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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1912.01017
Rodríguez Martínez et al. (2019)
KELT-25b and KELT-26b: A Hot Jupiter and a Substellar Companion Transiting Young A-stars Observed by TESS
(KELT-25b と KELT-26b:TESS で観測された若い A 型星をトランジットするホットジュピターと亜恒星伴星)
これらは,比較的明るい早期 A 型星を公転するトランジット天体である.トランジットのシグナルはまず KELT サーベイによって検出され,その後 TESS の測光観測によっても確認された.その後,地上観測と TESS の測光観測,視線速度測定,ドップラートモグラフィー測定,高分解撮像観測を用いて,検出されたシグナルが惑星由来であることを確認した.
質量:2.18 太陽質量
半径:2.264 太陽半径
光度:21.8 太陽光度
有効温度:8280 K
金属量:[Fe/H] = 0.30
年齢:4.6 億歳
距離:422.7 pc
等級:V = 9.66
半径:1.642 木星半径
質量:64 木星質量未満
軌道長半径:0.0681 AU
平衡温度:2306 K
恒星の潮汐散逸は KELT-25b の軌道を徐々に増加させる方向にはたらく.その結果として,少なくとも恒星が主系列を離れるまでの間は,KELT-25b は恒星に飲み込まれることはない.
ドップラートモグラフィーの測定からは,KELT-25b の軌道は順行で揃っている.また恒星は星団か運動星団の一員であると考えられる.
質量:1.93 太陽質量
半径:1.801 太陽半径
光度:16.4 太陽光度
有効温度:8640 K
金属量:[Fe/H] = -0.06
年齢:4.3 億歳
距離:417 pc
等級:V = 9.05
半径:1.940 木星半径
質量:1.41 木星質量
軌道長半径:0.0545 AU
平衡温度:2402 K
ドップラートモグラフィー観測から,射影した恒星の自転軸と惑星の公転軸の角度を測定し,91.3° という値を得た.
ただし,軌道は極軌道ではないと考えられる.これはトランジットのインパクトパラメータは 0.6 程度であり,惑星は恒星の極から極へとトランジットしているわけではないからである.射影した spin-orbit alignment の値は,実際の軌道傾斜角 (こちらの方がより基本的な物理量) である必要はない.
なお,実際の傾斜角は,惑星の軌道傾斜角だけではなく恒星の自転軸の角度についての情報も必要であるため,制約するのは難しい (Johnson et al. 2018).
KELT-26 のスペクトルは,この恒星が Am 星 (metallic-line A star) であることを示す.Am 星は,典型的には同じ有効温度を持つ A 型星よりもゆっくり自転している.これは一般には,恒星の伴星が自転を減速しているか,もしくは誕生時に角運動量を「盗まれた」ものだと解釈される.
しかし KELT-26 の自転に影響を与えそうな恒星質量の伴星が存在する証拠は得られなかった.また惑星は恒星の自転を減速するほど十分な質量を持っていない.
arXiv:1912.01017
Rodríguez Martínez et al. (2019)
KELT-25b and KELT-26b: A Hot Jupiter and a Substellar Companion Transiting Young A-stars Observed by TESS
(KELT-25b と KELT-26b:TESS で観測された若い A 型星をトランジットするホットジュピターと亜恒星伴星)
概要
KELT-25b (TIC 65412605, TOI-626.01) と KELT-26b (TIC 160708862, TOI-1337.01) の発見について報告する.これらは,比較的明るい早期 A 型星を公転するトランジット天体である.トランジットのシグナルはまず KELT サーベイによって検出され,その後 TESS の測光観測によっても確認された.その後,地上観測と TESS の測光観測,視線速度測定,ドップラートモグラフィー測定,高分解撮像観測を用いて,検出されたシグナルが惑星由来であることを確認した.
