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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1703.01424
Gillon et al. (2017)
Seven temperate terrestrial planets around the nearby ultracool dwarf star TRAPPIST-1
(近傍の超低温矮星 TRAPPIST-1 まわりの 7 つの温暖な惑星)

概要

木星サイズの恒星 TRAPPIST-1 (トラピスト1) の測光観測から,少なくとも 7 個の惑星が存在していることを発見した.観測は地上望遠鏡と宇宙望遠鏡の双方で行われた.

内側の 6 個の惑星はそれぞれ,軌道共鳴に近い状態に入っている.この軌道配置は,惑星が遠方で形成された後に内側に移動してきたことを示唆する.また 7 個の惑星は,表面に液体の水が存在できる程度に低い温度を持ちうる.


これまでの観測で,この恒星の周りには TRAPPIST-1b, c, d が検出されていたが,そのうちの TRAPPIST-1d はトランジットが 2 回しか検出されていなかった.

最初の発見論文の投稿後に,3 つの惑星が同時に TRAPPIST-1 をトランジットした特徴を光度曲線のデータ中に発見した.このことがさらなる観測へのモチベーションとなり,TRAPPIST-1d のトランジットを 6 回観測できると思われる期間の間,2016 年の 2月から 3月にかけてスピッツァー宇宙望遠鏡で観測を行った.また,フォローアップ観測は地上望遠鏡で 2016 年 5 月まで継続して行った.フォローアップ観測に用いたのは,チリにある TRAPPIST-South 望遠鏡,ハワイの 3.8 m UK InfrarRed Telescope (UKIRT),La Palma にある 4 m ウィリアム・ハーシェル望遠鏡,2 m Liverpool 望遠鏡,南アフリカ天文台の 1.0 m 望遠鏡である.

2016/9/19 以前に得られた光度曲線から,先の発見論文で報告した TRAPPIST-1d の軌道周期の候補 11 個の可能性を排除した.このことは,観測されていた 2 回のトランジットは異なる天体によって起こされていたことを示唆する.

また,単一周期でのトランジットとは結びつかない,いくつかのトランジットシグナルを検出した.これらのトランジットシグナルから,周期が 4.04日,6.06日,8.1日と 12.3日のものを同定した.これはそれぞれ,今回発見された TRAPPIST-1d, TRAPPIST-1e, TRAPPIST-1f と TRAPPIST-1g に対応するものである.

さらに,スピッツァー宇宙望遠鏡の測光観測から,は0.35%のトランジット深さ,トランジット継続時間が 75 分の孤立したトランジットシグナルも検出された.これは,最も外側にある,軌道周期が不明な 7 番目の惑星 TRAPPIST-1h によるものと解釈される.
地上観測データから TRAPPIST-1h の 2 回目のトランジットを探したが,明確なシグナルは発見できなかった.

またトランジット時刻変動 (transit timing variations, TTV) での各惑星の質量の推定も行った.

