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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1710.09977
Masiero et al. (2017)
Palomar Optical Spectrum of Hyperbolic Near-Earth Object A/2017 U1
(双曲線軌道の地球近傍天体 A/2017 U1 のパロマー可視光スペクトル)
この天体は,後の詳細な観測で彗星活動が見られなかったことを受け,A/2017 U1 と命名し直された.(※注釈:これらは小天体に付けられる仮符号であり,C は彗星,A は小惑星を意味している)
A/2017 U1 は双曲線軌道にあり,その軌道離心率は 1.191 ± 0.007 である.この天体の無限遠点での太陽に対する速度は ~ 25 km/s であり,太陽系の外部に起源を持つ天体である可能性があることを示唆している.そのためこの天体は,太陽に重力的に束縛されていない初めての小天体である.
この天体の存在が公表された時点で,パロマー山の Hale 5 m 望遠鏡の DBSP 可視光分光器を用いた観測を行っていた.ここでは A/2017 U1 の分光観測の結果について報告する.
観測は,A/2017 U1 の発見がアナウンスされた直後の UT (Universal Time, 世界時) 2017 年 10 月 25 日に行った.この時点で,A/2017 U1 は位相角が α = 19°,地球からの距離は 0.4 AU であった.
観測した時点で A/2017 U1 は V ~ 21 等級の明るさであったが,これは Hale 望遠鏡を持ってしても難しい観測対象であった.さらに,観測時の大気のシーイングはあまり良くなく,変動があり (2 - 3”),バックグラウンドの水準を超える検出可能なフラックスは無かった.
この天体の積分に費やした 3 時間のうち 3 分の 1 のみが,天体からのフラックスが見える有用なデータであった.合計で,300 秒の積算の 10 回の露光を組み合わせて,最終的なスペクトルを得た.使用したデータを取得したのは,UT 2017 年 10 月 25 日の 6:13 から 09:17 である.
平坦なスペクトルからはわずか 2 σ のずれではあったが,SMASS サーベイ (Bus & Binzel 2002) で見つかっているどの分類よりも赤い色を示した.
測定されたスペクトルのスロープを単純に SDSS の g-r と r-z 色に変換すると (Fukugita et al. 1996),g-r = 0.47 と r-z = 0.58 という値を得た.これは,Col-OSSOS サーベイ (Pike et al. 2017) で得られているカイパーベルト天体のうち,非常に赤い色を持つ天体の値と同程度である (ただしこの観測では誤差が大きい).
今回の観測ではシグナルノイズ比が低いため,得られたデータについては非常に限定的な解釈しか出来なかった.しかし,A/2017 U1 は可視光の波長では赤みがかった色を持つように思われる.また,観測した波長の範囲では目立った吸収の特徴は見られなかった.
ニュースにもなった,太陽系外からやってきた可能性がある小天体 A/2017 U1 の分光観測の結果です.
スペクトルには目立った特徴は無く,一部のエッジワース・カイパーベルト天体と似たような赤っぽい色を示す可能性があるようです.
当初は彗星として C/2017 U1 という仮符号が与えられていましたが,彗星的な活動が見られなかったため,小惑星として A/2017 U1 という仮符号が与え直されました (C は comet,A は asteroid).
その後さらに,太陽系外に起源を持つ天体であることを示すため,I1/2017 U1 という仮符号が与え直されました.I は "interstellar" で,星間天体 (interstellar object) を意味しています.
arXiv:1710.09977
Masiero et al. (2017)
Palomar Optical Spectrum of Hyperbolic Near-Earth Object A/2017 U1
(双曲線軌道の地球近傍天体 A/2017 U1 のパロマー可視光スペクトル)
概要
2017 年 10 月 25 日,Minor Planet Center (MPC, 小惑星センター) が,Minor Planet Electronic Circular (MPEC) において C/2017 U1 の発見をアナウンスした.この天体は,後の詳細な観測で彗星活動が見られなかったことを受け,A/2017 U1 と命名し直された.(※注釈:これらは小天体に付けられる仮符号であり,C は彗星,A は小惑星を意味している)
A/2017 U1 は双曲線軌道にあり,その軌道離心率は 1.191 ± 0.007 である.この天体の無限遠点での太陽に対する速度は ~ 25 km/s であり,太陽系の外部に起源を持つ天体である可能性があることを示唆している.そのためこの天体は,太陽に重力的に束縛されていない初めての小天体である.