パラメータ
どちらも比較的明るく,また非常に高温な中心星を短周期で公転しているという極端なトランジット惑星系で,ウルトラホットジュピターと呼ばれる部類の惑星である.KELT-25 系
KELT-25
別名:CD-24 5016質量:2.18 太陽質量
半径:2.264 太陽半径
光度:21.8 太陽光度
有効温度:8280 K
金属量:[Fe/H] = 0.30
年齢:4.6 億歳
距離:422.7 pc
等級:V = 9.66
KELT-25b
軌道周期:4.401131 日半径:1.642 木星半径
質量:64 木星質量未満
軌道長半径:0.0681 AU
平衡温度:2306 K
KELT-25 系について
KELT-25 は KELT-26 よりもずっと高速に自転している.恒星の潮汐散逸は KELT-25b の軌道を徐々に増加させる方向にはたらく.その結果として,少なくとも恒星が主系列を離れるまでの間は,KELT-25b は恒星に飲み込まれることはない.
ドップラートモグラフィーの測定からは,KELT-25b の軌道は順行で揃っている.また恒星は星団か運動星団の一員であると考えられる.
KELT-26 系
KELT-26
別名:HD 134004質量:1.93 太陽質量
半径:1.801 太陽半径
光度:16.4 太陽光度
有効温度:8640 K
金属量:[Fe/H] = -0.06
年齢:4.3 億歳
距離:417 pc
等級:V = 9.05
KELT-26b
軌道周期:3.3448412 日半径:1.940 木星半径
質量:1.41 木星質量
軌道長半径:0.0545 AU
平衡温度:2402 K
KELT-26 系について
KELT-26b の中心星 KELT-26 は,比較的若い恒星である.ドップラートモグラフィー観測から,射影した恒星の自転軸と惑星の公転軸の角度を測定し,91.3° という値を得た.
ただし,軌道は極軌道ではないと考えられる.これはトランジットのインパクトパラメータは 0.6 程度であり,惑星は恒星の極から極へとトランジットしているわけではないからである.射影した spin-orbit alignment の値は,実際の軌道傾斜角 (こちらの方がより基本的な物理量) である必要はない.
なお,実際の傾斜角は,惑星の軌道傾斜角だけではなく恒星の自転軸の角度についての情報も必要であるため,制約するのは難しい (Johnson et al. 2018).
KELT-26 のスペクトルは,この恒星が Am 星 (metallic-line A star) であることを示す.Am 星は,典型的には同じ有効温度を持つ A 型星よりもゆっくり自転している.これは一般には,恒星の伴星が自転を減速しているか,もしくは誕生時に角運動量を「盗まれた」ものだと解釈される.
しかし KELT-26 の自転に影響を与えそうな恒星質量の伴星が存在する証拠は得られなかった.また惑星は恒星の自転を減速するほど十分な質量を持っていない.
PR
論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1912.00034
Speedie & Zanazzi (2019)
The Structure and Stability of Extended, Inclined Circumplanetary Disk or Ring Systems
(広がった,傾いた周惑星円盤や環の構造と安定性)
惑星を取り巻く周惑星円盤や環が中心星の光を遮蔽するためには,円盤は惑星の軌道平面から傾いている必要がある.中心星の輝度の減少の期間を説明するためには半径方向に大きく広がった円盤が必要とされるため,この傾きは円盤の安定性の問題を引き起こす.
ここでは N 体計算で,自転する惑星の質量四重極によって惑星の軌道平面から傾いた周惑星円盤・環の系の構造と安定性について調査した.周惑星円盤を,初期にほぼラプラス面上 (中心星の潮汐力と惑星の質量四重極からの力の平衡面) の軌道を持ったテスト粒子の集まりとしてシミュレーションを行った.
その結果,多くの広がった傾いた周惑星円盤が,積分の期間 (~300 万-1600 万年) にわたって安定にとどまることを見出した.
2 種類の力学的共鳴/不安定が,円盤・環の粒子の離心率と傾斜角を励起する.それは,円盤の外側領域で発生する Lidov-Kozai 効果と,内側領域で発生する ivection 共鳴である.
