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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1512.05175
Brogi et al. (2015)
Rotation and winds of exoplanet HD 189733 b measured with high-dispersion transmission spectroscopy
(高分散透過光分光観測で測定した系外惑星 HD 189733b の自転と風)
惑星の自転と大気の循環は、大気のスペクトル線を広げ、変形させる効果があり、これは高分散分光観測で検出することができる。ここでは、ホットジュピターである HD 189733bのトランジットを、2.3 μm 周辺で R ~ 105の分解能で観測した。観測に用いたのは、ESO Very Large Telescope (VLT)に搭載されている CRIRES である。
観測結果から、恒星の吸収線と、トランジット時のスペクトル線の変形 (ロシター効果によるもの)を補正した結果、CO と水蒸気の吸収線が透過スペクトル中に検出された。シグナルは、惑星の自転速度 (3.4 km s-1)で最大となった。これは自転周期に直すと 1.7 (+ 2.9, -0.4) 日に対応しており、惑星の軌道周期 2.2日と整合的な値となった。そのため、HD 189733bは潮汐固定されている状態にあるという事が示される。3σ で、惑星の自転周期は 1日よりも長いということが分かった。
昼側から夜側への大気の流れは小さく、-1.7 (+1.1, -1.2) km s-1であった。先行観測のナトリウムの吸収線の青方偏移による測定結果 (8 ± 2 km s-1)と比較すると、これは可視光と赤外線の透過スペクトルでは観測している高度が違うということに対応していると考えられる。そのため、垂直方向に大きな速度シアが存在するのだろうということが考えられる。
この場合、常に日射を受けている側と常に夜になっている側では大きな温度差が存在する。大気の循環はこの温度差を小さくする効果がある。この惑星大気内での熱の再分配と全球的なエネルギーバランスの理解は重要である。
数値計算では、圧力が ~ 1 bar 程度の深い大気では東向きの赤道ジェットが発達することが示されている (Showman et al. 2009など)。この圧力領域は惑星の光球面に相当し、すなわち広範囲の波長での惑星の熱放射に対応している。従って、最も高温な点は、強い赤道ジェットによって恒星直下点 (sub-stellar point)よりもシフトすると考えられる。
より高高度の低圧な領域 (1 mbar 未満)では、風は全ての緯度において昼側から夜側へ、明暗境界線 (terminator)を超えての流れとなる。また、このような高高度での風は、惑星が持つであろう磁場と部分的にイオン化した大気との相互作用による磁場の引きずりによって減衰されると考えられる (Perna et al. 2010)。さらに、大気と内部構造は常に完全に潮汐同期しているとは限らない (Showan & Guillot 2002)。そのため、全球でスーパーローテーションしていたり、自転よりも遅かったりという可能性が可能である。
観測的には、最も惑星表面からの熱放射が強い点が、恒星直下点から東方向にずれているという報告がある (Crossfield et al. 2010, Knutson et al. 2012)。これは惑星の二次食 (secondary eclipse)や位相曲線などから明らかになったことである。
大気の流れに関しては、HD 209458bの昼側から夜側への大気の流れが、スペクトル線の青方偏移 (-2 ± 1 km s-1)から弱く示唆されている (Snellen et al. 2010)。この青方偏移の検出に関しては、惑星軌道の軌道離心率によって引き起こされているという説も存在したが (Montalto et al. 2011)、惑星軌道のパラメータの更新によって排除された (Crossfield et al. 2012, Showman et al. 2013)。
可視光では、HD 289733bの大気の高高度におけるナトリウムの吸収線の青方偏移 (-8 ± 2 km s-1)が示唆されている (Wyttenbach et al. 2015)。また、Snellen et al. (2014)では、直接撮像されている若いガス惑星、がか座ベータ星bのスペクトル線の広がりから、25 km s-1という速い自転速度を示唆している。これは自転周期にすると 8 ± 1 時間というものである。
arXiv:1512.05175
Brogi et al. (2015)