この天体の存在が公表された時点で,パロマー山の Hale 5 m 望遠鏡の DBSP 可視光分光器を用いた観測を行っていた.ここでは A/2017 U1 の分光観測の結果について報告する.
観測は,A/2017 U1 の発見がアナウンスされた直後の UT (Universal Time, 世界時) 2017 年 10 月 25 日に行った.この時点で,A/2017 U1 は位相角が α = 19°,地球からの距離は 0.4 AU であった.
観測した時点で A/2017 U1 は V ~ 21 等級の明るさであったが,これは Hale 望遠鏡を持ってしても難しい観測対象であった.さらに,観測時の大気のシーイングはあまり良くなく,変動があり (2 - 3”),バックグラウンドの水準を超える検出可能なフラックスは無かった.
この天体の積分に費やした 3 時間のうち 3 分の 1 のみが,天体からのフラックスが見える有用なデータであった.合計で,300 秒の積算の 10 回の露光を組み合わせて,最終的なスペクトルを得た.使用したデータを取得したのは,UT 2017 年 10 月 25 日の 6:13 から 09:17 である.
結果
得られた A/2017 U1 のスペクトル中は,目立った特徴は示さなかった.平坦なスペクトルからはわずか 2 σ のずれではあったが,SMASS サーベイ (Bus & Binzel 2002) で見つかっているどの分類よりも赤い色を示した.
測定されたスペクトルのスロープを単純に SDSS の g-r と r-z 色に変換すると (Fukugita et al. 1996),g-r = 0.47 と r-z = 0.58 という値を得た.これは,Col-OSSOS サーベイ (Pike et al. 2017) で得られているカイパーベルト天体のうち,非常に赤い色を持つ天体の値と同程度である (ただしこの観測では誤差が大きい).
今回の観測ではシグナルノイズ比が低いため,得られたデータについては非常に限定的な解釈しか出来なかった.しかし,A/2017 U1 は可視光の波長では赤みがかった色を持つように思われる.また,観測した波長の範囲では目立った吸収の特徴は見られなかった.
ニュースにもなった,太陽系外からやってきた可能性がある小天体 A/2017 U1 の分光観測の結果です.
スペクトルには目立った特徴は無く,一部のエッジワース・カイパーベルト天体と似たような赤っぽい色を示す可能性があるようです.
当初は彗星として C/2017 U1 という仮符号が与えられていましたが,彗星的な活動が見られなかったため,小惑星として A/2017 U1 という仮符号が与え直されました (C は comet,A は asteroid).
その後さらに,太陽系外に起源を持つ天体であることを示すため,I1/2017 U1 という仮符号が与え直されました.I は "interstellar" で,星間天体 (interstellar object) を意味しています.
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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1710.03556
Hammond & Pierrehumbert (2017)
Linking the Climate and Thermal Phase Curve of 55 Cancri e
(かに座55番星e の気候と熱的位相曲線の関係)
この惑星の位相曲線は大きな振幅を持ち,さらに極大の位置のずれがある事が報告されている (最も高温の領域が,恒星直下点からずれている).この事は,この惑星が大きな昼夜間の温度差を持っているという事だけではなく,ホットスポットが東方向へ有意にずれている事を示唆する.
ここでは,かに座55番星e の気候をモデル化するために,general circulation model を使用し,惑星全体の大気組成と,一見すると相反する特徴 (大きな昼夜間温度差とホットスポットのずれ) の関係性を調べた.
