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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1710.07337
Vogt et al. (2017)
A Six-Planet System Around the Star HD 34445
(HD34445 まわりの 6 惑星系)

概要

視線速度観測のデータから,G0V 星 HD 34445 まわりに複数惑星系が存在することが明らかになった.18 年にわたる 333 セットの詳細な視線速度観測を用いて解析を行った,そのうち 56 セットは過去に出版されたデータであり,277 セットは Keck Observatory (ケック天文台),Magellanat Las Campanas Observatory (ラスカンパナス天文台),Lick Observatory (リック天文台) の Automated Planet Finder で得られた新しいデータである.

これらのデータからは,6 個の惑星の存在が示唆された,軌道周期はそれぞれ 1057, 215, 118, 49, 677, 5700 日であり,最小質量は 0.63, 0.17, 0.1, 0.05, 0.12, 0.38 木星質量である.

この系の惑星は多様性に富み,長い軌道周期を持ち,そして惑星の公転によって引き起こされる恒星の視線速度の半振幅が 2 ~ 5 m s-1 の範囲ある.これらの特徴は,我々の太陽系 (木星と土星のみが大きな太陽の相対速度を生み出す) とも,ケプラーの複数トランジット惑星系 (よりコンパクトな軌道配置を持つ傾向にある) のどちらとも根本的に異なる性質を持つ.

HD 34445 系について

HD 34445 の周りでは,Howard et al. (2010) によって初めて惑星の存在が報告された.

Howard et al. (2010) は視線速度観測によって,最小質量が 0.79 木星質量で軌道周期が 1049 日の,やや偏心した (e = 0.27) 軌道にある惑星の検出を報告した.また同時に,最小質量が 52 地球質量,周期が 117 日の二番目の惑星候補シグナルが存在する可能性についても示唆していた.

HD 34445 (別名 HIP 24681) は,V = 7.31 の明るい G0V 星であり,距離は 45.4 pc と推定される (Gaia Collaboration 2016).

パラメータ

HD 34445
スペクトル型:G0V
質量:1.07 太陽質量
半径:1.38 太陽半径
光度:2.01 太陽光度
年齢:8.5 Gyr
金属量:[Fe/H] = 0.14
有効温度:5836 K
自転周期:~ 22 日
HD 34445b
軌道周期:1056.7 日
軌道離心率:0.014
軌道長半径:2.075 AU
最小質量:0.629 木星質量 (200.0 地球質量)
HD 34445c
軌道周期:214.67 日
軌道離心率:0.036
軌道長半径:0.7181 AU
最小質量:0.168 木星質量 (53.5 地球質量)
HD 34445d
軌道周期:117.87 日
軌道離心率:0.027
軌道長半径:0.4817 AU
最小質量:0.097 木星質量 (30.7 地球質量)
HD 34445e
軌道周期:49.175 日
軌道離心率:0.090
軌道長半径:0.2687 AU
最小質量:0.0529 木星質量 (16.8 地球質量)
HD 34445f
軌道周期:676.8 日
軌道離心率:0.031
軌道長半径:1.543 AU
最小質量:0.119 木星質量 (37.9 地球質量)
HD 34445g
軌道周期:5700 日
軌道離心率:0.032
軌道長半径:6.36 AU
最小質量:0.38 木星質量 (120.6 地球質量)

議論

中心星 HD 34445 の有効温度と光度から,暴走温室効果と最大温室効果の間のハビタブルゾーンは 1.34 - 2.36 AU の範囲と推定される (Kopparapu et al. 2014).そのため,この系には地球的なハビタブル惑星が存在する余地が無いことを示唆している.

しかし,HD3445b, f に地球サイズの衛星が存在した場合,その表面には液体の水を持つ可能性がある.

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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1710.07489
Wu et al. (2017)
An Explanation of the Very Low Radio Flux of Young Planet-mass Companions
(若い惑星質量伴星からの非常に低い電波フラックスの説明)

概要

Atacama Large Millimeter/submillimeter Array (ALMA) での 1.3 mm 連続波観測で,DH Tau B, CT Cha B, GSC 6214-210 B, 1RXS 1609 B, GQLup B が持つ,惑星質量の伴星からの電波放射の上限値について報告する.

