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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1601.00789
Forgan & Dobos (2016)
Exomoon Climate Models with the Carbonate-Silicate Cycle and Viscoelastic Tidal Heating
(炭酸塩-ケイ酸塩循環と粘弾性潮汐加熱を考慮した系外衛星の気候モデル)
過去の解析的な計算によると、惑星周りのハビタブルゾーンは内縁だけが存在し、外縁は存在しないとされている。この場合、外縁は衛星軌道の安定性というエネルギーバランスとは別の要素によって決まる。しかし後の経度方向の一次元の気候モデルでは、惑星による中心星の食と、アイス・アルベド・フィードバック (ice-albedo feedback) の複合的な効果によって、惑星周りのハビタブルゾーンに外縁が作られることが示された。ただしこの外縁は実際に存在するものなのか、それとも気候モデルの簡単化に起因するアーティファクトかは不明である。
ここでは、炭酸塩-ケイ酸塩の循環 (carbonate-silicate cycle) と、粘弾性潮汐加熱 (viscoelastic tidal heating) の両方の効果を含んだ、改善された一次元モデルを用いた。このモデルで、恒星周りのハビタブルゾーンと惑星周りのハビタブルゾーンについて、パラメータサーベイを行った。
その結果、惑星周りのハビタブルゾーンは、系外衛星の軌道が惑星の公転軌道に比べて傾いていない場合は外縁が存在する事が示された。
衛星の軌道傾斜角が小さい場合、惑星による中心星の食の頻度が高くなり (つまり日光が遮られる頻度が大きくなり)、全球凍結状態になりやすくなる。そのため、惑星からの距離が大きく、潮汐加熱や惑星からの照り返しが弱くなっている状態ではより全球凍結状態へ移行しやすくなる。そのため、惑星周りのハビタブルゾーンに外縁が生じる。
軌道傾斜角が大きくなると食の頻度も下がるため、惑星周りのハビタブルゾーンの外縁も消失する。また、惑星に近づき過ぎると潮汐加熱や照り返しの効果が大きくなり、高温の衛星となってしまう。
また、炭酸塩-ケイ酸塩の循環によって、惑星周りのハビタブルゾーンは外側へ拡大する。これは、二酸化炭素分圧が上昇することによって温室効果が増大する事が原因である。
また、従来の固定された潮汐の Q 値のモデルに対し、粘弾性潮汐加熱の効果はハビタブルゾーンを広げる効果がある。さらに、固体成分が溶けることによる加熱効果の減少により、大きな軌道離心率を持つ系外衛星でもハビタブルな環境になることが出来る。また、恒星周りのハビタブルゾーンと惑星周りのハビタブルゾーンの双方の内縁を内側へ広げる効果がある。
アイス・アルベド・フィードバック (ice-albedo feedback) と言うのは、気候の変化における星のフィードバック効果のことです。何らかの原因で天体表面を氷が覆う面積が増えると、日光をよく反射するようになり (=アルベドが大きくなり)、平衡温度が低下します。温度が低下することによってさらに氷の面積が増え、それによってアルベドがさらに大きくなり…というように、最終的に全体が氷に覆われた全球凍結状態になるまでフィードバックが続きます。
これも逆のフィードバックも発生します (氷面積が減少→アルベドが減少→平衡温度上昇→氷面積が減少)。
地球もかつてこの効果によって、全球凍結状態 (スノーボール・アース) に何度かなったと考えられています。
それにしても、衛星の軌道傾斜角が小さい場合は惑星が日光を遮りやすくなるため全球凍結状態になりやすく、さらに惑星から離れると潮汐加熱と照り返しの加熱が少なくなるため全球凍結状態にさらになりやすくなるため、惑星周りのハビタブルゾーンに外縁が生じるというのは面白い話。
arXiv:1601.00789
Forgan & Dobos (2016)
Exomoon Climate Models with the Carbonate-Silicate Cycle and Viscoelastic Tidal Heating
(炭酸塩-ケイ酸塩循環と粘弾性潮汐加熱を考慮した系外衛星の気候モデル)
概要
