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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1702.00106
Zhou et al. (2017)
HAT-P-67b: An Extremely Low Density Saturn Transiting an F-Subgiant Confirmed via Doppler Tomography
(HAT-P-67b:ドップラートモグラフィーで確認された F 型準巨星をトランジットする超低密度土星型惑星)
HAT-P-67b は半径が 2.085 木星半径で,中心星 HAT-P-67 は質量が 1.642 太陽質量,半径が 2.546 太陽半径である.惑星は ~ 4.81 日周期で公転している.
視線速度観測から,この惑星の質量の上限値は 0.59 木星質量という制限をつけた.また,この惑星の質量の理論上の下限値は 0.056 木星質量であり,これはロッシュローブオーバーフローを起こして質量を急速に失わないために必要な質量である.
中心星は準巨星であるにも関わらず,中心星の自転は比較的速い状態のままである.射影した自転速度は 35.8 km/s であった.そのため,視線速度観測を用いた惑星質量の精密な決定が難しくなっている.
HAT-P-67b を惑星と確定させるために,惑星トランジットの 2 種類のドップラートモグラフィー (Dopplar tomography) における検出を行った.この手法により,食連星が視野に混ざっているために偽のトランジットシグナルを生成しているという可能性を排除した.
またドップラートモグラフィー観測から,この惑星の公転軸は中心星の自転軸に対して揃っていることが分かった.
この惑星は半径が大きく,質量は小さいため,HAT-P-67b はこれまでに知られている中で最も低密度な巨大ガス惑星の一つである.
しかし,これまでに知られているトランジット惑星のうち,1.5 太陽質量より重い恒星の周りにあるのは全体の 1%のみである.
早期型星は半径が大きく,結果として惑星がトランジットした時のトランジット深さが浅くなる.また主系列段階における磁気的ブレーキが弱いため,恒星のスペクトル線が速い自転によって混合してしまいやすくなる (rotatilnally blended spectral lines).このことが,一般的な視線速度観測技術での惑星の確定を難しくしていた.
これまで,’retired A-stars’ の視線速度サーベイを行ってきた.これは,主系列段階から進化した恒星は膨張して自転速度が遅くなり,視線速度による精密な測定が可能なまでにスペクトル線がシャープになるため,その観測を行うというものである.
また,進化した恒星周りの惑星については,トランジット観測でも最近成功を収めている.その中には,ケプラーで浅いトランジットが同定されている準巨星や巨星周りの惑星を含む.例えば,ケプラー 56b, c (Huber et al. 2013),ケプラー96b (Lillo-Box et al. 2014),ケプラー432b (Quinn et al. 2015),KOI-206b, KOI-689b (Almenara et al. 2015),K2-39b (Van Eylen et al. 2016) である.その他には,主系列星の A 型星まわりにドップラートモグラフィーを用いて確認されたホットジュピター,WASP-33b (Collier Cameron et al. 2010),KOI-13b (Szabo et al. 2011など),HAT-P-57b (Hartman et al. 2015),KELT-17b (Zhou et al. 2016) などがある.
ここでは HATNet サーベイ (Bakos et al. 2004) による HAT-P-67b の発見を報告する.
中心星の HAT-P-67 は進化した星であるにも関わらず,射影速度 35.8 km/s の速い自転速度を持っており,精密な視線速度を得るのが難しい.そのため,シグナルを惑星と確定するために,ドップラートモグラフィーにおけるトランジット中の惑星の影の検出を行った.
惑星が高速自転星をトランジットする時,惑星は自転する恒星の円盤面の一部を連続して隠すことになる.これにより,恒星のスペクトル線の形状に非対称性が生じる.自転速度が遅い場合はこの非対称性は Rossiter-McLaughlin 効果 (ロシター効果) によって測定することが出来る (Rossiter 1924, McLaughlin 1924).
自転速度が速い場合,惑星の影は広がった恒星のスペクトル線中に同定することが出来る (Collier Cameron et al. 2010など).ドップラートモグラフィーのシグナルの検出が,測光観測でのトランジットでの幅と深さと一致していた場合,トランジットの偽の検出の原因となりうる食連星の混入の可能性を排除することが出来る.
また,視線速度観測からの質量の制限から,その天体の質量が褐色矮星質量より小さい場合は,その天体が惑星であるということが分かる.
金属量:[Fe/H] = -0.08
質量:1.642 太陽質量
半径:2.546 太陽半径
光度:8.68 太陽光度
年齢:1.24 Gyr
距離:320 pc
質量:0.34 (+0.25, -0.19) 木星質量,1 σ の上限値は 0.59 木星質量
半径:2.085 木星半径
平均密度:0.052 g/cm3 (質量を 0.34 木星質量とした場合)
軌道長半径:0.06505 AU
平衡温度:1903 K
この惑星の他にも,準巨星の周りで膨張した惑星が発見されている.KOI-680b (Almenara et al. 2015),EPIC 206247743b (Van Eylen et al. 2016),KELT-8b (Fulton et el. 2015),KELT-11b (Pepper et al. 2016),HAT-P-65b,HAT-P-66b (Hartman et al. 2016) である.
また巨星の周りにも,EPIC 211351816b (Grunblatt et al. 2016) が発見されている.
