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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1610.07963
Lisse et al. (2016)
The Puzzling Detection of X-rays From Pluto by Chandra
(チャンドラによる冥王星からの X 線の不可解な検出)
その結果,11 × 11 ピクセルの範囲 (100 × 100 冥王星半径に相当) において,0.31 - 0.60 keV のパスバンド内で 6.8 カウント (ノイズレベル 1.2 カウント) の X 線が検出された.検出された光子は背景からの放射とは一致せず,空からの線源の混入でもない.
冥王星からの 0.31 - 0.60 keV の平均 X 線エネルギーは 200 MW であった.これは,他の天体における X 線源からの放射,例えばオーロラ,太陽からの X 線の散乱,太陽風イオンと大気の中性粒子との電荷交換反応などによる出力と近い.
オーロラ起源に関しては,冥王星は磁場を持つことは知られていないことと,ニューホライズンズの Alice UV spectrometer ではフライバイ時の冥王星からの大気光は検出されていないことから排除される.
また大気中のナノスケールのヘイズ粒子は太陽からの X 線を散乱しうるが,検出された X 線は太陽のスペクトルとは一致せず,また散乱 X 線に期待される強度は検出されたものよりも 100 倍以上小さい.
太陽風中の炭素・窒素・酸素イオンと大気の中性粒子との電荷交換は X 線源となり得る.また,ニューホライズンズによる冥王星からの中性粒子の散逸率の推定値 6 × 1025 も値としては十分である.
しかし,Solar Wind Around Pluto (SWAP) 装置による冥王星の位置での太陽風の強度の観測からは,その場所での太陽風の陽子密度と速度が測定されているが,その値は観測された X 線放射の説明のためには小さすぎることがわかっている.ただし,太陽風がその場所で集約されて増加していた場合は別である.
arXiv:1610.07963
Lisse et al. (2016)
The Puzzling Detection of X-rays From Pluto by Chandra
(チャンドラによる冥王星からの X 線の不可解な検出)
概要
X 線天文衛星チャンドラの ACIS-S (ACIS: Advanced CCD Imaging Spectrometer, S: S-array) を用いて冥王星の X 線での分光測光観測をこなった.これは冥王星探査機ニューホライズンズの 2015年7月14日の最接近時のサポート観測として行われ,2014年2月から2015年8月の間に計 4 回,総観測時間 174 ksec に渡って行われた.その結果,11 × 11 ピクセルの範囲 (100 × 100 冥王星半径に相当) において,0.31 - 0.60 keV のパスバンド内で 6.8 カウント (ノイズレベル 1.2 カウント) の X 線が検出された.検出された光子は背景からの放射とは一致せず,空からの線源の混入でもない.
冥王星からの 0.31 - 0.60 keV の平均 X 線エネルギーは 200 MW であった.これは,他の天体における X 線源からの放射,例えばオーロラ,太陽からの X 線の散乱,太陽風イオンと大気の中性粒子との電荷交換反応などによる出力と近い.
オーロラ起源に関しては,冥王星は磁場を持つことは知られていないことと,ニューホライズンズの Alice UV spectrometer ではフライバイ時の冥王星からの大気光は検出されていないことから排除される.
また大気中のナノスケールのヘイズ粒子は太陽からの X 線を散乱しうるが,検出された X 線は太陽のスペクトルとは一致せず,また散乱 X 線に期待される強度は検出されたものよりも 100 倍以上小さい.
太陽風中の炭素・窒素・酸素イオンと大気の中性粒子との電荷交換は X 線源となり得る.また,ニューホライズンズによる冥王星からの中性粒子の散逸率の推定値 6 × 1025 も値としては十分である.
しかし,Solar Wind Around Pluto (SWAP) 装置による冥王星の位置での太陽風の強度の観測からは,その場所での太陽風の陽子密度と速度が測定されているが,その値は観測された X 線放射の説明のためには小さすぎることがわかっている.ただし,太陽風がその場所で集約されて増加していた場合は別である.