Rotation and winds of exoplanet HD 189733 b measured with high-dispersion transmission spectroscopy
(高分散透過光分光観測で測定した系外惑星 HD 189733b の自転と風)
概要
中心星の近くを公転する惑星は、強い潮汐作用を受ける。そのため、短いタイムスケールで惑星の公転と自転は同期する、いわゆる潮汐固定 (tidal locking)された状態になる。しかしこれまで、ホットジュピターの自転周期は直接観測されたことは無い。また、ホットジュピターの大気は強い東向きのジェット気流によるスーパーローテーションか、高い高度での昼側から夜側への大気の流れ (あるいはこの両方)の風が存在するとかんがえられる。惑星の自転と大気の循環は、大気のスペクトル線を広げ、変形させる効果があり、これは高分散分光観測で検出することができる。ここでは、ホットジュピターである HD 189733bのトランジットを、2.3 μm 周辺で R ~ 105の分解能で観測した。観測に用いたのは、ESO Very Large Telescope (VLT)に搭載されている CRIRES である。
観測結果から、恒星の吸収線と、トランジット時のスペクトル線の変形 (ロシター効果によるもの)を補正した結果、CO と水蒸気の吸収線が透過スペクトル中に検出された。シグナルは、惑星の自転速度 (3.4 km s-1)で最大となった。これは自転周期に直すと 1.7 (+ 2.9, -0.4) 日に対応しており、惑星の軌道周期 2.2日と整合的な値となった。そのため、HD 189733bは潮汐固定されている状態にあるという事が示される。3σ で、惑星の自転周期は 1日よりも長いということが分かった。
昼側から夜側への大気の流れは小さく、-1.7 (+1.1, -1.2) km s-1であった。先行観測のナトリウムの吸収線の青方偏移による測定結果 (8 ± 2 km s-1)と比較すると、これは可視光と赤外線の透過スペクトルでは観測している高度が違うということに対応していると考えられる。そのため、垂直方向に大きな速度シアが存在するのだろうということが考えられる。
背景
ホットジュピターは、0.1 - 100 Myr のタイムスケールで潮汐固定される (Rasio et al. 1996, Marcy et al. 1997)。このタイムスケールは、典型的な系外惑星の年齢よりも十分短いものである。そのため多くのホットジュピターは潮汐固定されていると考えられる。この場合、常に日射を受けている側と常に夜になっている側では大きな温度差が存在する。大気の循環はこの温度差を小さくする効果がある。この惑星大気内での熱の再分配と全球的なエネルギーバランスの理解は重要である。
数値計算では、圧力が ~ 1 bar 程度の深い大気では東向きの赤道ジェットが発達することが示されている (Showman et al. 2009など)。この圧力領域は惑星の光球面に相当し、すなわち広範囲の波長での惑星の熱放射に対応している。従って、最も高温な点は、強い赤道ジェットによって恒星直下点 (sub-stellar point)よりもシフトすると考えられる。
より高高度の低圧な領域 (1 mbar 未満)では、風は全ての緯度において昼側から夜側へ、明暗境界線 (terminator)を超えての流れとなる。また、このような高高度での風は、惑星が持つであろう磁場と部分的にイオン化した大気との相互作用による磁場の引きずりによって減衰されると考えられる (Perna et al. 2010)。さらに、大気と内部構造は常に完全に潮汐同期しているとは限らない (Showan & Guillot 2002)。そのため、全球でスーパーローテーションしていたり、自転よりも遅かったりという可能性が可能である。
観測的には、最も惑星表面からの熱放射が強い点が、恒星直下点から東方向にずれているという報告がある (Crossfield et al. 2010, Knutson et al. 2012)。これは惑星の二次食 (secondary eclipse)や位相曲線などから明らかになったことである。
大気の流れに関しては、HD 209458bの昼側から夜側への大気の流れが、スペクトル線の青方偏移 (-2 ± 1 km s-1)から弱く示唆されている (Snellen et al. 2010)。この青方偏移の検出に関しては、惑星軌道の軌道離心率によって引き起こされているという説も存在したが (Montalto et al. 2011)、惑星軌道のパラメータの更新によって排除された (Crossfield et al. 2012, Showman et al. 2013)。
