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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1608.00963
Ortiz et al. (2016)
Precise radial velocities of giant stars IX. HD 59686 Ab: a massive circumstellar planet orbiting a giant star in a ~13.6 au eccentric binary system
(巨星の正確な視線速度 IX. HD 59686 Ab:軌道離心率の大きい ~ 13.6 AU の間隔を持つ連星系内の巨星を公転する重い星周惑星)
観測された視線速度変動のシグナルを,その他の恒星の黒点などによる効果と区別するため,Very Large Telescope (VLT) に設置されている CRIRES 分光器を用いて赤外線での視線速度観測も行った.また,Large Binocular Telescope にある LMIRCam でも高分解能の撮像観測を行った.
その結果,惑星と思われる,最小質量が 6.92 木星質量,軌道長半径が 1.0860 AU のシグナルを検出した.また,軌道離心率が 0.729 と大きい伴星 HD 59686 B も発見した.こちらは最小質量が 0.5296 太陽質量,軌道長半径は 13.56 AU である.
このような系での惑星形成は標準的な理論では難しく,近距離の連星系での惑星形成に関する理論を改善する必要がある.この不可解な惑星を理解するためには,第二世代の惑星形成や形成初期の力学進化など,代替の惑星形成理論が必要であると考えられる.
実視等級:5.45
有効温度:4658 K
金属量:[Fe/H] = 0.15
質量:1.9 太陽質量
半径:13.2 太陽半径
距離:96.8 pc
年齢:1.73 Gyr
軌道周期:299.36 日
軌道離心率:0.05
軌道長半径:1.0860 AU
最小質量:6.92 木星質量
軌道周期:11680 日
軌道離心率:0.729
軌道長半径:13.56 AU
最小質量:554.9 木星質量
arXiv:1608.00963
Ortiz et al. (2016)
Precise radial velocities of giant stars IX. HD 59686 Ab: a massive circumstellar planet orbiting a giant star in a ~13.6 au eccentric binary system
(巨星の正確な視線速度 IX. HD 59686 Ab:軌道離心率の大きい ~ 13.6 AU の間隔を持つ連星系内の巨星を公転する重い星周惑星)
概要
Lick Observatory における Hamilton Échelle Spectrograph を用いて, 373 個の G 型・K 型の巨星の正確な視線速度観測が,12 年以上に渡って行われてきた.ここではその結果の中から,巨星 HD 59686A (別名 HR 2877, HIP 36616) の周りにある,準恒星質量と恒星質量の天体の発見とその特徴について報告する.観測された視線速度変動のシグナルを,その他の恒星の黒点などによる効果と区別するため,Very Large Telescope (VLT) に設置されている CRIRES 分光器を用いて赤外線での視線速度観測も行った.また,Large Binocular Telescope にある LMIRCam でも高分解能の撮像観測を行った.
その結果,惑星と思われる,最小質量が 6.92 木星質量,軌道長半径が 1.0860 AU のシグナルを検出した.また,軌道離心率が 0.729 と大きい伴星 HD 59686 B も発見した.こちらは最小質量が 0.5296 太陽質量,軌道長半径は 13.56 AU である.
このような系での惑星形成は標準的な理論では難しく,近距離の連星系での惑星形成に関する理論を改善する必要がある.この不可解な惑星を理解するためには,第二世代の惑星形成や形成初期の力学進化など,代替の惑星形成理論が必要であると考えられる.
パラメータ
HD 59686 A
スペクトル型:K2III実視等級:5.45
有効温度:4658 K
金属量:[Fe/H] = 0.15
質量:1.9 太陽質量
半径:13.2 太陽半径
距離:96.8 pc
年齢:1.73 Gyr
HD 59686 Ab
※HD 59686 A を公転している惑星候補天体軌道周期:299.36 日
軌道離心率:0.05
軌道長半径:1.0860 AU
最小質量:6.92 木星質量
HD 59686 B
※HD 59686 A を公転している恒星軌道周期:11680 日
軌道離心率:0.729
軌道長半径:13.56 AU
最小質量:554.9 木星質量
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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1608.00706
Way et al. (2016)
Was Venus the First Habitable World of our Solar System?
(金星は我々の太陽系で最初の居住可能な惑星だったか?)
ここでは,マゼランによる金星の地形データ,29 - 7.15 億年前までの太陽の分光放射照度の推定値,現在の金星軌道のパラメータ,現在の理論と計測に整合的な海の体積,初期の金星に推定される大気組成と,三次元の気候シミュレーションを合わせ,金星の過去の気候の推定を行った.
その結果,これらのパラメータを用いた計算からは,過去の金星は現在の地球よりも 46 - 70%多い日射を受けているにもかかわらず,自転周期が 16 日よりも長ければ表面は温暖な温度になり得る事が判明した.
現在の金星の自転周期が 243 日であることを考えると,金星は 7 億 1500 万年前まではハビタブルな環境下だったと考えられる (ただし初期条件として浅い海が存在する場合).
この研究より,これまでに発見されている系外惑星の金星的な惑星の気候の歴史の理解には,惑星の自転と地形が極めて重要な役割を果たすという事が示された.
シミュレーションは,デカルト座標で 4° × 5° の経度・緯度の解像度,大気は 20 層で上端を 0.1 hPa とした.また大気は,13 層からなる完全に動的な海洋と結合している (Russell et al. 1995).
