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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1705.06851
Nielsen et al. (2017)
Evidence that the Directly-Imaged Planet HD 131399 Ab is a Background Star
(直接撮像された惑星 HD 131399 Ab は背景星であるという証拠)

概要

最近直接撮像で発見された惑星である HD 131399 Ab は,ゼロでない固有運動を持つ背景星であるという証拠について報告する.

この天体について,新しい JHK1L’ 測光と分光観測を,Gemini Planet Imager,VLT/SPHERE,Keck/NIRC2 で取得した.また VLT/SPHERE での発見データの再解析を行った.

観測結果から,HD 131399 Ab の色,スペクトル,アストロメトリを導出した.近赤外でのこの天体のスペクトルエネルギー分布から,この天体が L0 よりも後期のスペクトル型を持つ可能性を排除した.また,スペクトル型としては K か M 型矮星と整合的であると考えられる.これは,この領域でこの等級で検出され得る背景天体としては,最もあり得るスペクトル型である.

もしこの天体が物理的に中心星 HD 131399 A に伴っている天体であったとすると,HD 131399 Ab の天球面への射影速度は,HD 131399 A との距離とその質量から計算される脱出速度を超える.

HD 131399 Ab の固有運動は 12.3 mas yr-1 と導出された.この値は,銀河モデルから導出される背景星の固有運動と比較して高いものである.しかし,背景星の中で最も高速で動くものの上位 4%とは整合的な値である.

そのため,HD 131399 Ab は背景の K 型星か M 型星だろうと考えられる

HD 131399 系について

HD 131399 は若い (16 ± 7 Myr) 三重星系である.Upper Centaurus Lupus アソシエーションという運動星団の中に存在する.このアソシエーションは,更に大きい Scorpius-Cenraurus (ScoCen) アソシエーションに属するサブグループである (de Zeeuw et al. 1999).

この系は階層的三重星であり,中心にスペクトル型 A1V の恒星が存在し (Houk & Smith-Moore 1988),この恒星から ~ 300 AU 離れた位置に,G 型星と K 型星からなるコンパクトな連星がある (Dommanget & Nys 2002).

この系では,Very Large Telescope (超大型望遠鏡,VLT) の Spectro-Polarimetric High-contrast Exoplanet REsearch instrument (SPHERE) での観測の最中に,~ 82 AU の位置に惑星候補が検出されていた (Wagner et al. 2016).固有運動の解析から,見かけ上動かない背景星であるというシナリオは排除されている.これは,この天体が中心星と同じような固有運動を持っていたからである.さらにフォローアップ観測では,HD 131399 A を公転する軌道と整合的な動きが検出されていた.

今回の観測は,そのさらなるフォローアップ観測であった.





この論文を受けて,NASA Exoplanet Archive では HD 131399 Ab を確定した系外惑星のリストから除外しています.

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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1705.06378
Bayo et al. (2017)
First millimeter detection of the disk around a young, isolated, planetary-mass object
(若い孤立した惑星質量天体の周りの円盤のミリ波での初めての検出)

概要

OTS44 は,周囲に円盤があることが知られてるわずか 4 つの自由浮遊惑星のうちの一つである.過去の観測でも,OTS44 は活発に周囲の物質を降着している一定量の円盤を持った,最も低温で軽い自由浮遊惑星 (~ 12 木星質量) であることが示されてきた.

ここでは,ALMA の Band 6 (344 GHz) で,この非常に若い円盤を持った天体の連続波観測を行い,光源は空間分解されていないが明確な検出を得た.若く質量の大きい中心天体 (準恒星) のための経験的な相関関係を介して,この天体の周りにある円盤質量を推定した.

その結果,円盤内のダスト質量は 0.07 - 0.63 地球質量の範囲内の値だと推定される.

この独特な円盤の特性を,最近報告されている,より高質量の若い天体 (褐色矮星) まわりの円盤と比較した.この目的は,軽い天体周囲での円盤の形成機構へ制約を与えるためである.

ダスト温度に対する極端な仮定を行った推定では,得られた円盤質量は重い褐色矮星周りに見つかっている円盤の一般的な傾向とはやや外れている.しかし信頼できる値の範囲からは,ダスト質量と中心天体質量の間に見られる関係と整合的な円盤質量であると考えられる.

背景

分子雲中での低質量天体の形成

高密度な分子雲環境の中にある準恒星質量コアが,恒星質量まで成長するのを阻害するためのいくつかの機構が提案されている.例えば,力学的相互作用 (Reipurth & Clarke 2001など),円盤分裂 (Goodwin & Whitworth 2007など),光蒸発 (Whitworth & Zinnecker 2004) などである.