パラメータ

TRAPPIST-1
別名:2MASS J23062928−0502285
光度:V = 18.8
距離:12.1 pc (39.5 光年)
質量:0.0802 太陽質量
半径:0.117 太陽半径
平均密度:50.7 太陽密度
光度:0.000524 太陽光度
有効温度:2559 K
金属量:[Fe/H] = 0.04
TRAPPIST-1b
軌道周期:1.51087081 日
軌道長半径:0.01111 AU
日射量:地球の日射量の 4.25 倍
平衡温度:400.1 K
半径:1.086 ± 0.035 地球半径
質量:0.85 ± 0.72 地球質量
平均密度:0.66 ± 0.56 地球密度
トランジット観測回数:37 回
TRAPPIST-1c
軌道周期:2.4218233 日
軌道長半径:0.01521 AU
日射量:地球の日射量の 2.27 倍
平衡温度:341.9 K
半径:1.056 ± 0.035 地球半径
質量:1.38 ± 0.61 地球質量
平均密度:1.17 ± 0.53 地球密度
トランジット観測回数:29 回
TRAPPIST-1d
軌道周期:4.049610 日
軌道長半径:0.02144 AU
日射量:地球の日射量の 1.143 倍
平衡温度:288.0 K
半径:0.772 ± 0.030 地球半径
質量:0.41 ± 0.27 地球質量
平均密度:0.89 ± 0.60 地球密度
トランジット観測回数:9 回
TRAPPIST-1e
軌道周期:6.099615 日
軌道長半径:0.02817 AU
日射量:地球の日射量の 0.662 倍
平衡温度:251.3 K
半径:0.918 ± 0.039 地球半径
質量:0.62 ± 0.58 地球質量
平均密度:0.80 ± 0.76 地球密度
トランジット観測回数:7 回
TRAPPIST-1f
軌道周期:9.206690 日
軌道長半径:0.0371 AU
日射量:地球の日射量の 0.382 倍
平衡温度:219.0 K
半径:1.045 ± 0.038 地球半径
質量:0.68 ± 0.18 地球質量
平均密度:0.60 ± 0.17 地球密度
トランジット観測回数:4 回
TRAPPIST-1g
軌道周期:12.35294 日
軌道長半径:0.0451 AU
日射量:地球の日射量の 0.258 倍
平衡温度:198.6 K
半径:1.127 ± 0.041 地球半径
質量:1.34 ± 0.88 地球質量
平均密度:0.94 ± 0.63 地球密度
トランジット観測回数:5 回
TRAPPIST-1h
軌道周期:20 (+15, -6) 日
軌道長半径:~ 0.063 AU
日射量:地球の日射量の ~ 0.131 倍
平衡温度:~ 168 K
半径:0.755 ± 0.034 地球半径
トランジット観測回数:1 回

惑星系の特徴

惑星の組成

TRAPPIST-1b, c, e, f, g の 5 個はサイズが地球と似ており,TRAPPIST-1d, h の 2 個は火星と地球の中間的なサイズを持つ.

6 個の内側の惑星の質量推定からは,どれも岩石組成であることを示唆する.ただしここでの質量推定の精度は,惑星組成のうちの揮発性物質の組成の割合を決定出来るほどは良くない.

例外は TRAPPIST-1f で,この惑星は密度が低いため揮発性物質を多く含むと考えられる.この惑星の揮発性成分は,氷の層もしくは大気として (あるいはその両方として) 存在すると考えらる.これは今後のハッブル宇宙望遠鏡かジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡での追加観測で確認出来るかもしれない.

惑星の形成と進化

中心星 TRAPPIST-1 と各惑星の質量比は 0.02%程度であり,この比は木星のガリレオ衛星と似ている.この事は,TRAPPIST-1 まわりの惑星と木星の衛星は形成過程が似ている可能性を示唆している.

発見された惑星の軌道傾斜角はどれも 90°に近い.非常に同一平面上に揃っており,ほぼ edge-on で見えているという位置関係にある.

さらに内側の 6 個の惑星は,これまで発見されている軌道共鳴鎖 (resonant chain) に近い状態の軌道配置で最も長い軌道共鳴の連鎖に入っている.
各惑星の軌道周期の比は,TRAPPIST-1c/b ~ 8/5, TRAPPIST-1d/c ~ 5/3, TRAPPIST-1e/d ~ 3/2, TRAPPIST-1f/e ~ 3/2, TRAPPIST-1g/f ~ 4/3 となっている.この平均運動共鳴に近接した状態は,測定されたトランジット時刻変動 (transit timing variations, TTV) の変動の大きさと整合的である.

このような関係は,ガス円盤内での複数惑星の相互作用によって自然に説明することができる.TRAPPIST-1 系の起源の理論的モデルとして考えられるのは,これらの惑星は恒星から遠い場所で形成され,円盤によって駆動される内側への軌道移動によって移動してきたというものである.これは,木星のガリレオ衛星の形成・進化メカニズムとして提案されているものと同じである.

各惑星の組成は,それぞれが形成された領域の組成を反映していると考えられる.そのためこのシナリオでは,各惑星は揮発性成分を多く含み,地球より低密度であることを予言する.これは,比較的精度良く分かっている TRAPPIST-1f の平均密度の暫定的な分析結果とも整合的である.