地球と同様な特徴を持つ系外衛星 (exomoon) のハビタブルゾーンは、地球に類似した系外惑星のハビタブルゾーンと比較すると単純ではない。系外衛星の場合は、惑星の潮汐力による潮汐加熱と、惑星による恒星の食と惑星からの照り返しを含めたエネルギーバランスを考慮して、恒星周りのハビタブルゾーン (circumstellar habitable zone) と惑星周りのハビタブルゾーン (circumplanetary habitable zone) の両方を考慮する必要がある。過去の解析的な計算によると、惑星周りのハビタブルゾーンは内縁だけが存在し、外縁は存在しないとされている。この場合、外縁は衛星軌道の安定性というエネルギーバランスとは別の要素によって決まる。しかし後の経度方向の一次元の気候モデルでは、惑星による中心星の食と、アイス・アルベド・フィードバック (ice-albedo feedback) の複合的な効果によって、惑星周りのハビタブルゾーンに外縁が作られることが示された。ただしこの外縁は実際に存在するものなのか、それとも気候モデルの簡単化に起因するアーティファクトかは不明である。
ここでは、炭酸塩-ケイ酸塩の循環 (carbonate-silicate cycle) と、粘弾性潮汐加熱 (viscoelastic tidal heating) の両方の効果を含んだ、改善された一次元モデルを用いた。このモデルで、恒星周りのハビタブルゾーンと惑星周りのハビタブルゾーンについて、パラメータサーベイを行った。
その結果、惑星周りのハビタブルゾーンは、系外衛星の軌道が惑星の公転軌道に比べて傾いていない場合は外縁が存在する事が示された。
衛星の軌道傾斜角が小さい場合、惑星による中心星の食の頻度が高くなり (つまり日光が遮られる頻度が大きくなり)、全球凍結状態になりやすくなる。そのため、惑星からの距離が大きく、潮汐加熱や惑星からの照り返しが弱くなっている状態ではより全球凍結状態へ移行しやすくなる。そのため、惑星周りのハビタブルゾーンに外縁が生じる。
軌道傾斜角が大きくなると食の頻度も下がるため、惑星周りのハビタブルゾーンの外縁も消失する。また、惑星に近づき過ぎると潮汐加熱や照り返しの効果が大きくなり、高温の衛星となってしまう。
また、炭酸塩-ケイ酸塩の循環によって、惑星周りのハビタブルゾーンは外側へ拡大する。これは、二酸化炭素分圧が上昇することによって温室効果が増大する事が原因である。
また、従来の固定された潮汐の Q 値のモデルに対し、粘弾性潮汐加熱の効果はハビタブルゾーンを広げる効果がある。さらに、固体成分が溶けることによる加熱効果の減少により、大きな軌道離心率を持つ系外衛星でもハビタブルな環境になることが出来る。また、恒星周りのハビタブルゾーンと惑星周りのハビタブルゾーンの双方の内縁を内側へ広げる効果がある。
アイス・アルベド・フィードバック (ice-albedo feedback) と言うのは、気候の変化における星のフィードバック効果のことです。何らかの原因で天体表面を氷が覆う面積が増えると、日光をよく反射するようになり (=アルベドが大きくなり)、平衡温度が低下します。温度が低下することによってさらに氷の面積が増え、それによってアルベドがさらに大きくなり…というように、最終的に全体が氷に覆われた全球凍結状態になるまでフィードバックが続きます。
これも逆のフィードバックも発生します (氷面積が減少→アルベドが減少→平衡温度上昇→氷面積が減少)。
地球もかつてこの効果によって、全球凍結状態 (スノーボール・アース) に何度かなったと考えられています。
それにしても、衛星の軌道傾斜角が小さい場合は惑星が日光を遮りやすくなるため全球凍結状態になりやすく、さらに惑星から離れると潮汐加熱と照り返しの加熱が少なくなるため全球凍結状態にさらになりやすくなるため、惑星周りのハビタブルゾーンに外縁が生じるというのは面白い話。
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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1601.00821
Pinotti & Boechat-Roberty (2016)
Molecular formation along the atmospheric mass loss of HD 209458 b and similar Hot Jupiters
(HD 209458b とそれに類似したホットジュピターの大気散逸における分子形成)
ここでは、温度が低い領域 (2000 K 未満) での化学反応を調べるため、HD 209458b の大気の一次元の化学・光化学反応のモデルを改良した。このモデルは、炭素鎖や酸素を含有する分子を含む、56 の化学種、566 の化学反応を含んでいる。
計算の結果、OH+、H2O+、H3O+といった単純な分子は形成された。分子は、動径方向の距離にして 107 km 内で形成・破壊されるが、合計の柱密度としては、水素分子のトレーサー候補である OH+ は検出可能なレベルであった。検出が達成された場合、ホットジュピターの高層大気モデルの見直しになるだろう。