この研究では傾いた周惑星円盤・環の最大の半径方向の広がりに制約を与え,またギャップが存在する周惑星円盤は必ずしも系外衛星の存在を表すものではないことを示す.
出差共鳴は,近点歳差と,遠方の擾乱天体の軌道周波数の間に起きる共鳴であり,複数惑星系において惑星の軌道離心率を励起するものである (Touma & Wisdom 1998,Touma & Sridhar 2015).
Xu & Fabrycky (2019) が見出した新しい共鳴はこの出差共鳴に非常に似ているが,この共鳴は離心率ではなく傾斜角を励起するという点で異なるものである.そこで,出差共鳴の evection resonance の e を離心率の e に見立て,離心率の代わりに傾斜角 (inclination) を励起する共鳴であることで,e を i で置き換えて ivection という単語が作られた.
なお Touma & Wisdom (1998) では,\(e^{2}\) に比例する共鳴項との傾斜角-離心率共鳴について,同様に “eviction” resonance と命名している.この共鳴も傾斜角を励起するが,擾乱天体の初期の離心率が有限の値を持っている場合にのみ起きるものであり,ここでの ivection resonance とは異なる現象である.
arXiv:1912.00034
Speedie & Zanazzi (2019)
The Structure and Stability of Extended, Inclined Circumplanetary Disk or Ring Systems
(広がった,傾いた周惑星円盤や環の構造と安定性)
概要
多くの恒星で光度の大きな低下が観測されており,これに対する暫定的な説明は,トランジットする周惑星円盤や環による掩蔽が発生しているというものである.惑星を取り巻く周惑星円盤や環が中心星の光を遮蔽するためには,円盤は惑星の軌道平面から傾いている必要がある.中心星の輝度の減少の期間を説明するためには半径方向に大きく広がった円盤が必要とされるため,この傾きは円盤の安定性の問題を引き起こす.
ここでは N 体計算で,自転する惑星の質量四重極によって惑星の軌道平面から傾いた周惑星円盤・環の系の構造と安定性について調査した.周惑星円盤を,初期にほぼラプラス面上 (中心星の潮汐力と惑星の質量四重極からの力の平衡面) の軌道を持ったテスト粒子の集まりとしてシミュレーションを行った.
その結果,多くの広がった傾いた周惑星円盤が,積分の期間 (~300 万-1600 万年) にわたって安定にとどまることを見出した.
2 種類の力学的共鳴/不安定が,円盤・環の粒子の離心率と傾斜角を励起する.それは,円盤の外側領域で発生する Lidov-Kozai 効果と,内側領域で発生する ivection 共鳴である.
この研究では傾いた周惑星円盤・環の最大の半径方向の広がりに制約を与え,またギャップが存在する周惑星円盤は必ずしも系外衛星の存在を表すものではないことを示す.
Ivection resonance
Ivection は Xu & Fabrycky (2019, submitted) で提唱された共鳴/不安定性であり,出差共鳴 (evection resonance) を元に命名されたものである.出差共鳴は,近点歳差と,遠方の擾乱天体の軌道周波数の間に起きる共鳴であり,複数惑星系において惑星の軌道離心率を励起するものである (Touma & Wisdom 1998,Touma & Sridhar 2015).
Xu & Fabrycky (2019) が見出した新しい共鳴はこの出差共鳴に非常に似ているが,この共鳴は離心率ではなく傾斜角を励起するという点で異なるものである.そこで,出差共鳴の evection resonance の e を離心率の e に見立て,離心率の代わりに傾斜角 (inclination) を励起する共鳴であることで,e を i で置き換えて ivection という単語が作られた.
なお Touma & Wisdom (1998) では,\(e^{2}\) に比例する共鳴項との傾斜角-離心率共鳴について,同様に “eviction” resonance と命名している.この共鳴も傾斜角を励起するが,擾乱天体の初期の離心率が有限の値を持っている場合にのみ起きるものであり,ここでの ivection resonance とは異なる現象である.