可視光では、HD 289733bの大気の高高度におけるナトリウムの吸収線の青方偏移 (-8 ± 2 km s-1)が示唆されている (Wyttenbach et al. 2015)。また、Snellen et al. (2014)では、直接撮像されている若いガス惑星、がか座ベータ星bのスペクトル線の広がりから、25 km s-1という速い自転速度を示唆している。これは自転周期にすると 8 ± 1 時間というものである。
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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1512.04341
Sing et al. (2015)
A continuum from clear to cloudy hot-Jupiter exoplanets without primordial water depletion
(初期に水が欠乏していないホットジュピターの雲無しから雲有り大気への連続性)
しかしこの水の欠乏が発生するかどうかは不明瞭である。また、可視光での観測から、ホットジュピターの大気中に雲やもや (haze)が存在することによる、スペクトルの特徴の不明瞭化による可能性もある。
ここでは、0.3 - 5 μmの波長域で 10個のホットジュピターの比較研究を行った。この波長域では、可視光での散乱と、赤外線の分子吸収を分光学的に観測することが出来る。その結果、雲が無い晴れ渡った大気から雲に覆われた大気まで、連続的な分布を持つ様々なホットジュピターの大気特性が明らかになった。
また、可視光領域と赤外線領域での見かけの惑星半径の違いが、異なる大気のタイプを区別するための良い基準となり得ることが分かった。この大気のタイプの違いは、水のスペクトル強度と相関がある。雲のない晴れた大気では強い水の吸収が見られ、雲やもやがある場合は最も弱い吸収の特徴を示す。
この結果は、惑星形成時から原始惑星系円盤内で水が欠乏していたというモデルには否定的である。水の弱い吸収は、水の存在量が少ないのではなく、雲ともやによるものであることを示唆する。
また WASP-31b, HAT-P-1b はWide Field Camera 3 (WFC3) を用いて近赤外線 (1.1 - 1.7 μm)でも観測を行った。また別の WFC3 プログラムで、WASP-12b, WASP-17b, WASP-19b, HAT-P-12b の観測も行った。これらのハッブル宇宙望遠鏡でのサーベイは、スピッツァー宇宙望遠鏡の Infrared Array Camera (IRAC)で補完を行った (3.6, 4.5 μm)。
これらの結果を、ハッブル宇宙望遠鏡とスピッツァー宇宙望遠鏡で最も良く知られている系外惑星である 2つのホットジュピター、HD 209458b と HD 189733b を合わせ、計 10個の惑星について解析を行った。
WASP-39b は強いアルカリ金属の吸収と、スペクトル線の圧力による広がり (pressure broadening wing)を持つ。しかし WASP-31b は強い吸収を持つものの、スペクトル線の広がりは狭かった。これは吸収が起きている場所の圧力が低いことを意味する。
WFC3で観測した 8個の惑星のうち、5個で水を検出した。しかし強度はまちまちであり、WASP-31b のようにほぼ検出されなかった例も存在する。
arXiv:1512.04341
Sing et al. (2015)
A continuum from clear to cloudy hot-Jupiter exoplanets without primordial water depletion
(初期に水が欠乏していないホットジュピターの雲無しから雲有り大気への連続性)
概要
これまでに数千個の系外惑星が発見されているが、大気の分析がされているものはごく一部であり、また波長の範囲も狭い (1.1 - 1.7 μm)。最近の観測では、いくつかのホットジュピターは予想されていたよりも水の吸収が近赤外線領域で弱いという結果が報告されている。水による吸収の特徴が弱いのは、水の存在度が低いということを意味する。恐らく、原始惑星系円盤の惑星が形成されている場所で水が欠乏していたことを意味する。しかしこの水の欠乏が発生するかどうかは不明瞭である。また、可視光での観測から、ホットジュピターの大気中に雲やもや (haze)が存在することによる、スペクトルの特徴の不明瞭化による可能性もある。
ここでは、0.3 - 5 μmの波長域で 10個のホットジュピターの比較研究を行った。この波長域では、可視光での散乱と、赤外線の分子吸収を分光学的に観測することが出来る。その結果、雲が無い晴れ渡った大気から雲に覆われた大気まで、連続的な分布を持つ様々なホットジュピターの大気特性が明らかになった。