現在の金星大気には窒素分子が相当量存在するが,窒素の供給源や吸収源がほとんど存在しないことから,古代の金星大気は ~ 1 bar の窒素大気を持っていたと仮定する.
金星表面は,数億年前の火山活動で更新されている (McKinnon et al. 1997など).そのため,それ以前の地形は不明である.ここでは Venus Magellan mission による地形のデータを計算に使用した.
標高が低い部分は水で覆い,海水面は金星の平均半径と同じと仮定した.これは平均水深が 310 m になることに対応している.またこの値は,偶然にも Donahue & Russell (1997) によるの推定の範囲内である.
海の体積は 1.4 × 1017 m3 であり,これは現在の地球の値 1.3 × 1018 m3 よりも 1 桁少ない.この設定において,海は全球の 60 % を占める.
Sim A と B では受け取るフラックスが現在の金星と比べて 77%→94% となっているが,平均温度はわずかに 4℃上昇するのみである.
しかし惑星の自転周期の影響は大きい.自転周期を 16 日にした結果とは大きく異なり,これは Yang et al. (2014) と整合的な結果である.
雲の発生について,昼側の雲の被覆率は 100%に近くなった.自転が遅い場合は上昇流を伴う強い大気循環を生み,昼側に日射を反射する厚い雲を形成する.これも Yang et al. (2014) と整合的である.
対流雲によって水蒸気と凝縮物が上昇気流で上空へ運ばれる.上昇流が安定になる対流圏の中部・上部に到達すると流れは拡散し,水蒸気と雲粒子をその領域に注入し,巻雲やかなとこ雲などの反射性の覆いを形成する.これは地球の intertropical convergence zone (熱帯収束帯) での雲と類似している.ただし金星の条件下では,自転速度が遅いため対流は何日も同じ場所に存在し,数カ月にわたって広い範囲が曇りとなる.
Sim A, B, C では,夜側は雪が降るのには十分な低温になる.雪は数 cm 積もり,これは昼には完全に溶ける.また,大きな cold trap は存在しない.
しかし Sim A, B では,標高 5000 m を超える最も高い場所の計算セル (Ishtar Terra に相当) では,時間によって変動しない ~ 5 m 程度の万年雪が出来る.
arXiv:1608.00706
Way et al. (2016)
Was Venus the First Habitable World of our Solar System?
(金星は我々の太陽系で最初の居住可能な惑星だったか?)
概要
現在の金星は温度が 750 K あり,大気も現在の地球より 90 倍も厚い惑星である.しかし数十億年前は金星の状態も違った可能性がある.ここでは,マゼランによる金星の地形データ,29 - 7.15 億年前までの太陽の分光放射照度の推定値,現在の金星軌道のパラメータ,現在の理論と計測に整合的な海の体積,初期の金星に推定される大気組成と,三次元の気候シミュレーションを合わせ,金星の過去の気候の推定を行った.
その結果,これらのパラメータを用いた計算からは,過去の金星は現在の地球よりも 46 - 70%多い日射を受けているにもかかわらず,自転周期が 16 日よりも長ければ表面は温暖な温度になり得る事が判明した.
現在の金星の自転周期が 243 日であることを考えると,金星は 7 億 1500 万年前まではハビタブルな環境下だったと考えられる (ただし初期条件として浅い海が存在する場合).
この研究より,これまでに発見されている系外惑星の金星的な惑星の気候の歴史の理解には,惑星の自転と地形が極めて重要な役割を果たすという事が示された.
計算手法
計算の設定
計算には,Goddard Institute for Space Studies の ROCKE-3D (Resolving Orbital and Climate Keys of Earth and Extraterrestrial Environments with Dynamics) GCM を用いている.シミュレーションは,デカルト座標で 4° × 5° の経度・緯度の解像度,大気は 20 層で上端を 0.1 hPa とした.また大気は,13 層からなる完全に動的な海洋と結合している (Russell et al. 1995).
初期パラメータ
地面のアルベドは,Yang et al. (2014) に従い,0.2 を初期値とした.計算開始時は陸地には氷は無い状態だが,氷の蓄積は考慮に入れた.現在の金星大気には窒素分子が相当量存在するが,窒素の供給源や吸収源がほとんど存在しないことから,古代の金星大気は ~ 1 bar の窒素大気を持っていたと仮定する.
金星表面は,数億年前の火山活動で更新されている (McKinnon et al. 1997など).そのため,それ以前の地形は不明である.ここでは Venus Magellan mission による地形のデータを計算に使用した.
標高が低い部分は水で覆い,海水面は金星の平均半径と同じと仮定した.これは平均水深が 310 m になることに対応している.またこの値は,偶然にも Donahue & Russell (1997) によるの推定の範囲内である.
海の体積は 1.4 × 1017 m3 であり,これは現在の地球の値 1.3 × 1018 m3 よりも 1 桁少ない.この設定において,海は全球の 60 % を占める.
