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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1704.07771
Temple et al. (2017)
WASP-167b/KELT-13b: Joint discovery of a hot Jupiter transiting a rapidly-rotating F1V star
(WASP-167b/KELT-13b:高速自転する F1V 星をトランジットするホットジュピターの合同発見)

概要

WASP と KELT プロジェクトの合同での新しい惑星の発見を報告する.

発見された系外惑星は WASP-167b/KELT-13b で,2.02 日の公転周期でトランジットするホットジュピターである.中心星は等級が V = 10.5,スペクトル型は F1V 星で,金属量 [Fe/H] = 0.1 ± 0.1 である.
惑星は 1.6 木星半径で,この惑星はトランジット中の恒星の line profile のドップラートモグラフィ (Dopper tomography) によって確認された.

真の質量は不明だが, 8 木星質量という上限値を与えた.
この惑星は逆行軌道にあり,恒星の自転軸と惑星の公転軸との射影された射影角度は -165° である.この事は,高温の恒星を公転する惑星の軌道は傾いている場合が多いという,これまでに知られている傾向と一致するものである.

中心星の WASP-167/KELT-13 は,恒星の自転周期が惑星の公転周期よりも短い系のうちの一つであり,このような系は発見数が少ない.また,動径方向ではない恒星の脈動の証拠を発見した.そのためこの恒星は, δ-Scuti (たて座デルタ型変光星) か γ-Dor (かじき座γ型変光星) であると考えられる.(※注釈:δ-Scuti は動径方向と非動径方向の脈動で変光が起きる.γ-Dor は非動径方向の脈動で変光が起きる).

ホットジュピターを持つ恒星が脈動を示す例としては他に WASP-33 があり,近接する惑星は恒星の脈動を励起する可能性があるという例の一つである.

パラメータ

WASP-167/KELT-13
別名:2MASS J13041053–3532582 など
等級:V = 10.5
有効温度:6900 K
金属量:[Fe/H] = 0.1 ± 0.1
質量:1.59 太陽質量
半径:1.79 太陽半径
WASP-167b/KELT-13b
軌道周期:2.0219591 日
軌道長半径:0.0365 AU
半径:1.51 木星半径
質量:8 木星質量未満

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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1704.06271
Rogers (2017)
Constraints on the Magnetic Field Strength of HAT-P-7 b and other Hot Giant Exoplanets

(HAT-P-7b やその他の高温ガス系外惑星の磁場強度の制限)

概要

ホットジュピターの赤外線と可視光における光度曲線の観測から,惑星表面の輝度の極大点は,一般に恒星直下点 (sub-steller point) から東方向に変位していることが知られている.この観測結果は,流体力学の数値計算の結果と整合的である.数値計算からは,高速で東向きの風が,大気中の最も高温な点を恒星直下点から東側に移流させることが分かっている.

しかし,最近のケプラーによる HAT-P-7b の継続的な観測では,最大輝度の恒星直下点からのずれは,時間によって大きく変化することが分かっている.この観測によると,最も明るい点は時々恒星直下点の西側へ変位することがある.これらの輝度のずれを説明するためには,大気中の雲の有無に関わらず,風の変動が必要である.

このような風の変動性は,ホットジュピター大気の流体シミュレーションでは見られていないが,磁気流体シミュレーションでは見られている.ここでは,HAT-P-7b 大気の MHD シミュレーションは風の変動性の兆候を見せることと,この変動は大気中での最も高温な点の位置の変動に対応する事を示す.

HAT-P-7b で観測されている変動が磁気的活動によるものだと仮定すると,この惑星の磁場強度の最小値は 6 G となると推定される.このような高温巨大ガス惑星の風の変動の同様の観測や変動の有無から,惑星の磁場強度の制限をかける助けになる可能性がある.

これらの惑星における磁場のダイナモシミュレーションは存在せず,知られている理論的なスケーリング則も適用されないと考えられるため,磁場に対するこのような観測的な制限は非常に有用であると考えられる.

結果

HAT-P-7b の表面は高温であり,大気中のアルカリ金属の電離を引き起こす.これは大気と磁場の結合を促し,また大気ダイナモも引き起こす.この磁気的相互作用からくるローレンツ力は,流体シミュレーションで見られている東向きの強い大気風を阻害し,変動性のある,また時折反対側に吹くこともある風を引き起こす.

シミュレーションでは,磁場無しの流体シミュレーションのみの場合は強い東向きのジェットを持ち,シミュレーション中一貫して正の方向に変異したホットスポットが見られた.
しかし磁場を加えた場合,帯状風は急激に減速し,振動するようなパターンに落ち着いた.この変動のタイムスケールは 106 秒程度であった.これは,加えた 10 G の磁場でのアルフベン時間と整合的で,また観測されている HAT-P-7b の時間変動とも整合的であった.ホットスポットの変位の変動についても同様のタイムスケールが見られる.