一つの仮説として,これらのガス惑星は進化した中心星の影響によって再膨張したという可能性がある (Lopez & Fortney 2016).このシナリオでは,中心星が主系列を離れて進化するに連れ,’warm Jupiter’ は強い中心星の輻射とより強い潮汐加熱にさらされる (初期の軌道離心率がゼロでないと仮定した場合).この加熱が,惑星を再膨張させるのに十分なほど深い領域に届き,惑星半径を増大させるというものである.
Hartman et al. (2016) では,惑星の膨張度合いは中心星の fractional age と相関しているという経験的な証拠を発見した.このアイデアも,進化した中心星による惑星の再膨張を支持するものである.
惑星大気のスケールハイトは ~ 500 km と大きく (水素分子大気を仮定した場合),これは透過光分光観測と紫外線による大気蒸発のフォローアップ観測に適している.
また,有意なトランジット時刻の変動は検出されなかった.
arXiv:1702.00106
Zhou et al. (2017)
HAT-P-67b: An Extremely Low Density Saturn Transiting an F-Subgiant Confirmed via Doppler Tomography
(HAT-P-67b:ドップラートモグラフィーで確認された F 型準巨星をトランジットする超低密度土星型惑星)
概要
高速で自転する F 型準巨星をトランジットする,高温の土星型惑星 HAT-P-67b の発見を報告する.HAT-P-67b は半径が 2.085 木星半径で,中心星 HAT-P-67 は質量が 1.642 太陽質量,半径が 2.546 太陽半径である.惑星は ~ 4.81 日周期で公転している.
視線速度観測から,この惑星の質量の上限値は 0.59 木星質量という制限をつけた.また,この惑星の質量の理論上の下限値は 0.056 木星質量であり,これはロッシュローブオーバーフローを起こして質量を急速に失わないために必要な質量である.
中心星は準巨星であるにも関わらず,中心星の自転は比較的速い状態のままである.射影した自転速度は 35.8 km/s であった.そのため,視線速度観測を用いた惑星質量の精密な決定が難しくなっている.
HAT-P-67b を惑星と確定させるために,惑星トランジットの 2 種類のドップラートモグラフィー (Dopplar tomography) における検出を行った.この手法により,食連星が視野に混ざっているために偽のトランジットシグナルを生成しているという可能性を排除した.
またドップラートモグラフィー観測から,この惑星の公転軸は中心星の自転軸に対して揃っていることが分かった.
この惑星は半径が大きく,質量は小さいため,HAT-P-67b はこれまでに知られている中で最も低密度な巨大ガス惑星の一つである.
研究背景
質量の大きな恒星の周りにある惑星は,大きな質量を持つ原始惑星系円盤の中で誕生したと考えられる (Muzerolle et al. 2003など).このような環境では,太陽型星よりも惑星の存在頻度が上がると考えられ (Jhonson et al. 2010など),また大きな質量の惑星の存在も期待される (Lovis & Mayor 2007など).早期型星周りの惑星はその一生の間に大きな日射を受けるので,惑星の質量-半径-平衡温度関係において基準点となりうる.しかし,これまでに知られているトランジット惑星のうち,1.5 太陽質量より重い恒星の周りにあるのは全体の 1%のみである.
早期型星は半径が大きく,結果として惑星がトランジットした時のトランジット深さが浅くなる.また主系列段階における磁気的ブレーキが弱いため,恒星のスペクトル線が速い自転によって混合してしまいやすくなる (rotatilnally blended spectral lines).このことが,一般的な視線速度観測技術での惑星の確定を難しくしていた.
これまで,’retired A-stars’ の視線速度サーベイを行ってきた.これは,主系列段階から進化した恒星は膨張して自転速度が遅くなり,視線速度による精密な測定が可能なまでにスペクトル線がシャープになるため,その観測を行うというものである.
また,進化した恒星周りの惑星については,トランジット観測でも最近成功を収めている.その中には,ケプラーで浅いトランジットが同定されている準巨星や巨星周りの惑星を含む.例えば,ケプラー 56b, c (Huber et al. 2013),ケプラー96b (Lillo-Box et al. 2014),ケプラー432b (Quinn et al. 2015),KOI-206b, KOI-689b (Almenara et al. 2015),K2-39b (Van Eylen et al. 2016) である.その他には,主系列星の A 型星まわりにドップラートモグラフィーを用いて確認されたホットジュピター,WASP-33b (Collier Cameron et al. 2010),KOI-13b (Szabo et al. 2011など),HAT-P-57b (Hartman et al. 2015),KELT-17b (Zhou et al. 2016) などがある.
ここでは HATNet サーベイ (Bakos et al. 2004) による HAT-P-67b の発見を報告する.
中心星の HAT-P-67 は進化した星であるにも関わらず,射影速度 35.8 km/s の速い自転速度を持っており,精密な視線速度を得るのが難しい.そのため,シグナルを惑星と確定するために,ドップラートモグラフィーにおけるトランジット中の惑星の影の検出を行った.
惑星が高速自転星をトランジットする時,惑星は自転する恒星の円盤面の一部を連続して隠すことになる.これにより,恒星のスペクトル線の形状に非対称性が生じる.自転速度が遅い場合はこの非対称性は Rossiter-McLaughlin 効果 (ロシター効果) によって測定することが出来る (Rossiter 1924, McLaughlin 1924).
自転速度が速い場合,惑星の影は広がった恒星のスペクトル線中に同定することが出来る (Collier Cameron et al. 2010など).ドップラートモグラフィーのシグナルの検出が,測光観測でのトランジットでの幅と深さと一致していた場合,トランジットの偽の検出の原因となりうる食連星の混入の可能性を排除することが出来る.
