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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1601.03652
Tremblin et al. (2016)
Cloudless atmospheres for L/T dwarfs and extra-solar giant planets
(L/T型矮星と太陽系外巨大惑星の雲のない大気)

概要

20年前に褐色矮星が初めて発見されて以降の、褐色矮星の複雑なスペクトル分類を説明するために受け入れられてきた慣習的なシナリオでは、褐色矮星大気中での雲やダストなどのマイクロメートルサイズの凝縮物が重要な役割を果たすとされている。しかしこのシナリオは大きな問題に直面している。特に、スペクトルタイプの L 型と T 型の境界での J バンドにおける増光と、FeH 吸収の回復という現象についてである。またこの L/T transition についての、物理的な、第一原理的な理解は不足している。

ここでは全く新しい、大気中の雲を考慮する必要のない、褐色矮星と太陽系外巨大惑星のスペクトルの説明を提案する。この中では、CO/CH4 と N2/NH3 の化学反応の遅さによって、L, T 型の褐色矮星と巨大ガス惑星の大気は熱科学的不安定の状態にあるということを示す。これは地球の海洋やコア・マントル境界 (core-mantle boundary) で起きている、フィンガリング (fingering) と化学対流不安定 (chemical convective instability) と同じ性質を持つものである。

不安定によって誘起された小スケールの乱流エネルギー輸送は、大気の温度勾配を下げる。これによって、L 型褐色矮星とガス惑星で観測されている、J - H と J - K color の増加を説明することが出来る。また、L/T transition に伴う、大気深部での温度増加によって CO/CH4 不安定が消失し、この効果が先の 2 つの問題点を解決する。また、L 型から T 型への変化の物理的な説明を与える。

この新しい描像は、褐色矮星と系外ガス惑星の大気とその進化の理解に抜本的な修正をもたらす。

研究背景

褐色矮星と太陽系外の巨大惑星の大気中での雲は、それらが発見されて以来重要な研究対象となってきた。雲を持つ大気のモデルは、観測されている J - H, J - K color でのスペクトルの赤化を再現するが、以下の様な問題点がある。

(1)
雲のダイナミクスを駆動する機構の理解が進んでいない。候補としては、対流のオーバーシュートが提案されている (Freytag et al. 2010)。しかしこれは比較的定常的なプロセスであり、オーバーシュートの一時的な性質とは相容れないように思われる。さらに、このメカニズムにおけるレジームの変化や L/T transition における有効温度の変化の鋭さなどがあり、要するにこの transition の物理的な性質は未解決の状態である。

(2)
L/T transition における J バンドでの増光も FeH の増加も理解が進んでいない。大気を覆う雲に穴が存在する場合はこの特徴を再現することが出来るが (Ackerman & Marley 2001など)、近年ではスペクトルの変動は雲の穴説とは相容れず、むしろ雲の高さのバリエーションによるとされている。また FeH の増加に関しても原因は不明のままである (Buenzli et al. 2015)。

(3)
10 μm の吸収特性が既存の雲モデルではよく再現できていない。幾つかの観測ではシリケイトのダストの存在が示唆されてはいるものの (Cushing et al. 2006)、観測された全てのスペクトルで吸収の特徴が見えてはおらず、またそれを示す天体 (例:2M224, 2M0036, 2M1597, 2M2244, (Stephens et al. 2009)) においても、雲モデルは近赤外領域での赤化と 10 μm での吸収の両方を再現することは出来ていない。

(4)
雲モデルから期待される雲の偏光の兆候が検出されていない (Goldman et al. 2009)。

結果

L型褐色矮星の大気の特性としては、CO/CH4 transition における熱化学不安定が起きている事が示唆された。また典型的な T型褐色矮星の大気では、N2/NH3 transition において同じ不安定が発生している。この不安定性は、これらの化学平衡反応の遅さによって誘起される分子量勾配の不安定化の発達によって引き起こされる。この勾配は局所的な化学対流 (組成対流) を生み出し、これが大気中での温度勾配を減少させる。

L型褐色矮星と高温のガス惑星のスペクトルは、以下の場合によく再現される。
(i) 前述の不安定性によって大気の温度勾配が減少させられている
(ii) CO/CH4 transition での CH4 の消失を考慮に入れた場合
同じ描像は T型褐色矮星にも適用でき、この場合は N2/NH3 transition での NH3 の消失である。