別の形成手段として,褐色矮星と自由浮遊惑星 (質量が重水素燃焼質量限界 13 木星質量より小さいもの) は,直接崩壊による孤立モードで形成されるというものがある.これは,乱流によるもの (Padoan & Nordlund 2002など),フィラメントの崩壊 (Inutsuka & Miyama 1992など) によって形成される,アウトフローによって強い自己侵食を経験した低質量のコア (Machida et al. 2009) などがある.

円盤を持つ低質量天体

若い褐色矮星は星周物質を持つことが示されている.これは近赤外 (Oasa et al. 1999など),中間赤外 (Natta & Testi 2001など),遠赤外 (Harvey et al. 2012) や,単一鏡でのミリ波連続波観測 (Klein et al. 2003など) で検出されている.

数年前に,ミリ波干渉計がより高感度になり,2M J0444 (M 7.52,~ 0.05 太陽質量) がこの手の天体の中で初めて 1.3 mm の波長で空間分解された (CARMA observation, Ricci et al. 2013).この観測では,円盤の半径は 15 - 30 AU と推定された.

さらに低質量側の観測例もある.最も低質量の孤立した天体で円盤を持つものは,Proplyd 133-353 (≦ 13 木星質量, Fang et al. 2016),Cha 1109-7734 (~ 8 木星質量, Luhman et al. 2005),J0226565805327032 (~ 13 木星質量, Boucher et al. 2016),OTS44 (~ 12 木星質量, Joergens et al. 2013) がある.

今回の観測では,OTS44 をミリ波で観測し,この天体の円盤をミリ波で初めて検出した

OTS44 について

OTS44 は Chamaeleon I (Cha I) 星形成領域にある低質量天体である.質量は褐色矮星と惑星の境界に近いか,あるいは下回っている.

OTS44 のまわりの円盤は,中間赤外と遠赤外で赤外超過を捉えることでその兆候が検出されている.円盤の検出観測は,スピッツァー宇宙望遠鏡とハーシェルで行われていた (Luhman et al. 2005, Harvey et al. 2012).
※注釈
OTS は,Chamaeleon I という星形成領域を観測した論文の著者名から採られており,"Oasa, Tamura, Sugitani" の頭文字.OTS 論文では全部で 61 天体がリストアップされている (Tamura et al. 1998, Oasa et al. 1999).

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ブログに数式を表示したい

自分のウェブサイトやブログ上で数式を表示したいという場面がしばしばあります.

上付き文字や下付き文字 (10-15 とか H2O とか) のような html タグの機能で表示できる範囲内なら良いんですが,もうちょっと込み入った数式の表示となるとそれでは対応できなくなります.

一つの解決策としては,LaTeX で数式を生成して,その画像をアップロードするという方法があります.PDF に出力したのをキャプチャするとか,あるいはもっとシンプルに適度なサイズの png や jpeg ファイルとして出力させるツールもあります.ただ,画像を作ってアップロードして,それを貼り付けるというのも面倒.

この LaTeX で画像を生成してくれるオンラインサービスもあって,例えばオンライン LaTeX 数式エディタがその一例です.
ここで LaTeX のコードを打ち込むとその画像を自動で生成してくれるので,その画像に対応する URL を貼り付ければ表示できるというわけです.

例えばこんな感じ.



これはこれで悪くないんですが,そこそこ手間がかかることや,検索性が良くないなどなど,いろいろ思う所はあります.

ただ,最近はウェブ上で LaTeX のコマンドを使えるようにする機能があるようで,しかもヘッダ部分に数行追加すればオッケーという手軽っぷりなので,導入してみることにしました.導入を試みるのは Mathjax です.

Mathjax の導入方法

基本的な導入方法や使い方については,既存の様々なサイトを当たったほうが早いし,そちらの方が説明も的確でしょう.

個人的には,このあたりのウェブサイトの記述を参考にしました.


端的に言うと,ヘッダの部分に
<script type="text/javascript" async
src="https://cdnjs.cloudflare.com/ajax/libs/mathjax/2.7.1/MathJax.js?config=TeX-AMS-MML_HTMLorMML">
</script>
を追加しただけです.いろいろなカスタマイズが不要なのであれば,この 3 行をヘッダに追加するだけで OK.何かのインストールとかは不要です.