帯状風における磁場の効果は,運動量方程式における磁場の項と慣性項の比に依存する.それぞれ,τmag = 4 πρη/B2 と τwave = L/√(gH) である.ここで,L は水平流の特徴的な長さ,H は大気の深さである.

磁場の効果が増加するにつれ,増加した磁場の強度,あるいは増加した電気伝導度を通じて大気の帯状風への影響も変化する.磁場を強くするに従い,ほとんど影響無しあるいは弱い影響 (τmag > τwave の時) から,振動する風の状態 (τmag ~ τwave の時),完全に反転した風 (τmag < τwave の時) へと変化する.

HAT-P-7b で観測されている変動性の風は磁場の影響によるものだと仮定すると,この惑星の最小の磁場は ~ 6 G と推定される.これは Elsasser 数を元にした理論的なスケーリング則と整合的な値である.

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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1704.05878
Fujii et al. (2017)
NIR-Driven Moist Upper Atmospheres of Synchronously Rotating Temperate Terrestrial Exoplanets
(同時回転する温暖な地球型系外惑星の近赤外線駆動の湿潤な高層大気)

概要

水は,温暖な地球型惑星の大気の特徴付けにおいて重要な成分である.また,透過光スペクトルの観測は,近未来における水の兆候の検出において主要な役割を果たすことが期待されている.

惑星大気の透過光スペクトル中における水の吸収の特徴の検出可能性は,大気の上部における水蒸気の存在度に依存する.地球の成層圏における水蒸気の混合比はコールドトラップ (※低温による凝縮のため水蒸気として存在する量が減少する) のため 10-5 よりも小さいが,コールドトラップの効率は大気の特性に依存する.

ここでは general circulation model (GCM) ROCKE-3D を用いて,公転周期と同期した自転をする,地球サイズの水惑星における大気の水の三次元分布を研究した.特に,中心星のスペクトル型と合計の入射フラックスが及ぼす影響について調べた.

その結果,惑星大気への入射フラックスの増加に対する応答として,1 次元モデルで示唆されていたよりも緩やかな水蒸気の混合比の上昇が見られた.これは,過去の GCM 計算で同期回転惑星に対して見られていた,恒星直下点周辺における雲の気候安定化効果と定性的に一致する結果である.

しかし,高層大気における水蒸気の混合比は,表面温度がまだ温暖な状態でも増加をすることが判明した.これは高層大気での循環によって説明することが可能である.この現象は入射フラックスが大きい計算において見られたものであり,大気中での水蒸気の効率的な鉛直輸送が起きる.この循環は,高層大気における水蒸気と雲粒子による吸収に伴う輻射加熱によって駆動される.この水蒸気の鉛直輸送と輻射加熱の相互作用が,水蒸気分布の定常状態を決めるのに重要な役割を果たしていると思われる.

水蒸気の混合比は,入射フラックスにおける近赤外線の割合とよく相関している.この結果は,同期回転をする温暖な地球型惑星に対しては,高層大気での様々なレベルの水蒸気の混合比が期待されることを示唆する.また,より強く輻射を受けている惑星に対しては,透過光スペクトルにおける水蒸気の吸収の特徴は数倍強くなる事が示唆された.そのため,水の直接検出に対する観測的な要求は緩くなる.

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arXiv:1704.05556
Dittmann et al. (2017)
A temperate rocky super-Earth transiting a nearby cool star
(近傍の低温星をトランジットする温暖な岩石スーパーアース)

概要

太陽の質量の 60%よりも軽い恒星である M 型矮星は,銀河内の恒星の個数の 75%を占める.このような恒星を周回する地球サイズの惑星の大気は,惑星が恒星の手前を通過する際の透過光分光観測によって観測的に得ることが出来る.

統計的な結果によると,10.5 pc 離れたところの M 型星のハビタブルゾーンの中に,最も近い地球サイズのトランジット惑星が存在することが示唆されている.
温暖な岩石惑星は,太陽系から最も近い M 型星であるプロキシマ・ケンタウリの周囲にも発見されている.しかしこの惑星はおそらくトランジット惑星ではなく,真の質量は不明である.

12 pc 離れた場所にある非常に低質量の恒星 TRAPPIST-1 は,7 個のトランジットする地球サイズ惑星を持つ.しかし,これらの惑星の質量と,特に平均密度は,観測的にあまり制約されていない.

ここでは,LHS 1140b の観測結果を報告する.これは低温の恒星 LHS 1140 の周りを公転する,1.4 地球半径のトランジット惑星である.この系は地球から 12 pc 離れている.LHS 1140b の質量は地球の 6.6 倍と測定され,これは惑星全体の組成として岩石組成であることと整合的である.
LHS 1140b は地球の 0.46 倍の日射を受けており,液体の水が表面に存在できるハビタブルゾーン内に位置している.