論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1912.00255
Teske et al. (2019)
Do Metal-Rich Stars Make Metal-Rich Planets? New Insights on Giant Planet Formation from Host Star Abundances
(金属豊富星は金属豊富惑星を作るか?中心星の存在度からの巨大惑星形成における新しい知見)
太陽系の巨大惑星は,観測できる範囲の大気と惑星全体の組成の両方において,金属量は太陽金属量よりも多いことが分かっている.重要な疑問点は,巨大系外惑星の金属量が中心星の金属量と相関しているかどうかである.
Thorngren et al. (2016) は,平衡温度が 1000 K 未満の低温の巨大系外惑星では,重元素の総質量は惑星の総質量の増加に伴って増加し,中心星に対する重元素量の増加は惑星の総質量の増加に伴って減少することを示した.その研究では,中心星の金属量は文献の [Fe/H] の測定から導出したものであった.
ここでは,中心星の異なる金属 (C, O, Mg, Si, Fe, Ni) がその周りを公転する惑星の全体の金属量と相関しているかどうかを決定するため,相関テストとベイズ線形適合を用いて,より詳細で一様な研究を行った.
19 個の,低温な巨大惑星を持つ系の中心星の重元素存在度を新たに提供し,これらを過去に得られている 22 個の低温巨大惑星をもつ系 (惑星は 24 個) のデータと合わせて解析した.
その結果,驚くべきことに,恒星の金属量と惑星の残差の金属量 (金属の相対量に対する惑星質量のみから予想される値) には明確な相関は見られず,これは形成モデルからの一般的な予測とは矛盾する.また残差の惑星の金属と恒星の揮発性元素と難揮発性元素の比率の間に相関が存在する可能性を見出した.
arXiv:1912.00255
Teske et al. (2019)
Do Metal-Rich Stars Make Metal-Rich Planets? New Insights on Giant Planet Formation from Host Star Abundances
(金属豊富星は金属豊富惑星を作るか?中心星の存在度からの巨大惑星形成における新しい知見)
概要
巨大惑星とその主星の間の組成の関係は,惑星形成を理解する上で基本的な興味の対象である.太陽系の巨大惑星は,観測できる範囲の大気と惑星全体の組成の両方において,金属量は太陽金属量よりも多いことが分かっている.重要な疑問点は,巨大系外惑星の金属量が中心星の金属量と相関しているかどうかである.
Thorngren et al. (2016) は,平衡温度が 1000 K 未満の低温の巨大系外惑星では,重元素の総質量は惑星の総質量の増加に伴って増加し,中心星に対する重元素量の増加は惑星の総質量の増加に伴って減少することを示した.その研究では,中心星の金属量は文献の [Fe/H] の測定から導出したものであった.
ここでは,中心星の異なる金属 (C, O, Mg, Si, Fe, Ni) がその周りを公転する惑星の全体の金属量と相関しているかどうかを決定するため,相関テストとベイズ線形適合を用いて,より詳細で一様な研究を行った.
19 個の,低温な巨大惑星を持つ系の中心星の重元素存在度を新たに提供し,これらを過去に得られている 22 個の低温巨大惑星をもつ系 (惑星は 24 個) のデータと合わせて解析した.
その結果,驚くべきことに,恒星の金属量と惑星の残差の金属量 (金属の相対量に対する惑星質量のみから予想される値) には明確な相関は見られず,これは形成モデルからの一般的な予測とは矛盾する.また残差の惑星の金属と恒星の揮発性元素と難揮発性元素の比率の間に相関が存在する可能性を見出した.
論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1912.00291
Stefansson et al. (2019)
A sub-Neptune sized planet transiting the M2.5-dwarf G 9-40: Validation with the Habitable-zone Planet Finder
(M2.5 矮星 G 9-40 をトランジットするサブネプチューンサイズの惑星:Habitable-zone Planet Finder による実証)
この天体は 27.9 pc の距離にあり,発見された惑星 G 9-40b は,ケプラーの K2 ミッションで発見されたトランジット惑星としては 2 番目に近い.