また、可視光領域と赤外線領域での見かけの惑星半径の違いが、異なる大気のタイプを区別するための良い基準となり得ることが分かった。この大気のタイプの違いは、水のスペクトル強度と相関がある。雲のない晴れた大気では強い水の吸収が見られ、雲やもやがある場合は最も弱い吸収の特徴を示す。
この結果は、惑星形成時から原始惑星系円盤内で水が欠乏していたというモデルには否定的である。水の弱い吸収は、水の存在量が少ないのではなく、雲ともやによるものであることを示唆する。
観測
ハッブル宇宙望遠鏡を用いて、WASP-6b, WASP-12b, WASP-17b, WASP-19b, WASP-31b, WASP-39b, HAT-P-1b, HAT-P-12bの 8個のホットジュピターを観測した。これらの惑星は、表面温度、表面重力、質量、半径において様々な値を持つ。Space Telelscope Imaging Spectrograph (STIS)を用いて、0.3 - 1.01 μm の全可視領域で観測を行った。また WASP-31b, HAT-P-1b はWide Field Camera 3 (WFC3) を用いて近赤外線 (1.1 - 1.7 μm)でも観測を行った。また別の WFC3 プログラムで、WASP-12b, WASP-17b, WASP-19b, HAT-P-12b の観測も行った。これらのハッブル宇宙望遠鏡でのサーベイは、スピッツァー宇宙望遠鏡の Infrared Array Camera (IRAC)で補完を行った (3.6, 4.5 μm)。
これらの結果を、ハッブル宇宙望遠鏡とスピッツァー宇宙望遠鏡で最も良く知られている系外惑星である 2つのホットジュピター、HD 209458b と HD 189733b を合わせ、計 10個の惑星について解析を行った。
結果
様々な惑星において、ナトリウム、カリウム、水などのスペクトルの特徴が検出された。また可視光領域での散乱のスペクトルスロープも確認された (WASP-6b, HAT-P-12b)。WASP-39b は強いアルカリ金属の吸収と、スペクトル線の圧力による広がり (pressure broadening wing)を持つ。しかし WASP-31b は強い吸収を持つものの、スペクトル線の広がりは狭かった。これは吸収が起きている場所の圧力が低いことを意味する。
WFC3で観測した 8個の惑星のうち、5個で水を検出した。しかし強度はまちまちであり、WASP-31b のようにほぼ検出されなかった例も存在する。
論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1512.03428
Dupuy et al. (2015)
Orbital Architectures of Planet-Hosting Binaries: I. Forming Five Small Planets in the Truncated Disk of Kepler-444A
(惑星を持つ連星の軌道構造 I:ケプラー444Aの切り取られた円盤内での 5つの小さい惑星の形成)
ケプラー444は、金属量の少ない恒星 3つからなる三重星である。主星ケプラー444Aのまわりに 5つの準地球サイズの惑星が発見されている。また、M型矮星のペア (ケプラー444B, C)が、主星から投影距離 1".8 (= 66 AU)の位置に存在している。ケプラー444B と C は空間分解されていない近接した連星である。
Keck/NIRC2 の補償光学を用いたアストロメトリと、Keck/HIRES 視線速度観測の組み合わせから、ケプラー444A まわりの B, C のペアの詳細な軌道の決定を行った。また天体の質量への制約を与えた。
解析の結果、伴星ペアのケプラー444B, C のケプラー444A まわりの軌道は非常に高軌道離心率で、e = 0.864 と判明した。そのため、BC ペアは最短で主星から 5.0 AU の距離まで接近する。N体シミュレーションを用いて、この系は安定であることを確認した。ケプラー444A を公転する BC ペアの軌道と、ケプラー444A を公転する他の惑星の軌道は、98%の確度でほぼ一致しているとかんがえられる。
この系では、BC ペアは惑星形成が起きている時期に現在の軌道であったと考えられる。また BC ペアは、ケプラー444A まわりの原始惑星系円盤を ~ 2 AU あたりで "切り取る"。この切り取られた円盤は固体粒子が非常に欠乏していると考えられる (発見されている惑星の合計質量は ~ 1.5地球質量)。従って、固体物質がダストから惑星へ変換される効率に強い制限を与えられると考えられる。またケプラー444 系は、切り取られていない一般的な原始惑星系円盤内での、典型的な近接惑星の形成を説明するモデルと整合的である。
