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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1703.07623
Hirao et al. (2017)
OGLE-2013-BLG-1761Lb: A Massive Planet Around an M/K Dwarf
(OGLE-2013-BLG-1761Lb:M/K 矮星まわりの重い惑星)
このイベントでは,惑星による光度曲線のアノマリーは観測点が分散しているため,いくつかの解が縮退している.しかし詳細な光度曲線の解析により,レンズ天体が恒星質量天体の連星だとするモデルは全て排除された.また,レンズ天体は惑星系であることが示された.
解析の結果,いわゆる close/wide degeneracy である,惑星と恒星の質量比 q ~ 7.5 × 10-3 と 9.3 × 10-3,アインシュタイン半径で規格化した投影した距離 0.95 (close) と 1.19 (wide) の解がそれぞれ存在していることが分かった.
マイクロレンズのパララックス効果は検出されなかったが,有限ソース効果は検出された.
ベイズ解析によると,レンズ天体の距離は 6.9 kpc であり,これは銀河バルジ内と考えられる.主星は M/K 矮星で 0.33 (+0.32, -0.18) 太陽質量と示唆される.また惑星は 2.8 (+2.5, -1.5) 木星質量で,軌道の射影距離は 1.8 ± 0.5 AU であった.
距離やその他の物理パラメータは,将来の地上望遠鏡による高精度の観測か,ハッブル宇宙望遠鏡による観測で制約できるだろう.もし推定されたレンズ天体までの距離が正しければ,この惑星は銀河バルジにおいて存在が主張されている,"惑星の欠乏" (Penny et al. 2016) 説を試験するためのさらなるサンプルとなり得る.この主張に反論する銀河バルジ内に発見されている惑星として,OGLE-2015-BLG-0051Lb (Han et al. 2016),OGLE-2014-BLG-1760Lb (Bhattacharya et al. 2016),OGLE-2012-BLG-0724Lb (Hirao et al. 2016) などがある.
arXiv:1703.07623
Hirao et al. (2017)
OGLE-2013-BLG-1761Lb: A Massive Planet Around an M/K Dwarf
(OGLE-2013-BLG-1761Lb:M/K 矮星まわりの重い惑星)
概要
マイクロレンズイベント OGLE-2013-BLG-1761 の発見と解析について報告する.このイベントでは,惑星による光度曲線のアノマリーは観測点が分散しているため,いくつかの解が縮退している.しかし詳細な光度曲線の解析により,レンズ天体が恒星質量天体の連星だとするモデルは全て排除された.また,レンズ天体は惑星系であることが示された.
解析の結果,いわゆる close/wide degeneracy である,惑星と恒星の質量比 q ~ 7.5 × 10-3 と 9.3 × 10-3,アインシュタイン半径で規格化した投影した距離 0.95 (close) と 1.19 (wide) の解がそれぞれ存在していることが分かった.
マイクロレンズのパララックス効果は検出されなかったが,有限ソース効果は検出された.
ベイズ解析によると,レンズ天体の距離は 6.9 kpc であり,これは銀河バルジ内と考えられる.主星は M/K 矮星で 0.33 (+0.32, -0.18) 太陽質量と示唆される.また惑星は 2.8 (+2.5, -1.5) 木星質量で,軌道の射影距離は 1.8 ± 0.5 AU であった.
距離やその他の物理パラメータは,将来の地上望遠鏡による高精度の観測か,ハッブル宇宙望遠鏡による観測で制約できるだろう.もし推定されたレンズ天体までの距離が正しければ,この惑星は銀河バルジにおいて存在が主張されている,"惑星の欠乏" (Penny et al. 2016) 説を試験するためのさらなるサンプルとなり得る.この主張に反論する銀河バルジ内に発見されている惑星として,OGLE-2015-BLG-0051Lb (Han et al. 2016),OGLE-2014-BLG-1760Lb (Bhattacharya et al. 2016),OGLE-2012-BLG-0724Lb (Hirao et al. 2016) などがある.
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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1703.07341
Manjavacas et al. (2017)
Testing the existence of optical linear polarization in young brown dwarfs
(若い褐色矮星における可視光直線偏光の存在の調査)
理論モデルでは,褐色矮星の扁平率に伴って観測される直線偏光度は増加すると予測されている.この扁平率は,褐色矮星の表面重力に反比例する.