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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1610.05506
Leconte et al. (2016)
Condensation-inhibited convection in hydrogen-rich atmospheres: Stability against double-diffusive processes and thermal profiles for Jupiter, Saturn, Uranus, and Neptune
(水素主体大気中での凝縮阻害された対流:木星,土星,天王星,海王星の二重拡散過程に対する安定性と熱的構造)
地球では,雲生成の結果として発生する平均分子量の勾配は,比較的小さな動的結果しかもたらさない.これは,地球大気の背景ガス成分である窒素分子は水蒸気よりも重いことが原因である.従って,潜熱の解放のみが対流に大きな影響を持つ.
対照的に,ガス惑星のような水素主体の大気では,凝縮を起こす化学種は背景のガスよりもずっと重い.この効果は,その化学種の enrichment が臨界の閾値を超えていた場合,雲層付近で大気を対流に対して安定化する働きがある.
この状況で,2 つの疑問が提起される.一つは,そのような安定化している層で輸送されるエネルギーは何か?もう一つは,巨大ガス惑星の熱的構造はどのように影響されうるか?という点である.
これらに答えるため,対流と二重拡散対流の線形解析を行った.その結果,高い凝縮効率は,二重拡散対流を抑制することが出来るという結果を得た.これは,安定な放射層が雲が凝縮する高度に形成され,深い断熱曲線の温度の増加を起こしうるということを示唆する.
さらに,最も量の多い凝縮物である水の凝縮の効果を,定常状態の大気モデル中で検証した.標準的なモデルと比較すると,温度増加においては,主要な化学トレーサーの quenching depth において数百度になることが分かった.
今回ここで考慮したモデルによる影響は,ガス惑星大気の力学・化学状態のさらなる理解において重要であると考えられる.
arXiv:1610.05506
Leconte et al. (2016)
Condensation-inhibited convection in hydrogen-rich atmospheres: Stability against double-diffusive processes and thermal profiles for Jupiter, Saturn, Uranus, and Neptune
(水素主体大気中での凝縮阻害された対流:木星,土星,天王星,海王星の二重拡散過程に対する安定性と熱的構造)
概要
大気中では,雲が凝縮する領域は,雲成分に関係する化学種の存在度の垂直方向の強い勾配が存在する場所として特徴づけられる.地球では,雲生成の結果として発生する平均分子量の勾配は,比較的小さな動的結果しかもたらさない.これは,地球大気の背景ガス成分である窒素分子は水蒸気よりも重いことが原因である.従って,潜熱の解放のみが対流に大きな影響を持つ.
対照的に,ガス惑星のような水素主体の大気では,凝縮を起こす化学種は背景のガスよりもずっと重い.この効果は,その化学種の enrichment が臨界の閾値を超えていた場合,雲層付近で大気を対流に対して安定化する働きがある.
この状況で,2 つの疑問が提起される.一つは,そのような安定化している層で輸送されるエネルギーは何か?もう一つは,巨大ガス惑星の熱的構造はどのように影響されうるか?という点である.
これらに答えるため,対流と二重拡散対流の線形解析を行った.その結果,高い凝縮効率は,二重拡散対流を抑制することが出来るという結果を得た.これは,安定な放射層が雲が凝縮する高度に形成され,深い断熱曲線の温度の増加を起こしうるということを示唆する.
さらに,最も量の多い凝縮物である水の凝縮の効果を,定常状態の大気モデル中で検証した.標準的なモデルと比較すると,温度増加においては,主要な化学トレーサーの quenching depth において数百度になることが分かった.
今回ここで考慮したモデルによる影響は,ガス惑星大気の力学・化学状態のさらなる理解において重要であると考えられる.
論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1610.04305
Hastings et al. (2016)
The Short Rotation Period of Hi'iaka, Haumea's Largest Satellite
(ハウメアの最も大きい衛星ヒイアカの速い自転)
この観測結果は,この衛星の形成と潮汐進化に対して新たな問題を投げかける.
高速な自転からは,この衛星が大きな自転軸傾斜角を持つことと,数年以内に光度曲線で観測できるであろう自転軸の歳差を持つということが示唆される.