その結果,潮汐固定された大気循環の理論モデルは,かに座55番星e の数値モデルと整合的であった.また,それらの熱力学特性に基づいて,大気組成の候補のいくつかを否定した.
今回の結果に最もよく合うモデル大気は,観測された位相曲線ほどは大きくないが,有意なホットスポットのずれと昼夜間温度差を持つことが分かった.
ここでは,観測を説明できるような,起こりうる物理過程について議論する.
惑星の昼側にあるマグマオーシャンから夜側へやってくる SiO などの分子種は,夜側で雲を形成する可能性がある.この雲が,位相曲線の振幅を大きく見せる可能性があり,また観測的な特徴を説明できる.
結論としては,惑星が平均分子量が小さく光学的に厚い大気を持っており,表面圧力は数バールで強い東向きの大気循環を持ち,さらに夜側の大気で雲形成が発生している場合,大気モデルと観測結果の違いを説明することができる.
このスーパーアースは McArther et al. (2004) により,8.63 地球質量,2.00 地球半径と測定されている.軌道は中心星に近く,潮汐的に固定された軌道,軌道周期は 0.737 日である.
Demory et al. (2016) では,得られた位相曲線から惑星表面の温度マップを作成している.また,4.5 µm での輝度温度を 2700 ± 270 K と測定し,昼夜間の温度差として 1300 ± 670 K,ホットスポットのずれは東向きに 41 ± 12° という値を得ている.
この惑星は “lava planet” (溶岩惑星) として知られている.
惑星が中心星に非常に近い軌道にあり潮汐固定されており,惑星の昼側にはマグマオーシャンが存在していると考えられる.
このような惑星の大気は,マグマオーシャンから脱ガスした薄いミネラル蒸気で構成されているという説がある (Leger et al. 2011など).このような薄い大気の表面圧力は数ミリバールかそれ以下であり,マグマオーシャンの中で発生しうる横方向の熱の再分配以外では熱を多く輸送することが出来ない (※注釈:大気が希薄な場合,大気による熱輸送はあまり期待できない).
そのためこの惑星は,Maurin et al. (2012) で議論されているような,非常に寒冷な夜側半球を持つ大気のない岩石惑星が示すものに非常に似た光度曲線を持つことが予想されたが,観測結果はそれとは大きく異なっていた.
そのため,水素分子を主体とした大気がこの惑星で維持されるかは疑わしい.しかし系外惑星ではこれまでの常識では考えられないような状態が発見されてきた.そのため,ここではこの惑星が水素分子を主体とする大気を持っている可能性について真剣に考え,Demory et al. (2016) で測定された位相曲線の特徴は,低分子量の大気が示す特徴と一致するか,あるいは否定されるかを検証した.
arXiv:1710.03556
Hammond & Pierrehumbert (2017)
Linking the Climate and Thermal Phase Curve of 55 Cancri e
(かに座55番星e の気候と熱的位相曲線の関係)
概要
かに座55番星e (55 Cancri e, あるいは 55 Cnc e) の熱位相曲線 (themal phase curve) の観測は,自転が公転に潮汐的に固定されているスーパーアースの,初めての表面温度分布の測定結果である.しかしその観測結果は,この惑星の気候に関するいくつもの不可解な問題を産んだ.この惑星の位相曲線は大きな振幅を持ち,さらに極大の位置のずれがある事が報告されている (最も高温の領域が,恒星直下点からずれている).この事は,この惑星が大きな昼夜間の温度差を持っているという事だけではなく,ホットスポットが東方向へ有意にずれている事を示唆する.
ここでは,かに座55番星e の気候をモデル化するために,general circulation model を使用し,惑星全体の大気組成と,一見すると相反する特徴 (大きな昼夜間温度差とホットスポットのずれ) の関係性を調べた.
その結果,潮汐固定された大気循環の理論モデルは,かに座55番星e の数値モデルと整合的であった.また,それらの熱力学特性に基づいて,大気組成の候補のいくつかを否定した.
今回の結果に最もよく合うモデル大気は,観測された位相曲線ほどは大きくないが,有意なホットスポットのずれと昼夜間温度差を持つことが分かった.