シミュレーションのセット
シミュレーションは 4 セット行った.- Sim A:金星の地形,2.9 Gyr 前の太陽のスペクトルを使用,日射は 2001 W m-2,自転周期は現在の金星の値
- Sim B:金星の地形,0.715 Gyr 前の太陽のスペクトルを使用,日射は 2357 W m-2,自転周期は現在の金星の値
- Sim C:地球の地形,2.9 Gyr 前の太陽のスペクトルを使用,日射は 2001 W m-2,自転周期は現在の金星の値
- Sim D:金星の地形,2.9 Gyr 前の太陽のスペクトルを使用,日射は 2001 W m-2,自転周期は地球の 16 倍
結果
表面温度の結果は以下のようになった.- Sim A:最低温度 -22℃,最高温度 36℃,平均温度 11℃
- Sim B:最低温度 -17℃,最高温度 35℃,平均温度 15℃
- Sim C:最低温度 -13℃,最高温度 46℃,平均温度 23℃
- Sim D:最低温度 27℃,最高温度 84℃,平均温度 56℃
Sim A と B では受け取るフラックスが現在の金星と比べて 77%→94% となっているが,平均温度はわずかに 4℃上昇するのみである.
しかし惑星の自転周期の影響は大きい.自転周期を 16 日にした結果とは大きく異なり,これは Yang et al. (2014) と整合的な結果である.
雲の発生について,昼側の雲の被覆率は 100%に近くなった.自転が遅い場合は上昇流を伴う強い大気循環を生み,昼側に日射を反射する厚い雲を形成する.これも Yang et al. (2014) と整合的である.
対流雲によって水蒸気と凝縮物が上昇気流で上空へ運ばれる.上昇流が安定になる対流圏の中部・上部に到達すると流れは拡散し,水蒸気と雲粒子をその領域に注入し,巻雲やかなとこ雲などの反射性の覆いを形成する.これは地球の intertropical convergence zone (熱帯収束帯) での雲と類似している.ただし金星の条件下では,自転速度が遅いため対流は何日も同じ場所に存在し,数カ月にわたって広い範囲が曇りとなる.
Sim A, B, C では,夜側は雪が降るのには十分な低温になる.雪は数 cm 積もり,これは昼には完全に溶ける.また,大きな cold trap は存在しない.
しかし Sim A, B では,標高 5000 m を超える最も高い場所の計算セル (Ishtar Terra に相当) では,時間によって変動しない ~ 5 m 程度の万年雪が出来る.
論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1608.00618
Oberst et al. (2016)
KELT-16b: A highly irradiated, ultra-short period hot Jupiter nearing tidal disruption
(KELT-16b:潮汐破壊に向かっている,強い日射を受けている超短周期ホットジュピター)
KELT-16b は,中心星のロッシュ限界半径の 1.7 倍の位置にいる.中心星の潮汐の Q 値が 105 であった場合,105 年かその数倍程度の時間で潮汐破壊されると考えられる.
また,遠距離にあると思われる伴星が,Kozai-Lidov 振動を経て KELT-16b を現在の内側の軌道にまで移動させた可能性がある.
スペクトル型:F7V
等級:11.7
質量;1.211 太陽質量
半径:1.360 太陽半径
光度:2.52 太陽光度
有効温度:6236 K
金属量:[Fe/H] = -0.002
軌道長半径:0.02044 AU
質量:2.75 木星質量
半径:1.415 木星半径
平均密度:1.20 g cm-3
平衡温度:2453 K
等級:19.6
質量;0.300 太陽質量
半径:0.295 太陽半径
光度:0.0107 太陽光度
有効温度:3420 K
金属量:[Fe/H] = -0.002
軌道長半径:軌道離心率が最大の場合 131 AU,最小の場合 262 AU
軌道周期:同じく 1220 年,3450 年
arXiv:1608.00618
Oberst et al. (2016)
KELT-16b: A highly irradiated, ultra-short period hot Jupiter nearing tidal disruption
(KELT-16b:潮汐破壊に向かっている,強い日射を受けている超短周期ホットジュピター)
概要
比較的明るい恒星の周りに,強い日射を受けている超短周期の惑星 KELT-16b を発見した.これはトランジットする周期 1 日未満の巨大ガス惑星の一種である (他には WASP-18b, WASP-19b, WASP-43b, WASP-103b, HATS-18b がある).KELT-16b は,中心星のロッシュ限界半径の 1.7 倍の位置にいる.中心星の潮汐の Q 値が 105 であった場合,105 年かその数倍程度の時間で潮汐破壊されると考えられる.
また,遠距離にあると思われる伴星が,Kozai-Lidov 振動を経て KELT-16b を現在の内側の軌道にまで移動させた可能性がある.
パラメータ
KELT-16
別名:TYC 2688-1839-1スペクトル型:F7V
等級:11.7
質量;1.211 太陽質量
半径:1.360 太陽半径
光度:2.52 太陽光度
有効温度:6236 K
金属量:[Fe/H] = -0.002
KELT-16b
軌道周期:0.9689951 日軌道長半径:0.02044 AU
質量:2.75 木星質量
半径:1.415 木星半径
平均密度:1.20 g cm-3
平衡温度:2453 K
KELT-16 の伴星
スペクトル型:M3V等級:19.6
質量;0.300 太陽質量
半径:0.295 太陽半径
光度:0.0107 太陽光度
有効温度:3420 K
金属量:[Fe/H] = -0.002
軌道長半径:軌道離心率が最大の場合 131 AU,最小の場合 262 AU
軌道周期:同じく 1220 年,3450 年
論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1608.00056
Stevenson et al. (2016)
Spitzer Phase Curve Constraints for WASP-43b at 3.6 and 4.5 microns
(3.6 と 4.5 µm での WASP-43b のスピッツァー位相曲線の制限)
潮汐固定されている系外惑星においては,理論モデルでは熱再分配効率と惑星の表面温度は相関があると予測されている.しかし,WASP-43b での最近のハッブル宇宙望遠鏡による分光光度曲線は,モデルの予測とは非整合的であるとされている.