惑星の居住可能性

楽観的なハビタブルゾーン (optimistic habitable zone) の中には,TRAPPIST-1d, e, f, g の 4 つの惑星が入る.また,保守的なハビタブルゾーン (conservative habitable zone) の場合,TRAPPIST-1e, f, g の 3 つの惑星が入る.

これらの惑星が受ける日射量は,地球の 4.3 - 0.13 倍の範囲にある.これは太陽系における,水星 (地球の日射量の 6.7 倍) からケレス (同 0.13 倍) の範囲に非常に似ている.特に,TRAPPIST-1c, d, f は,受け取る日射量がそれぞれ金星,地球,火星に近い.

しかしこのような低日射環境であっても,7 個のすべての惑星は公転周期と自転周期が潮汐的に同期していると考えられる.あるいは高次の spin-orbit 共鳴 (太陽系で言うと水星がその状態) に入っている可能性があるが,これは各惑星の軌道離心率の大きさの観測からの上限値を考えると,可能性は低い.

1 次元の雲なし気候モデルを,低温度星の中心星スペクトルの元で使用した場合,TRAPPIST-1e, f, g の 3 つの惑星は,大気組成が地球と似ている場合は表面に水の海を保持できると推定される.惑星が潮汐固定されている状態での 3 次元の気候モデルからも,同じ推論が得られる.

内側の TRAPPIST-1b, c, d に関しては,3 次元気候モデルでは暴走温室効果を起こすシナリオとなった.雲のフィードバックは一般に同期自転惑星の表面温度を低下させる効果を持つが,このような短周期の惑星にとってはそれでも効果が小さかった.
とは言え,もしいくらかの水が初期の高温の時期を生き残ったとしたら,TRAPPIST-1b, c, d への日射量は,惑星表面の限定された領域に液体の水を持つことが出来る程度には小さい.

TRAPPIST-1h に関しては,軌道周期が確定しておらず,そのため中心星からの距離も確定していない.しかしこの惑星への日射量は小さいため,水が溶解する温度以上に保つのは難しい.しかし,もしこの惑星に十分な内部エネルギーがあった場合,例えば潮汐加熱などがあった場合,あるいはもし初期の水素豊富な大気の大部分が生き残り,内部の熱の損失を強く抑制しているような場合は,表面に水を保持できる可能性がある.








ニュースで非常に話題になった,TRAPPIST-1 まわりの 7 個の系外惑星の発見を報告する論文です.

この星系では,Gillon et al. (2016) で既に 3 個 (TRAPPIST-1b, c, d) の惑星の存在が報告されていました.このうち,TRAPPIST-1b と c は観測の精度も良く,今回の新しい結果でも存在が確認されました.しかし TRAPPIST-1d は観測の精度が比較的悪く,軌道周期も 2016 年の段階では確定していませんでした.今回の観測では,2016 年に報告されていた TRAPPSIT-1d の取りうる軌道周期の候補 11 個を全て否定し,代わりに TRAPPIST-1d, e, f, g, h の新たな 5 惑星の存在を報告しました.

このうち TRAPPIST-1e, f, g の 3 つについてはハビタブルゾーン内にあると考えられ,表面に水を持つ (海が存在する) 可能性があると指摘されています.


ニュースでは話題が先行して,「海が発見された」とするような情報も見られましたが,実際に海が発見されたわけではなく,大気の成分が検出されたわけでもありません.従って各惑星の大気や表面の様子,海が存在するかどうかについては不明です.


なお,2016 年の TRAPPIST-1b, c, d の発見報告論文はこちらです.
天文・宇宙物理関連メモ vol.389.5 Gillon et al. (2016) TRAPPIST-1 まわりでの 3 惑星の発見

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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1702.07075
Withers & Vogt (2017)
Occultations of astrophysical radio sources as probes of planetary environments: A case study of Jupiter and possible applications to exoplanets
(惑星環境のプローブとしての天体物理的電波源の掩蔽:木星でのケーススタディと系外惑星への応用の可能性)

概要

惑星の大気,電離圏,磁気圏の特徴は,地球から測定するのは難しい.電波掩蔽観測はこれらの特徴を測定するためのよく知られた手段であるが,掩蔽観測は惑星の近くにある探査機からの電波透過を観測するという方法に依存してきた.