ここでは,明るい若い褐色矮星のサンプル中に,可視光での直線偏光があるかの調査を行った.分析の対象は,スペクトル型が M6 から L2 で,Calar Alto Observatory から観測できる天体で,なおかつ分光観測から表面の重力が比較的小さいことが分かっている天体である.
直線偏光撮像は,I, R バンドで Calar Alto Observatory の 2.2 m 望遠鏡の CAFOS を用いて観測した.その後,flux ratio method を用いて直線偏光度を決定した.
その結果 3 σ の確度で,観測された段階においては全てのターゲット天体が I バンドで平均 0.69%より小さい直線偏光,R バンドで 1.0%より小さい直線偏光を示した.
また,若い M6 矮星 2MASS J04221413+1530525 では R バンドで有意な直線偏光を検出し,直線偏光度 p* = 0.81 ± 0.17% であった.
この天体の偏光の起源として考えられるのは,以下の 2 種類である.
一つ目は,地球とこの天体の視線方向にあるダストによる偏光だとするものである.ただしこれは Liu et al. (2016) で報告されている三角視差の値が正しいとした場合である.この場合,この天体は Tauras-Auriga 星形成領域の中に位置しているか,あるいは背後にあるかである.
この仮説は,この天体のスペクトルの reddening (赤化) を説明することができる.またこの天体がこの星形成領域の一員である場合は,この天体が若いことを示す弱いアルカリのラインを持つことを説明できる.
二つ目は,この天体の周りの原始惑星系円盤かデブリ円盤,または天体大気中のダスト粒子によるものである.こちらは,三角視差の値として Faherty et al. (2012) の結果が正しいと仮定した場合である.
この仮説は,若い褐色矮星大気中でのサブミクロンサイズ粒子に関する予言 (Marocco et al. 2014, Hiranaka et al. 2016) と整合的である.この仮説の場合,この天体の赤い色と R バンドでの偏光の検出を説明することができる.
Allers & Liu (2013) によって,この天体の近赤外スペクトルは,このスペクトル型の天体にしては超過していることが報告されている.またスペクトル中には弱いアルカリ金属のラインが検出されており,これは天体の表面重力が小さいことを示唆している.
Faherty et al. (2012) は,この天体の絶対視差として 24.8 mas (距離 40.3 pc に対応) という値を報告している.しかし,これは Liu et al. (2016) による絶対視差 3.9 mas (240 pc に対応) と 6.4 σ 乖離している.
また,この天体は Taurus の星形成領域の 10 度程度南方に位置している.
arXiv:1703.07341
Manjavacas et al. (2017)
Testing the existence of optical linear polarization in young brown dwarfs
(若い褐色矮星における可視光直線偏光の存在の調査)
概要
直線偏光は,超低温矮星の大気中の凝縮物の存在を探査するのに使うことが出来る.理論モデルでは,褐色矮星の扁平率に伴って観測される直線偏光度は増加すると予測されている.この扁平率は,褐色矮星の表面重力に反比例する.
ここでは,明るい若い褐色矮星のサンプル中に,可視光での直線偏光があるかの調査を行った.分析の対象は,スペクトル型が M6 から L2 で,Calar Alto Observatory から観測できる天体で,なおかつ分光観測から表面の重力が比較的小さいことが分かっている天体である.
直線偏光撮像は,I, R バンドで Calar Alto Observatory の 2.2 m 望遠鏡の CAFOS を用いて観測した.その後,flux ratio method を用いて直線偏光度を決定した.
その結果 3 σ の確度で,観測された段階においては全てのターゲット天体が I バンドで平均 0.69%より小さい直線偏光,R バンドで 1.0%より小さい直線偏光を示した.
また,若い M6 矮星 2MASS J04221413+1530525 では R バンドで有意な直線偏光を検出し,直線偏光度 p* = 0.81 ± 0.17% であった.
この天体の偏光の起源として考えられるのは,以下の 2 種類である.