また,この予想外に高速な自転周期から,現在はまだよく分かっていない,ハウメア系とハウメア族の形成過程への示唆についても調査を行った.特に,初期のヒイアカの軌道長半径と自転周期の,潮汐進化理論における重要性について調べた.
その結果,他の系や連星系と同様に,自転と公転が同期するようになるまでに要する時間は,軌道長半径と初期の自転周期に大きく影響されることが分かった.また,ヒイアカがロッシュ限界付近で形成されたとしても,潮汐による自転の減速によって必ずしも自転と公転の同期状態に落ち着くわけではないということも判明した.従って,観測された速い自転周期は,ヒイアカが大きな潮汐進化を起こしたことを否定するものではない.
ヒイアカの自転周期は,現在のヒイアカの位置における形成と,ハウメアを中心とした軌道を持つ衝突体による自転の加速という系の形成メカニズムとも整合的なものである.
自転周期は,同程度のサイズを持つ天体の中で最も速く,3.9154 時間である (Rabinowitz et al. 2006).また,ヒイアカとナマカという 2 つの規則衛星を持っている (Ragozzine & Brown 2009).さらに,ハウメアに付随する衝突族 (単一の天体衝突イベントによって形成されたと考えられる小天体の集まり) であるハウメア族を従えている (Brown et al. 2007).
ハウメア族は,他の族とは異なる特性をハウメアと共有している.例えば,強い水氷のスペクトルを持つ点 (Schaller & Brown 2008など),アルベドが高い点 (Elliot et al. 2010),またおそらく族内の天体の平均自転周期 6.27 時間がその他のカイパーベルト天体の平均値 7.65 時間よりも速いという点 (Thirouin et al. 2016) である.
これらは,大きな衝突によってハウメア族が形成された可能性を示している.またこの衝突により,ハウメアの自転を速め,族や衛星が形成されたと考えられる.
しかし既存の形成シナリオでは,全てを整合的に説明することが出来ていない (Ortiz et al. 2012など).
ハウメア族のように小さくまとまった族の形成のためには,低速での天体衝突が必要だが (Leinhardt et al. 2010),このような衝突は難しいということが示されている (Levison et al. 2008, Campo-Bagatin et al. 2016).
ただし,ハウメアがかつて同程度のサイズの天体と連星系をなしており,後に太陽との 3 体作用などの過程で不安定になれば,このような衝突は起きうる.このような場合,発生する確率が非常に低い,太陽中心軌道を取る天体との低速衝突イベントは不要であり,ハウメア中心軌道の衝突体との比較的高い確率での低速衝突は起こしうる.しかしこの仮説が別の仮説よりももっともらしいかは,さらなる研究が必要である.
ヒイアカとナマカの 2 つの衛星は,ほぼ円軌道・同一平面上にある.これは,族を形成するのと同じ,ハウメアの自転を加速するような衝突イベントの際に形成されたという事を示唆される.ただし,族の形成に繋がる衝突と別の衝突イベントで衛星が形成されるというシナリオも可能である.
太陽中心軌道をとる衝突体の場合,ヒイアカそのものを破壊せずに,あるいは軌道を大きく変えずにヒイアカの自転周期を加速する様な衝突を起こすのは困難である.しかし衝突体がハウメア中心軌道を取る場合はそのような衝突は可能である.
arXiv:1610.04305
Hastings et al. (2016)
The Short Rotation Period of Hi'iaka, Haumea's Largest Satellite
(ハウメアの最も大きい衛星ヒイアカの速い自転)
概要
ヒイアカハウメアの,外側の大きい衛星であるハッブル宇宙望遠鏡とマゼランの相対測光観測と,位相分散最小化分析より,ヒイアカの自転周期を ~ 9.8 時間 (二重ピーク) と同定した.これはヒイアカの公転周期よりも 120 倍速い値である.この観測結果は,この衛星の形成と潮汐進化に対して新たな問題を投げかける.
高速な自転からは,この衛星が大きな自転軸傾斜角を持つことと,数年以内に光度曲線で観測できるであろう自転軸の歳差を持つということが示唆される.