惑星のトランジット深さはは ~3500 ppm と深く,中心星までの距離が近く,近赤外線の波長で明るいことから,この惑星は JWST や ARIEL,将来の超巨大望遠鏡での透過スペクトル観測による,M 矮星を公転するサブネプチューンサイズ惑星の非常に好ましい観測対象の一つである.
恒星は比較的非活動的であり,自転周期は K2 での測光観測から ~29 日と測定された.
この惑星は,K2 Campaign 16 の観測で同定された惑星候補である (Yu et al. 2018).ここでは追加観測を行って,この惑星候補天体が実際に惑星であることを確認した.
arXiv:1912.00291
Stefansson et al. (2019)
A sub-Neptune sized planet transiting the M2.5-dwarf G 9-40: Validation with the Habitable-zone Planet Finder
(M2.5 矮星 G 9-40 をトランジットするサブネプチューンサイズの惑星:Habitable-zone Planet Finder による実証)
概要
太陽系近傍の,固有運動の大きな M2.5 型の矮星 G 9-40 (EPIC 212048748) の周りでの,2 地球半径のサブネプチューンサイズ惑星の発見を実証した.これは,Habitable-zone Planet Finder (HPF) での高精度近赤外線視線速度観測,精密なディフューザーを用いたカスタムの狭帯域測光フィルターを伴う地上からの測光観測,および補償光学撮像観測の結果を用いたものである.この天体は 27.9 pc の距離にあり,発見された惑星 G 9-40b は,ケプラーの K2 ミッションで発見されたトランジット惑星としては 2 番目に近い.
惑星のトランジット深さはは ~3500 ppm と深く,中心星までの距離が近く,近赤外線の波長で明るいことから,この惑星は JWST や ARIEL,将来の超巨大望遠鏡での透過スペクトル観測による,M 矮星を公転するサブネプチューンサイズ惑星の非常に好ましい観測対象の一つである.
恒星は比較的非活動的であり,自転周期は K2 での測光観測から ~29 日と測定された.
この惑星は,K2 Campaign 16 の観測で同定された惑星候補である (Yu et al. 2018).ここでは追加観測を行って,この惑星候補天体が実際に惑星であることを確認した.
論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1911.12999
Kuwahara & Kurokawa (2019)
Influences of three-dimensional gas flow induced by protoplanets on pebble accretion --I. shear regime
(原始惑星に誘起される 3 次元ガス流のペブル集積への影響 I.シアレジーム)
原始惑星系円盤内に埋もれて成長している惑星は周囲に 3 次元ガス流を誘起し,これは惑星へのペブル降着に影響を及ぼす可能性がある.しかし従来のペブル降着モデルは,擾乱のない (サブ) ケプラーシア流の中でのみ議論されてきた.
ここでは,惑星が誘起する 3 次元ガス流がペブル降着に及ぼす影響について調べる.
非等温・非粘性ガス円盤を仮定し,惑星を中心においた球形極座標での 3 次元流体力学シミュレーションを実行した.その後,3 次元流体力学シミュレーションデータの中でペブルの運動方程式を数値的に積分した.
その結果,惑星が誘起するガス流中でのペブルの軌跡は,今回考慮したペブルのサイズの広い範囲おいて (St = 10-3 - 1),擾乱されていないシア流の中での軌跡とは大きく異なることを見出した.
ガスの馬蹄形の流れとアウトフローがペブルの動きを変え,惑星への降着領域の幅 \(\mathit{w}_{\rm acc}\) を減少させ,ペブルの降着断面積 \(A_{\rm acc}\) を減少させる.一方で,ペブルの軌跡の変化は惑星に対するペブルの相対速度の増加を引き起こし,これは \(\mathit{w}_{\rm acc}\) と \(A_{\rm acc}\) の減少を相殺する.
結果として,ストークスレジームでは,惑星が誘起するガス流内でのペブルの降着確率は,ペブルが二次元的降着で St ~ 10-3 とストークス数が小さい場合,もしくは三次元的降着で惑星の熱質量が m = 0.03 と小さい時を除くと,擾乱のないシア流での値と同程度になる.