またこの伴星は、二重線分光連星 (double-line spectroscopic binary)である (Campanile et al. 2015)。中心星は、星震観測から 11.2 Gyr と推定されている。
さらに、主星のケプラー444A のまわりに、地球より小型サイズ (0.40 - 0.74 地球半径)の惑星候補が 5つ発見されている。このような階層的な構造の三重星が惑星を持つ系はこれまでに 3例発見されているが、いずれも伴星は中心星から離れた投影距離を持ち (240 - 330 AU, Bechter et al. 2014, Eastman et al. 2015)、また複数惑星が存在する系はケプラー444系以外には発見されていない。
また N体シミュレーションを用いた安定性の評価も行った。惑星の質量は、Lissauer et al. (2011)の質量-半径の関係性を用いて推定した。Campante et al. (2015)によると、惑星の半径は内側から外側へ 0.403, 0.497, 0.530, 0.546, 0.74地球半径であり、これは質量-半径の関係性から 0.15, 0.24, 0.27, 0.29, 0.54地球質量と推定できる。この質量を用いて N体計算で軌道安定性を評価した。
その結果、~ Myr の間は安定に存在できることを示した。ただし ~ Gyr 単位での不安定性の排除は出来ない。
インプットするパラメータは、
系の全質量:1.30太陽質量
AとBCペアの質量比:0.71
距離:35.7 pc
などである。
結果として得られたパラメータは、
(BCペアの) 軌道長半径:36.7 AU
軌道離心率:0.864
軌道周期:198年
近星点距離:5.0 AU
などである。
ケプラー444A は 0.76太陽質量、ケプラー444B と C はそれぞれ 0.29, 0.25太陽質量である。
arXiv:1512.03428
Dupuy et al. (2015)
Orbital Architectures of Planet-Hosting Binaries: I. Forming Five Small Planets in the Truncated Disk of Kepler-444A
(惑星を持つ連星の軌道構造 I:ケプラー444Aの切り取られた円盤内での 5つの小さい惑星の形成)
概要
惑星を持つ複数星系の軌道構造を調べるための Keckプログラムによる最初の結果を報告する。ケプラー444は、金属量の少ない恒星 3つからなる三重星である。主星ケプラー444Aのまわりに 5つの準地球サイズの惑星が発見されている。また、M型矮星のペア (ケプラー444B, C)が、主星から投影距離 1".8 (= 66 AU)の位置に存在している。ケプラー444B と C は空間分解されていない近接した連星である。
Keck/NIRC2 の補償光学を用いたアストロメトリと、Keck/HIRES 視線速度観測の組み合わせから、ケプラー444A まわりの B, C のペアの詳細な軌道の決定を行った。また天体の質量への制約を与えた。
解析の結果、伴星ペアのケプラー444B, C のケプラー444A まわりの軌道は非常に高軌道離心率で、e = 0.864 と判明した。そのため、BC ペアは最短で主星から 5.0 AU の距離まで接近する。N体シミュレーションを用いて、この系は安定であることを確認した。ケプラー444A を公転する BC ペアの軌道と、ケプラー444A を公転する他の惑星の軌道は、98%の確度でほぼ一致しているとかんがえられる。
この系では、BC ペアは惑星形成が起きている時期に現在の軌道であったと考えられる。また BC ペアは、ケプラー444A まわりの原始惑星系円盤を ~ 2 AU あたりで "切り取る"。この切り取られた円盤は固体粒子が非常に欠乏していると考えられる (発見されている惑星の合計質量は ~ 1.5地球質量)。従って、固体物質がダストから惑星へ変換される効率に強い制限を与えられると考えられる。またケプラー444 系は、切り取られていない一般的な原始惑星系円盤内での、典型的な近接惑星の形成を説明するモデルと整合的である。
ケプラー444系
主星のケプラー444A は、別名 BD+41 3306, HIP 94931, KOI-3158などを持つ。Lillo-Box et al. (2014)によって 1"8 の位置に伴星が発見されている。ヒッパルコスによる観測によるとこの系までの距離は 35.7 pc であり (van Leeuwen 2007)、従って 1"8 というのは 66 AU に相当する。またこの伴星は、二重線分光連星 (double-line spectroscopic binary)である (Campanile et al. 2015)。中心星は、星震観測から 11.2 Gyr と推定されている。