また,この予想外に高速な自転周期から,現在はまだよく分かっていない,ハウメア系とハウメア族の形成過程への示唆についても調査を行った.特に,初期のヒイアカの軌道長半径と自転周期の,潮汐進化理論における重要性について調べた.
その結果,他の系や連星系と同様に,自転と公転が同期するようになるまでに要する時間は,軌道長半径と初期の自転周期に大きく影響されることが分かった.また,ヒイアカがロッシュ限界付近で形成されたとしても,潮汐による自転の減速によって必ずしも自転と公転の同期状態に落ち着くわけではないということも判明した.従って,観測された速い自転周期は,ヒイアカが大きな潮汐進化を起こしたことを否定するものではない.
ヒイアカの自転周期は,現在のヒイアカの位置における形成と,ハウメアを中心とした軌道を持つ衝突体による自転の加速という系の形成メカニズムとも整合的なものである.
ハウメア系とハウメア族
準惑星であるハウメアは,その他のカイパーベルト天体に比べて目立つ存在である.自転周期は,同程度のサイズを持つ天体の中で最も速く,3.9154 時間である (Rabinowitz et al. 2006).また,ヒイアカとナマカという 2 つの規則衛星を持っている (Ragozzine & Brown 2009).さらに,ハウメアに付随する衝突族 (単一の天体衝突イベントによって形成されたと考えられる小天体の集まり) であるハウメア族を従えている (Brown et al. 2007).
ハウメア族は,他の族とは異なる特性をハウメアと共有している.例えば,強い水氷のスペクトルを持つ点 (Schaller & Brown 2008など),アルベドが高い点 (Elliot et al. 2010),またおそらく族内の天体の平均自転周期 6.27 時間がその他のカイパーベルト天体の平均値 7.65 時間よりも速いという点 (Thirouin et al. 2016) である.
これらは,大きな衝突によってハウメア族が形成された可能性を示している.またこの衝突により,ハウメアの自転を速め,族や衛星が形成されたと考えられる.
しかし既存の形成シナリオでは,全てを整合的に説明することが出来ていない (Ortiz et al. 2012など).
ハウメア族のように小さくまとまった族の形成のためには,低速での天体衝突が必要だが (Leinhardt et al. 2010),このような衝突は難しいということが示されている (Levison et al. 2008, Campo-Bagatin et al. 2016).
ただし,ハウメアがかつて同程度のサイズの天体と連星系をなしており,後に太陽との 3 体作用などの過程で不安定になれば,このような衝突は起きうる.このような場合,発生する確率が非常に低い,太陽中心軌道を取る天体との低速衝突イベントは不要であり,ハウメア中心軌道の衝突体との比較的高い確率での低速衝突は起こしうる.しかしこの仮説が別の仮説よりももっともらしいかは,さらなる研究が必要である.
ヒイアカとナマカの 2 つの衛星は,ほぼ円軌道・同一平面上にある.これは,族を形成するのと同じ,ハウメアの自転を加速するような衝突イベントの際に形成されたという事を示唆される.ただし,族の形成に繋がる衝突と別の衝突イベントで衛星が形成されるというシナリオも可能である.
結果と解釈
ヒイアカの光度曲線の振幅は 19%であり,周期は 9.8 時間の二重ピーク構造であった.なおヒイアカの公転周期は 49.462 日である.太陽中心軌道をとる衝突体の場合,ヒイアカそのものを破壊せずに,あるいは軌道を大きく変えずにヒイアカの自転周期を加速する様な衝突を起こすのは困難である.しかし衝突体がハウメア中心軌道を取る場合はそのような衝突は可能である.
論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1610.01841
Barstow et al. (2016)
A consistent retrieval analysis of 10 Hot Jupiters observed in transmission
(透過光で観測されている 10 のホットジュピターの整合的なリトリーバル分析)
その結果,10 個の惑星ではいずれもエアロゾルの影響がスペクトルに見られることが分かった.