ここでは,遠方の天体物理的な電波源からの電波放射の惑星環境による掩蔽が,惑星の周囲の磁場強度,プラズマ密度,中性粒子密度などを測定する手法として使用できるかについて研究を行った.

木星に対する理論的なケーススタディでは,10 木星半径以内を通過する電波信号に起きるファラデー回転 (Faraday rotation) による偏光角の大きな変化と,中性大気を通過してくる電波信号に発生する周波数と強度の大きな変化が起きることを発見した.

天体物理的な電波源としては,パルサーや活動銀河核,メーザーなどの候補天体がある.これらの天体が木星環境によって掩蔽されるイベントは,少なくとも年に 1 回はある.

またパルサーの場合,それらから放射されたパルスの到着の遅れは,通過してきたプラズマ密度の測定手段としても使う事ができる.

物理特性を観測するのが非常に難しい系外惑星でも,天体物理的な遠方の電波源,例えばその惑星の主星を掩蔽を観測できると考えられる.

木星でのケーススタディ

木星周辺環境のセットアップ

掩蔽観測をベースにした技術の明白な利点は,惑星間物質や星間物質を伝播する間に電波が受ける影響は,掩蔽前および掩蔽後の観測結果をベースラインとすることで除去することが出来るという点である.従ってここではそれらの影響は考慮しない.
ただし,地球の大気と電離圏を通過することによる電波信号への影響は,掩蔽の継続時間と比べて短いタイムスケールで変動する.そのためこれらの影響は地球周辺環境の独立した同時観測によって取り除かれる必要がある.

まず木星大気の中性粒子の密度構造を仮定する.木星半径を圧力が 1 bar となる高度と設定する (Seiff et al. 1998).木星の中性大気は扁平であり球ではないが (Hubbard et al. 1975など),この場合は球対称の近似は妥当である.

電離圏に関しては Chapman function を用いて構造を仮定した (Yelle & Miller 2004).なお電離圏に関しては球対称近似は現実的ではない.これは,電離圏の密度は太陽天頂角によって変化するからである.
電離圏の構造は観測に基づいて仮定した.電離圏の最上部と磁気圏の内縁 10 木星半径の間の電子密度の観測はほとんど無いので,シンプルな補間関数を使用した (Bagenal & Delamere 2011).

結果

偏光角の変化
ファラデー回転による電波の偏光角変化の大きさは,電波信号が惑星の中心から 10 木星半径以内の空間を通過し,周波数が 0.1 GHz の場合は 1 rad (ラジアン) を超える.また 3 木星半径以内を通過する 1 GHz の信号の場合も 1 rad を超える.これらは磁気圏のプラズマによるものである.

電離圏を通過する電波信号の場合はこの効果は大きくなる.この場合は,周波数が 10 GHz の場合でも偏光角変化の大きさは 0.1 rad を超える.ただしこれらは理想的な条件での結果であるため,現実的なモデルの場合では偏光角の変化はファクターで 0.2 小さくなる.

なお偏光角の変化は 0 〜 π rad の範囲内でしか決定することが出来ないので,π rad を超えるような偏光角の変化を見るためには,高い時間分解能での観測で偏光角の変化を追跡しなければならない.
周波数の変化
木星周辺環境を通過する電波信号の周波数の変化について,掩蔽の入と出では周波数変化の符号が異なる.ここでは掩蔽の出の時を例示する.また掩蔽の状況として,遠方の天体物理的電波源の視線方向が惑星の食の中心で完全に掩蔽された,最も深い掩蔽の場合を例示する.

もっとも深い掩蔽の場合,木星磁気圏のプラズマは 10 木星半径以内の距離において,周波数 0.1 GHz の電波シグナルに対して 10-2 Hz の周波数変化を起こす.これは周波数の値の 10-10 の変化に相当する.

電離圏の上部では,0.1 GHz の電波シグナルの変化は 100 Hz のオーダー (10-6 の変化) になる.