ここでは,観測を説明できるような,起こりうる物理過程について議論する.
惑星の昼側にあるマグマオーシャンから夜側へやってくる SiO などの分子種は,夜側で雲を形成する可能性がある.この雲が,位相曲線の振幅を大きく見せる可能性があり,また観測的な特徴を説明できる.
結論としては,惑星が平均分子量が小さく光学的に厚い大気を持っており,表面圧力は数バールで強い東向きの大気循環を持ち,さらに夜側の大気で雲形成が発生している場合,大気モデルと観測結果の違いを説明することができる.
かに座55番星e について
かに座55番星e の特徴
スーパーアースに属する系外惑星の初めての位相曲線は,Demory et al. (2016) によってスピッツァー宇宙望遠鏡を用いて観測された.この時観測されたのがかに座55番星e である.この惑星の可視光でのトランジット観測は Winn et al. (2011) で得られており,また赤外線でのトランジットも観測されている (Demory et al. 2011).このスーパーアースは McArther et al. (2004) により,8.63 地球質量,2.00 地球半径と測定されている.軌道は中心星に近く,潮汐的に固定された軌道,軌道周期は 0.737 日である.
観測された位相曲線
観測された熱的な位相曲線は大きな振幅を持っており,また二次食のタイミングと位相曲線が極大になるタイミングの間にはずれがあることが発見されている.Demory et al. (2016) では,得られた位相曲線から惑星表面の温度マップを作成している.また,4.5 µm での輝度温度を 2700 ± 270 K と測定し,昼夜間の温度差として 1300 ± 670 K,ホットスポットのずれは東向きに 41 ± 12° という値を得ている.
この惑星は “lava planet” (溶岩惑星) として知られている.
惑星が中心星に非常に近い軌道にあり潮汐固定されており,惑星の昼側にはマグマオーシャンが存在していると考えられる.
このような惑星の大気は,マグマオーシャンから脱ガスした薄いミネラル蒸気で構成されているという説がある (Leger et al. 2011など).このような薄い大気の表面圧力は数ミリバールかそれ以下であり,マグマオーシャンの中で発生しうる横方向の熱の再分配以外では熱を多く輸送することが出来ない (※注釈:大気が希薄な場合,大気による熱輸送はあまり期待できない).
そのためこの惑星は,Maurin et al. (2012) で議論されているような,非常に寒冷な夜側半球を持つ大気のない岩石惑星が示すものに非常に似た光度曲線を持つことが予想されたが,観測結果はそれとは大きく異なっていた.
かに座55番星e の大気
Tsiaras et al. (2016) が報告したトランジット深さのスペクトルからは,厚い水素分子に富んだ大気を持っている必要があることが示唆された.しかし Lammer et al. (2013) によると,かに座55番星e のような惑星が持つ水素分子大気は,2.8 × 109 g s-1 の散逸率でハイドロダイナミックエスケープを起こすと考えられる.これは,10 bar の大気は 100 万年以内に失われてしまう事を示唆している.そのため,水素分子を主体とした大気がこの惑星で維持されるかは疑わしい.しかし系外惑星ではこれまでの常識では考えられないような状態が発見されてきた.そのため,ここではこの惑星が水素分子を主体とする大気を持っている可能性について真剣に考え,Demory et al. (2016) で測定された位相曲線の特徴は,低分子量の大気が示す特徴と一致するか,あるいは否定されるかを検証した.
論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1710.02427
Cubillos et al. (2017)
Aerosol Constraints on the Atmosphere of the Hot Saturn-mass planet WASP-49b
(高温の土星質量惑星 WASP-49b の大気でのエアロゾルへの制約)
ここでは,もし大気の透過スペクトルが特徴に欠けたものであったとしても,その大気の特性を特徴付けることができることを示す.具体的には,エアロゾル層の上方と下方の圧力境界への制約を与え,エアロゾルを構成していると思われる組成の候補を与える.