また,視線速度観測からの質量の制限から,その天体の質量が褐色矮星質量より小さい場合は,その天体が惑星であるということが分かる.
パラメータ
HAT-P-67
表面温度:6408 K金属量:[Fe/H] = -0.08
質量:1.642 太陽質量
半径:2.546 太陽半径
光度:8.68 太陽光度
年齢:1.24 Gyr
距離:320 pc
HAT-P-67b
軌道周期:4.8101025 日質量:0.34 (+0.25, -0.19) 木星質量,1 σ の上限値は 0.59 木星質量
半径:2.085 木星半径
平均密度:0.052 g/cm3 (質量を 0.34 木星質量とした場合)
軌道長半径:0.06505 AU
平衡温度:1903 K
議論
HAT-P-67b は,これまで発見されている中で最も大きい惑星の一つである.また最も低密度の惑星の一つでもある.この惑星の他にも,準巨星の周りで膨張した惑星が発見されている.KOI-680b (Almenara et al. 2015),EPIC 206247743b (Van Eylen et al. 2016),KELT-8b (Fulton et el. 2015),KELT-11b (Pepper et al. 2016),HAT-P-65b,HAT-P-66b (Hartman et al. 2016) である.
また巨星の周りにも,EPIC 211351816b (Grunblatt et al. 2016) が発見されている.
一つの仮説として,これらのガス惑星は進化した中心星の影響によって再膨張したという可能性がある (Lopez & Fortney 2016).このシナリオでは,中心星が主系列を離れて進化するに連れ,’warm Jupiter’ は強い中心星の輻射とより強い潮汐加熱にさらされる (初期の軌道離心率がゼロでないと仮定した場合).この加熱が,惑星を再膨張させるのに十分なほど深い領域に届き,惑星半径を増大させるというものである.
Hartman et al. (2016) では,惑星の膨張度合いは中心星の fractional age と相関しているという経験的な証拠を発見した.このアイデアも,進化した中心星による惑星の再膨張を支持するものである.
惑星大気のスケールハイトは ~ 500 km と大きく (水素分子大気を仮定した場合),これは透過光分光観測と紫外線による大気蒸発のフォローアップ観測に適している.
また,有意なトランジット時刻の変動は検出されなかった.
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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1701.08953
Meier & Holm-Alwmark (2017)
A tale of clusters: No resolvable periodicity in the terrestrial impact cratering record
(クラスターの物語:地球の衝突クレーター記録の周期性の不存在)
アップデートされた衝突年代リストを用いた CSA の結果,衝突イベントの周期性は非常に弱くなった.正確な年齢が分かっている衝突のみを含むリストを用いた CSA では,過去 500 Ma (5 億年) における明確な周期性は発見できなかった.
もし周期的な衝突イベントを大目に見積もって,周期成分とランダム成分の混合であると仮定した場合,過去 260 Ma (2億6000万年) における衝突のうち ~ 80%以上が周期性成分によるものだった場合は,衝突イベントの周期性が見られるということを示した.
ここでの CSA の結果と Rampino & Caldeira (2015) の CSA の結果の違いは,重複した年齢の ”clustered” impacts のサブセットが原因である.いくつかの衝突年代の密集 (例えば小惑星の破壊イベントによるもの) の存在が,CSA に偽の周期性の極大を与えることがある.
現在のところ,地球への隕石衝突記録における周期性の証拠は無い.
arXiv:1701.08953
Meier & Holm-Alwmark (2017)
A tale of clusters: No resolvable periodicity in the terrestrial impact cratering record
(クラスターの物語:地球の衝突クレーター記録の周期性の不存在)
概要
Rampino & Caldeira (2015) では,過去 260 Myr (2億6000万年間) の地球へのインパクトクレーター記録の circular spectral analysis (CSA) を行い,衝突イベントに ~ 2600 万年の周期性があることを示唆した.その解析における幾つかの衝突イベントについては,正確で高精度な 40Ar-39Ar による新しい年齢が最近報告され,その結果として大きくクレーターの年齢がシフトした.アップデートされた衝突年代リストを用いた CSA の結果,衝突イベントの周期性は非常に弱くなった.正確な年齢が分かっている衝突のみを含むリストを用いた CSA では,過去 500 Ma (5 億年) における明確な周期性は発見できなかった.
もし周期的な衝突イベントを大目に見積もって,周期成分とランダム成分の混合であると仮定した場合,過去 260 Ma (2億6000万年) における衝突のうち ~ 80%以上が周期性成分によるものだった場合は,衝突イベントの周期性が見られるということを示した.
ここでの CSA の結果と Rampino & Caldeira (2015) の CSA の結果の違いは,重複した年齢の ”clustered” impacts のサブセットが原因である.いくつかの衝突年代の密集 (例えば小惑星の破壊イベントによるもの) の存在が,CSA に偽の周期性の極大を与えることがある.
現在のところ,地球への隕石衝突記録における周期性の証拠は無い.
論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1701.07513
Kitzmann (2017)
Clouds in the atmospheres of extrasolar planets. V. The impact of CO2 ice clouds on the outer boundary of the habitable zone
(系外惑星の大気中の雲 V:ハビタブルゾーンの外縁に二酸化炭素氷の雲が与える影響)
地球型系外惑星の大気中における二酸化炭素氷の雲による散乱温室効果 (scattering greenhouse effect) は,主系列星の周りのハビタブルゾーンの場所に影響を与え,古典的なハビタブルゾーンの外側境界を広げるため,特に興味深い研究対象である.
