を制御するプロセスと,惑星質量天体でのガス降着と円盤との結びつきの物理を理解する上で重要な意味を持つ.

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arXiv:1712.01035
Maldonado et al. (2017)
On the chemical fingerprints of hot Jupiter planets formation
(ホットジュピター惑星形成の化学的痕跡について)

概要

小さな軌道周期 (10 日未満) を持つ木星型惑星 (ホットジュピター) の存在を説明するための現在のパラダイムは,これらの惑星は原始惑星系円盤のスノーラインより遠いところで形成され,その後内側に軌道移動を起こしたというものである.しかしこのパラダイムに対しては,最近研究されているその場形成シナリオ (現在の軌道における形成) の可能性という反論が存在する.

ここでは,ホットジュピターを持つ恒星と,より遠距離に巨大ガス惑星を持つ恒星との間に,異なる形成過程と関連した化学的な特異性があるかどうかを調べた.恒星の化学的な性質は,恒星の高分散エシェルスペクトルの解析に基づいた方法論を用いる.

惑星を持つ 88 個の恒星に対して,恒星のパラメータと,C, O,Na, Mg, Al, Si, S, Ca, Sc, Ti, V, Cr, Mn, Co, Ni, Cu, Zn のそれぞれの元素の存在度を導出した.さらにこれらのサンプルを,ホットジュピター (軌道長半径が 0.1 au 未満のもの) を持つものと,より低温な木星型惑星 (0.1 au 以上) を持つものの 2 つのグループに分割した.その上で,この 2 つのサブサンプルの間の,恒星の金属量と惑星の存在度の間にある傾向を比較した.

その結果,ホットジュピターを持つ恒星は,より低温な木星型惑星を持つ恒星に比べて高い金属量を示すことが判明した.また,より低温な木星型惑星を持つ恒星は,アルファ元素の存在度が大きいという傾向が得られた.
一方で,鉄のピーク,揮発性元素や C/O,Mg/Si 比を考慮した場合,存在度の違いは見られなかった.

低温な木星型惑星を持つ恒星と,ホットジュピターを持つ恒星,それぞれの累積分布を比較する統計的検定に対応する p 値は,金属量が 0.20,アルファ元素の存在度が < 0.01,鉄のピークが 0.81,揮発性物質は 0.16 であった.

また,これまでの研究でも示唆されていた,遠く離れた惑星ほど惑星質量が大きく,また軌道離心率が大きいという傾向を,今回の解析でも確認した.ただし,ホットジュピターを持つ恒星と低温な木星型惑星を持つ恒星の,年齢とスペクトル型の違いは存在度の比較に影響を及ぼす可能性があり,注意が必要である.


結論としては,惑星質量・軌道周期・軌道離心率・恒星の金属量の分布の違いは,ホットジュピターと低温な木星型惑星の形成過程が異なる可能性を示唆するものである.低温な木星型惑星を持つ恒星がわずかに大きなアルファ元素の存在度を示すことは,巨大ガス惑星の形成を可能にする低い金属量を補うものである可能性がある.

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