一つ目は,地球とこの天体の視線方向にあるダストによる偏光だとするものである.ただしこれは Liu et al. (2016) で報告されている三角視差の値が正しいとした場合である.この場合,この天体は Tauras-Auriga 星形成領域の中に位置しているか,あるいは背後にあるかである.
この仮説は,この天体のスペクトルの reddening (赤化) を説明することができる.またこの天体がこの星形成領域の一員である場合は,この天体が若いことを示す弱いアルカリのラインを持つことを説明できる.
二つ目は,この天体の周りの原始惑星系円盤かデブリ円盤,または天体大気中のダスト粒子によるものである.こちらは,三角視差の値として Faherty et al. (2012) の結果が正しいと仮定した場合である.
この仮説は,若い褐色矮星大気中でのサブミクロンサイズ粒子に関する予言 (Marocco et al. 2014, Hiranaka et al. 2016) と整合的である.この仮説の場合,この天体の赤い色と R バンドでの偏光の検出を説明することができる.
2MASS J04221413+1530525 について
この天体は,可視光観測よりスペクトル型は M6γ (Cruz et al. 2009) とされている.Allers & Liu (2013) によって,この天体の近赤外スペクトルは,このスペクトル型の天体にしては超過していることが報告されている.またスペクトル中には弱いアルカリ金属のラインが検出されており,これは天体の表面重力が小さいことを示唆している.
Faherty et al. (2012) は,この天体の絶対視差として 24.8 mas (距離 40.3 pc に対応) という値を報告している.しかし,これは Liu et al. (2016) による絶対視差 3.9 mas (240 pc に対応) と 6.4 σ 乖離している.
また,この天体は Taurus の星形成領域の 10 度程度南方に位置している.
論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1703.06885
Malavolta et al. (2017)
The Kepler-19 system: a thick-envelope super-Earth with two Neptune-mass companions characterized using Radial Velocities and Transit Timing Variations
(ケプラー19 系:視線速度とトランジット時刻変動を用いて特徴づけられた厚いエンベロープを持つスーパーアースと 2 個の海王星質量惑星)
ここでは,ケプラーによるこの系の全観測データと,HARPS-N 分光器による 91 の高精度視線速度観測の結果を合わせ,ケプラー19b の質量を 8.4 ± 1.6 地球質量と測定した.
また同じデータから,この惑星系が同一平面であることを仮定し,ケプラー19c が 28.7 日周期,質量が 13.1 ± 2.7 地球質量であると決定した.さらに,20.3 ± 3.4 地球質量で 63 日周期の海王星的な惑星ケプラー19d を新たに発見した.
ケプラー19b の密度は 4.32 g cm-3 であり,岩石コアと大量の割合の揮発性物質を持つ惑星のグループに属している.
この恒星はトランジットによって惑星が検出され (Borucki et al 2011),その後ケプラー19b とsて確認されている (Ballard et al. 2011).しかし質量の決定精度は悪く,20.3 地球質量という上限が与えられているのみであった.また,160 日周期以下,6 木星質量以下のケプラー19c の存在が示唆されていた.
arXiv:1703.06885
Malavolta et al. (2017)
The Kepler-19 system: a thick-envelope super-Earth with two Neptune-mass companions characterized using Radial Velocities and Transit Timing Variations
(ケプラー19 系:視線速度とトランジット時刻変動を用いて特徴づけられた厚いエンベロープを持つスーパーアースと 2 個の海王星質量惑星)
概要
ケプラー19 系の詳細な特徴付けについて報告する.ケプラー19 は,9.29 日周期,2.2 地球半径,質量の上限が 20 地球質量のトランジット惑星ケプラー19b を持つことが知られている.また,ケプラー19b のトランジット時刻変動 (transit timing variation, TTV) から,トランジットしていない 2 番目の惑星の存在が示唆されている.しかしこちらは質量も軌道周期も決定されていない.ここでは,ケプラーによるこの系の全観測データと,HARPS-N 分光器による 91 の高精度視線速度観測の結果を合わせ,ケプラー19b の質量を 8.4 ± 1.6 地球質量と測定した.
また同じデータから,この惑星系が同一平面であることを仮定し,ケプラー19c が 28.7 日周期,質量が 13.1 ± 2.7 地球質量であると決定した.さらに,20.3 ± 3.4 地球質量で 63 日周期の海王星的な惑星ケプラー19d を新たに発見した.