さらに、主星のケプラー444A のまわりに、地球より小型サイズ (0.40 - 0.74 地球半径)の惑星候補が 5つ発見されている。このような階層的な構造の三重星が惑星を持つ系はこれまでに 3例発見されているが、いずれも伴星は中心星から離れた投影距離を持ち (240 - 330 AU, Bechter et al. 2014, Eastman et al. 2015)、また複数惑星が存在する系はケプラー444系以外には発見されていない。
系の安定性
ケプラー444B, C のペアは、系の重心から 5.0 AU の距離まで近づく。連星中での安定な惑星軌道の経験的なフィッティング則 (Holman & Wiegert et al. 1999)の外挿によると、安定して存在できる軌道で最も大きいものは ~ 1.6 AU である。これは、この系で最も外側に存在する ケプラー444f の軌道長半径 0.08 AU の 20倍である。また N体シミュレーションを用いた安定性の評価も行った。惑星の質量は、Lissauer et al. (2011)の質量-半径の関係性を用いて推定した。Campante et al. (2015)によると、惑星の半径は内側から外側へ 0.403, 0.497, 0.530, 0.546, 0.74地球半径であり、これは質量-半径の関係性から 0.15, 0.24, 0.27, 0.29, 0.54地球質量と推定できる。この質量を用いて N体計算で軌道安定性を評価した。
その結果、~ Myr の間は安定に存在できることを示した。ただし ~ Gyr 単位での不安定性の排除は出来ない。
系のパラメータ
質量や軌道のパラメータについて、MCMC を用いて決定した。インプットするパラメータは、
系の全質量:1.30太陽質量
AとBCペアの質量比:0.71
距離:35.7 pc
などである。
結果として得られたパラメータは、
(BCペアの) 軌道長半径:36.7 AU
軌道離心率:0.864
軌道周期:198年
近星点距離:5.0 AU
などである。
ケプラー444A は 0.76太陽質量、ケプラー444B と C はそれぞれ 0.29, 0.25太陽質量である。
論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1512.03596
Beust et al. (2015)
Orbital fitting of imaged planetary companions with high eccentricities and unbound orbits -- Application to Fomalhaut b and PZ Telescopii B
(高軌道離心率や重力的に束縛されていない軌道を持つ、直接撮像された惑星質量天体の軌道フィッテイング:フォーマルハウトbとぼうえんきょう座PZ星Bへの適用)
軌道離心率が大きい場合や重力的に束縛されていない場合、通常の束縛された軌道を仮定している MCMC は軌道決定には不適当だと考えられる。ここでの目標は、重力的に束縛されている天体もそうでない天体も両方軌道決定ができる新しい MCMC の手法を考案することである。そして、その手法をフォーマルハウトbとぼうえんきょう座PZ星Bに対して適用することである。
新しいMCMC のコードは、universal Keplerian variables と Stumpff functions の使用に基づいている。
フォーマルハウトbに対して適用した結果、先行研究の結果を確認する結果が得られた。しかし、アストロメトリのデータのみに基づいた場合は、重力的に束縛されていない開いた軌道の解も可能である。惑星が主星のフォーマルハウトに重力的に束縛されている場合は、軌道離心率は ~ 0.9 である。
ぼうえんきょう座PZ星Bに関しては、軌道のフィッテイングをこれまでで初めて行った。その結果、重力的に束縛されている軌道も、されていない軌道も両方に可能であることが分かった。しかし軌道離心率の確率分布は e = 1 付近に非常に鋭い極大を持ち、この天体の起動が準放物軌道であることを示唆する。
最近示唆されている事として、未検出の内側惑星が存在する場合、通常のアルゴリズムでは直接撮像で発見された伴星 (惑星や褐色矮星)の軌道をフィッティングする際に軌道離心率を大きく見積もるという影響がある。ここでは、フォーマルハウトbについてはその可能性は無さそうだという結果が得られた。ぼうえんきょう座PZ星Bに関しては、実際は軌道離心率が e = 0.7 であるにも関わらず、内側に存在する 12木星質量の存在が、e ~ 1であるように見せかける可能性があることが分かった。しかし、そのような系は力学的には不安定である。そのため現状の軌道の解釈が正確であると結論づけた。