この script が,表示のために必要な諸々を読み込んでくる部分です.読み込み先として "cdn.mathjax.org" を紹介しているウェブページもありますが,ここは最近廃止になったので,"cdnjs.cloudflare.com" から読み込むようにします.上記で紹介したウェブサイトでも説明がされていますが,廃止になった cdn.mathjax.org もリダイレクトされているので問題なく使えているようですが,わざわざ廃止になっているのが分かっている方を使う必要はありません.新しい cdnjs.cloudflare.com の方を使いましょう.

ヘッダのどこに追加すればいいのか

追加する場所は,ヘッダのタグ内ならどこでも問題ありません.
で,そのヘッダとは?というのがブログサービスではイマイチわかりづらいところです.

忍者ブログの場合,ブログをある程度カスタマイズしている場合はわかると思いますが,まずはブログ管理画面の上の方にある「デザイン」を選択します.そこで「PC用テンプレート」を選択し,使用中のテンプレートの「修正」を選択します.

そうするとブログデザインの編集画面が出てくるので,左上の「HTML編集」のウィンドウの中に追加します.このウィンドウの中をよく見ると,<head> と </head> というタグがあるので,この 2 つのタグの間に先ほどの 3 行を貼り付けます.
カスタマイズで更に別のスクリプトを貼り付ける際も,同じ範囲内に貼り付ければ良いです.

これで,PC 版のページでは Mathjax が使えるようになりました.

スマホからは数式が表示されない?

ところで上の方法だと,PC用のテンプレートしか編集していません.そのためパソコン用ページを表示した際は数式が表示されますが,スマホから見ると LaTeX コマンドがそのまま表示されてしまいます.

スマートフォン用のテンプレートではどうやらヘッダタグ内をいじるという高度な設定が出来ないようです.そのため個別に設定はできませんが,PC用とスマートフォン用の共通タグを設定することは可能です.

再び「デザイン」を選択し,「共通タグ」を選択します.そうすると,ヘッダタグの間,body タグの間,記事下スペースのそれぞれを PC用とスマートフォン用同時に設定できる画面になります.

ここで,選択肢が </head> になっていて,説明書きに "</head>タグの直前に登録内容を表示します。" と出ていることを確認します.確認ができたら,下のウィンドウに先ほどの script をそのままコピペして保存します.

これで PC用ページもスマートフォン用ページも共通で設定してくれるので,実はそもそも PC 用のテンプレートの方をいじる必要は無かったのでした.


これで,PC 用のページでもスマートフォン用のページでも Mathjax が使えるようになりました.

実際に使ってみる

インライン表示の場合は \(x=\frac{-b\pm\sqrt{b^{2}-4ac}}{2a}\) と表示できます.普通の LaTeX と同じく,displaystyle を用いれば \(\displaystyle{x=\frac{-b\pm\sqrt{b^{2}-4ac}}{2a}}\) と分数が大きく表示されます.

個別の数式の場合は例えば
\begin{align*}
x=\frac{-b\pm\sqrt{b^{2}-4ac}}{2a}
\end{align*}
となります.

数式番号を付けたり参照したりも出来ます.
\begin{align}
x=\frac{-b\pm\sqrt{b^{2}-4ac}}{2a}
\label{eq1}
\end{align}

\eqref{eq1} 式は二次方程式の解の公式です.


\begin{align}
x=\frac{-b\pm\sqrt{b^{2}-4ac}}{2a}
\tag{A}
\label{eq2}
\end{align}

式の番号を自由に変更して \eqref{eq2} 式という表示にも出来ます.


画像ではなく文字として扱われるので,式 \eqref{eq3} のように色を変えたり,文字サイズを変えたりも可能です.

\begin{align}
x=\frac{-b\pm\sqrt{b^{2}-4ac}}{2a}
\tag{C}
\label{eq3}
\end{align}


設定の方法は上記リンク先を参考にして下さい.

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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1705.06537
Suárez Mascareño et al. (2017)
HADES RV Programme with HARPS-N at TNG: V. A super-Earth on the inner edge of the habitable zone of the nearby M-dwarf GJ 625
(TNG の HARPS-N による HADES 視線速度プログラム:近傍の M 型矮星 GJ 625 のハビタブルゾーン内縁上のスーパーアース)

概要

HARPS-N 分光器で取得した視線速度データの解析に基づき,GJ 625 のハビタブルゾーンの内縁を公転するスーパーアースの発見を報告する.これは 3.5 年にわたる HARPS-N による 151 の視線速度の観測結果の解析によるものである.