ケプラー19b の密度は 4.32 g cm-3 であり,岩石コアと大量の割合の揮発性物質を持つ惑星のグループに属している.
ケプラー19系 について
ケプラー19 は等級が 12.1 と比較的明るい,太陽型星 (5541 K,[Fe/H] = -0.13) である.この恒星はトランジットによって惑星が検出され (Borucki et al 2011),その後ケプラー19b とsて確認されている (Ballard et al. 2011).しかし質量の決定精度は悪く,20.3 地球質量という上限が与えられているのみであった.また,160 日周期以下,6 木星質量以下のケプラー19c の存在が示唆されていた.
論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1703.06924
Ormel et al. (2017)
Formation of TRAPPIST-1 and other compact systems
(TRAPPIST-1 とその他のコンパクトな系の形成)
この論文では,この系の形成と軌道配置を再現するためのシナリオを提案する.
このモデルでは,惑星形成は水のスノーラインで始まる.この場所では,円盤外側に起源を持つペブルサイズの粒子が集積し,ストリーミング不安定 (streaming instability) を引き起こす.
それらの形成後,原始惑星はべブルの集積によって急速に成長する.この惑星の成長は,地球質量程度で止まる.この質量になると,円盤への惑星の重力によるフィードバックによってペブルが惑星に寄せ付けられなくなる.
これらの惑星はタイプ I 惑星移動 (type I migration) によって,恒星の磁気圏による円盤内側の穴の部分まで移動し,最終的に複数の惑星が平均運動共鳴に入る.
円盤が消失する間,中心の円盤の穴の半径は拡大し,その過程で最も内側の惑星は共鳴から離脱する.
ここでは,このモデルはその他のコンパクトな惑星系にも適用できることと,その他の多数の近接スーパーアース系は TRAPPIST-1 系のスケールアップバージョンであることについても議論する.また,いくつかの近接した軌道を持つ惑星があるコンパクトな系は,遠方に巨大惑星を持つという仮説を提案する.これは,外側に巨大惑星が存在することによって,円盤外側からのペブルの流束が抑制されるからである.
内側円盤は r ≦ 0.1 AU の領域とする.この領域はスノーラインがある領域であり,惑星形成が起きる領域である.
外側は r >> 1 AU である.この領域は,全円盤質量の大部分を占める領域である.
簡単のため,円盤の縦横比は内側円盤では 0.03 に,外側円盤は 0.1 に固定した.
また,恒星磁場による円盤の切り取りの半径は 0.01 AU 程度とスケーリングした.これは恒星表面磁場を 180 G とした場合に対応している.この磁場の強度は典型的なおうし座 T 型性の ~ kG 程度という値よりは小さいが,褐色矮星での観測結果とは整合的である (Reiners et al. 2009).
有名な機構としては,固体粒子のガスに対するバックリアクションによる,粒子のフィラメント状のクランプ形成である,ストリーミング不安定 (Youdin & Goodman 2005) がある.これらのフィラメントが後に分裂して,微惑星形成に繋がるとされる (Johansen et al. 2007).
ペブル集積による微惑星の成長時間は, 0.012/εPA Myr と見積もられる.ここで,εPA はペブル集積効率 (pebble accretion efficiency) である.簡単な見積もりでは εPA = 0.17 程度と考えられる.より詳細には,N 体シミュレーションから 0.45 程度という値が得られる.
太陽型星に比べると,TRAPPIST-1 の円盤ではペブル集積が効率的だと考えられる.これは,円盤が薄く,ペブルは二次元極限で集積することと,中心星の質量が小さいためヒル半径が大きくなることによる.このような円盤内では,地球サイズの惑星を形成するのには 104 年しかかからない.
太陽質量星周りでの 5 AU の距離における,ペブル孤立質量は 20 地球質量程度と見積もられている (Lambrechts et al. 2014).TRAPPIST-1 円盤のスノーラインではこれはより小さな質量となるだろう.
円盤へのギャップ形成に必要な条件は,ヒル半径が円盤のスケールハイトを上回ることである (Lin & Papaloizou 1993),この場合,TRAPPIST-1 円盤でのペブル孤立質量は 0.72 地球質量に対応する.