ここでは,スピッツァー宇宙望遠鏡による,WASP-43b の 3.6 µm, 4.5 µm での 3 回にわたる光度曲線を得たので,その結果を報告する.
3.6 µm での 1 回目の光度曲線では,大気組成の復元のための解析において非物理的な条件を要求する,正しいかどうか疑わしい夜側からの放射を検出した.他の 2 回の観測では,ハッブル宇宙望遠鏡での観測結果と整合的な,大きな昼夜間の温度差があるという結果が得られた.
理論予測との差異を埋めるためには,WASP-43b は夜側に熱放射を遮蔽するための,高高度の雲・ヘイズ層を持っている必要がある.雲・ヘイズは,夜側の高高度で拡散する前に,惑星大気中の低温でほぼ逆行の中緯度にある流れによって形成され得る.中緯度の流れは,周期が 1 日程度未満の高速自転の惑星のみで実現しうる.そのため,スピッツァーの観測データ中に現れている,昼夜間の温度差と惑星の自転周期との間にあるように思われる傾向を説明できる可能性がある.
独立した複数回の惑星からの放射の観測から,惑星の昼側半球の水の存在度は,2.5 × 10-5 - 1.1 × 10-4 である (1 σ の確度).
また,化学平衡と太陽組成のスケーリングから,大気の金属量は太陽の金属量の 0.4 - 1.7 倍の範囲とするものと整合的であった.同じ過程で全球の CO + CO2 の存在度も求め,その結果から得られる金属量も,太陽の 0.3 - 1.7 倍と,整合的な結果であった.
この観測は,トランジット惑星において,複数の分子種をトレーサーとして用いて詳細な化学組成と金属量に制約を与えた初めての例である.
しかし惑星大気中の雲やヘイズの影響についてはよくわかっていない.
雲・ヘイズが昼側にあれば,測定されている熱の再分配を変えうる (Pont et al. 2013).1 次的には,雲・ヘイズの存在は,赤外線領域での光球面を,輻射のタイムスケールが短い低密度領域にまで押し上げる効果がある.この効果は,測定される昼夜間の温度差を大きくし,位相曲線の位相のずれを小さくする効果がある.しかし,雲の不均等性 (あるいは非一様性) はこれらの効果を減らす (Parmentier et al. 2016).
夜側の雲についても同様で,光球面を押し上げ,昼夜間温度差を大きく見せる効果がある (Katarina et al. 2015).
また,2.09 µm での熱放射が検出されている.後に,H, Ks バンド (Wang et al. 2013),K バンド (Chen et al. 2014) も検出されている.
これらの結果はお互いにおおむね整合的だが,Stevenson et al. (2014) でのハッブル宇宙望遠鏡の Wide Field Camera 3 を用いた観測による食の深さと,モデルとのベストフィットの大気とは非整合的な結果を示していた.
arXiv:1608.00056
Stevenson et al. (2016)
Spitzer Phase Curve Constraints for WASP-43b at 3.6 and 4.5 microns
(3.6 と 4.5 µm での WASP-43b のスピッツァー位相曲線の制限)
概要
これまでの系外惑星大気の熱再分配効率 (heat redistribution efficiency, 強い輻射を受けている昼側の面から,恒久的に暗い夜側の面へエネルギーを運ぶ能力) の測定では,惑星によって大きなばらつきがあるということが示されている.潮汐固定されている系外惑星においては,理論モデルでは熱再分配効率と惑星の表面温度は相関があると予測されている.しかし,WASP-43b での最近のハッブル宇宙望遠鏡による分光光度曲線は,モデルの予測とは非整合的であるとされている.
ここでは,スピッツァー宇宙望遠鏡による,WASP-43b の 3.6 µm, 4.5 µm での 3 回にわたる光度曲線を得たので,その結果を報告する.
3.6 µm での 1 回目の光度曲線では,大気組成の復元のための解析において非物理的な条件を要求する,正しいかどうか疑わしい夜側からの放射を検出した.他の 2 回の観測では,ハッブル宇宙望遠鏡での観測結果と整合的な,大きな昼夜間の温度差があるという結果が得られた.
理論予測との差異を埋めるためには,WASP-43b は夜側に熱放射を遮蔽するための,高高度の雲・ヘイズ層を持っている必要がある.雲・ヘイズは,夜側の高高度で拡散する前に,惑星大気中の低温でほぼ逆行の中緯度にある流れによって形成され得る.中緯度の流れは,周期が 1 日程度未満の高速自転の惑星のみで実現しうる.そのため,スピッツァーの観測データ中に現れている,昼夜間の温度差と惑星の自転周期との間にあるように思われる傾向を説明できる可能性がある.
独立した複数回の惑星からの放射の観測から,惑星の昼側半球の水の存在度は,2.5 × 10-5 - 1.1 × 10-4 である (1 σ の確度).
また,化学平衡と太陽組成のスケーリングから,大気の金属量は太陽の金属量の 0.4 - 1.7 倍の範囲とするものと整合的であった.同じ過程で全球の CO + CO2 の存在度も求め,その結果から得られる金属量も,太陽の 0.3 - 1.7 倍と,整合的な結果であった.