また、HD 209458b よりも弱い XUV の輻射を受けている低密度のホットジュピターの場合、これらの分子種はより大きな柱密度になると考えられる。
arXiv:1601.00821
Pinotti & Boechat-Roberty (2016)
Molecular formation along the atmospheric mass loss of HD 209458 b and similar Hot Jupiters
(HD 209458b とそれに類似したホットジュピターの大気散逸における分子形成)
概要
ホットジュピターからの散逸していく大気中での化学は、一般にはシンプルであると考えられている。散逸していく大気は主に原子で構成され、中心星からの強い輻射は、複雑な分子が形成するのを阻害する。ここでは、温度が低い領域 (2000 K 未満) での化学反応を調べるため、HD 209458b の大気の一次元の化学・光化学反応のモデルを改良した。このモデルは、炭素鎖や酸素を含有する分子を含む、56 の化学種、566 の化学反応を含んでいる。
計算の結果、OH+、H2O+、H3O+といった単純な分子は形成された。分子は、動径方向の距離にして 107 km 内で形成・破壊されるが、合計の柱密度としては、水素分子のトレーサー候補である OH+ は検出可能なレベルであった。検出が達成された場合、ホットジュピターの高層大気モデルの見直しになるだろう。
また、HD 209458b よりも弱い XUV の輻射を受けている低密度のホットジュピターの場合、これらの分子種はより大きな柱密度になると考えられる。
論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1601.00069
Komacek & Showman (2016)
Atmospheric Circulation of Hot Jupiters: Dayside-Nightside Temperature Differences
(ホットジュピターの大気循環:昼側と夜側の温度差)
この解析的理論は、波の経度方向の伝播がホットジュピター大気内での昼側と夜側の温度差をコントロールしていることを示している。これは、地球の熱帯の熱的構造を決めている wave adjustment system を類似したメカニズムである。
これらの波動は、ホットジュピターの大気中で、輻射冷却や摩擦抵抗によって減衰される。摩擦抵抗の源としては、背景の惑星磁場による、部分的に電離した大気中でのローレンツ力が候補として考えられる。この力が存在した場合、惑星の有効温度が高い場合ほど摩擦力の効果は大きくなる。さらに、輻射加熱と輻射冷却の振幅も、有効温度が高い場合に大きくなる。従って、輻射加熱・冷却と大気中での摩擦抵抗が、有効温度が高い場合により効果的に波動を減衰させる。
解析とシミュレーション共に、輻射加熱・冷却の効果が、昼側と夜側の温度差を産み出す原因としてもっとも重要であるという結果を得た。摩擦抵抗の効果は、これがコリオリの力よりも大きい時のみ重要である。結果として、ホットジュピター大気の昼側と夜側の温度差は、主星からの輻射が強くなるほど大きくなり、ガスの圧力が大きいところで小さくなる。
arXiv:1601.00069
Komacek & Showman (2016)
Atmospheric Circulation of Hot Jupiters: Dayside-Nightside Temperature Differences
(ホットジュピターの大気循環:昼側と夜側の温度差)
概要
軌道離心率の小さいホットジュピターの、全軌道位相曲線の赤外線での観測からは、惑星の平衡温度が高いほど昼夜間の輝度温度が大きくなる傾向があることが分かっている。ここでは、三次元シミュレーションからこの傾向の説明を試みる。特に、潮汐固定された惑星の大気中での熱の再分配をコントロールしているプロセスに着目した。ここで用いた三次元モデルは、惑星の有効温度や大気組成の違い、また大気の摩擦抵抗の効果を含んでいる。この解析的理論は、波の経度方向の伝播がホットジュピター大気内での昼側と夜側の温度差をコントロールしていることを示している。これは、地球の熱帯の熱的構造を決めている wave adjustment system を類似したメカニズムである。
これらの波動は、ホットジュピターの大気中で、輻射冷却や摩擦抵抗によって減衰される。摩擦抵抗の源としては、背景の惑星磁場による、部分的に電離した大気中でのローレンツ力が候補として考えられる。この力が存在した場合、惑星の有効温度が高い場合ほど摩擦力の効果は大きくなる。さらに、輻射加熱と輻射冷却の振幅も、有効温度が高い場合に大きくなる。従って、輻射加熱・冷却と大気中での摩擦抵抗が、有効温度が高い場合により効果的に波動を減衰させる。