ここまでのプロセスの繰り返しにより,6 - 7 個の惑星の隊列が形成される.
この円盤のモデルでは,形成された惑星は 2:1 軌道共鳴に捉えられる可能性がある,それは,円盤の内縁半径でのガス密度がやや低いためである (Ogihara & Kobayashi 2013).
しかし,2:1 軌道共鳴に入っている惑星を 3:2 共鳴へ持っていく方法はいくつかある.例えば,確率運動,円盤内での密度擾乱による駆動などである (Paadekooper et al. 2013).ここでは,円盤消失のフェーズでは内側の惑星は全て 3:2 共鳴に入っていると仮定する.
磁気圏反発による共鳴からの脱出は,恒星磁気圏による円盤の穴が円盤消失中に拡大し,円盤の内縁が外側へ移動する事によるものである.
原則として,最も内側の惑星は不均衡な強いトルクの影響で円盤と強く結合しているため,穴の半径が外側に拡大するのに付いていく傾向がある.しかし穴の拡大が速すぎる場合,つまり,拡大率が惑星の移動率の最大値より大きい場合は,惑星は円盤の結合から外れ磁気圏による穴の中に入ることになる.
ここでは,円盤消失は二段階に分かれていると考える.
まず円盤内縁が 0.01 から 0.02 AU へと倍になる.この間に TRAPPIST-1b は比較的早く円盤との結合が切れるが,TRAPPIST-1c は惑星移動レートの係数が比較的大きいため,円盤との結合が切れずに円盤内縁の移動に付いて行く (この係数は惑星の質量が大きいと大きく,また軌道共鳴鎖に入っている惑星が多いと小さくなる).この間に,TRAPPIST-1b と c の 3:2 共鳴が破壊される.
引き続く二番目の円盤消失フェーズで,TRAPPIST-1d は c との共鳴から抜ける.それより外側では共鳴関係は維持される.
arXiv:1703.06924
Ormel et al. (2017)
Formation of TRAPPIST-1 and other compact systems
(TRAPPIST-1 とその他のコンパクトな系の形成)
概要
TRAPPIST-1 は,太陽近傍の 0.08 太陽質量の M 型星である.最近,少なくとも 7 個の地球質量惑星を 0.1 AU 以内に持つ惑星系であることが判明した.この軌道配置は,その場形成でも惑星移動モデルでも簡単には説明できないため,理論家を困惑させている.この論文では,この系の形成と軌道配置を再現するためのシナリオを提案する.
このモデルでは,惑星形成は水のスノーラインで始まる.この場所では,円盤外側に起源を持つペブルサイズの粒子が集積し,ストリーミング不安定 (streaming instability) を引き起こす.
それらの形成後,原始惑星はべブルの集積によって急速に成長する.この惑星の成長は,地球質量程度で止まる.この質量になると,円盤への惑星の重力によるフィードバックによってペブルが惑星に寄せ付けられなくなる.
これらの惑星はタイプ I 惑星移動 (type I migration) によって,恒星の磁気圏による円盤内側の穴の部分まで移動し,最終的に複数の惑星が平均運動共鳴に入る.
円盤が消失する間,中心の円盤の穴の半径は拡大し,その過程で最も内側の惑星は共鳴から離脱する.
ここでは,このモデルはその他のコンパクトな惑星系にも適用できることと,その他の多数の近接スーパーアース系は TRAPPIST-1 系のスケールアップバージョンであることについても議論する.また,いくつかの近接した軌道を持つ惑星があるコンパクトな系は,遠方に巨大惑星を持つという仮説を提案する.これは,外側に巨大惑星が存在することによって,円盤外側からのペブルの流束が抑制されるからである.
TRAPPIST-1 円盤モデル
このモデルでは,TRAPPIST-1 の周囲にあった原始惑星系円盤を,内側円盤と外側円盤に分けて考える.内側円盤は r ≦ 0.1 AU の領域とする.この領域はスノーラインがある領域であり,惑星形成が起きる領域である.
外側は r >> 1 AU である.この領域は,全円盤質量の大部分を占める領域である.