ここでは,二酸化炭素主体の大気を持った地球型惑星の表面温度に対する二酸化炭素氷の雲の影響を,異なるタイプの中心星に対して調べた.加えて,それらがハビタブルゾーンの外縁の位置に与える影響についても調べた.
この研究では,二酸化炭素氷の粒子に影響されて変わる惑星の表面温度を計算するために,放射対流大気モデルを用いた.雲はパラメータ化された雲モデルが含まれている.また大気モデルは,雲粒子による非等方散乱を正しく記述できる,一般的な離散縦方向の輻射輸送を含んでいる.
計算の結果,二酸化炭素の氷の雲による全体的な温室効果は,恒星の有効温度に強く依存する比較的限られたパラメータ範囲でのみ得られた.
冷たい M 型星まわりの惑星の場合,二酸化炭素雲は最も温室効果が効くケースにおいてもわずか 6 K の温室効果を与えるだけであった.
一方で,F 型星周りの惑星の表面温度に対しては,もし二酸化炭素雲が存在した場合は 30 K の表面温度の上昇が可能であった.
そのため,二酸化炭素雲によるハビタブルゾーンの拡張は,晩期型星に対しては非常に小さいことが分かる.その一方で恒星の有効温度が高い場合,惑星に雲が存在しない場合と比較すると,ハビタブルゾーンの外縁を 0.5 AU 程度広げることが可能である.
中心星から距離が離れていて低温な惑星では,表面に液体の水を保っておくためには,温室効果ガス,例えば二酸化炭素で占められる厚い大気が必要である.もし地球型惑星が地質学的に活発であれば,火山性の脱ガスの影響で二酸化炭素が大気中に蓄積することが出来る (Pierrehumbert 2010).
ハビタブルな地球型惑星で重要な凝集物 (例えば液体の水や水氷など) とは対照的に,いくつかの強い吸収帯を除けばドライアイスは多かれ少なかれ赤外線領域では透明である (Hansen 1997など).
従って,Kasting et al. (1993) などで議論されているような,惑星からの熱放射の吸収と再放射による古典的な温室効果は,二酸化炭素氷の雲では発生しないと考えられる.
しかし,Forget & Pierrehumbert (1997) などで指摘されているように,二酸化炭素氷の粒子は惑星からの熱放射を地表へ効率的に散乱し返すことができ,そのために散乱温室効果を生み出すことが出来る.
二酸化炭素雲の特性によっては,散乱温室効果は雲のアルベド効果を上回ることができ,原理的には水の凍結点を上回るだけの表面温度の上昇が可能である.このあたりは Mischna et al. (2000) などで初期火星大気の文脈で研究されている.
arXiv:1701.07513
Kitzmann (2017)
Clouds in the atmospheres of extrasolar planets. V. The impact of CO2 ice clouds on the outer boundary of the habitable zone
(系外惑星の大気中の雲 V:ハビタブルゾーンの外縁に二酸化炭素氷の雲が与える影響)
概要
雲は惑星大気の環境に大きな影響を与える.地球型系外惑星の大気中における二酸化炭素氷の雲による散乱温室効果 (scattering greenhouse effect) は,主系列星の周りのハビタブルゾーンの場所に影響を与え,古典的なハビタブルゾーンの外側境界を広げるため,特に興味深い研究対象である.
ここでは,二酸化炭素主体の大気を持った地球型惑星の表面温度に対する二酸化炭素氷の雲の影響を,異なるタイプの中心星に対して調べた.加えて,それらがハビタブルゾーンの外縁の位置に与える影響についても調べた.
この研究では,二酸化炭素氷の粒子に影響されて変わる惑星の表面温度を計算するために,放射対流大気モデルを用いた.雲はパラメータ化された雲モデルが含まれている.また大気モデルは,雲粒子による非等方散乱を正しく記述できる,一般的な離散縦方向の輻射輸送を含んでいる.
計算の結果,二酸化炭素の氷の雲による全体的な温室効果は,恒星の有効温度に強く依存する比較的限られたパラメータ範囲でのみ得られた.
冷たい M 型星まわりの惑星の場合,二酸化炭素雲は最も温室効果が効くケースにおいてもわずか 6 K の温室効果を与えるだけであった.
一方で,F 型星周りの惑星の表面温度に対しては,もし二酸化炭素雲が存在した場合は 30 K の表面温度の上昇が可能であった.
そのため,二酸化炭素雲によるハビタブルゾーンの拡張は,晩期型星に対しては非常に小さいことが分かる.その一方で恒星の有効温度が高い場合,惑星に雲が存在しない場合と比較すると,ハビタブルゾーンの外縁を 0.5 AU 程度広げることが可能である.
研究背景
雲は地球型惑星の気候に重要な影響を及ぼす.雲が持つ主要な 2 つの効果は,惑星からの赤外線放射を低層大気中でトラップする効果 (温室効果) と,入射する恒星の放射を宇宙空間に散乱する効果 (アルベド効果) である.従って,異なるタイプの恒星周りのハビタブルゾーンの場所と広がりは,惑星大気中の雲の存在に依存して変化する (Marley et al. 2013).特にハビタブルゾーンの外側境界は二酸化炭素氷の雲とそれによる気候への影響で左右される.中心星から距離が離れていて低温な惑星では,表面に液体の水を保っておくためには,温室効果ガス,例えば二酸化炭素で占められる厚い大気が必要である.もし地球型惑星が地質学的に活発であれば,火山性の脱ガスの影響で二酸化炭素が大気中に蓄積することが出来る (Pierrehumbert 2010).