周波数変化に関しては,中性大気が最も大きな影響を及ぼす.周波数 0.1, 1, 10 GHz のどの電波信号に対しても,気圧 1 bar の高度に電波が到達する前に,周波数変化は 1 kHz を超える.
好ましい遠方の天体物理的な電波源
惑星の環境を掩蔽観測から探るためには,電波源は点源的であるのがよい.さらに,その電波源からの放射は大きな一定の偏光を持ち,狭く一定な周波数を持ち,大きく一定の強度を持っているべきである.

とは言え,これらのすべての要求を満たさない遠方の天体物理的な電波源も有用である.例えば,遠方の電波源が偏光していない場合でも,掩蔽の最中の周波数と強度の変化の測定は惑星環境の推定に役立つ.

また遠方の電波源の角サイズは,惑星の角サイズよりも十分小さい必要がある.木星の角サイズは,木星大気の場合は 0.01 arcsec,木星の電離圏は 0.1 arcsec,磁気圏は 50 arcsec となっている.

遠方の電波源として有用なのは,パルサー,活動銀河核,メーザーなどが挙げられる.
パルサーは直径が 10 km のオーダーの中性子星で,これは点源とみなせる (Burke & Graham-Smith 2010).パルサーの電波放射はしばしば大きく偏光しており.かつ周期的で短いパルスを持つ (Carroll & Ostlie 2007).パルサーの周期は典型的にはミリ秒から秒程度のオーダーである.そのためパルスのプロファイルを生成するのに適している.

活動銀河核は銀河中心の超大質量ブラックホールである.ブラックホールへの降着は電波領域での強い放射を産む.コンパクトな中心の電波源領域は角サイズにしてミリ秒角のオーダーを持つ.従って木星環境による掩蔽に対して点源とみなせる.

中心の電波源からの放射は強く直線偏光する場合がある.ただし,中心の電波源から放出されるジェットとローブからの放射を除外するためには,高分解能の撮像が必要である.またいくつかの活動銀河核のクラスは放射中に細いスペクトル線を含む.

メーザーは銀河系内にも銀河系外にも存在しうる (Gray 1999など).
銀河系内のメーザーは一般に星に伴って発見される.メーザー放射をしている領域の空間的広がりは数 AU のオーダーなので,銀河系内のメーザー源は木星の掩蔽に対して点源とみなせる.
メーザーからの電波放射はしばしば強く偏光している.銀河系内のメーザー放射は狭いスペクトル線の中で起きる.これは SiO や水,OH などの化学種のエネルギー準位遷移に対応している.

銀河系外のメーザーはメガメーザー (megamasers) として知られ,これらは活動銀河核に伴っている (Lo 2005).これらは銀河系内のメーザーに比べると偏光は小さい.これらの放射は比較的幅が広く,OH や 水 のラインから来る.
パルサー放射の遅れ
パルサーからのパルスは,星間物質や惑星周辺環境のプラズマ中を通過することによって,真空を通過してきた場合に比べて到達時刻が遅れる.そのため,電子密度が高い惑星の磁気圏と電離圏を通過してきたパルスは,想定よりも遅く観測される.

10 木星半径以内を通過してきた 0.1 GHz の電波シグナルの場合,到達時刻の遅れは 1 マイクロ秒を超える.観測される大量のパルスを平均することで,測定される到達時刻の遅れの精度を高めることが出来る.

ただし,木星の磁気圏は土星軌道にまで細長く伸びている.太陽の反対側では,木星の磁気圏は,長さが 15 AU (30000 木星半径),半径が 200 木星半径の円柱状として近似することができる (Lepping et al. 1983, Khurana et al. 2004).この状態では,木星は木星は円の中心にあり,円柱構造が太陽と反対側に長く伸びているという描像になる.そのため,球対称を仮定した先ほどの見積もりは,掩蔽が太陽-木星の視線方向で,つまり衝の時に発生した場合は正しくない.ここでは,衝の位置関係にある場合を考慮した見積もりも行った.

掩蔽の起きる頻度

木星は天球面上で,幅が 2 木星半径,長さ 2πa (a は木星の軌道長半径) の帯の領域を掃いて動く.全天球面は 4πa2 と表せるので,木星は軌道を一周する間に,空の 木星半径/木星の軌道長半径,つまり 10-4 の領域を掃くことになる.また,通過してくる電波信号に対して大きな影響を及ぼせるのは 10 木星半径程度までなので,この幅まで考えると空の領域の 10-3 の領域を掃くことになる.