今回のサーベイでは,これらの若い惑星質量伴星の周囲に円盤が存在する可能性について,否定的な結果が得られた.
また,天体周囲に存在するダスト質量に対して厳しい上限値を与えた.ダスト質量は,典型的には 0.1 地球質量未満である.これはダスト連続波が光学的に薄い場合を仮定した上での推定である.


ガス・ダストの存在量が少ないという今回の結果は,降着率から推定される円盤の寿命が,その系の年齢よりもずっと短いことを示すものである.
このタイムスケールの違いを説明するため,大きな軌道間隔を持った伴星の周囲に存在する円盤は,非常にコンパクトで光学的に厚い構造を持っている可能性を提案する.その場合,数 Myr の間降着を維持しているものが,ALMA で検出できないほどの弱い (サブ) ミリ波を持つ.

ここではその可能性についてのオーダー推定を行い,コンパクトで光学的に厚い円盤は,大きさが 1000 木星半径よりも小さく,(サブ) ミリ波では ~ µJy 程度のフラックスしか持たないが,それらの平均温度は星周円盤の温度よりも高くなりうるということを示す.

周惑星円盤のこのような高い温度は,円盤中での衛星形成を阻害する.しかしこのことは,円盤の特性を観測するには,電波よりも中間赤外線〜遠赤外線の波長帯が適している事を示唆する.


最後に,予想されるコンパクトな円盤サイズは,伴星と恒星の間の力学的な遭遇が原因である可能性,あるいは恒星系の中における別の散乱が存在する可能性を示唆する.

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2017 年 10 月 25 日 (UT) に,太陽系外に起源を持つと思われる小天体 1I/2017 U1 (ʻOumuamua) の発見が報告されました (正確には,この天体が太陽系外起源である可能性がこの日に指摘されました).
その内容について簡単にまとめておくことにしました.気が向いた時に随時追加.
(2017 年 11 月 13 日 最終更新)

基本情報

JPL Small-Body Database Browser - 'Oumuamua (A/2017 U1)
NASA/JPL の小天体データベースの 1I/2017 U1 (ʻOumuamua) のページ

MPEC 2017-U181: COMET C/2017 U1 (PANSTARRS)
双曲線軌道にあり恒星間天体である可能性に初めて言及した MPC のサーキュラー

MPEC 2017-U183: A/2017 U1
彗星ではなく小惑星であることを報告した MPC のサーキュラー

MPEC 2017-V17 : NEW DESIGNATION SCHEME FOR INTERSTELLAR OBJECTS
恒星間天体としての仮符号の創設,ならびに固有名 ʻOumuamua の命名に関する MPC のサーキュラー

発見

Pan-STARRS サーベイによる発見

この天体が発見されたのは 2017 年 10 月 19 日である.

ハワイ・ハレアカラ (Haleakala) にある,ハワイ大学の Pan-STARRS 1 望遠鏡によって初めて検出された.この望遠鏡では NASA の地球近傍天体 (near-Earth objects) の探索プログラムが行われており,ハワイ大学の Institute for Astronomy のポスドク研究員である Rob Weryk がこの天体を最初に同定し,Minor Planet Center (MPC, 小惑星センター) へ届け出た.

Weryk が直後に Pan-STARRS (パンスターズ) の画像アーカイブを調べたところ,この天体の画像が前日の夜にも撮像されていたが,この時は見落とされていたことも判明した.
※出典 Small Asteroid or Comet 'Visits' from Beyond the Solar System | NASA


なお,パンスターズは "The Panoramic Survey Telescope and Rapid Response System" の略称であり,ハワイ大学の Institute of Astronomy によって運営されている広視野観測プロジェクトの名称である.地球近傍天体の捜索を行っており,このサーベイ観測の一環で発見された彗星 (パンスターズ彗星) も多数存在する.

彗星として認識

この天体は当初彗星であると考えられたため,C/2017 U1 という仮符号が与えられた.
C/ は彗星を意味する "comet" から来ており,ひとまず彗星として観測された天体にはこの "C/" というプレフィックスが与えられる.

パンスターズのサーベイによって発見されたため,C/2017 U1 (PANSTARRS) という表記になることもある.これは,彗星の名称は発見者もしくは発見グループの名前が早い順に 3 つまで (自動的に) 付けられるためである.小惑星の場合は発見者に命名提案権が与えられるのみであり,ルールに従って提案した名称が国際天文学連合で承認されるまで固有名は与えられない.
なお後述の様に,この天体は直後に彗星ではないことが判明したため,C/2017 U1 も C/2017 U1 (PANSTARRS) も使用されない.