フォーマルハウトbの軌道要素は初めは参照可能なアストロメトリのデータから推測され、非常に高軌道離心率 (e ≳ 0.8) であり、場合によっては重力的に束縛されていない可能性もあると考えられた (Kalas et al. 2013, Beust et al. 2014)。
最近行われた、惑星とフォーマルハウトまわりのダストベルトの相互作用の研究からは、フォーマルハウトbが別の未検出の惑星と軌道共鳴に入っており、その惑星がダストベルトの力学も左右しているという説も提案されている (Faramaz et al. 2015)。しかしこれはフォーマルハウトbが重力的に束縛されていた天体であることを仮定している。これは有り得ることだが、重力的に束縛されていない解も依然として可能である。
準恒星質量天体であるぼうえんきょう座PZ星Bは、Mugrauer et al. (2010)と Biller et al. (2010)によって独立に発見された。質量の推定は ~ 20木星質量もしくは ~ 40木星質量である (Ginski et al. 2014, Schmidt et al. 2014)。従ってこの天体は恒星質量以下の天体であると考えられる。
arXiv:1512.03596
Beust et al. (2015)
Orbital fitting of imaged planetary companions with high eccentricities and unbound orbits -- Application to Fomalhaut b and PZ Telescopii B
(高軌道離心率や重力的に束縛されていない軌道を持つ、直接撮像された惑星質量天体の軌道フィッテイング:フォーマルハウトbとぼうえんきょう座PZ星Bへの適用)
概要
主系列星の周りを公転する伴星の直接撮像によるフォローアップ観測からは、天球面上に投影された軌道運動が分かる。この際、軌道の決定には MCMC がよく用いられる。これらの直接撮像された系外惑星はしばしば大きな軌道離心率を持ち、場合によっては重力的に束縛されていない軌道を持っている可能性もある。例として、本論文中で注目する対象である、フォーマルハウトbやぼうえんきょう座PZ星B (PZ Tel B)などが挙げられる。軌道離心率が大きい場合や重力的に束縛されていない場合、通常の束縛された軌道を仮定している MCMC は軌道決定には不適当だと考えられる。ここでの目標は、重力的に束縛されている天体もそうでない天体も両方軌道決定ができる新しい MCMC の手法を考案することである。そして、その手法をフォーマルハウトbとぼうえんきょう座PZ星Bに対して適用することである。
新しいMCMC のコードは、universal Keplerian variables と Stumpff functions の使用に基づいている。
フォーマルハウトbに対して適用した結果、先行研究の結果を確認する結果が得られた。しかし、アストロメトリのデータのみに基づいた場合は、重力的に束縛されていない開いた軌道の解も可能である。惑星が主星のフォーマルハウトに重力的に束縛されている場合は、軌道離心率は ~ 0.9 である。
ぼうえんきょう座PZ星Bに関しては、軌道のフィッテイングをこれまでで初めて行った。その結果、重力的に束縛されている軌道も、されていない軌道も両方に可能であることが分かった。しかし軌道離心率の確率分布は e = 1 付近に非常に鋭い極大を持ち、この天体の起動が準放物軌道であることを示唆する。
最近示唆されている事として、未検出の内側惑星が存在する場合、通常のアルゴリズムでは直接撮像で発見された伴星 (惑星や褐色矮星)の軌道をフィッティングする際に軌道離心率を大きく見積もるという影響がある。ここでは、フォーマルハウトbについてはその可能性は無さそうだという結果が得られた。ぼうえんきょう座PZ星Bに関しては、実際は軌道離心率が e = 0.7 であるにも関わらず、内側に存在する 12木星質量の存在が、e ~ 1であるように見せかける可能性があることが分かった。しかし、そのような系は力学的には不安定である。そのため現状の軌道の解釈が正確であると結論づけた。
直接撮像で発見された惑星
フォーマルハウトb
フォーマルハウト (Formalhaut, みなみのうお座アルファ星, HD 216956, HIP 113368)はスペクトル型 A3V の恒星であり、直接撮像で発見された惑星と思われる天体フォーマルハウトbが ~ 119 AUの位置にある (Kalas et al. 2008)。この天体の正体はまだ議論の余地があり、一般的には低質量の惑星だと考えられている (Janson et al. 2012など)。しかし、より小さい惑星に束縛されたダスト粒子の雲によって反射された中心星の光を観測しているとする説もある (Kalas et al. 2008)。フォーマルハウトbの軌道要素は初めは参照可能なアストロメトリのデータから推測され、非常に高軌道離心率 (e ≳ 0.8) であり、場合によっては重力的に束縛されていない可能性もあると考えられた (Kalas et al. 2013, Beust et al. 2014)。