ハビタブルな地球型惑星で重要な凝集物 (例えば液体の水や水氷など) とは対照的に,いくつかの強い吸収帯を除けばドライアイスは多かれ少なかれ赤外線領域では透明である (Hansen 1997など).
従って,Kasting et al. (1993) などで議論されているような,惑星からの熱放射の吸収と再放射による古典的な温室効果は,二酸化炭素氷の雲では発生しないと考えられる.
しかし,Forget & Pierrehumbert (1997) などで指摘されているように,二酸化炭素氷の粒子は惑星からの熱放射を地表へ効率的に散乱し返すことができ,そのために散乱温室効果を生み出すことが出来る.
二酸化炭素雲の特性によっては,散乱温室効果は雲のアルベド効果を上回ることができ,原理的には水の凍結点を上回るだけの表面温度の上昇が可能である.このあたりは Mischna et al. (2000) などで初期火星大気の文脈で研究されている.
論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1701.07654
Bashi et al. (2017)
Two Empirical Regimes of the Planetary Mass-Radius Relation
(惑星の質量-半径関係の 2 つの経験的レジーム)
ここでは惑星の質量-半径関係 (mass-radius relation) おける 2 つのレジームの性質について研究した.
発見されている惑星のデータの解析から,2 つの “small” と “large” 惑星の間の遷移に関しては,質量が 124 ± 7 地球質量,半径 12.1 ± 0.5 地球半径で分かれているということが示唆された.
さらに,質量-半径関係は小さい惑星に対しては R ∝ M0.55±0.02,大きい惑星に対しては M0.01±0.02 という依存性があることが分かった.
2 つのレジームの境界がある場所は,惑星内部での水素の電子縮退と関係している,これは言い換えれば惑星の全体の組成と関係しているということを示唆する.
具体的に言うと,その境界の質量は,ほとんどが水素とヘリウムから出来ている惑星の特徴的な最小質量になるため,その質量-半径関係はこれらの物質の状態方程式で決定される.
また,観測からの質量-半径関係を,popilation synthesis 計算と比較し,2 つのサンプル間は良い定性的な一致を見ることを示した.
伝統的には,惑星は 2 つの主要なグループに分類されてきた.1 つ目はガスが主体の重い惑星,2 つ目は小さい地球型惑星である (Weidenschilling 77など).この分類は太陽系に端を発するものであり,太陽系の惑星は重い惑星は木星のように主に揮発性物質で構成され,地球型惑星は小さく難揮発性物質で構成されている.
しかし系外惑星の質量と半径の多様性から,この分類はいくらか恣意的であり,また単純化しすぎていると考えられる (Baraffe et al. 2014),初めに発見された系外惑星たちは比較的大きな質量と半径を持っていたが,ここ数年は観測技術の発達や宇宙空間からの観測もあり,小さい系外惑星の発見数も飛躍的に増加している.
ほとんどの惑星は視線速度法かトランジットで発見されているため,”小さい惑星” を定義する時に質量で判断するか半径で判断するかの違いがある.
質量の観点では,質量が ~ 30 地球質量より小さいものを小さい惑星と定義する慣習がある (Mayor et al. 2011など).一方半径の観点では,しばしば半径が 4 地球半径より小さいものを小さい惑星と分類する (Marcy et al. 2014など).これらの分類は,系外惑星の質量関数の振る舞いをある程度基準にしている.
過去の質量-半径関係の研究においては,この遷移は ‘小さい’ 惑星 (海王星的) と ‘大きい’ 惑星 (木星的) の間にあると示唆されてきた.
Weiss et al. (2013) は,質量-半径関係と質量-密度関係に基づき,2 つのレジーム間の遷移は質量で言うと ~ 150 地球質量に位置すると指摘した.ここで,質量-半径関係の傾きは,150 地球質量より小さい惑星に対しては R ∝ M0.54,150 地球質量以上の惑星に対しては M-0.039 と推定された.
Hatzes & Rauer (2015) は,質量-密度関係のスロープの変化について調べた,先述の研究と同様の傾きの境界を用い,遷移する質量を ~ 0.3 木星質量 = 95 地球質量と推定した.
最近では,Chen & Kipping (2017) により,MCMC を用いた確率的な質量-半径関係に基づく詳細な予測モデルが与えられた.このクラス分けによると,小さい惑星と大きい惑星の遷移は 0.41 ± 0.07 木星質量 = 130 ± 22 地球質量にあり,分布のスロープは小さい惑星に対して R ∝ M0.59 ,大きい惑星に対しては M-0.04 となった.
面白いことに,過去のこれらの研究では 2 つのレジーム間の遷移質量は完全には一致していないが,伝統的なカットオフ質量である 20 - 30 地球質量よりは明確に大きな値を示すという点で一致している.このことは,系外惑星の質量関数の ~ 30 地球質量に見られる存在頻度の変化,言い換えれば惑星の頻度は,惑星の組成と関係していると考えられる質量-半径関係とは同じ振る舞いを示さないということを示唆する.