なお彗星の仮符号に関しては,"2017" は発見された年を意味し,その後の英数字は発見された年の中での時期と,さらにその中での発見順を意味している.

具体的には,1 年を半月毎に 24 分割し (各月を 1 〜 15 日と 16 日〜月末の 2 つに分割),それぞれにアルファベットを順番に与えている.ただし,"I" は "1" や "J" との混同を避けるため使用せず,また "Z" も使用しない.そのため,"U" は 10 月の後半を意味することになる.従って,C/2017 U1 という仮符号は,2017 年 10 月後半に発見された 1 番目の彗星,という意味を持つ.
※参考 新天体の仮符号:彗星 (国立天文台)

プレフィックスにも複数の種類があり,前述の通り,ひとまず彗星と見做された天体には "C/" が与えられる.
その後,当該彗星が周期彗星 (ここでの周期彗星は軌道周期がおおむね 200 年未満のものを指す) であることが確定した場合は,プレフィックスが "P/" に改められる.これは周期彗星の "periodic comet" から採られたものだと思われる.従って,周期彗星ではなかったり,長周期彗星・非周期彗星である場合は,プレフィックスは "C/" のままとなる.

彗星が消滅した (木星に衝突した,太陽接近時に破壊されたなど) 場合には,プレフィックスは "D/" に置き換えられる.例えば,木星に衝突して消滅したシューメーカー・レヴィ第9彗星の場合は,仮符号は D/1993 F2 となっている.
また,軌道が確定されなかった彗星の場合は,プレフィックスは "X/" となる.さらに,彗星と思われていたため "C/" と付けられたものの,後に小惑星であることが判明した場合は,プレフィックスは "A/" に改められる.これは小惑星 (asteroid) に由来すると思われる.


なお,周期彗星であることが確定し "P/" のプレフィックスが与えられた彗星のうち,周期彗星の番号が確定したものは,"1P/" の様に番号を頭につけて表す.さらに彗星の固有名が命名された場合は,"/" 以下に固有名を付けて表現する場合もある.
例えば周期彗星 1 番目のハレー彗星の場合は 1P/Halley,55 番目のテンペル・タットル彗星は 55P/Tempel-Tuttle,332 番目の池谷・村上彗星は 332P/Ikeya–Murakami となる.

その後の推移

著しい双曲線軌道

その後の観測で,この天体の軌道離心率が大きな値を示すことが報告された.これは,小惑星センターの発行している電子版のサーキュラー (Minor Planet Electronic Circular, MPEC) で公表された.

2017 年 10 月 25 日 3:53 (UT) の MPC の発表で,軌道離心率がおよそ 1.2 であることが公表された
※出典 MPEC 2017-U181: COMET C/2017 U1 (PANSTARRS)

ここでは,今後の観測でこの軌道の特性が確定した場合は,この天体は初めての "interstellar comet" (星間彗星・恒星間彗星) であることが指摘された.
Although it is probably not too sensible to compute meaningful original and future barycentric orbits, given the very short arc of observations, the orbit below has e ~ 1.2 for both values. If further observations confirm the unusual nature of this orbit, this object may be the first clear case of an interstellar comet.
太陽に重力的に束縛されている天体は楕円軌道となり,その軌道離心率は 1 よりも小さくなる.惑星は円に近い (離心率が 0 に近い) 軌道を持っているが,一部の小惑星や彗星は離心率の大きな細長い楕円軌道を持つ.特に太陽系の外縁部に起源を持つ長周期・非周期の彗星の場合は,軌道離心率がほぼ 1 の軌道になるものがある.

長周期・非周期彗星の場合,惑星との遭遇によって軌道離心率が 1 を上回る放物線軌道・双曲線軌道になる場合がある.しかし今回のように離心率が 1 を大きく超えた値を示す天体はこれが初めてであり,離心率 1.2 という双曲線軌道は,この天体が太陽の重力に束縛されておらず太陽系外に起源を持つ天体である可能性を強く示唆している

なお,これまでに発見されていた天体で最も大きな軌道離心率を持つものは,ボーエル彗星 (C/1980 E1 (Bowell)) で e ~ 1.0577 であった.(※出典 JPL Small-Body Database Browser の C/1980 E1 (Bowell) のページより)
これと比較すると,軌道離心率がおよそ 1.2 というのは際立って大きな値である.