発見された系外惑星 GJ 625b は,最小質量 2.82 ± 0.51 地球質量,軌道周期 14.628 ± 0.013 日,軌道長半径は 0.078 AU である.中心星の GJ 625 は静穏な M2V 星で,太陽から 6.5 pc の距離にある.

また,周期が 74 - 85 日の間の,二番目の視線速度シグナルも検出した.この変動は,中心星の Ca II H, K 線および Hα 線の観測の解析を元にすると,恒星の自転と関係していると考えられる.その他に,恒星の表面活動に起因すると思われる,短い周期の視線速度の変動の証拠は発見されなかった.

パラメータ

GJ 625
スペクトル型:M2V
有効温度:3499 K
金属量:[Fe/H] = -0.38
質量:0.30 太陽質量
半径:0.31 太陽半径
距離:6.49 pc
自転周期:77.8 ± 5.5 日
GJ 625b
軌道周期:14.628 日
軌道離心率:0.13
軌道長半径:0.078361 AU
最小質量:2.82 地球質量

議論

この惑星が地球と同程度の温室効果を持ち,ボンドアルベドが 0.3 の場合,平衡温度は 350 K になる.

Kasting et al. (1993) と Selsis et al. (2007) の結果に基づき,ハビタブルゾーンについて簡単な推定を行った.惑星大気が雲を持たず,ハビタブルゾーンの見積もりが最も狭い場合は 0.099 - 0.222 AU がハビタブルゾーンとなる.雲に覆われた状況を仮定した,広い場合の見積もりは 0.057 - 0.305 AU となる.

また,Kopparapu (2013) による雲なし大気の最も楽観的なハビタブルゾーンの見積もりの場合,ハビタブルゾーンの内縁は 0.088 AU となる.ハビタブルゾーンが惑星大気の雲の被覆率と共に進化すると考える場合,最も楽観的なハビタブルゾーンの内縁は 0.043 AU まで近くなる.これは完全に雲に覆われた状況を仮定した場合の見積もりである.
そのため GJ 625b は,その大気の状況次第では表面に液体の水を持ちうる (ハビタブルゾーンの内側に存在する可能性がある).

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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1705.05847
Kempton & Bean (2017)
An Observational Diagnostic for Distinguishing Between Clouds and Haze in Hot Exoplanet Atmospheres
(高温系外惑星大気中の雲とヘイズを区別するための観測的診断法)

概要

高温の系外惑星大気中でのエアロゾルの性質は,系外惑星の分野が直面している主要な厄介な問題である.エアロゾルに関連する複雑な化学過程,複数の形成過程,エアロゾルを同定できるスペクトルの特徴に関する情報の不足が,エアロゾルの主要な特性に制限をつけるのを難しくしている.

ここでは,最も輻射を受けている部類のホットジュピターにおけるエアロゾルの主要な形成機構を同定するための,透過分光手法を提案する.この手法は,エアロゾルには 2 つのタイプが存在するという予想に基づくものである.すなわち,光化学的に生成されたヘイズ,平衡状態の凝集物である雲の 2 タイプである.これらが非常に強い輻射を受ける惑星の大気中で,異なる領域に形成され存在すると仮定した.

ヘイズは潮汐固定されたホットジュピターの永久に昼側の領域のみで生成され,その後大気の運動によって下流方向に流され,夕方側の昼夜境界へと向かうと考えられる.これはトランジット中の trailing limb の部分として見える領域である.

雲は夜側の低温の領域と朝側の昼夜境界 (トランジット中の leading limb として見える領域) のみで生成されると考えられる.

これにより,トランジット時の惑星の両縁は,異なるタイプのエアロゾルによって影響を受けると考えられる.そのため,トランジットの入りと出の際のスペクトルから,主要なエアロゾル形成機構を明らかにすることが出来る.

ヘイズがある場合と雲がある場合のどちらのケースの場合でも,隣接した半球は晴れた空を持つと期待される.つまり,ヘイズで占められている大気の場合は,先行する半球が晴れた空を持ち,後行する半球はヘイズの多い大気を持つ.そのためトランジットの入りは晴れた空から入り,出の時はヘイズが占める空が残る.
逆に,雲で湿られている大気の場合は,先行する半球が雲の多い大気を持ち,後行する半球は晴れた空を持つ.そのためトランジットの入は雲の多い大気から入り,出の時は晴れた空が残ると考えられる.

この診断法を用いて,ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡や,あるいはハッブル宇宙望遠鏡での観測で,強い輻射を受けているホットジュピターの雲とヘイズの区別がつけられる可能性がある.

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