この観測は,トランジット惑星において,複数の分子種をトレーサーとして用いて詳細な化学組成と金属量に制約を与えた初めての例である.
研究背景
系外惑星の雲・ヘイズの影響
系外惑星の位相曲線は,惑星の経度方向の大気組成,大気の熱的構造,エネルギー輸送などの大気に関する様々な情報を与える.熱赤外線領域では,位相変動は惑星の昼側と夜側の温度差の情報を,位相のずれは惑星で最も高温になっている領域の経度についての情報を与える.しかし惑星大気中の雲やヘイズの影響についてはよくわかっていない.
雲・ヘイズが昼側にあれば,測定されている熱の再分配を変えうる (Pont et al. 2013).1 次的には,雲・ヘイズの存在は,赤外線領域での光球面を,輻射のタイムスケールが短い低密度領域にまで押し上げる効果がある.この効果は,測定される昼夜間の温度差を大きくし,位相曲線の位相のずれを小さくする効果がある.しかし,雲の不均等性 (あるいは非一様性) はこれらの効果を減らす (Parmentier et al. 2016).
夜側の雲についても同様で,光球面を押し上げ,昼夜間温度差を大きく見せる効果がある (Katarina et al. 2015).
過去の観測
WASP-43 はスペクトル型が K7 の恒星であり,惑星が発見されている (Hellier et al. 2011).惑星はホットジュピターであり,Gillon et al. (2012) では複数回のトランジットが観測されており,型のパラメータが細かく決定されており.また,2.09 µm での熱放射が検出されている.後に,H, Ks バンド (Wang et al. 2013),K バンド (Chen et al. 2014) も検出されている.
これらの結果はお互いにおおむね整合的だが,Stevenson et al. (2014) でのハッブル宇宙望遠鏡の Wide Field Camera 3 を用いた観測による食の深さと,モデルとのベストフィットの大気とは非整合的な結果を示していた.
論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
地球に似た惑星発見、水も存在か 太陽系から4光年先:朝日新聞デジタル
Nature ハイライト:いよいよ見えてきた兄弟惑星:太陽に最も近い星であるプロキシマ・ケンタウリを周回している温暖な地球型惑星 | Nature | Nature Research
などでニュースにもなった,プロキシマ・ケンタウリの惑星の発見を報告する論文のメモです.
原論文へのリンク
Anglada-Escudé et al. (2016)
A terrestrial planet candidate in a temperate orbit around Proxima Centauri
(プロキシマ・ケンタウリまわりの温暖な軌道にある地球型惑星候補天体)
(プロキシマ・ケンタウリ:別名 α Centauri C,グリーゼ551,HIP 70890,あるいは単にプロキシマ)
プロキシマ・ケンタウリの有効温度は ~ 3050 K,光度は太陽の 0.15%であり,半径は太陽の 14%,質量は 12%である.恒星自体はやや活発だが,自転周期は ~ 83 日であり,不活発な場合の活動度と X 線光度は太陽と同程度になる.
ここでは,この恒星の周りにある,最小質量が 1.3 地球質量の系外惑星 (以下,Proxima b, プロキシマb と呼称) の視線速度法による検出を報告する.この惑星は,軌道周期が 11.2 日,軌道長半径が ~ 0.05 AU であり,表面の平衡温度は表面に水が存在できる範囲内にある.
HARPS の視線速度観測の精度は,低質量星を観測した場合でも ~ 1 m s-1 である.
HAPRS の観測データは,2016 年よりも前の別の観測キャンペーンによって得られたデータと,最近の Pale Red Dot (PRD) キャンペーンで得られたデータの 2 セット存在する.
2016 年より前に行われた HARPS と UVES による観測データの解析では,11.2 日周期のシグナルが検出された.このシグナルを確定させること,あるいは反証することが,2016 年に行われた PRD キャンペーンでの観測のモチベーションであった.
PRD による HARPS での観測データ単独でも ~ 11.2 日周期のシグナルが検出されたが,2016 年より前のデータと PRD でのデータを合わせて解析することで,このシグナルを確定させることが出来た.合わせて解析した場合の false-alarm probability (FAP, 誤検出率) は 10-7 より小さい値となった.
また,シグナルの周期だけではなく,変動の位相と振幅も,過去の 16 年間に蓄積されたデータと整合的なものであった.
なお,60 - 500 日の範囲にもシグナルを検出したが,恒星の活動と,不十分なデータのサンプリングの影響により,このシグナルの性質や原因は不明である.
時折発生するフレアの影響を除くと,おおむね 80 日周期の変動が検出された.これは,過去に測定されていたプロキシマ・ケンタウリの自転周期 ~ 83 日と同程度の値である.また,プロキシマ・ケンタウリのフレアがドップラーデータに及ぼす影響は小さく,これも過去の観測結果と整合的なものであった.
検出された ~ 11.2 日周期のシグナルを生み出せるような恒星の活動は見いだせなかったため,~ 11.2 日周期のシグナルはプロキシマ・ケンタウリが持つ惑星の公転運動に起因するものだと結論付けた.
なお,これまでの参照できる全てのデータを調査したが,惑星がトランジットを起こしている (恒星の手前を通過している) ことを示す明確な光度曲線は発見できなかった.