なお,2017 年 11 月 13 日時点での JPL Small-Body Database におけるこの天体の軌道離心率は,e = 1.199347117975996 となっている.
※出典 JPL Small-Body Database Browser

彗星ではなく小惑星であることが判明

その直後,2017 年 10 月 25 日 22:22 (UT) の MPC の発表で,この天体は彗星ではなく小惑星である事が発表された.
※出典 MPEC 2017-U183: A/2017 U1

この発表によると,ハワイ大学 Institute of Astronomy の K. Meech による,チリの超大型望遠鏡 (Very Large Telescope,VLT) を用いた観測の結果,この天体は完全に恒星状に見える (すなわち,彗星の特徴であるコマの存在など,彗星としての活動が見られない) という事が判明した.
K. Meech (Institute of Astronomy, University of Hawaii) reports that in a very deep stacked image, obtained with the VLT, this object appears completely stellar.
そのため,上述のプレフィックスのルールに従い,C/2017 U1 は A/2017 U1 と名称が変更されることとなった.

恒星間天体としての仮符号および命名

A/2017 U1 は初の明確な太陽系外に起源を持つと思われる天体であり,その軌道や物理的性質について様々な議論が盛り上がり,またニュースにもなった.そんな中,2017 年 11 月 6 日に MPEC で,この天体の仮符号のプレフィックスのさらなる変更と,固有名の付与についてアナウンスされた.
※出典 MPEC 2017-V17 : NEW DESIGNATION SCHEME FOR INTERSTELLAR OBJECTS

ここでは,恒星間天体に与える仮符号のプレフィックスとして,"I/" を新たに加えることを発表している.これは恒星間天体 "interstellar object" の "I" であると考えられる.
A new series of small-body designations for interstellar objects will be introduced: the I numbers.
これに基づき,A/2017 U1 であった仮符号は,1I/2017 U1 に改められることになった.冒頭の数字の 1 は,番号が確定した周期彗星の頭につけられる番号と同様に,「1 番目の恒星間天体」であることを意味している.


さらに,このサーキュラーでは,この天体に ʻOumuamua という固有名を与えることも発表している.この名前はパンスターズのチームによって提案されたものであり,偵察者・斥候 (scout) や使者 (messenger) を意味するハワイ語が由来である.
MPEC によると,"ʻou" は "reach out for" (〜に向かって手を伸ばす,〜を得ようとする,など) という意味があり,"mua" は "first" や "in advance of" (初めての,〜より先に,など) という意味,さらにそれを 2 回繰り返して "muamua" とすることでその意味を強調する役割がある.
Accordingly, the object A/2017 U1 receives the permanent designation 1I and the name ʻOumuamua. The name, which was chosen by the Pan-STARRS team, is of Hawaiian origin and reflects the way this object is like a scout or messenger sent from the distant past to reach out to us (ʻou means reach out for, and mua, with the second mua placing emphasis, means first, in advance of).
これによって,この天体の正しい表記は
1I (恒星間天体としての番号のみで表す場合)
1I/2017 U1 (仮符号を用いて表す場合)
1I/ʻOumuamua (固有名を用いて表す場合)
1I/2017 U1 (ʻOumuamua) (仮符号と固有名を併記する場合)
となる.

日本語表記に関しては特に取り決めなどはされていないものの,「オウムアムア」が表記として妥当であろうと考えられる.


なお 10 月末から 11 月頭にかけてメディアでも話題となったが,この新しいプレフィックスの創設より前であったため,メディアでは "A/2017 U1" の名称で報道されているものが多い.

1I/2017 U1 (ʻOumuamua) に関する論文・議論など

To be updated...

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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1710.07203
Livingston et al. (2017)
Three Small Planets Transiting a Hyades Star
(ヒアデスの恒星をトランジットする 3 つの小さい惑星)

概要

ヒアデス星団 (Hyades cluster) 中の晩期 K 型星 LP 358-348 まわりの,3 つのトランジットする小型の惑星の発見について報告する.これらの惑星は,ケプラーの K2 ミッションの Campaign 13 の期間に観測された.

この系の年齢は推定 600 - 800 Myr (6 - 8 億歳) であるため,今回発見されたこれらの惑星は,これまでに知られている中で最も若く小さい惑星となる

中心星は比較的明るく (J = 9.1),またやや不活発な恒星であるため,視線速度測定による質量測定や透過スペクトル観測を介した将来的な惑星の特徴付けを行うのに適した対象である.
この恒星は,星団中に存在する恒星が複数のトランジット惑星を持つ事が確認された初めての例であり,惑星形成と形成後の惑星移動の理論を検証するために役立つと考えられる.