最近行われた、惑星とフォーマルハウトまわりのダストベルトの相互作用の研究からは、フォーマルハウトbが別の未検出の惑星と軌道共鳴に入っており、その惑星がダストベルトの力学も左右しているという説も提案されている (Faramaz et al. 2015)。しかしこれはフォーマルハウトbが重力的に束縛されていた天体であることを仮定している。これは有り得ることだが、重力的に束縛されていない解も依然として可能である。
ぼうえんきょう座PZ星B
この系はさらに状況が複雑である。ぼうえんきょう座PZ星 (PZ Tel, HD 174429, HIP 92680)は、G5 星と K8 星の連星であり (Spencer Jones & Jackson 1936, Messina et al. 2010)、年齢が 24 Myrの古いがか座ベータ運動星団 (β Pic mocing group)のメンバーである (Bell et al. 2015, Zuckerman et al. 2001, Torres et al. 2006)。準恒星質量天体であるぼうえんきょう座PZ星Bは、Mugrauer et al. (2010)と Biller et al. (2010)によって独立に発見された。質量の推定は ~ 20木星質量もしくは ~ 40木星質量である (Ginski et al. 2014, Schmidt et al. 2014)。従ってこの天体は恒星質量以下の天体であると考えられる。
論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1512.03070
Owen & Adams (2015)
Hot Jupiter Breezes: Time-dependent Outflows from Extrasolar Planets
(ホットジュピターの風:系外惑星からの時間依存性のある放出)
惑星大気に関しては、定常の加熱と時間依存性のある加熱の両方を考慮した。その時間変動が、アウトフローの時間変動に対応している。
流れが音速点を通過できないため流れは亜音速となり、パーカー解ではなくいわゆる "ブリーズ解 (breeze solution)" となる。時間変動星の主なポイントは、流れは異なるブリーズ解の合計なり、大気散逸率は準周期的になるという点である。
流れは亜音速なので、外側の境界から境界条件の情報が内向きに伝播することが出来る。これはある程度アウトフローの変動のタイムスケールを変える。ここでは、外側境界のスケールとアウトフローの時間変動のタイムスケールの間の関係を発見した。実際には、外側の境界は惑星の作用圏 (sphere of Influence)に置いている。
計算結果から測定された時間変動は、原理的には型のパラメータ制限 (表面での磁場強度、磁場の強さなど)に使うことが出来ると考えられる。
arXiv:1512.03070
Owen & Adams (2015)
Hot Jupiter Breezes: Time-dependent Outflows from Extrasolar Planets
(ホットジュピターの風:系外惑星からの時間依存性のある放出)
概要
中心星からの紫外線によって駆動されている、ホットジュピターからの磁気的に制御されたアウトフローの力学についての研究を行った。このような系では、幾つかの開いた磁力線は、流れがスムーズに音速点 (sonic point)を通過できない場合がある。そのため一時的に定常解が存在しない状態となり得る。ここでは、そのような惑星磁場の構造では、アウトフローは時間依存性のあるものになるということを示す。惑星大気に関しては、定常の加熱と時間依存性のある加熱の両方を考慮した。その時間変動が、アウトフローの時間変動に対応している。
流れが音速点を通過できないため流れは亜音速となり、パーカー解ではなくいわゆる "ブリーズ解 (breeze solution)" となる。時間変動星の主なポイントは、流れは異なるブリーズ解の合計なり、大気散逸率は準周期的になるという点である。
流れは亜音速なので、外側の境界から境界条件の情報が内向きに伝播することが出来る。これはある程度アウトフローの変動のタイムスケールを変える。ここでは、外側境界のスケールとアウトフローの時間変動のタイムスケールの間の関係を発見した。実際には、外側の境界は惑星の作用圏 (sphere of Influence)に置いている。
計算結果から測定された時間変動は、原理的には型のパラメータ制限 (表面での磁場強度、磁場の強さなど)に使うことが出来ると考えられる。