このモデルを用い,膨張した半径を持つ土星質量の惑星 WASP-49b でケーススタディをする.
この惑星の近赤外線トランジット観測では,0.7 - 1.0 µm の波長の範囲で,透過スペクトルは平坦であることが分かっている.
まずは高層大気の流体力学コードを用いて,電離を引き起こす恒星からの高エネルギー光子が到達できる高度を,気圧が 10-8 bar になる場所であると推定した.この高度を,エアロゾルが存在できる上限の高度だと仮定する.
続いて,HELIOS と Pyrat Bay 輻射輸送モデルを用いて,Bayesian framework の中で大気エアロゾルの光球での圧力と温度への制約を与えた.
WASP-49b の場合,透過スペクトルの光球 (エアロゾルデッキの境界) がある高度は,圧力が 10-5 bar になる高度であるという制約を与えた (大気の金属量が,太陽金属量の 100 倍の場合).
また,金属量が変わると結果も変わる
太陽金属量と同じ場合は 10-4 bar,太陽金属量の 0.1 倍の場合は 10-3 bar がエアロゾルの光球面となる.また,10-7 bar が上方境界である.
最後に,エアロゾルの成分であると思われる物質の凝縮曲線を,惑星大気の圧力-温度分布と比較し,吸収を引き起こしていると思われる凝縮物の同定を試みた.
この環境下ではエアロゾルの組成の候補として,金属量が太陽の 100 倍の場合はエアロゾルの組成の候補は Na2S,太陽金属量と同じ場合と 0.1 倍の場合は Cr と MnS が考えられる,さらに,太陽金属量の 0.1 倍の場合,フォルステライト (forsterite,苦土カンラン石),エンスタタイト (enstatite),硫マンガン鉱 (alabandite) も組成となりうることを同定した.
arXiv:1710.02427
Cubillos et al. (2017)
Aerosol Constraints on the Atmosphere of the Hot Saturn-mass planet WASP-49b
(高温の土星質量惑星 WASP-49b の大気でのエアロゾルへの制約)
概要
エアロゾルの吸収断面積は大きく,またほとんど波長依存性を持たず,結果として特徴を欠いた系外惑星大気の透過スペクトルを生み出す.これにより,エアロゾルが存在する場合の系外惑星大気の特徴付けは限定的なものとなってしまう.ここでは,もし大気の透過スペクトルが特徴に欠けたものであったとしても,その大気の特性を特徴付けることができることを示す.具体的には,エアロゾル層の上方と下方の圧力境界への制約を与え,エアロゾルを構成していると思われる組成の候補を与える.
このモデルを用い,膨張した半径を持つ土星質量の惑星 WASP-49b でケーススタディをする.
この惑星の近赤外線トランジット観測では,0.7 - 1.0 µm の波長の範囲で,透過スペクトルは平坦であることが分かっている.
まずは高層大気の流体力学コードを用いて,電離を引き起こす恒星からの高エネルギー光子が到達できる高度を,気圧が 10-8 bar になる場所であると推定した.この高度を,エアロゾルが存在できる上限の高度だと仮定する.
続いて,HELIOS と Pyrat Bay 輻射輸送モデルを用いて,Bayesian framework の中で大気エアロゾルの光球での圧力と温度への制約を与えた.
WASP-49b の場合,透過スペクトルの光球 (エアロゾルデッキの境界) がある高度は,圧力が 10-5 bar になる高度であるという制約を与えた (大気の金属量が,太陽金属量の 100 倍の場合).
また,金属量が変わると結果も変わる
太陽金属量と同じ場合は 10-4 bar,太陽金属量の 0.1 倍の場合は 10-3 bar がエアロゾルの光球面となる.また,10-7 bar が上方境界である.
最後に,エアロゾルの成分であると思われる物質の凝縮曲線を,惑星大気の圧力-温度分布と比較し,吸収を引き起こしていると思われる凝縮物の同定を試みた.