プロキシマb による視線速度の変動の大きさは ~ 1.4 m s-1 であり,この値は他の視線速度法で発見されている系外惑星での値と比べて特別に小さいわけではない.2016 年より前の観測データからプロキシマb を明確に確定することが出来なかったのは,中心星であるプロキシマ・ケンタウリの長周期の変動と,非一様かつ間隔の空いた観測データの組み合わせが原因だろうと考えられる.
質量:0.120 太陽質量
半径:0.141 太陽半径
光度:0.00155 太陽光度
有効温度:3050 K
自転周期:~ 83 日
プロキシマ・ケンタウリのまわりのハビタブルゾーンの範囲:~ 0.0423 - 0.0816 AU
ハビタブルゾーンの範囲内での公転周期:~ 9.1 - 24.5 日
視線速度振幅:1.38 m s-1
軌道離心率:0.35 未満
軌道長半径:0.0485 AU
最小質量:1.27 地球質量
平衡温度:234 K (黒体を仮定した場合)
日射量:地球が太陽から受ける日射量の 65%
軌道の幾何学的な配置から推定した,トランジットを起こす確率:~ 1.5%
トランジットした場合のトランジット深さ:~ 0.5% (地球と類似した密度を仮定した場合)
シグナルが誤検出である確率 (FAP):7 × 10-8
なお,プロキシマb の他により長周期のスーパーアース質量の惑星が存在する可能性は,これまでの観測からは否定出来ない.ドップラー観測の振幅が 3 m s-1 未満の天体が存在する可能性の排除は出来ていない.数値計算の結果からは,そのような惑星が存在した場合であっても,プロキシマb の軌道の安定性には影響がないと考えられる.
ハビタビリティに対する否定的なものとして代表的なものは,潮汐力による自転周期と公転周期の固定 (tidal locking),強い恒星磁場,強いフレア,紫外線や X 線のフラックスが挙げられる.しかしこれらのハビタビリティへの否定的な影響はまだ明確にはされていない.
潮汐力による固定は,全球的な大気循環と熱の再分配を介した安定な大気の存在を否定しない.
またプロキシマ・ケンタウリの全球平均での磁場強度は ~ 600 G であり,これは太陽の全球平均での磁場強度 (~ 1 G) と比較すると非常に強い.しかし最近の研究では,潮汐固定された惑星であっても,恒星の磁場やフレアによる惑星大気の侵食を防ぐだけの惑星磁場を持つことが出来るとされている.
プロキシマb は中心星に近いため,強い X 線にさらされることになる.プロキシマb が受ける X 線の強さは,地球が太陽から受ける X 線強度の ~ 400 倍程度となる.しかし,これによる大気の損失は比較的小さいだろうという予測もある.
プロキシマb が現在存在する位置で形成されたとは考えづらい.これは,プロキシマ・ケンタウリのような小さい恒星の周りに出来る円盤では,1 AU の範囲内にある固体物質の総質量は 1 地球質量よりも少ないと考えられるからである (すなわち材料が足りない).
プロキシマb の形成シナリオとしては 3 つの可能性がある.
・惑星は外側で形成され,タイプ I 惑星移動によって内側まで移動してきた.
・惑星の種 (planetary embryo) が外側から移動してきて,現在の位置で集積して形成された.
・小さい粒子 (pebble) か小さい微惑星がガス抵抗によって中心星付近まで落下してきて集積し,惑星が形成された.
スノーライン (水が気体でいるか固体になるかの境目) より外側からの惑星や惑星の種の移動によって形成された場合,惑星は水などの揮発性物質を多く含む組成になるが,pebble の移動によるシナリオの場合はより乾燥した組成となる.
このプロキシマ・ケンタウリまわりにある温暖な地球型惑星は,今後の惑星の特徴付けのために,現在進行しているトランジットの検出の試みや,次の数十年に行われるであろう直接撮像や高分解能の分光観測のチャンスを与える.また,もしかしたら今後数世紀の間にロボットを使った探査などもあるかもしれない.
ニュースでかなり大きく取り上げられた,プロキシマ・ケンタウリの惑星検出に関する論文です.
プロキシマ・ケンタウリは太陽系に最も近い位置にある恒星で,三重連星のうちの一つです.
アルファ・ケンタウリ (ケンタウルス座アルファ星) の星系にあり,太陽と同程度のアルファ・ケンタウリAとアルファ・ケンタウリB が連星をなし,そのペアからかなり離れたところをプロキシマ・ケンタウリが公転している,という軌道の構造になっています.
なお,このうちアルファ・ケンタウリB (ケンタウルス座アルファ星B) に惑星が検出されたという報告が 2012 年にありましたが,これは誤検出だろうという指摘もあり,現在では誤検出だったのだろうという見方が主流です.
アルファ・ケンタウリ星系は太陽系に最も近い星系で,その中でも外側に大きく外れた位置にあるプロキシマ・ケンタウリが最も太陽系に近い恒星です.そのため,今回のプロキシマ・ケンタウリまわりの惑星「プロキシマb」の検出が正しければ,プロキシマb が太陽系に最も近い系外惑星であるということになります.
ちなみに今回のニュースですが,ESO が正式に情報を公開する前にも海外紙でニュースになっていて,日本でも
地球に似た惑星発見か 4・24光年離れた恒星近く、地表に水が存在する可能性も - 産経ニュース
という報道がされました.