解析とシミュレーション共に、輻射加熱・冷却の効果が、昼側と夜側の温度差を産み出す原因としてもっとも重要であるという結果を得た。摩擦抵抗の効果は、これがコリオリの力よりも大きい時のみ重要である。結果として、ホットジュピター大気の昼側と夜側の温度差は、主星からの輻射が強くなるほど大きくなり、ガスの圧力が大きいところで小さくなる。
論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1601.00452
Erkaev et al. (2016)
Thermal mass loss of protoplanetary cores with hydrogen-dominated atmospheres: The influences of ionization and orbital distance
(水素主体大気の原始惑星コアの熱的質量散逸:電離と軌道距離の影響)
また、この結果を質量散逸進化によく用いられているエネルギー律速散逸の式による結果と比較した。その結果、エネルギー律速散逸の式は、質量散逸率を大いに過大評価もしくは過小評価することが判明した。どの程度異なるかは、恒星の XUV フラックスと惑星のパラメータ (質量、サイズ、有効温度、XUV 吸収半径) に依存する。
XUV による単位質量あたりの加熱率は、XUV フラックス・水素原子と分子の数密度・XUV 吸収断面積の積に、η をかけた式で表す。ここで η は、恒星からの輻射の吸収と大気のローカルな加熱の比であり、水素大気の場合は典型的には 15%である (Shematovich et al. 2014)。
大気からの赤外線での放射損失においては、H3+の冷却が重要である。しかし、軌道長半径が小さく、また XUV が強い時はこの効果は無視できる。
シミュレーションの内側の境界は、コアの半径 + ホモポーズ (homopause, 均質圏界面) の高さに取っている。この高さは熱圏の下部に対応している。その高度の温度は惑星の有効温度と同一にしている。
スーパーアースや小型の海王星型天体のような低質量の水素主体大気を持つ惑星の場合は、エネルギー律速的な散逸の式では大気散逸率を過大評価することが判明した。惑星の物理半径と XUV 吸収半径を同一とすると、エネルギー律速的な散逸の式は物理的に間違った質量散逸率を導く。低質量の惑星では、 XUV 吸収半径が惑星の物理半径よりもずっと大きくなるからである。
arXiv:1601.00452
Erkaev et al. (2016)
Thermal mass loss of protoplanetary cores with hydrogen-dominated atmospheres: The influences of ionization and orbital distance
(水素主体大気の原始惑星コアの熱的質量散逸:電離と軌道距離の影響)
概要
地球型惑星からの水素大気の散逸率について、現在より 100倍強い軟 X 線と極端紫外線 (XUV) フラックスのもとでの、様々な軌道距離と質量の範囲内における計算を行った。水素大気の散逸率の計算のため、電離、解離、再結合を取り入れたモデルを構築した、大気の輻射吸収とハイドロダイナミックエスケープの 1D モデルを適用した。このモデルを用いて、水素主体大気を持つスーパーアースからの熱的質量散逸における電離、解離、再結合の影響を調べた。また、この結果を質量散逸進化によく用いられているエネルギー律速散逸の式による結果と比較した。その結果、エネルギー律速散逸の式は、質量散逸率を大いに過大評価もしくは過小評価することが判明した。どの程度異なるかは、恒星の XUV フラックスと惑星のパラメータ (質量、サイズ、有効温度、XUV 吸収半径) に依存する。
計算モデル
ここで用いるのは、1D 流体モデルである (Erkaev et al. 2014, 2015, Lammer et al. 2013, 2014)。このモデルでは、流体力学の方程式を数値計算している (質量保存、運動量保存、エネルギー保存の式)。さらに電離の効果を含めるために、中性水素原子、水素イオン、水素分子、水素分子イオンの数密度の連続の式も解いている。XUV による単位質量あたりの加熱率は、XUV フラックス・水素原子と分子の数密度・XUV 吸収断面積の積に、η をかけた式で表す。ここで η は、恒星からの輻射の吸収と大気のローカルな加熱の比であり、水素大気の場合は典型的には 15%である (Shematovich et al. 2014)。