WASP-6b, WASP-12b, WASP-17b, WASP-19b, HD 189733b, HAT-P-12b では,レイリー散乱を起こすエアロゾルでスペクトルがよくフィット出来る.WASP-31b, WASP-39b, HS 209458b では,灰色の雲モデルが合う.なお HAT-P-1b はどちらの大気もありうる解となった.
WASP-6b, HAT-P-12b, HD 189733b, WASP-12b は,~ 0.1 bar の低圧領域までエアロゾルが存在していると考えられる.
一般的に,平衡温度が 1300 - 1700 K の惑星の場合は,深い灰色の雲を持つモデルでスペクトルをよく再現できる.一方で,1300 K よりも低温か 1700 K よりも高温の惑星の場合は,強いレイリー散乱を起こすエアロゾルが存在すると考えられる.
また,水以外の分子吸収源の存在を示す証拠はほとんど見られなかった.
arXiv:1610.01841
Barstow et al. (2016)
A consistent retrieval analysis of 10 Hot Jupiters observed in transmission
(透過光で観測されている 10 のホットジュピターの整合的なリトリーバル分析)
概要
可視光・近赤外での大気の透過光スペクトルが得られチエル 10 個のホットジュピターのより良い解析手法について検討した.ここでは,輻射輸送と大気リトリーバルツールである NEMESIS を用い,WASP-6b, WASP-12b, WASP-17b, WASP-19b, WASP-31b, WASP-39b, HD 189733b, HD 209458b, HAT-P-1b, HAT-P-12b のスペクトルを分析した.その結果,10 個の惑星ではいずれもエアロゾルの影響がスペクトルに見られることが分かった.
WASP-6b, WASP-12b, WASP-17b, WASP-19b, HD 189733b, HAT-P-12b では,レイリー散乱を起こすエアロゾルでスペクトルがよくフィット出来る.WASP-31b, WASP-39b, HS 209458b では,灰色の雲モデルが合う.なお HAT-P-1b はどちらの大気もありうる解となった.
WASP-6b, HAT-P-12b, HD 189733b, WASP-12b は,~ 0.1 bar の低圧領域までエアロゾルが存在していると考えられる.
一般的に,平衡温度が 1300 - 1700 K の惑星の場合は,深い灰色の雲を持つモデルでスペクトルをよく再現できる.一方で,1300 K よりも低温か 1700 K よりも高温の惑星の場合は,強いレイリー散乱を起こすエアロゾルが存在すると考えられる.
また,水以外の分子吸収源の存在を示す証拠はほとんど見られなかった.
論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1610.01170
Lopez et al. (2016)
Born Dry in the Photo-Evaporation Desert: Kepler's Ultra-Short-Period Planets Formed Water-Poor
(光蒸発砂漠内で乾燥した状態で生まれる:ケプラーの超短周期惑星は水が欠乏した状態で形成される)
これらは典型的には 1.5 地球半径よりも小さい半径を持ち,岩石主体の組成であることを示唆する.この事実は,軌道周期が 100 日程度までの位置に分布する惑星の特徴とは対照的である.軌道周期が 100 日程度までに位置する惑星の場合は 2 地球半径より大きい,低密度の海王星より軽い程度の惑星 (sub-Neptune) であり,その大きさを説明するためにはガスのエンベロープを持っている必要がある.
しかし超短周期軌道にある惑星は,強い光電離輻射を受けるため,ガスを多く持つ sub-Neptune は大気散逸に対して弱いと考えられる.
ここでは,惑星の進化モデルを用い,岩石主体の超短周期惑星は,水素・ヘリウム主体のエンベロープを持つ sub-Neptune の残骸として容易に形成されうることを示した.従って,超短周期軌道における sub-Neptune サイズの惑星の欠乏は,惑星大気の光蒸発の自然な帰結である.
しかし惑星が高金属量で水を多く持つ状態で形成された場合,しばしばガスのエンベロープを保持することが可能となる.この状態だと惑星の半径は 2 地球半径より大きくなるのが一般的だが,これは観測結果と非整合的である.
従って,超短周期惑星は雪線 (snow line) よりも内側で,水が欠乏した状態で形成されたと考えられる.