地球に似た惑星発見、水も存在か 太陽系から4光年先:朝日新聞デジタル
Nature ハイライト:いよいよ見えてきた兄弟惑星:太陽に最も近い星であるプロキシマ・ケンタウリを周回している温暖な地球型惑星 | Nature | Nature Research
などでニュースにもなった,プロキシマ・ケンタウリの惑星の発見を報告する論文のメモです.
原論文へのリンク
Anglada-Escudé et al. (2016)
A terrestrial planet candidate in a temperate orbit around Proxima Centauri
(プロキシマ・ケンタウリまわりの温暖な軌道にある地球型惑星候補天体)
概要
太陽系から 1.295 pc (4.24 光年) の距離にあるプロキシマ・ケンタウリ (Proxima Centauri) は,太陽に最も近い恒星であり,またこれまでによく調べられている低質量の恒星である.(プロキシマ・ケンタウリ:別名 α Centauri C,グリーゼ551,HIP 70890,あるいは単にプロキシマ)
プロキシマ・ケンタウリの有効温度は ~ 3050 K,光度は太陽の 0.15%であり,半径は太陽の 14%,質量は 12%である.恒星自体はやや活発だが,自転周期は ~ 83 日であり,不活発な場合の活動度と X 線光度は太陽と同程度になる.
ここでは,この恒星の周りにある,最小質量が 1.3 地球質量の系外惑星 (以下,Proxima b, プロキシマb と呼称) の視線速度法による検出を報告する.この惑星は,軌道周期が 11.2 日,軌道長半径が ~ 0.05 AU であり,表面の平衡温度は表面に水が存在できる範囲内にある.
観測と解析
視線速度観測とデータの解析
今回の結果は,2016 年より前に得られていたドップラー測定データの解析と,2016 年に行われたフォローアップ観測で得られたデータの組み合わせによって得られたものである.ドップラー観測のデータは,High Accuracy Radial velocity Planet Searcher (HARPS) と,Ultraviolet amd Visual Echelle Spectrograph (UVES) の 2 つの装置によって得られた.この 2 つはどちらも欧州南天天文台 (European Southern Observatory, ESO) にある.HARPS の視線速度観測の精度は,低質量星を観測した場合でも ~ 1 m s-1 である.
HAPRS の観測データは,2016 年よりも前の別の観測キャンペーンによって得られたデータと,最近の Pale Red Dot (PRD) キャンペーンで得られたデータの 2 セット存在する.
2016 年より前に行われた HARPS と UVES による観測データの解析では,11.2 日周期のシグナルが検出された.このシグナルを確定させること,あるいは反証することが,2016 年に行われた PRD キャンペーンでの観測のモチベーションであった.
PRD による HARPS での観測データ単独でも ~ 11.2 日周期のシグナルが検出されたが,2016 年より前のデータと PRD でのデータを合わせて解析することで,このシグナルを確定させることが出来た.合わせて解析した場合の false-alarm probability (FAP, 誤検出率) は 10-7 より小さい値となった.
また,シグナルの周期だけではなく,変動の位相と振幅も,過去の 16 年間に蓄積されたデータと整合的なものであった.
なお,60 - 500 日の範囲にもシグナルを検出したが,恒星の活動と,不十分なデータのサンプリングの影響により,このシグナルの性質や原因は不明である.
恒星活動との切り分け
恒星活動は,惑星が引き起こすシグナルに似たドップラーシグナルを作ることがある.これは,特に不均一な期間での観測を行って解析した際に起きうる.そのため,惑星ではなく恒星活動に起因するシグナルか検証するため,測光観測・分光観測でプロキシマ・ケンタウリの活動の様子も確認した.時折発生するフレアの影響を除くと,おおむね 80 日周期の変動が検出された.これは,過去に測定されていたプロキシマ・ケンタウリの自転周期 ~ 83 日と同程度の値である.また,プロキシマ・ケンタウリのフレアがドップラーデータに及ぼす影響は小さく,これも過去の観測結果と整合的なものであった.
検出された ~ 11.2 日周期のシグナルを生み出せるような恒星の活動は見いだせなかったため,~ 11.2 日周期のシグナルはプロキシマ・ケンタウリが持つ惑星の公転運動に起因するものだと結論付けた.
なお,これまでの参照できる全てのデータを調査したが,惑星がトランジットを起こしている (恒星の手前を通過している) ことを示す明確な光度曲線は発見できなかった.
プロキシマb による視線速度の変動の大きさは ~ 1.4 m s-1 であり,この値は他の視線速度法で発見されている系外惑星での値と比べて特別に小さいわけではない.2016 年より前の観測データからプロキシマb を明確に確定することが出来なかったのは,中心星であるプロキシマ・ケンタウリの長周期の変動と,非一様かつ間隔の空いた観測データの組み合わせが原因だろうと考えられる.