パルサーは数千個,活動銀河核は数万個発見されているのため,パルサーや活動銀河核が木星環境に掩蔽されるイベントは,少なくとも 1 木星年の間に 1 回は起きうる.ただし天体は等方的ではなく銀河赤道面に集中しているため,掩蔽は木星が黄道面と銀河面の交点付近にいる時に起きやすい.

また,木星の magnetotail (磁気圏尾部) による掩蔽を考える.5 AU の距離での 200 木星半径の円盤の面積は全天の 10-4 であり,パルサーや遠方の電波源が木星の磁気圏尾部で掩蔽されるというイベントは発生しうる.

木星の衝は概ね (地球の) 1 年に 1 回の頻度で起きる.異なる衝の度に異なる空の領域がサンプルされることになり,好ましい遠方電波源が掩蔽される可能性を上げる.頻度としては,1 回の衝につき少なくとも 1 つの電波源が掩蔽されると考えられる.観測的にもっとも良い衝は,地球から見て木星が銀河面内の電波源が集中している領域にいる時に起きる衝である.

系外惑星の場合遠方の電波源・系外惑星・地球の 3 つが並ぶ確率は非常に低い.

木星と同じ軌道にある,木星と同じ軌道を持つ系外惑星軌道をを face-on (軌道面を正面から見る位置関係) で見た場合,惑星が掃く面積は軌道一周で 1015 km2 である.系外惑星が 10 光年先にある場合は,全天のわずか 10-14 を掃くにすぎない.木星と同じ磁気圏の大きさを持っていた場合は 10-10 となる.

これらの値は,系外惑星の分布と銀河系内の電波源の銀河面への集中的な分布を考えると多少は緩和されるが,それでもなお困難な値である.

しかし,恒星の電波放射が系外惑星のトランジットによって掩蔽される際の観測は解の一つである.木星の内部磁気圏は 2.5 木星半径であり,10 光年の距離では 0.4 ミリ秒角に対応する.VLBA のような超長基線電波干渉法の場合,GHz の周波数でその程度の角度分解能が得られるかもしれない.

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arXiv:1702.06549
Daemgen et al. (2017)
Mid-infrared characterization of the planetary-mass companion ROXs 42B b
(惑星質量の伴星 ROXs 42B b の中間赤外での特徴付け)

概要

ROXS 42 B の惑星質量の伴星 ROXS 42Bb の 3 - 5 µm 赤外線測光観測の結果について報告する.

観測は Keck/NIRC2 で行われ.L’ バンドでの観測と,Brackett-α (Brα) と Ms バンドでのデータを取得した.後者 2 つの波長は初の観測である.

このデータを,既に存在する近赤外の測光観測データと,K バンド 2 - 2.4 µm での分光観測結果と併せて解析した.その結果を,理論モデルおよびその他の直接撮像されている惑星質量天体の観測結果と比較した.

ROXS 42 Bb の大気を特徴づけるため,フォワードモデリングとリトリーバルの両方を使用した.

解析の結果,ROXS 42 Bb の 1.25 - 5 µm のスペクトルエネルギー分布は,GSC 06214 B とアンドロメダ座カッパ星b のものと最もよく似ている.しかし Ks - Ms カラーでは GSC 06214 B よりも僅かに青っぽい色を持ち,そのため周惑星円盤の特徴は欠如している.

この天体の大気モデルとして,ダストのない大気,ダストの多い大気,雲の多い大気のフォワードモデルのどれもを,正式には排除することはできなかった.しかし,ダスト・雲を多く含む大気を仮定するモデルは,温度と重力に関して測光観測と分光観測データの双方と整合的であった.ダストがない大気モデルは非整合的であった.

1 - 5 µm 測光観測からの大気リトリーバルでは,二酸化炭素の数密度の上限は log(n_CO2) < -2.7 だがそれ以上の制限は得られなかった.