また,このモデルをかに座55番星e に対して応用し,惑星の組成・進化に対して考察を行った.
大気散逸はエネルギー律速散逸モデルを適用した.エネルギー律速散逸モデルではエネルギーの変換効率がパラメータとなるが,これは ~ 10%とするのが妥当と考えられる.
大気に重元素が多い場合,大気の平均分子量が大きくなるためスケールハイトは小さくなる.また,重元素からの冷却 (line cooling) が効くため,大気散逸率が低下する.例えば,もし大気が純粋な水蒸気で構成される場合は,エネルギーの変換効率は ~ 1%程度となる.
arXiv:1610.01170
Lopez et al. (2016)
Born Dry in the Photo-Evaporation Desert: Kepler's Ultra-Short-Period Planets Formed Water-Poor
(光蒸発砂漠内で乾燥した状態で生まれる:ケプラーの超短周期惑星は水が欠乏した状態で形成される)
概要
近年,軌道周期が 1 日未満の超短周期惑星 (ultra-short-period planet, USP planet) が多く発見されている.これらは典型的には 1.5 地球半径よりも小さい半径を持ち,岩石主体の組成であることを示唆する.この事実は,軌道周期が 100 日程度までの位置に分布する惑星の特徴とは対照的である.軌道周期が 100 日程度までに位置する惑星の場合は 2 地球半径より大きい,低密度の海王星より軽い程度の惑星 (sub-Neptune) であり,その大きさを説明するためにはガスのエンベロープを持っている必要がある.
しかし超短周期軌道にある惑星は,強い光電離輻射を受けるため,ガスを多く持つ sub-Neptune は大気散逸に対して弱いと考えられる.
ここでは,惑星の進化モデルを用い,岩石主体の超短周期惑星は,水素・ヘリウム主体のエンベロープを持つ sub-Neptune の残骸として容易に形成されうることを示した.従って,超短周期軌道における sub-Neptune サイズの惑星の欠乏は,惑星大気の光蒸発の自然な帰結である.
しかし惑星が高金属量で水を多く持つ状態で形成された場合,しばしばガスのエンベロープを保持することが可能となる.この状態だと惑星の半径は 2 地球半径より大きくなるのが一般的だが,これは観測結果と非整合的である.
従って,超短周期惑星は雪線 (snow line) よりも内側で,水が欠乏した状態で形成されたと考えられる.
また,このモデルをかに座55番星e に対して応用し,惑星の組成・進化に対して考察を行った.
モデル
惑星の内部構造と進化モデルを用いている.大気散逸はエネルギー律速散逸モデルを適用した.エネルギー律速散逸モデルではエネルギーの変換効率がパラメータとなるが,これは ~ 10%とするのが妥当と考えられる.
大気に重元素が多い場合,大気の平均分子量が大きくなるためスケールハイトは小さくなる.また,重元素からの冷却 (line cooling) が効くため,大気散逸率が低下する.例えば,もし大気が純粋な水蒸気で構成される場合は,エネルギーの変換効率は ~ 1%程度となる.
結果
- 太陽組成の水素・ヘリウムエンベロープを持つ低質量惑星で,地球の 1000 倍の輻射を受けるものは,大気の光蒸発に著しく弱い.超短周期軌道には,低金属量の大気を持つ巨大ガス惑星は存在しない.
- その結果,低金属量エンベロープの光蒸発は超短周期軌道での sub-Neptune 惑星の欠乏 ("evaporation desert") を自然に説明する.
- しかし反対に,高金属量もしくは水蒸気主体のエンベロープは光蒸発に耐えうる.したがってそのような惑星が存在した場合,超短周期軌道であってもエンベロープを保持することができ,半径は 2 地球半径以上となる.
- 2 - 4 地球半径の超短周期惑星はケプラーによる観測では発見されていない.従って超短周期惑星は水の欠乏した材料から形成されたということが示唆される.
- かに座55番星e はおそらくこのルールの例外である.しかし現在の観測データではその起源は解釈できず,裸の岩石惑星なのか水の多い sub-Neptune 惑星なのかは今後の研究を待つ必要がある.