パラメータ
プロキシマ・ケンタウリ
スペクトル型:M5.5V質量:0.120 太陽質量
半径:0.141 太陽半径
光度:0.00155 太陽光度
有効温度:3050 K
自転周期:~ 83 日
プロキシマ・ケンタウリのまわりのハビタブルゾーンの範囲:~ 0.0423 - 0.0816 AU
ハビタブルゾーンの範囲内での公転周期:~ 9.1 - 24.5 日
プロキシマb
軌道周期:11.186 日視線速度振幅:1.38 m s-1
軌道離心率:0.35 未満
軌道長半径:0.0485 AU
最小質量:1.27 地球質量
平衡温度:234 K (黒体を仮定した場合)
日射量:地球が太陽から受ける日射量の 65%
軌道の幾何学的な配置から推定した,トランジットを起こす確率:~ 1.5%
トランジットした場合のトランジット深さ:~ 0.5% (地球と類似した密度を仮定した場合)
シグナルが誤検出である確率 (FAP):7 × 10-8
議論
プロキシマ・ケンタウリとプロキシマb の系について
今回発見された惑星プロキシマb (Proxima b,あるいはプロキシマ・ケンタウリb) は,最小質量が ~ 1.3 地球質量 (視線速度法なので真の質量は不明,最小質量のみが算出できる) である.軌道長半径はおよそ 0.05 AU であり,これはプロキシマ・ケンタウリまわりの標準的なハビタブルゾーンの真ん中付近に相当する.なお,プロキシマb の他により長周期のスーパーアース質量の惑星が存在する可能性は,これまでの観測からは否定出来ない.ドップラー観測の振幅が 3 m s-1 未満の天体が存在する可能性の排除は出来ていない.数値計算の結果からは,そのような惑星が存在した場合であっても,プロキシマb の軌道の安定性には影響がないと考えられる.
惑星の居住可能性
プロキシマb のような M 型矮星のまわりにある系外惑星における habitability (ハビタビリティ,居住可能性) は,激しい議論の的となっている.ハビタビリティに対する否定的なものとして代表的なものは,潮汐力による自転周期と公転周期の固定 (tidal locking),強い恒星磁場,強いフレア,紫外線や X 線のフラックスが挙げられる.しかしこれらのハビタビリティへの否定的な影響はまだ明確にはされていない.
潮汐力による固定は,全球的な大気循環と熱の再分配を介した安定な大気の存在を否定しない.
またプロキシマ・ケンタウリの全球平均での磁場強度は ~ 600 G であり,これは太陽の全球平均での磁場強度 (~ 1 G) と比較すると非常に強い.しかし最近の研究では,潮汐固定された惑星であっても,恒星の磁場やフレアによる惑星大気の侵食を防ぐだけの惑星磁場を持つことが出来るとされている.
プロキシマb は中心星に近いため,強い X 線にさらされることになる.プロキシマb が受ける X 線の強さは,地球が太陽から受ける X 線強度の ~ 400 倍程度となる.しかし,これによる大気の損失は比較的小さいだろうという予測もある.
今後の観測と惑星の形成過程
今後のさらなる観測と特徴付けによって,惑星の形成過程に迫ることも出来るだろう.プロキシマb が現在存在する位置で形成されたとは考えづらい.これは,プロキシマ・ケンタウリのような小さい恒星の周りに出来る円盤では,1 AU の範囲内にある固体物質の総質量は 1 地球質量よりも少ないと考えられるからである (すなわち材料が足りない).
プロキシマb の形成シナリオとしては 3 つの可能性がある.
・惑星は外側で形成され,タイプ I 惑星移動によって内側まで移動してきた.
・惑星の種 (planetary embryo) が外側から移動してきて,現在の位置で集積して形成された.
・小さい粒子 (pebble) か小さい微惑星がガス抵抗によって中心星付近まで落下してきて集積し,惑星が形成された.
スノーライン (水が気体でいるか固体になるかの境目) より外側からの惑星や惑星の種の移動によって形成された場合,惑星は水などの揮発性物質を多く含む組成になるが,pebble の移動によるシナリオの場合はより乾燥した組成となる.
このプロキシマ・ケンタウリまわりにある温暖な地球型惑星は,今後の惑星の特徴付けのために,現在進行しているトランジットの検出の試みや,次の数十年に行われるであろう直接撮像や高分解能の分光観測のチャンスを与える.また,もしかしたら今後数世紀の間にロボットを使った探査などもあるかもしれない.
ニュースでかなり大きく取り上げられた,プロキシマ・ケンタウリの惑星検出に関する論文です.
プロキシマ・ケンタウリは太陽系に最も近い位置にある恒星で,三重連星のうちの一つです.
アルファ・ケンタウリ (ケンタウルス座アルファ星) の星系にあり,太陽と同程度のアルファ・ケンタウリAとアルファ・ケンタウリB が連星をなし,そのペアからかなり離れたところをプロキシマ・ケンタウリが公転している,という軌道の構造になっています.
なお,このうちアルファ・ケンタウリB (ケンタウルス座アルファ星B) に惑星が検出されたという報告が 2012 年にありましたが,これは誤検出だろうという指摘もあり,現在では誤検出だったのだろうという見方が主流です.
アルファ・ケンタウリ星系は太陽系に最も近い星系で,その中でも外側に大きく外れた位置にあるプロキシマ・ケンタウリが最も太陽系に近い恒星です.そのため,今回のプロキシマ・ケンタウリまわりの惑星「プロキシマb」の検出が正しければ,プロキシマb が太陽系に最も近い系外惑星であるということになります.
ちなみに今回のニュースですが,ESO が正式に情報を公開する前にも海外紙でニュースになっていて,日本でも
地球に似た惑星発見か 4・24光年離れた恒星近く、地表に水が存在する可能性も - 産経ニュース
という報道がされました.


天文・宇宙物理関連メモ vol.101 Rajpaul et al. (2015) ケンタウルス座アルファ星Bbが誤認である可能性について