L/T transition に沿って不安定性が消失するのに伴い、小スケールの乱流散逸が大気の深い部分を加熱し、それによって大気の温度勾配が大きくなる。これがこれまで分かっていなかった FeH の再増加と 早期型 T型褐色矮星における J バンドでの増光を自然に説明する。

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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1601.03216
Chadney et al. (2016)
EUV-driven ionospheres and electron transport on extrasolar giant planets orbiting active stars
(活動的な恒星まわりの太陽系外巨大惑星における極端紫外線駆動の電離圏と電子輸送)

概要

太陽系外の巨大惑星の高層大気の組成と構造は、中心星からの軟 X 線と極端紫外線 (extreme ultraviolet, EUV) に影響される。この高エネルギーの放射は恒星の活動レベルに依存し、また活動レベルは主に年齢によって決まる。ここでは、様々な年齢の K, M 型星の周りの巨大ガス惑星に注目した。サンプルとして選んだ恒星は、エリダヌス座イプシロン星、しし座AD星、けんびきょう座AU星、そして太陽である。

これらの恒星の XUV スペクトルは、恒星コロナのモデルから計算した。これらのスペクトルから、惑星の熱圏モデルと電離圏モデルを用い、惑星大気でのイオン種の密度を算出する。主星からの輻射を受けた結果として発生する大気の電離は、光電離と電子衝突としてモデルに含まれている。光電離については Lambert-Beer law から計算し、電子衝突については超熱的電子輸送モデルから導出している。

計算の結果、ここでサンプルとして挙げた全ての恒星において、また全ての軌道長半径の範囲内 (0.1 - 1 AU) において、ガス惑星の電離圏は長寿命の H+ イオンが主成分になる事が分かった。さらに、軌道長半径が比較的大きく、水素分子がよく解離していない高層大気を持つガス惑星の場合は、電離圏の底部では H3+ が主要なイオンとなる。

自転周期が短い惑星の場合、短寿命の H3+ の密度は日周変化が大きくなる。密度の最大値は、恒星からの X 線のフラックスの大きさによって決まる。対照的に、長寿命の H+ イオンの場合は、昼夜の密度変動が非常に小さいことが分かった。またこの場合の密度は主に EUV フラックスによって決まっている。

中心星に近く、水素分子がよく乖離されるガス惑星の高層大気では、H3+ のピークは均質圏界面 (homopause) 以下へと押し下げられる。ここでは、H3+ は炭化水素や水分子などの重い種との反応で破壊される。

二次電離プロセスを含めた場合、電子衝突電離の効果を含めていない場合と比べると、主要な EUV 電離が極大となる場所よりも低い場所において、イオンと電子の密度が大きく上昇することも分かった。

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arXiv:1601.02978
Barstow et al. (2016)
Probing Saturn's tropospheric cloud with Cassini/VIMS
(カッシーニ/VIMSによる土星対流圏の雲の探査)

概要

10年にわたる土星探査機カッシーニの観測によって、土星の大気の深くや、そこを覆っているヘイズのしたで起きているプロセスを探ることが可能となった。ここでは、カッシーニの VIMS (Visual and Infrared Mapping Spectrometer) による、4.6 - 5.2 μm での観測結果を元に、0.6 - 5 bar の高度での雲の構造についての解析を行った。緯度 -40 - 50°の範囲の雲モデルと、アンモニア (NH3)、ホスフィン (PH3)、アルシン (AsH3)の存在度について調査した。

解析の結果、赤道周辺でアンモニアの存在度が多いことが分かった。また雲底は ~ 2.3 bar であることが分かった。

4.6 - 5.2 μm では強い吸収を示す雲粒子は存在しないという結果となり、これは先行研究と整合的である。また、アンモニアと硫化水素アンモニウム (NH4SH) 両方を成分とした散乱のない雲のモデルと、その上にある散乱性のヘイズのモデルは、周辺減光の光度曲線とフィットした。また、全緯度でのスペクトルともフィットした。

対流圏に存在するヘイズの光学的深さは、北半球 (冬) で低下していた。これは、土星の対流圏内のヘイズは光化学反応に起源を持つことを示唆する

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arXiv:1601.02814
Irwin et al. (2016)
Reanalysis of Uranus' cloud scattering properties from IRTF/SpeX observations using a self-consistent scattering cloud retrieval scheme
(散乱を起こす雲の自己無矛盾な探査スキームを用いたIRTF/SpeX観測からの天王星の雲の散乱特性の再解析)