簡単のため,円盤の縦横比は内側円盤では 0.03 に,外側円盤は 0.1 に固定した.
また,恒星磁場による円盤の切り取りの半径は 0.01 AU 程度とスケーリングした.これは恒星表面磁場を 180 G とした場合に対応している.この磁場の強度は典型的なおうし座 T 型性の ~ kG 程度という値よりは小さいが,褐色矮星での観測結果とは整合的である (Reiners et al. 2009).
惑星系形成の概要
微惑星形成
まずは,ペブル (pebble) サイズの粒子の集積と,その後に起きる重力崩壊による微惑星の形成が起きる.有名な機構としては,固体粒子のガスに対するバックリアクションによる,粒子のフィラメント状のクランプ形成である,ストリーミング不安定 (Youdin & Goodman 2005) がある.これらのフィラメントが後に分裂して,微惑星形成に繋がるとされる (Johansen et al. 2007).
効率的なペブル集積
ストリーミング不安定の結果として形成される微惑星は,~ 100 km 程度のサイズになりうる (Schafer et al. 2017).これらの微惑星は,円盤の外側領域からやってきたペブルを集積する.これはいわゆるペブル集積 (pebble accretion) と呼ばれるものである.ペブル集積による微惑星の成長時間は, 0.012/εPA Myr と見積もられる.ここで,εPA はペブル集積効率 (pebble accretion efficiency) である.簡単な見積もりでは εPA = 0.17 程度と考えられる.より詳細には,N 体シミュレーションから 0.45 程度という値が得られる.
太陽型星に比べると,TRAPPIST-1 の円盤ではペブル集積が効率的だと考えられる.これは,円盤が薄く,ペブルは二次元極限で集積することと,中心星の質量が小さいためヒル半径が大きくなることによる.このような円盤内では,地球サイズの惑星を形成するのには 104 年しかかからない.
ペブル孤立 (pebble isolation)
惑星が成長し,惑星からの円盤への重力的なフィードバックが重要になるとペブル集積は終わる.そのような圧力極大において,ペブルの移動は止まる.基本的には,ペブル孤立は円盤へのギャップ形成を意味する.太陽質量星周りでの 5 AU の距離における,ペブル孤立質量は 20 地球質量程度と見積もられている (Lambrechts et al. 2014).TRAPPIST-1 円盤のスノーラインではこれはより小さな質量となるだろう.
円盤へのギャップ形成に必要な条件は,ヒル半径が円盤のスケールハイトを上回ることである (Lin & Papaloizou 1993),この場合,TRAPPIST-1 円盤でのペブル孤立質量は 0.72 地球質量に対応する.
惑星移動と共鳴捕獲
ここでは,タイプ I 惑星移動は簡単のため内側へのみ動くとする.つまり,惑星移動の符号を反転させ得るような熱力学的な効果 (Paadekooper et al. 2011など) は考慮しないものとする.ここまでのプロセスの繰り返しにより,6 - 7 個の惑星の隊列が形成される.
この円盤のモデルでは,形成された惑星は 2:1 軌道共鳴に捉えられる可能性がある,それは,円盤の内縁半径でのガス密度がやや低いためである (Ogihara & Kobayashi 2013).
しかし,2:1 軌道共鳴に入っている惑星を 3:2 共鳴へ持っていく方法はいくつかある.例えば,確率運動,円盤内での密度擾乱による駆動などである (Paadekooper et al. 2013).ここでは,円盤消失のフェーズでは内側の惑星は全て 3:2 共鳴に入っていると仮定する.
円盤消失と反発
観測からは,内側の TRAPPIST-1b/c ペアと c/d ペアは,現在は平均運動共鳴に入っていない.惑星を共鳴から外す機構としては,恒星潮汐による減衰 (Lithwick & Wu 2012),巨大衝突 (Ogihara et al. 2015) などがある.ここでは磁気圏反発 (magnetospheric rebound, Liu et al. 2017) を考慮する.磁気圏反発による共鳴からの脱出は,恒星磁気圏による円盤の穴が円盤消失中に拡大し,円盤の内縁が外側へ移動する事によるものである.