大気からの赤外線での放射損失においては、H3+の冷却が重要である。しかし、軌道長半径が小さく、また XUV が強い時はこの効果は無視できる。
シミュレーションの内側の境界は、コアの半径 + ホモポーズ (homopause, 均質圏界面) の高さに取っている。この高さは熱圏の下部に対応している。その高度の温度は惑星の有効温度と同一にしている。
主な結果
岩石コアが 1 - 5地球質量、軌道長半径が 0.1 - 1 AU の範囲で計算を行った。質量放出率は、1 - 0.1 AU でそれぞれ 108 - 1010 g s-1であった。スーパーアースや小型の海王星型天体のような低質量の水素主体大気を持つ惑星の場合は、エネルギー律速的な散逸の式では大気散逸率を過大評価することが判明した。惑星の物理半径と XUV 吸収半径を同一とすると、エネルギー律速的な散逸の式は物理的に間違った質量散逸率を導く。低質量の惑星では、 XUV 吸収半径が惑星の物理半径よりもずっと大きくなるからである。
論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1512.09342
Wong et al. (2015)
3.6 and 4.5 μm Spitzer Phase Curves of the Highly-Irradiated Hot Jupiters WASP-19b and HAT-P-7b
(強い日射を受けているホットジュピター WASP-19b と HAT-P-7b のスピッツァーによる 3.6, 4.5 μm での位相曲線)
WASP-19b は、二次食 (secondary eclipse) の深さは、3.6, 4.5 μm でそれぞれ 0.485%, 0.584%であった。これは、2372 K の単一の黒体放射と整合的な値である。
HAT-P-7b は同じく 0.156%, 0.190%であった。これは 2667 K の単一の黒体放射に対応している。
得られた位相曲線を、1次元と 3次元の大気モデルと比較した。その結果、WASP-19b の昼側からの放射からは、温度逆転層が存在しないモデルと整合的であるという結果が得られた。また、穏やかかつ効率的な昼夜間の大気循環を起こしているモデルと整合的であった。さらに、東方向にシフトしたホットスポットが検出され、これは赤道ジェットが存在してスーパーローテーション的な大気循環が起きていることを示唆している。
対照的に、HAT-P-7b は昼側からの放射より、温度逆転層が存在するモデルと整合的な結果となった。また、昼夜間の大気循環は比較的非効率的であることが示唆される。さらに、ホットスポットの恒星直下点とのズレは検出されなかった。
さらに両惑星において、昼側の放射の観測結果と整合的なモデルは、夜側からの放射の観測結果を説明することが出来なかった。この大気モデルと観測結果の比較のズレは、WASP-19b においては夜側の高高度にあるシリケイトの雲の存在か、大気の金属量が多いこと (またはその両方) が引き起こしていると考えられる。HAT-P-7b においては、3.6 μm で夜側の放射がモデル予測よりも暗いのは、全球的に C/O 比が大きくなっていることが原因と考えられる。
惑星のボンドアルベドは、WASP-19b はゼロと整合的で、1 σ で < 0.08 である。HAT-P-7b は 0.38 である。
熱的な位相曲線が測定されている他の系外惑星と比較すると、この 2つの惑星は、日射量が多い惑星では昼側から夜側への熱の再分配の効率が低いという全体的な傾向と合致している。
このような観測例がの増加によって様々なことがわかりつつある。その一例が、位相曲線の観測から、惑星の昼側と夜側の放射強度を比較する事が出来る。様々な観測から、惑星が受ける日射が強いほど、昼夜間の温度差が大きいことが分かっている (Perez-Becker & Showman 2013)。この傾向は、Cowan & Agol (2011) による昼側からの放射の解析結果とも整合的である。すなわち、多くの強い日射を受けている惑星は、系統的に昼側から夜側への熱の循環が非効率的であるということである。
この日射強度と昼夜間の熱循環効率の反相関関係は、大気の流体力学モデルでも再現されている (Perna et al. 2012, Perez-Becker & Showman 2013)。
また、ボンドアルベドの分布についても調べられている。Wong et al. (2015)では、Schwartz & Cowan (2015)の手法に従い、ボンドアルベドが2つのモードを持つことを示した。重い (7 - 10木星質量) ホットジュピターの場合はボンドアルベドはほぼ 0、その他の軽いホットジュピターの場合は大きくなる。