2016 年 3 月の時点でカタログに掲載されている 274 個の系外惑星を使用した.このサンプル中で最も低質量な惑星は,ケプラー138b で 0.0667 ± 0.0604 地球質量であり,地球より小さい惑星である.最も質量が大きいものは CoRoT-3b で 6945 ± 315 地球質量 (21.85 ± 0.99 木星質量) であり,これは褐色矮星である.
なお,質量-半径関係から理論的に質量が推定されている惑星は除外した.
サンプル中の全ての惑星はトランジット惑星であり,惑星質量は視線速度法かトランジット時刻変動 (transit timing variation, TTV) で測定されているものである.
全サンプルのうち,238 個の惑星がが視線速度法でフォローアップ観測が行われて質量が測定されているもの,9 個が最初に視線速度法で発見され,後にトランジットが検出されたものである.また 27 惑星が TTV で質量が推定されているものである.
これらのデータ点をフィッティングして解析を行った.
半径の質量依存性は,小さい惑星に対しては R ∝ M0.55±0.02,大きい惑星に対しては R ∝ M0.01±0.02 となった.
この分析に基づくと,土星は “小さい惑星” に分類されることになる (Chen & Kipping 2017, Weiss et al. 2013など).
内部構造モデルに基づくと,土星の重元素の割合は ~ 20 - 40%と推定される (Guillot 2005など).従って土星の質量は遷移点からそう遠くない場所にあり,遷移質量である ~ 120 地球質量はあくまで統計的な量だと理解されるべきものである.
図を見ると分かるが,~ 120 地球質量の分断点付近は,半径が質量の増加に伴って増大するレジームの高質量側への延長線上とも,半径がほぼ一定である大きな質量のレジームの低質量側への延長線上のどちらとも取れる.この遷移レジームは,80 - 120 地球質量程度の領域に広がっている.従って,データによると,実際の遷移はこの質量領域の上端で起きると考えられる.
この見た目の遷移に関してその他に考慮すべき点は,この質量-半径依存性は恒星の輻射によっても影響を受けるという点である.土星はこの統計的解析に用いているサンプルの系外惑星と比べてずっと低い輻射を受けている.
ここで得られた結果は過去の研究と良い一致を見せる.遷移が土星の質量よりも大きい領域で起きると言う事実は,大きい惑星の質量-半径関係の変化は,惑星の主要な組成に起因するというアイデアを支持する.主要な組成は,この場合水素とヘリウムの混合物である.
120 地球質量程度より重い惑星のデータは,惑星半径はこれらの軽い元素の状態方程式によって決まるという事を示唆している (Zapolsky & Salpeter 1969, Fortney et al. 2007など).水素とヘリウムが主体であることと大きな質量による圧縮は,水素とヘリウムで主に構成されている巨大ガス惑星の半径の質量に対する依存性が弱いことを自然に説明する.より低質量の惑星の場合はあまり圧縮されず,そのため半径は質量に伴って増加する.
低質量惑星が比較的大きく分散しているのは,この質量領域では惑星は多様な組成を持つからだろうと考えられる.
arXiv:1701.07654
Bashi et al. (2017)
Two Empirical Regimes of the Planetary Mass-Radius Relation
(惑星の質量-半径関係の 2 つの経験的レジーム)
概要
これまでに多数が発見されている系外惑星の分類を行うことは,銀河系内における多数の惑星のタイプの統計的データを理解することに関して重要なだけではなく,惑星形成の理解にも重要である.ここでは惑星の質量-半径関係 (mass-radius relation) おける 2 つのレジームの性質について研究した.
発見されている惑星のデータの解析から,2 つの “small” と “large” 惑星の間の遷移に関しては,質量が 124 ± 7 地球質量,半径 12.1 ± 0.5 地球半径で分かれているということが示唆された.
さらに,質量-半径関係は小さい惑星に対しては R ∝ M0.55±0.02,大きい惑星に対しては M0.01±0.02 という依存性があることが分かった.
2 つのレジームの境界がある場所は,惑星内部での水素の電子縮退と関係している,これは言い換えれば惑星の全体の組成と関係しているということを示唆する.
具体的に言うと,その境界の質量は,ほとんどが水素とヘリウムから出来ている惑星の特徴的な最小質量になるため,その質量-半径関係はこれらの物質の状態方程式で決定される.
また,観測からの質量-半径関係を,popilation synthesis 計算と比較し,2 つのサンプル間は良い定性的な一致を見ることを示した.
研究背景
惑星の質量-半径関係を通じて,惑星組成に関する重要な情報を得ることが出来る.伝統的には,惑星は 2 つの主要なグループに分類されてきた.1 つ目はガスが主体の重い惑星,2 つ目は小さい地球型惑星である (Weidenschilling 77など).この分類は太陽系に端を発するものであり,太陽系の惑星は重い惑星は木星のように主に揮発性物質で構成され,地球型惑星は小さく難揮発性物質で構成されている.
しかし系外惑星の質量と半径の多様性から,この分類はいくらか恣意的であり,また単純化しすぎていると考えられる (Baraffe et al. 2014),初めに発見された系外惑星たちは比較的大きな質量と半径を持っていたが,ここ数年は観測技術の発達や宇宙空間からの観測もあり,小さい系外惑星の発見数も飛躍的に増加している.
ほとんどの惑星は視線速度法かトランジットで発見されているため,”小さい惑星” を定義する時に質量で判断するか半径で判断するかの違いがある.