また,90% の確度で,惑星の軌道離心率の上限値として e < 0.29 を与えた.潮汐散逸が働いた結果として円軌道化される見込みは低いため,この惑星の形成時から円軌道に近い軌道を持っていたのだろうと考えられる.

惑星の表面重力が大きいことと受ける日射が小さいことから,中心星が若かった頃の大きな光度にも関わらず,現在まで大気を保持しているだろうと考えられる.中心星の LHS 1140 は近傍の恒星なので,現在建設中の望遠鏡を用いて,将来的に大気のガスを探査可能だろうと思われる.

パラメータ

LHS 1140
質量:0.146 太陽質量
半径:0.186 太陽半径
光度:0.002981 太陽光度
有効温度:3131 K
金属量:[Fe/H] = -0.24
年齢:> 5 Gyr
自転周期:131 日
距離:12.47 pc
LHS 1140b
公転周期:24.73712 日
軌道離心率:e < 0.29 (確度 90%)
質量:6.65 地球質量
半径:1.43 地球半径
軌道長半径:0.0875 AU
平均密度:12.5 g cm3
表面重力:31.8 m s-2
平衡温度:230 K (アルベドゼロを仮定)
※参考
LHS について
Luyten がまとめた近傍星のカタログのシリーズの一つ.近傍星を見分ける方法の一つが固有運動の大きさであり,固有運動が大きいものをピックアップしたカタログのシリーズがある.このうち固有運動が年に 0”.5 よりも大きいものをまとめたのが Luyten Half Second (LHS) カタログ (Luyten 1979) であり,合計で 4489 個の恒星を収録している.

なお LHS の他に Luyten が編纂に携わった恒星カタログとして,
L (Luyten) - 固有運動が大きい恒星と白色矮星のカタログ (Luyten 1941)
LFT (Luyten Five-Tenths catalogue) - 固有運動が年に 0.5" を超える恒星のカタログ.1849 個の恒星を収録 (Luyten 1955).
LTT (Luyten Two-Tenths catalogue) - 固有運動が年に 0".2 を超える南半球の恒星のカタログ.9867 個の恒星を収録 (Luyten 1957).
NLTT (New Luyten Two-Tenths catalogue) - 固有運動が年に 10 文の 2 秒角を超える恒星のカタログ (Luyten 1979).
LPM (Luyten Proper-Motion catalogue) - 1963 - 1981 年の観測をまとめたもの
がある.
※参考リンク
Star catalogue - Wikipedia

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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1704.05413
Tsiaras et al. (2017)
A population study of hot Jupiter atmospheres
(ホットジュピター大気の集団調査)

概要

平衡温度が 600 K から 2400 K の範囲で半径が 0.35 から 1.9 木星半径の範囲にある,30 個のガス系外惑星の観測結果の解析を行った.ハッブル宇宙望遠鏡の WFC3 で取得したデータと,専用に開発した解析ツールを使用した.

ここでは系外惑星の大気に対する新しい計量を提案する.それは Atmospheric Detectability Index (ADI) というものであり,大気の検出の統計的有意性を評価するものである.この指標を用いて,16 の惑星で統計的に有意な大気を発見した.

今回のサンプル中の巨大惑星の大部分で,大気の検出可能性は惑星半径に依存したが,惑星質量には依存しなかった.このことは,惑星の重力は惑星大気の進化においては二次的な要因であることを示唆する.

また,統計的に検出可能であった大気の全てに水蒸気の存在を検出した.なお,その他の惑星大気中での水蒸気の存在は排除はできなかった.
さらに,TiO and/or VO の兆候が,4 σ の確度で WASP-76b の大気中に検出された.また,WASP-121b の大気中にも存在する可能性がある.

期待されるシグナルノイズ比と大気の検出可能性の間の相関は,今回のほとんどの観測対象では見られなかった.

観測

今回の観測で使用したデータは,
GJ 436 b, GJ 3470, HAT-P-1 b, HAT- P-3b, HAT-P-11b, HAT-P-12b, HAT-P-17b, HAT-P- 18b, HAT-P-26b, HAT-P-32b, HAT-P-38b, HAT-P- 41b, HD149026b, HD189733b, HD209458b, WASP- 12 b, WASP-29 b, WASP-31 b, WASP-39 b, WASP- 43 b, WASP-52 b, WASP-63 b, WASP-67 b, WASP- 69 b, WASP-74 b, WASP-76 b, WASP-80 b, WASP-101 b, WASP-121 b, and XO-1 b
の観測データである.








Atmospheric Detectability Index (ADI),直訳すると「大気検出指数」とかでしょうか.

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