結論として,ROXS 42 Bb は中間赤外の測光観測において,その他の過去に観測されている惑星質量で似た温度にある天体と系統的に異なる特徴を持つ.これが,観測対象の若い年齢 (~ 2 Myr) での自然な多様性の範囲内によるものに起因するのか,この天体の初期進化と環境に特有なものなのかは不明である.

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arXiv:1702.06356
Michikoshi & Kokubo (2017)
Simulating the Smallest Ring World of Chariklo
(カリクローの最小のリング系のシミュレーション)

概要

ケンタウルス族の Chariklo (カリクロー) の周りには,2 つの濃く細い環が発見されている.小さい天体の周りのこのような環の存在は,多くの疑問点を提起する.例えば,環の起源,安定性と寿命などである.

カリクローの環の性質を調べるため,自己重力的な衝突系粒子を用いた環のグローバルな N 体シミュレーションを初めて行った

その結果カリクローの環においては,環の物質の速い拡散を防ぐためには,カリクローは環の物質よりも高密度である必要があるということを発見した.
もしカリクローが環の物質より高密度であれば,自己重力ウェイク (self-gravity wakes) と呼ばれる微細な渦状構造が内側の環の中に生じる.これらのウェイクは環の粘性拡散を加速し,またこれらはメートルサイズの粒子に対しては 100 年程度の典型的な拡散のタイムスケールを持つ.これは過去の研究から示唆されるタイムスケールよりも短い.

これらの結果より,カリクローの周りに細い環が存在するということは,環を構成する粒子は小さいか,あるいは羊飼い衛星が存在しているということが示唆される

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arXiv:1702.06393
Rey et al. (2017)
The SOPHIE search for northern extrasolar planets - XII. Three giant planets suitable for astrometric mass determination with Gaia
(北天の系外惑星の SOPHIE での探査 XII:Gaia での位置天文学的質量決定に適した 3 つの巨大惑星)

概要

3 個の低金属量の太陽型星の新しい視線速度観測の結果について報告する.観測は SOPHIE 分光器と,その前身である ELODIE による結果である.どちらも,Haute-Provence 天文台の 193 cm 望遠鏡に設置されていたものであり,これらのデータの解析から 3 つの新しい巨大系外惑星の検出と特徴付けを行った.

今回発見された惑星は,中間的な軌道周期 1.7 - 3.7 年を持つ.
3 個の恒星は HD 17674,HD 42012,HD 29021 であり,それぞれ 1 個の惑星を持ち,それらの最小質量は 0.9 - 2.5 木星質量の範囲にある.

それぞれの惑星の軌道周期の範囲と,惑星の質量の範囲,および中心星からの距離を考えると,これらは位置天文衛星 Gaia の稼働期間中における良いアストロメトリ観測の対象となる.ここでは,Gaia の最初のデータリリースから得られたデータより,暫定的なアストロメトリの解についても議論する.

パラメータ

HD 17674 系

HD 17674
等級:7.56
スペクトル型:G0V
距離:44.5 pc
観測期間:18.37 年
有効温度:5904 K
金属量:[Fe/H] = -0.16
質量:0.98 太陽質量
半径:1.18 太陽半径
年齢:8.4 Gyr
HD 17674b
軌道周期:623.8 日
軌道離心率:0.13 未満
軌道長半径:1.42 AU
最小質量:0.87 木星質量

HD 42012 系

HD 42012
等級:8.44
スペクトル型:K0
距離:37.1 pc
観測期間:8.24 年
有効温度:5405 K
金属量:[Fe/H] = -0.09
質量:0.83 太陽質量
半径:0.82 太陽半径
年齢:4.1 Gyr
HD 42012b
軌道周期:857.5 日
軌道離心率:0.2 未満
軌道長半径:1.67 AU
最小質量:1.6 木星質量

HD 29021 系

HD 29021
等級:7.76
スペクトル型:G5
距離:30.6 pc
観測期間:4.41 年
有効温度:5560 K
金属量:[Fe/H] = -0.24
質量:0.85 太陽質量
半径:0.85 太陽半径
年齢:7.4 Gyr
HD 29021b
軌道周期:1362.3 日
軌道離心率:0.459 未満
軌道長半径:2.28 AU
最小質量:2.4 木星質量

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