対照的にエプスタインレジームでは,惑星が誘起するガス流内での降着確率は,ストークス数や熱的質量に関わらず,二次元的降着でも三次元的降着でも,シア流での値より小さくなる.
今回の結果は,3 次元の惑星誘起ガス流は系外惑星の分布や太陽系の構造を説明するのに役立つ可能性がある.
“Thermal mass” (熱質量) は無次元化した惑星質量で (Fung et al. 2015),
\[
m = \frac{R_{\rm Bondi}}{H} = \frac{G M_{\rm pl}}{c_{\rm s}^{3}\Omega}
\]
で表される.\(R_{\rm Bondi}\) は惑星のボンディ半径,\(H\) は円盤のスケールハイト,\(M_{\rm pl}\) は惑星質量,\(c_{\rm s}\) は音速,\(\Omega\) は角速度.
arXiv:1911.12999
Kuwahara & Kurokawa (2019)
Influences of three-dimensional gas flow induced by protoplanets on pebble accretion --I. shear regime
(原始惑星に誘起される 3 次元ガス流のペブル集積への影響 I.シアレジーム)
概要
惑星形成におけるペブル集積モデルは,様々な種類の惑星の形成を説明する可能性がある.ペブル集積モデルの微惑星降着モデルとの主な違いは,ペブルは成長する惑星との重力相互作用のみではなく,周囲の原始惑星系円盤ガスによるガス摩擦力も経験するという点である.原始惑星系円盤内に埋もれて成長している惑星は周囲に 3 次元ガス流を誘起し,これは惑星へのペブル降着に影響を及ぼす可能性がある.しかし従来のペブル降着モデルは,擾乱のない (サブ) ケプラーシア流の中でのみ議論されてきた.
ここでは,惑星が誘起する 3 次元ガス流がペブル降着に及ぼす影響について調べる.
非等温・非粘性ガス円盤を仮定し,惑星を中心においた球形極座標での 3 次元流体力学シミュレーションを実行した.その後,3 次元流体力学シミュレーションデータの中でペブルの運動方程式を数値的に積分した.
その結果,惑星が誘起するガス流中でのペブルの軌跡は,今回考慮したペブルのサイズの広い範囲おいて (St = 10-3 - 1),擾乱されていないシア流の中での軌跡とは大きく異なることを見出した.
ガスの馬蹄形の流れとアウトフローがペブルの動きを変え,惑星への降着領域の幅 \(\mathit{w}_{\rm acc}\) を減少させ,ペブルの降着断面積 \(A_{\rm acc}\) を減少させる.一方で,ペブルの軌跡の変化は惑星に対するペブルの相対速度の増加を引き起こし,これは \(\mathit{w}_{\rm acc}\) と \(A_{\rm acc}\) の減少を相殺する.
結果として,ストークスレジームでは,惑星が誘起するガス流内でのペブルの降着確率は,ペブルが二次元的降着で St ~ 10-3 とストークス数が小さい場合,もしくは三次元的降着で惑星の熱質量が m = 0.03 と小さい時を除くと,擾乱のないシア流での値と同程度になる.
対照的にエプスタインレジームでは,惑星が誘起するガス流内での降着確率は,ストークス数や熱的質量に関わらず,二次元的降着でも三次元的降着でも,シア流での値より小さくなる.
今回の結果は,3 次元の惑星誘起ガス流は系外惑星の分布や太陽系の構造を説明するのに役立つ可能性がある.
“Thermal mass” (熱質量) は無次元化した惑星質量で (Fung et al. 2015),
\[
m = \frac{R_{\rm Bondi}}{H} = \frac{G M_{\rm pl}}{c_{\rm s}^{3}\Omega}
\]
で表される.\(R_{\rm Bondi}\) は惑星のボンディ半径,\(H\) は円盤のスケールハイト,\(M_{\rm pl}\) は惑星質量,\(c_{\rm s}\) は音速,\(\Omega\) は角速度.