この環境下ではエアロゾルの組成の候補として,金属量が太陽の 100 倍の場合はエアロゾルの組成の候補は Na2S,太陽金属量と同じ場合と 0.1 倍の場合は Cr と MnS が考えられる,さらに,太陽金属量の 0.1 倍の場合,フォルステライト (forsterite,苦土カンラン石),エンスタタイト (enstatite),硫マンガン鉱 (alabandite) も組成となりうることを同定した.
論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1710.01770
Jacobson et al. (2017)
Formation, stratification, and mixing of the cores of Earth and Venus
(地球と金星の核の形成,成層化と混合)
地球型の天体が液体金属コア中の対流によって内部で発生する磁場を維持できるかどうかは,その天体の初期の熱力学的状態,およびその組成構造によって部分的に決まる.これらの状態は,惑星の降着および分化の過程によって左右される.
ここでは,地球や金星のような惑星のコアは,高エネルギーの衝突イベントによって阻害されない限りは,安定した組成の成層構造を保った状態で成長できる事を示す.
惑星への物質の降着の最中に金属-ケイ酸塩平衡の温度と圧力が上昇するのに伴い,沈んでコアを形成する液体金属に含まれる軽い元素の量が多くなるため,安定な組成の成層構造が発生する.このプロセスをモデル化することで,この過程が安定な成層構造を作り,対流の発達に対抗し,ダイナモ機構の発生を抑制することを示す.
しかし,形成後期に高エネルギーの衝突が発生した場合,それによってコアは機械的に撹拌される.それによって,長寿命の地球ダイナモを発生させることが出来る,単一の均質な領域が形成される.
地球への降着は,後期段階でコアを混合するのに十分なエネルギーであると思われる巨大衝突 (例えば月を形成した巨大衝突) の影響を受けているが,金星への降着の場合はそのような高エネルギーの巨大衝突が発生せず,そのために初期の成層構造が保たれてダイナモの発達を阻害した可能性がある,という仮説を提唱する.
arXiv:1710.01770
Jacobson et al. (2017)
Formation, stratification, and mixing of the cores of Earth and Venus
(地球と金星の核の形成,成層化と混合)
概要
地球は内部で生成されている磁場を継続的に保有しているが,金星では現在および過去にダイナモ機構が存在した痕跡は検出されていない.しかし,金星表面の温度が高いことや,最近の金星表面の更新イベントによって,金星の古地磁気の証拠は取り除かれてしまっている可能性がある.地球型の天体が液体金属コア中の対流によって内部で発生する磁場を維持できるかどうかは,その天体の初期の熱力学的状態,およびその組成構造によって部分的に決まる.これらの状態は,惑星の降着および分化の過程によって左右される.
ここでは,地球や金星のような惑星のコアは,高エネルギーの衝突イベントによって阻害されない限りは,安定した組成の成層構造を保った状態で成長できる事を示す.
惑星への物質の降着の最中に金属-ケイ酸塩平衡の温度と圧力が上昇するのに伴い,沈んでコアを形成する液体金属に含まれる軽い元素の量が多くなるため,安定な組成の成層構造が発生する.このプロセスをモデル化することで,この過程が安定な成層構造を作り,対流の発達に対抗し,ダイナモ機構の発生を抑制することを示す.
しかし,形成後期に高エネルギーの衝突が発生した場合,それによってコアは機械的に撹拌される.それによって,長寿命の地球ダイナモを発生させることが出来る,単一の均質な領域が形成される.
地球への降着は,後期段階でコアを混合するのに十分なエネルギーであると思われる巨大衝突 (例えば月を形成した巨大衝突) の影響を受けているが,金星への降着の場合はそのような高エネルギーの巨大衝突が発生せず,そのために初期の成層構造が保たれてダイナモの発達を阻害した可能性がある,という仮説を提唱する.