ここでは、さらに 2つのホットジュピターの位相曲線を得た。
WASP-19b は、1.15木星質量 (Hebb et al. 2010)、G8型星のまわりを 0.789日 (Tregloan-Reed et al. 2013)で公転するホットジュピターである。
HAT-P-7b は、1.78木星質量 (Pa ́l et al. 2008)、F8型星のまわりを 2.20日 (Morris et al. 2013)で公転する。
どちらもほぼ円軌道であり、受けている日射量も近く、重力も同程度である。照射温度 (irradiation temperature) はそれぞれ 3000 K, 3200 Kであり、最も強く日射を受けているホットジュピターである。
質量:0.96太陽質量
半径:0.94太陽半径
金属量:[Fe/H] = 0.15 dex
有効温度:5568 K
・WASP-19b
軌道周期:0.78883942日
質量:1.15木星質量
半径:1.31木星半径
軌道長半径:0.0165 AU
軌道離心率:0.0024
照射温度:3000 K
平衡温度:2520 K
・HAT-P-7
質量:1.47太陽質量
半径:1.84太陽半径
金属量:[Fe/H] = 0.15 dex
有効温度:6441 K
・HAT-P-7b
軌道周期:2.204737日
質量:1.78木星質量
半径:1.36木星半径
軌道長半径:0.0377 AU
軌道離心率:0.0055
照射温度:3210 K
平衡温度:2700 K
※平衡温度は、ボンドアルベドを 0 とし、昼側からのみ熱放射をしていると仮定
WASP-19b では、二次食の深さは同じくスピッツァー宇宙望遠鏡で観測された Anderson et al. (2013)の結果と概ね一致した。また昼側の大気輝度は、両バンドにおいて有効温度が 2372 K である場合と整合的であった。
HAT-P-7b では、昼側の有効温度が 2667 K とするものと整合的であった。
これらの観測結果から両惑星の軌道のパラメータのアップデートも行い、軌道周期はそれぞれ 0.788838989 ± 0.000000040 日、2.2047372 ± 0.0000011 日となった。
WASP-19b の昼側からの放射光観測からは、大気の温度逆転層が存在しないというモデルと整合的であるということが分かった。また、昼側から夜側への熱の輸送は比較的効率的である。さらに、恒星直下点から東側にずれた位置に、最も温度が高いホットスポットがあることが判明した。これは GCM の予言と整合的であり、大気はスーパーローテーション的な赤道ジェットを持つことが示唆される。
惑星夜側の惑星・恒星のフラックス比は、太陽組成・熱化学平衡を仮定したモデルではうまく再現されなかった。代わりに、有効温度 1090 K の黒体放射と整合的であった。この結果は、夜側には大気の高い位置にシリケイトの雲が存在するか、大気の金属量が太陽組成よりも多い (あるいはこの両方) によって説明可能であると予想される。例として、後者の場合は太陽組成の 5倍の金属量を仮定するとよく一致する。
一方 HAT-P-7b の方は対照的に、惑星昼側からの放射光観測は、温度逆転層が存在するモデルと整合的であった。また、昼側から夜側への循環は非効率的である。さらに、ホットスポットの恒星直下点からのずれは検出されなかった。
加えて、夜側からの放射は、1D, 3D モデル共に合致しなかった。特に 3.6 μm でのフラックスが低かった。これは、この波長での大気のオパシティが大きいことを示唆し、C/O 比が太陽組成より大きくなっていると考えられる。
惑星の C/O 比の測定は現段階では不可能であるが、恒星の値を測定することは可能である。HAT-P-7 は太陽に近い金属量を持っている ({Fe/H} = 0.16 dex) (Torres et al. 2012)。従って、統計的には HAT-P-7b は高い C/O 比は持たないと予想される (Teske et al. 2014)。
しかし惑星形成段階においては、形成や軌道移動のプロセスによっては広い範囲の C/O 比を取り得る。これは主に、惑星が大気を獲得したガス円盤の領域によって変わる (Oberg et al. 2011など)。
これらの結果については、今後のハッブル宇宙望遠鏡などでの観測で組成の解明が期待される。また、非太陽組成での化学や非平衡化学、雲の影響も取り入れた GCM の発展も期待される。
arXiv:1512.09342
Wong et al. (2015)