概要

天王星の赤外線スペクトルモデルの改良を行った。ここでは、2009年の IRTF/SpeX による 0.8 - 1.8 μm での観測結果 (Tice et al. 2013) の再解析を行った。
IRTF (Infrared Telescope Facility) は、ハワイのマウナケア山にある NASA の観測装置である。

雲粒子の複素屈折率スペクトルのデータを元に、クラマース・クローニッヒの関係式 (Kramaers-Kronig relation) を用いて屈折率の実部を整合的に決めることができ、それによって天王星大気中の雲やヘイズの自己無撞着な吸光断面積を定義する事が可能になる。また、単一散乱や位相関数スペクトルも得ることが出来る。

2種類の雲モデルを、temperature/methane profile (Baines et al. 1995)、ボイジャー2号の電波掩蔽観測 (Sromovsky et al. 2011)、最近のスピッツァー宇宙望遠鏡による観測結果 (Orton et al. 2014)と合わせてテストした。その結果、雲モデルは両方共に観測された天王星の center-of-disc のスペクトルをよく再現した。どちらのモデルも、~ 2 bar 付近にある主要な雲の散乱特性に対して類似した特性を要求する。しかし、Sromovsky et al. (2011)のモデルの、最下層の雲層のスペクトル特性の改良版を用いたモデルが、短い波長域では僅かに良く合うことが分かった。また、天王星大気中のメタン雲の鉛直方向の位置として期待される位置とより整合的であることも分かった。

解析の結果、天王星の反射放射輝度は、~ 2 bar にある厚い雲によるものであるという事が判明した。1.0 μm 未満の短い波長よりも、1.0 μm 以上の長い波長をよく吸収する。このスペクトルの情報は雲の主要粒子の成分に制限をかけ得るが、得られた散乱特性は、天王星の対流圏上部で凝縮すると考えられるアンモニア (NH3)、硫化水素アンモニウム (NH4SH)、メタン (CH4)の純粋な氷の実験室データとは一致しない。従って、観測されている天王星の雲は、上空から拡散してきた光化学物質と対流圏内での凝縮物の混合物である可能性がある。これが、純粋な散乱の特徴を隠しているのだろうと考えられる。

雲の成分としては、硫化水素 (H2S) 、ホスフィン (PH3) からなる氷粒子も考えられるが、どちらも参照可能な実験室データが存在しない。したがってこれらである可能性は排除できない。しかしそれらが雲の主な成分であるである場合、それらの 1 μm 以上の波長での吸収特性は他の物質よりも 2 桁大きくないといけないはずである。従って、光化学物質との混合による影響は重要であると考えられる。

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arXiv:1601.02395
Kiss et al. (2016)
Nereid from space: Rotation, size and shape analysis from Kepler/K2, Herschel and Spitzer observations
(宇宙空間からのネレイド:ケプラー/K2、ハーシェル、スピッツァーの観測による自転・サイズ・形状の分析)

概要

海王星の不規則衛星ネレイド (Nereid) を、ケプラーの K2 ミッションの Campaign 3 で観測した結果について報告する。

観測と解析の結果、ネレイドの自転周期は 11.594 ± 0.017 時間であり、光度変化の振幅は 0.0328 等級であった。これは過去の地上観測で示唆されていた短い自転周期を追認する結果である。2001年の観測結果と 2015年の観測での光度曲線の類似から、現在のネレイドは光度変化が小さい状態での自転状態にあることが判明した。1960年代半ばは、光度変化が大きい状態での自転状態になっていた可能性がある。次の光度変化が大きい状態は、30年程度以内に訪れると考えられる。

また、この 15年の光度曲線の振幅の観測から、ネレイドの形状の推定を行った。その結果、軸の長さの比が 1.3 : 1 という形状であることが示唆され、過去に示唆されていた 1.9 : 1 という長細い形状である可能性は排除された。従って、ネレイドの自転軸は、海王星の潮汐による強制歳差の状態には無いと考えられる。

スピッツァー宇宙望遠鏡とハーシェルの熱放射の観測からも、ネレイドの形状は軸の比が 1.3 : 1 に近いことが示唆され、また粗くクレーターの多い表面であることが判明した。