質量の観点では,質量が ~ 30 地球質量より小さいものを小さい惑星と定義する慣習がある (Mayor et al. 2011など).一方半径の観点では,しばしば半径が 4 地球半径より小さいものを小さい惑星と分類する (Marcy et al. 2014など).これらの分類は,系外惑星の質量関数の振る舞いをある程度基準にしている.
過去の質量-半径関係の研究においては,この遷移は ‘小さい’ 惑星 (海王星的) と ‘大きい’ 惑星 (木星的) の間にあると示唆されてきた.
Weiss et al. (2013) は,質量-半径関係と質量-密度関係に基づき,2 つのレジーム間の遷移は質量で言うと ~ 150 地球質量に位置すると指摘した.ここで,質量-半径関係の傾きは,150 地球質量より小さい惑星に対しては R ∝ M0.54,150 地球質量以上の惑星に対しては M-0.039 と推定された.
Hatzes & Rauer (2015) は,質量-密度関係のスロープの変化について調べた,先述の研究と同様の傾きの境界を用い,遷移する質量を ~ 0.3 木星質量 = 95 地球質量と推定した.
最近では,Chen & Kipping (2017) により,MCMC を用いた確率的な質量-半径関係に基づく詳細な予測モデルが与えられた.このクラス分けによると,小さい惑星と大きい惑星の遷移は 0.41 ± 0.07 木星質量 = 130 ± 22 地球質量にあり,分布のスロープは小さい惑星に対して R ∝ M0.59 ,大きい惑星に対しては M-0.04 となった.
面白いことに,過去のこれらの研究では 2 つのレジーム間の遷移質量は完全には一致していないが,伝統的なカットオフ質量である 20 - 30 地球質量よりは明確に大きな値を示すという点で一致している.このことは,系外惑星の質量関数の ~ 30 地球質量に見られる存在頻度の変化,言い換えれば惑星の頻度は,惑星の組成と関係していると考えられる質量-半径関係とは同じ振る舞いを示さないということを示唆する.
サンプル
この解析では,質量と半径の両方が測定されている系外惑星のみをサンプルとして利用する.2016 年 3 月の時点でカタログに掲載されている 274 個の系外惑星を使用した.このサンプル中で最も低質量な惑星は,ケプラー138b で 0.0667 ± 0.0604 地球質量であり,地球より小さい惑星である.最も質量が大きいものは CoRoT-3b で 6945 ± 315 地球質量 (21.85 ± 0.99 木星質量) であり,これは褐色矮星である.
なお,質量-半径関係から理論的に質量が推定されている惑星は除外した.
サンプル中の全ての惑星はトランジット惑星であり,惑星質量は視線速度法かトランジット時刻変動 (transit timing variation, TTV) で測定されているものである.
全サンプルのうち,238 個の惑星がが視線速度法でフォローアップ観測が行われて質量が測定されているもの,9 個が最初に視線速度法で発見され,後にトランジットが検出されたものである.また 27 惑星が TTV で質量が推定されているものである.
これらのデータ点をフィッティングして解析を行った.
結果
小さい惑星と大きい惑星の遷移は,質量が 124 ± 7 地球質量,半径 12.1 ± 0.5 地球半径で起きることが示唆された.半径の質量依存性は,小さい惑星に対しては R ∝ M0.55±0.02,大きい惑星に対しては R ∝ M0.01±0.02 となった.
この分析に基づくと,土星は “小さい惑星” に分類されることになる (Chen & Kipping 2017, Weiss et al. 2013など).
内部構造モデルに基づくと,土星の重元素の割合は ~ 20 - 40%と推定される (Guillot 2005など).従って土星の質量は遷移点からそう遠くない場所にあり,遷移質量である ~ 120 地球質量はあくまで統計的な量だと理解されるべきものである.
図を見ると分かるが,~ 120 地球質量の分断点付近は,半径が質量の増加に伴って増大するレジームの高質量側への延長線上とも,半径がほぼ一定である大きな質量のレジームの低質量側への延長線上のどちらとも取れる.この遷移レジームは,80 - 120 地球質量程度の領域に広がっている.従って,データによると,実際の遷移はこの質量領域の上端で起きると考えられる.
この見た目の遷移に関してその他に考慮すべき点は,この質量-半径依存性は恒星の輻射によっても影響を受けるという点である.土星はこの統計的解析に用いているサンプルの系外惑星と比べてずっと低い輻射を受けている.
ここで得られた結果は過去の研究と良い一致を見せる.遷移が土星の質量よりも大きい領域で起きると言う事実は,大きい惑星の質量-半径関係の変化は,惑星の主要な組成に起因するというアイデアを支持する.主要な組成は,この場合水素とヘリウムの混合物である.
120 地球質量程度より重い惑星のデータは,惑星半径はこれらの軽い元素の状態方程式によって決まるという事を示唆している (Zapolsky & Salpeter 1969, Fortney et al. 2007など).水素とヘリウムが主体であることと大きな質量による圧縮は,水素とヘリウムで主に構成されている巨大ガス惑星の半径の質量に対する依存性が弱いことを自然に説明する.より低質量の惑星の場合はあまり圧縮されず,そのため半径は質量に伴って増加する.
低質量惑星が比較的大きく分散しているのは,この質量領域では惑星は多様な組成を持つからだろうと考えられる.
論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1701.07257
Birkby et al. (2017)
Discovery of water at high spectral resolution in the atmosphere of 51 Peg b
(ペガスス座51番星b の大気中の高スペクトル分解能での水の発見)
観測は高分散 (R ~ 100000),観測波長帯は 3.2 µm で,CRIRES/VLT を用いて行われた.