3.6 and 4.5 μm Spitzer Phase Curves of the Highly-Irradiated Hot Jupiters WASP-19b and HAT-P-7b
(強い日射を受けているホットジュピター WASP-19b と HAT-P-7b のスピッツァーによる 3.6, 4.5 μm での位相曲線)
概要
スピッツァー宇宙望遠鏡を用いて、トランジットを起こすホットジュピター WASP-18b, HAT-P-7b の全軌道位相曲線を、3.6, 4.5 μm で観測した。WASP-19b は、二次食 (secondary eclipse) の深さは、3.6, 4.5 μm でそれぞれ 0.485%, 0.584%であった。これは、2372 K の単一の黒体放射と整合的な値である。
HAT-P-7b は同じく 0.156%, 0.190%であった。これは 2667 K の単一の黒体放射に対応している。
得られた位相曲線を、1次元と 3次元の大気モデルと比較した。その結果、WASP-19b の昼側からの放射からは、温度逆転層が存在しないモデルと整合的であるという結果が得られた。また、穏やかかつ効率的な昼夜間の大気循環を起こしているモデルと整合的であった。さらに、東方向にシフトしたホットスポットが検出され、これは赤道ジェットが存在してスーパーローテーション的な大気循環が起きていることを示唆している。
対照的に、HAT-P-7b は昼側からの放射より、温度逆転層が存在するモデルと整合的な結果となった。また、昼夜間の大気循環は比較的非効率的であることが示唆される。さらに、ホットスポットの恒星直下点とのズレは検出されなかった。
さらに両惑星において、昼側の放射の観測結果と整合的なモデルは、夜側からの放射の観測結果を説明することが出来なかった。この大気モデルと観測結果の比較のズレは、WASP-19b においては夜側の高高度にあるシリケイトの雲の存在か、大気の金属量が多いこと (またはその両方) が引き起こしていると考えられる。HAT-P-7b においては、3.6 μm で夜側の放射がモデル予測よりも暗いのは、全球的に C/O 比が大きくなっていることが原因と考えられる。
惑星のボンドアルベドは、WASP-19b はゼロと整合的で、1 σ で < 0.08 である。HAT-P-7b は 0.38 である。
熱的な位相曲線が測定されている他の系外惑星と比較すると、この 2つの惑星は、日射量が多い惑星では昼側から夜側への熱の再分配の効率が低いという全体的な傾向と合致している。
研究背景
惑星が恒星の周りを公転することで、惑星大気での反射光や惑星自身の放射光の見え方の変動が起こり、またトランジットや二次食を起こすことでの中心星の減光も発生する。この軌道の位相曲線が観測された例はこれまで 13 例にのぼる。このうち、多波長で観測されたものは 6 例に留まっている。HD 209458b (Knutson et al. 2012)、WASP-12b (Cowan et al. 2012)、WASP-18b (Maxted et al. 2013)、HAT-P-2b (Lewis et al. 2013)、WASP-43b (Stevenson et al. 2014)、WASP-14b (Wong et al. 2015)である。このうち、WASP-43b 以外は、スピッツァー宇宙望遠鏡による赤外線領域での観測である。このような観測例がの増加によって様々なことがわかりつつある。その一例が、位相曲線の観測から、惑星の昼側と夜側の放射強度を比較する事が出来る。様々な観測から、惑星が受ける日射が強いほど、昼夜間の温度差が大きいことが分かっている (Perez-Becker & Showman 2013)。この傾向は、Cowan & Agol (2011) による昼側からの放射の解析結果とも整合的である。すなわち、多くの強い日射を受けている惑星は、系統的に昼側から夜側への熱の循環が非効率的であるということである。
この日射強度と昼夜間の熱循環効率の反相関関係は、大気の流体力学モデルでも再現されている (Perna et al. 2012, Perez-Becker & Showman 2013)。
また、ボンドアルベドの分布についても調べられている。Wong et al. (2015)では、Schwartz & Cowan (2015)の手法に従い、ボンドアルベドが2つのモードを持つことを示した。重い (7 - 10木星質量) ホットジュピターの場合はボンドアルベドはほぼ 0、その他の軽いホットジュピターの場合は大きくなる。
ここでは、さらに 2つのホットジュピターの位相曲線を得た。