パラメータ

LP 358-348
別名:EPIC 247589423
質量:0.686 太陽質量
半径:0.723 太陽半径
有効温度:4359 K
金属量:[Fe/H] = 0.17
光度:0.171 太陽光度
自転周期:13.6 日
距離:63.5 pc
LP 358-348b
軌道周期:7.9757 日
半径:1.05 地球半径
LP 358-348c
軌道周期:17.30681 日
半径:3.14 地球半径
LP 358-348d
軌道周期:25.5715 日
半径:1.55 地球半径

その他

2 惑星の同時トランジット

LP 358-348b と LP 358-348d は,トランジットが部分的に被っているのが観測された.K2 の光度曲線の精度と,光度の測定が 30 分で平均されている影響で,惑星同士が相互食を起こしていたかどうかは不明である.

この同時トランジットから天体暦への制約が与えられ,次の二重トランジットは 2019 年 8 月 31 日 11:36 (UT) に発生すると予測される.

LP 358-348d の特性

惑星の質量-半径の経験的な関係則 (Wolfgang et al. 2016) を用いると,LP 358-348b, c, d の質量はそれぞれ 1.5 地球質量,11.6 地球質量,4.6 地球質量と推定される.

LP 358-348d の軌道長半径は 0.1624 AU と推定され,この軌道での日射量は地球の 6.5 倍に相当する,これは太陽系で言う現在の金星に近い環境であり,ハビタブルゾーン (Kopparapu et al. 2013) の内縁よりも内側にある.

LP 358-348d のボンドアルベドを 0.3 と仮定すると,平衡温度は 430 K となる,
惑星半径は 1.55 地球半径であり,岩石惑星とガス惑星の境界付近に位置する,温暖な小さい惑星の大気と組成を探る対象として興味深い.

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arXiv:1710.06479
Casasayas-Barris et al. (2017)
Detection of sodium in the atmosphere of WASP-69b
(WASP-69b の大気におけるナトリウムの検出)

概要

トランジット分光観測は,系外惑星の大気を特徴づける手段として最もよく使われる.地上からの観測の場合,地球の大気やその変動の影響で観測は非常に難しいが,高スペクトル分解能での観測を行うことによってこの困難を乗り越えている.

ここでは WASP-69b の,589 nm の Na I doublet 線周辺の波長帯における大気の透過スペクトルを分析した.この惑星は K 型星の周りを公転するホットジュピターであり,軌道周期は 3.969 日である.
この惑星の解析結果を,よく知られているホットジュピター HD 189733b の透過スペクトルと比較した.また WASP-69b のロシター効果 (Rossiter-McLaughlin effext) の分析も行った.

WASP-69b の観測は,TNG 望遠鏡にある High Accuracy Radial velocity Planet Searcher (HARPS-North) の分光器 (分解能 R = 115000) を用いて,合計 2 回のトランジットを観測した.取得したスペクトルと,地球大気の水蒸気のモデルを用いて,スペクトルへの地球大気による混入を除去した.そして,微分分光観測と共通の手段を用いて惑星大気の透過スペクトルを抽出した.
この手法は,これまでに広く研究されている系外惑星 HD 189733b のアーカイブトランジットデータを用いて検証し,その後 WASP-69b のデータ解析に適用している.

HD 189733b では,Na I doublet 線をスペクトル分解することが出来た,またスペクトル線のコントラストに対して,D2 線が 0.72%,D1 線が 0.51%,半値全幅はそれぞれ 0.64 Å と 0.60 Å という制約を与えた,これは過去の観測結果と一致する結果である.

WASP-69b の場合,D2 ラインのコントラスト 5.8%のみが測定された.これは 1.5 Å のパスバンドでの 0.5%の超過吸収を 5 σ で検出したことに相当する結果である.

HD 189733b で測定された合計の青方偏移は ~ 0.04 Åであったが, WASP-69b では検出されなかった.
ロシター効果に関しては,角回転が 0.24 rad/day と測定された,天球面に射影した恒星の自転軸と惑星の公転軸の角度は 0.4°と推定される.
また HD 189733b の結果については,過去に得られていたものと一致した.

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