原則として,最も内側の惑星は不均衡な強いトルクの影響で円盤と強く結合しているため,穴の半径が外側に拡大するのに付いていく傾向がある.しかし穴の拡大が速すぎる場合,つまり,拡大率が惑星の移動率の最大値より大きい場合は,惑星は円盤の結合から外れ磁気圏による穴の中に入ることになる.
ここでは,円盤消失は二段階に分かれていると考える.
まず円盤内縁が 0.01 から 0.02 AU へと倍になる.この間に TRAPPIST-1b は比較的早く円盤との結合が切れるが,TRAPPIST-1c は惑星移動レートの係数が比較的大きいため,円盤との結合が切れずに円盤内縁の移動に付いて行く (この係数は惑星の質量が大きいと大きく,また軌道共鳴鎖に入っている惑星が多いと小さくなる).この間に,TRAPPIST-1b と c の 3:2 共鳴が破壊される.
引き続く二番目の円盤消失フェーズで,TRAPPIST-1d は c との共鳴から抜ける.それより外側では共鳴関係は維持される.
論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1703.06936
Lehmer et al. (2017)
The longevity of water ice on Ganymedes and Europas around migrated giant planets
(軌道移動する巨大惑星の周りのガニメデ・エウロパ状天体における水氷の寿命)
衛星からのハイドロダイナミックな損失率は主に,衛星が受け取る恒星からのフラックスより決定した.この値は,巨大惑星と氷衛星が恒星に近づくに連れて増加する.
計算の結果,ある惑星-恒星間距離で氷衛星への日射強度が十分強くなり,暴走温室状態 (runaway greenhouse state) になる.この暴走温室状態は,氷衛星表面の蒸発可能な水を急速に水蒸気大気に変える.
この大気は,小さい衛星からは容易に散逸する.しかし,太陽型星まわりのガニメデサイズの氷衛星の場合,表面の水 (氷もしくは液体) は暴走温室を起こす軌道距離の外ではずっと保つことが出来ると判明した.
対照的に,エウロパサイズのより小さい衛星の表面の水は,太陽型星の周り 1.49 - 0.74 AU の範囲内でボンドアルベドが 0.2 - 0.8 の範囲で,1 Gyr より長いタイムスケールしか存在できない.結果として,小さい衛星はその氷の外殻を失い,それは惑星の周りに水素原子のトーラス構造を形成しうるため,これは将来的な観測で検出可能だと考えられる.
arXiv:1703.06936
Lehmer et al. (2017)
The longevity of water ice on Ganymedes and Europas around migrated giant planets
(軌道移動する巨大惑星の周りのガニメデ・エウロパ状天体における水氷の寿命)
概要
太陽系の巨大ガス惑星は氷衛星を持っており,系外ガス惑星も似たような衛星系を持つことが期待される.もし木星の様な惑星が中心星の方へ軌道移動した場合,惑星の周りの氷衛星は蒸発し,大気を形成し,生命存在可能性のある海が表面に形成されるかもしれない.ここでは,氷衛星表面の氷と,形成される可能性のある海が,流体力学的に宇宙空間へ失われるまでの間にどの程度存続するかについて調べた.衛星からのハイドロダイナミックな損失率は主に,衛星が受け取る恒星からのフラックスより決定した.この値は,巨大惑星と氷衛星が恒星に近づくに連れて増加する.
計算の結果,ある惑星-恒星間距離で氷衛星への日射強度が十分強くなり,暴走温室状態 (runaway greenhouse state) になる.この暴走温室状態は,氷衛星表面の蒸発可能な水を急速に水蒸気大気に変える.
この大気は,小さい衛星からは容易に散逸する.しかし,太陽型星まわりのガニメデサイズの氷衛星の場合,表面の水 (氷もしくは液体) は暴走温室を起こす軌道距離の外ではずっと保つことが出来ると判明した.
対照的に,エウロパサイズのより小さい衛星の表面の水は,太陽型星の周り 1.49 - 0.74 AU の範囲内でボンドアルベドが 0.2 - 0.8 の範囲で,1 Gyr より長いタイムスケールしか存在できない.結果として,小さい衛星はその氷の外殻を失い,それは惑星の周りに水素原子のトーラス構造を形成しうるため,これは将来的な観測で検出可能だと考えられる.