WASP-19b は、1.15木星質量 (Hebb et al. 2010)、G8型星のまわりを 0.789日 (Tregloan-Reed et al. 2013)で公転するホットジュピターである。
HAT-P-7b は、1.78木星質量 (Pa ́l et al. 2008)、F8型星のまわりを 2.20日 (Morris et al. 2013)で公転する。
どちらもほぼ円軌道であり、受けている日射量も近く、重力も同程度である。照射温度 (irradiation temperature) はそれぞれ 3000 K, 3200 Kであり、最も強く日射を受けているホットジュピターである。
基本パラメータ
・WASP-19質量:0.96太陽質量
半径:0.94太陽半径
金属量:[Fe/H] = 0.15 dex
有効温度:5568 K
・WASP-19b
軌道周期:0.78883942日
質量:1.15木星質量
半径:1.31木星半径
軌道長半径:0.0165 AU
軌道離心率:0.0024
照射温度:3000 K
平衡温度:2520 K
・HAT-P-7
質量:1.47太陽質量
半径:1.84太陽半径
金属量:[Fe/H] = 0.15 dex
有効温度:6441 K
・HAT-P-7b
軌道周期:2.204737日
質量:1.78木星質量
半径:1.36木星半径
軌道長半径:0.0377 AU
軌道離心率:0.0055
照射温度:3210 K
平衡温度:2700 K
※平衡温度は、ボンドアルベドを 0 とし、昼側からのみ熱放射をしていると仮定
観測結果
惑星のパラメータについて
この観測では、両惑星の全位相曲線を初めて観測した。WASP-19b では、二次食の深さは同じくスピッツァー宇宙望遠鏡で観測された Anderson et al. (2013)の結果と概ね一致した。また昼側の大気輝度は、両バンドにおいて有効温度が 2372 K である場合と整合的であった。
HAT-P-7b では、昼側の有効温度が 2667 K とするものと整合的であった。
これらの観測結果から両惑星の軌道のパラメータのアップデートも行い、軌道周期はそれぞれ 0.788838989 ± 0.000000040 日、2.2047372 ± 0.0000011 日となった。
大気モデルとの比較
観測結果を、大気の 1次元輻射輸送モデルと、熱化学平衡と太陽組成気体を仮定している 3次元 general circulation model (GCM) と比較した。WASP-19b の昼側からの放射光観測からは、大気の温度逆転層が存在しないというモデルと整合的であるということが分かった。また、昼側から夜側への熱の輸送は比較的効率的である。さらに、恒星直下点から東側にずれた位置に、最も温度が高いホットスポットがあることが判明した。これは GCM の予言と整合的であり、大気はスーパーローテーション的な赤道ジェットを持つことが示唆される。
惑星夜側の惑星・恒星のフラックス比は、太陽組成・熱化学平衡を仮定したモデルではうまく再現されなかった。代わりに、有効温度 1090 K の黒体放射と整合的であった。この結果は、夜側には大気の高い位置にシリケイトの雲が存在するか、大気の金属量が太陽組成よりも多い (あるいはこの両方) によって説明可能であると予想される。例として、後者の場合は太陽組成の 5倍の金属量を仮定するとよく一致する。
一方 HAT-P-7b の方は対照的に、惑星昼側からの放射光観測は、温度逆転層が存在するモデルと整合的であった。また、昼側から夜側への循環は非効率的である。さらに、ホットスポットの恒星直下点からのずれは検出されなかった。
加えて、夜側からの放射は、1D, 3D モデル共に合致しなかった。特に 3.6 μm でのフラックスが低かった。これは、この波長での大気のオパシティが大きいことを示唆し、C/O 比が太陽組成より大きくなっていると考えられる。
惑星の C/O 比の測定は現段階では不可能であるが、恒星の値を測定することは可能である。HAT-P-7 は太陽に近い金属量を持っている ({Fe/H} = 0.16 dex) (Torres et al. 2012)。従って、統計的には HAT-P-7b は高い C/O 比は持たないと予想される (Teske et al. 2014)。
しかし惑星形成段階においては、形成や軌道移動のプロセスによっては広い範囲の C/O 比を取り得る。これは主に、惑星が大気を獲得したガス円盤の領域によって変わる (Oberg et al. 2011など)。
これらの結果については、今後のハッブル宇宙望遠鏡などでの観測で組成の解明が期待される。また、非太陽組成での化学や非平衡化学、雲の影響も取り入れた GCM の発展も期待される。