論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1710.00858
Weinberg et al. (2017)
Tidal Dissipation in WASP-12
(WASP-12 での潮汐散逸)
最近の Maciejewski et al. (2016) と Patra et al. (2017) によるトランジット時刻の観測からは,この惑星の軌道周期の減少率が \(P/\dot{P}=3.2\,{\rm Myr}\) であることが分かっている.これは,潮汐散逸による軌道崩壊 (orbital decay) か,惑星軌道の近点移動に伴う見かけ上の長周期振動のどちらかの証拠であると解釈されている.
ここでは,軌道周期の減少は軌道崩壊が原因であるという可能性について考察する.
中心星 WASP-12 のパラメータは,1.3 太陽質量の主系列星とするものと,1.2 太陽質量の準巨星とするものの両方と整合的である.
前者の場合,もし中心星が主系列段階にある場合,予想される潮汐散逸の大きさは,観測されている軌道周期の減衰を説明するには小さすぎることが判明した.
しかし,もし中心星が準巨星であった場合は,潮汐散逸は恒星の中心付近における力学的潮汐の非線形の波破壊によって,大きく増幅される.
準巨星モデルでは,潮汐のクオリティファクターは 2 × 105 であり,この値を元に推定した軌道崩壊率は観測されている値とよく一致する.
この結果は,惑星がなぜ主系列段階の 30 億年の間にわたって落下せず生き延びているのか,また現在の 300 万年という大きな軌道崩壊のタイムスケールで落下している理由の両方を説明する事ができる.
今回の結果は,現在我々がこの惑星の寿命の最後の ~ 0.1%にあたる期間を目撃していることを示唆する.そのような状況を観測できる可能性は,1.2 太陽質量より重い主星を 3 日未満の軌道周期で公転する 30 個のホットジュピターのサンプルの中では数%である.
arXiv:1710.00858
Weinberg et al. (2017)
Tidal Dissipation in WASP-12
(WASP-12 での潮汐散逸)
概要
WASP-12 はホットジュピターを持つ系であり,惑星 WASP-12b の軌道周期は 1.1 日である.この惑星は,最も軌道周期が短い巨大惑星のひとつである.最近の Maciejewski et al. (2016) と Patra et al. (2017) によるトランジット時刻の観測からは,この惑星の軌道周期の減少率が \(P/\dot{P}=3.2\,{\rm Myr}\) であることが分かっている.これは,潮汐散逸による軌道崩壊 (orbital decay) か,惑星軌道の近点移動に伴う見かけ上の長周期振動のどちらかの証拠であると解釈されている.
ここでは,軌道周期の減少は軌道崩壊が原因であるという可能性について考察する.
中心星 WASP-12 のパラメータは,1.3 太陽質量の主系列星とするものと,1.2 太陽質量の準巨星とするものの両方と整合的である.
前者の場合,もし中心星が主系列段階にある場合,予想される潮汐散逸の大きさは,観測されている軌道周期の減衰を説明するには小さすぎることが判明した.
しかし,もし中心星が準巨星であった場合は,潮汐散逸は恒星の中心付近における力学的潮汐の非線形の波破壊によって,大きく増幅される.
準巨星モデルでは,潮汐のクオリティファクターは 2 × 105 であり,この値を元に推定した軌道崩壊率は観測されている値とよく一致する.
この結果は,惑星がなぜ主系列段階の 30 億年の間にわたって落下せず生き延びているのか,また現在の 300 万年という大きな軌道崩壊のタイムスケールで落下している理由の両方を説明する事ができる.
今回の結果は,現在我々がこの惑星の寿命の最後の ~ 0.1%にあたる期間を目撃していることを示唆する.そのような状況を観測できる可能性は,1.2 太陽質量より重い主星を 3 日未満の軌道周期で公転する 30 個のホットジュピターのサンプルの中では数%である.
ホットスポットの大きなずれは強いスーパーローテーション的な大気循環の存在を示唆する.そのため昼側から夜側への大気循環を介した熱の輸送は効率的になるはずであり,昼夜間の温度差を小さくすると予想される.そのため,昼夜間の温度差が大きいことと,ホットスポットの大きなずれがあることは相反する.