ネレイドの過去の観測について

ネレイドは、比較的大きい (~ 350 km) サイズを持ち、海王星周りを非常に大きな軌道離心率をもった傾いた軌道で公転している不規則衛星である (Dobrovolskis 1995, Jacobson 2009)。ネレイドの軌道の特徴はよく調べられているが、形状や形状軸の配置、自転周期などはよく分かっていない。観測する夜毎に明るさの変動が存在する、年スケールの明るさの変動が存在するなどの報告もあり、詳細は Schaefer et al. (2008) にまとめられている。

Schaefer et al. (2008) では、年ごとの光度の変化は、ネレイドの自転軸の歳差運動によるものだとしている。ある年はネレイドの軸は地球の方向を向いており、別の時には視線方向に垂直な方向を向いているということである。これは、非球対称の形状をしているネレイドにはたらく海王星の潮汐力による、強制的な歳差運動によって実現される。観測を説明するためには、ネレイドの形状は軸長の比にして 1.9 : 1 かそれ以上という長細い形状である必要がある。

Hesselbrock et al. (2013)では、Schaefer et al. (2008)と同様の、しかし更に小さい天体の効果 (特に海王星の衛星トリトンの効果) を含めた解析を行った。その結果、ネレイドは三軸楕円体 (triaxial ellipsoid) の形状をしており、軸の比はそれぞれ c/a ~ 0.5, b/a ~ 0.6 が最も観測とよく合うとした。また、初期の傾斜角は ~ 60°、初期自転周期は 144時間であるとした。さらに、ネレイドの c 軸のアスペクト角の値によって、~ 90°の時は "active"、~ 0°の時は "inactive" な時期があると予測した。
この結果は、定性的には Schaefer et al. (2008)と合うが、輝度レベルには違いがある。この違いについて、Hesselbrock et al. (2013)ではネレイド表面の不均一なアルベドによるものとしている。


ネレイドの実際の形状は、ここでの話に重要であるが詳細は不明である。ボイジャー2号の観測では、サイズは 350 ± 50 km という結果を得ている (Thomas et al. 1991)。この時の観測では一定のレベルで空間分解は出来ているが、形状の決定をするためにはデータの質が悪い。

2001年8月と 2002年8月の地上からの観測では、自転周期は短く 11.52時間、光度変化の振幅は 0.029等級という結果が得られている (Grav et al. 2003)。後に、2008年の地上観測の結果を元にして 11.50時間、0.031等級という非常に近い結果が得られている (Terai & Itoh 2013)。

地上観測からはあまりよく制限を付けられていないのが現状である。宇宙空間からの観測ではどうだろうか?
海王星はケプラーの K2 ミッションの Campaign 3 の期間中に観測範囲に入る。海王星の衛星ネレイドも同様である。従って、ケプラーによってネレイドの光度変化の観測を行うことが可能になる。さらに過去のスピッツァー宇宙望遠鏡とハーシェルによる赤外線観測のデータを取得して解析も行った。スピッツァー宇宙望遠鏡とハーシェルでは、24 - 160 μm の中間赤外線・遠赤外線のデータが得られている。これはネレイドからの熱放射の観測に対応する。

観測・解析結果

K2 データの解析から、自転周期は 2001年と 2008年の地上観測の結果と整合的であった。光度変動の振幅についても同様である。現在は光度変化の振幅が小さく見える状態にあるが、数十年前は光度変化が大きかった可能性が示唆された。

また、非常に細長い形状である可能性は排除され、軸長の比にして 1.3 : 1 というゆるやかに潰れた形状であることが示唆された。この軸長の比では、海王星の潮汐力によって強制的な歳差運動の状態には入らないと考えられる。

また赤外線データを、NEATM (Near-Earth Asteroid Thermal Model) (Harris 1998) と TPM (thermophysical model) (Lagerros 1996など) のモデルを用いて解析した結果、サイズは 335 - 345 km、幾何学的アルベドは 0.25 - 0.27、また表面の粗雑さが大きいことが判明した。粗雑さを表す roughness は ~ 0.9 程度である。そのため、ネレイドの表面には深いクレーターが多数存在すると考えられる。

光度曲線と熱放射からは、ネレイドの形状は 1.3 : 1 程度の軸長比であると推測される。また現在の自転軸のアスペクト角は ~ 30°である。この形状は、数十年前に報告されていた大きな光度曲線の振幅を部分的に説明できるだろうと考えられる。






ケプラーは系外惑星を検出するための探査機ですが、これを用いて太陽系内小天体の観測を行ったという興味深い結果です。

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