惑星の 4.23 日周期の軌道のうち,惑星が外合した後の 4 時間の間の昼側の大気における水の吸収の特徴を捉えるための視線速度観測を行った.
その結果,水による分子吸収の特徴を,5.6 σ の確度で検出した.
系の速度は - 33 km s-1 で,これは主星のペガスス座51番星と一致した.対応する軌道速度は 133 km s-1 であった.
これは惑星質量が 0.476 木星質量であることに対応し,すなわちこの惑星は木星型と海王星型の遷移境界に位置することを意味している.
また,惑星軌道の軌道傾斜角を 70°〜82.2°の間に制限した.さらに,これまでの 1994 年から 2013 年までに渡る 639 セットの恒星の視線観測データから,惑星軌道パラメータのアップデートを行った.その結果,軌道がエキセントリックである (軌道離心率が大きい) という明確な証拠は無かった.
惑星大気からの,その他の炭素を含んだ主要な分子 (メタン,二酸化炭素) による明確な吸収や放射の証拠は検出されなかった.なお,一酸化炭素に関しては今回観測した波長域ではスペクトルを持たないため検出はできない.
今回の観測で探査された領域の惑星大気は,温度-圧力分布において温度逆転はしていなかった.
最も深い吸収は,観測された相対的なコントラストで 0.9 × 10-3 であった.これは角距離 3 ミリ秒角における中心星の連続波フラックスに対しての値である.
今回の結果は,Brogi et al. (2013) による K バンドでの分子の吸収の暫定的な報告と整合的なものである.
メタンや二酸化炭素は検出できなかった.これは存在度が低いか,あるいはモデルのテンプレートを作成するのに用いたデータの中に不完全さがあるのが理由かもしれない.
今回の観測では,この惑星の自転速度の上限値に < 5.8 km s-1 を与えた.
また,可視光での観測では反射光による独立した軌道の解を得ることが可能になるだろう.そしてもしその結果が赤外線観測で得られたものと違う場合,大気中におけるオフセットしたホットスポットの存在が,赤外線観測の結果を説明するのに必要になるだろうと考えられる.
arXiv:1701.07257
Birkby et al. (2017)
Discovery of water at high spectral resolution in the atmosphere of 51 Peg b
(ペガスス座51番星b の大気中の高スペクトル分解能での水の発見)
概要
初めて発見された系外惑星であるペガスス座 51 番星b の,昼側からのスペクトル中における水の吸収の特徴を検出し,この恒星-惑星系が double-lined spectroscopic binary (二重線分光連星) であることを確認した.観測は高分散 (R ~ 100000),観測波長帯は 3.2 µm で,CRIRES/VLT を用いて行われた.
惑星の 4.23 日周期の軌道のうち,惑星が外合した後の 4 時間の間の昼側の大気における水の吸収の特徴を捉えるための視線速度観測を行った.
その結果,水による分子吸収の特徴を,5.6 σ の確度で検出した.
系の速度は - 33 km s-1 で,これは主星のペガスス座51番星と一致した.対応する軌道速度は 133 km s-1 であった.
これは惑星質量が 0.476 木星質量であることに対応し,すなわちこの惑星は木星型と海王星型の遷移境界に位置することを意味している.
また,惑星軌道の軌道傾斜角を 70°〜82.2°の間に制限した.さらに,これまでの 1994 年から 2013 年までに渡る 639 セットの恒星の視線観測データから,惑星軌道パラメータのアップデートを行った.その結果,軌道がエキセントリックである (軌道離心率が大きい) という明確な証拠は無かった.
惑星大気からの,その他の炭素を含んだ主要な分子 (メタン,二酸化炭素) による明確な吸収や放射の証拠は検出されなかった.なお,一酸化炭素に関しては今回観測した波長域ではスペクトルを持たないため検出はできない.
今回の観測で探査された領域の惑星大気は,温度-圧力分布において温度逆転はしていなかった.
最も深い吸収は,観測された相対的なコントラストで 0.9 × 10-3 であった.これは角距離 3 ミリ秒角における中心星の連続波フラックスに対しての値である.
今回の結果は,Brogi et al. (2013) による K バンドでの分子の吸収の暫定的な報告と整合的なものである.
その他
3.2 µm 波長帯での水の検出は,Brogi et al. (2013) での 2.3 µm における一酸化炭素と水分子の吸収の暫定的な報告に重みを与えるものである.過去のこの観測では,3 つのデータセット中 2 つのみで吸収が検出された.3 番目のデータセットで検出できなかった理由については,機器の影響だけでは説明できていない.メタンや二酸化炭素は検出できなかった.これは存在度が低いか,あるいはモデルのテンプレートを作成するのに用いたデータの中に不完全さがあるのが理由かもしれない.
今回の観測では,この惑星の自転速度の上限値に < 5.8 km s-1 を与えた.
また,可視光での観測では反射光による独立した軌道の解を得ることが可能になるだろう.そしてもしその結果が赤外線観測で得られたものと違う場合,大気中におけるオフセットしたホットスポットの存在が,赤外線観測の結果を説明するのに必要になるだろうと考えられる.
天文・宇宙物理関連メモ vol.318 Hartmann et al. (2016) 2 つの膨張ホットジュピターの発見と近接ガス惑星の再膨張の観測的証拠