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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1909.12424
McCormac et al. (2019)
NGTS-10b: The shortest period hot Jupiter yet discovered
(NGTS-10b:これまでに発見された最も短周期のホットジュピター)

概要

Next Generation Transit Survey (NGTS) による,新しい超短周期のトランジットするホットジュピターの発見を報告する.

NGTS-10b は,2.162 木星質量,1.205 木星半径,軌道周期が 0.7668944 日であり,ホットジュピターの中では最も短周期である

中心星 NGTS-10 は,104 億歳の K5V 星で,有効温度が 4400 K,金属量は [Fe/H] = -0.02 で太陽金属量とほぼ等しい.また穏やかな恒星活動の兆候が検出された.

NGTS-10b は,恒星と惑星の潮汐相互作用を研究するための主要なターゲットとなる,超短周期木星型惑星のリストの新しい一員である.
惑星は中心星の 1.46 ロッシュ半径の位置を公転しており,残る落下までの時間の中間値は 3800 万年である.今後 10 年の間に 7 秒という,測定できる可能性のあるトランジット時刻の変化が予想される.これは恒星の潮汐の Q 値として 2 × 107 を仮定した場合の値である.

超短周期のホットジュピター

4000 個以上発見されている系外惑星のうち 337 個が,WASP や HAT-Net,HAT-South,KELT といった地上からのサーベイで発見されたものである.地上からの発見の大部分はホットジュピターで,0.1-13 木星質量,軌道周期は 10 日以下である.

超短周期の,軌道周期が 1 日未満の惑星は理論的には検出が最も容易だが,非常に希少であることが示されており,337 個のうち 6 個のみが周期 1 日未満である.その 6 個は,WASP-18b,WASP-19b,WASP-43b,WASP-103b,HATS-18b,KELT-16b である.
また最近になって軌道周期 0.88 日の NGTS-6b も発見されており (Vines et al. 2019),知られている超短周期ホットジュピターは 7 個となっていた.

今回発見された NGTS-10b は軌道周期が 0.766891 日で,これらの中で最も短周期である

この惑星は NGTS で 10 番目に発見されたものである.なお NGTS での発見のうち 1 つは,M 型星を公転する,超短周期の潮汐固定された褐色矮星 (NGTS-7Ab,Jackman et al. 2019) である.そのため惑星の発見としては 9 番目である.

パラメータ

NGTS-10
スペクトル型:K5V
有効温度:4400 K
金属量:[Fe/H] = -0.02
質量:0.696 太陽質量
半径:0.697 太陽半径
自転周期:17.290 日
NGTS-10b
軌道周期:0.7668944 日 (18.4 時間)
質量:2.162 木星質量
半径:1.205 木星半径
密度:1.430 g cm-3
軌道長半径:0.0143 AU
平衡温度:1332 K

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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1909.11802
Fukui et al. (2019)
Kojima-1Lb is a Mildly Cold Neptune around the Brightest Microlensing Host Star
(Kojima-1Lb は最も明るいマイクロレンズ主星まわりでのやや低温な海王星惑星)

概要

近傍の惑星によるマイクロレンズイベント TCP J05074264+2447555 (以降 Kojima-1) の,追加の多バンド測光と分光観測,および新しい補償光学撮像の解析について報告する.これは 2017 年に銀河中心の反対方向に発見されたイベントである (Nucita et al. 2017).

極大周辺での光度曲線のアノマリーが,惑星によるものであることを確認し,またイベント中にさらなる惑星のシグナルは見られないことを発見した.また,見かけのフラックスの混入が存在することを確認し,過去に報告されていた有意な視差シグナルが無いことも確認した.
補償光学撮像からは混入する無関係の光源はなく,混入したフラックスはレンズ天体に由来するものである可能性が最も高い.

測定した多バンドでのレンズ天体のフラックスを,マイクロレンズモデルからの制約と組み合わせることで,過去の観測では分解できていなかった質量の範囲を狭め,レンズ系までの距離の制約もより厳しくした.

レンズ天体の主星はスペクトル型が K/M 境界であり,0.581 太陽質量,距離は 505 pc である.伴星である Kojima-1Lb は,海王星の質量に近く 20.0 地球質量であり,軌道間隔は 1.08 au である.この軌道は典型的なマイクロレンズ惑星よりも数倍小さく,若い年代でのスノーラインの場所と同程度である.

Kojima-1Lb の先験的な検出確率はわずか ~35% であると計算され,このことはトランジット法と視線速度法から最近示唆されていた通り,海王星質量の惑星はスノーライン周辺で一般的な存在であることを示唆する.

中心星はマイクロレンズ惑星系としては最も明るい部類であり,現在の装置であっても分光学的に特徴付けできる可能性がある.

名称について

Nucita et al. (2018) ではこのイベントに Feynman-01 とニックネームを与えた.これは惑星の特徴が観測された観測所の名前にちなんだものである.

ここでは,このイベントの初発見者である小島氏にちなんで Kojima-1 と呼称する.
慣習的には,惑星のマイクロレンズイベントは,その惑星の特徴を検出したグループではなく,イベント自体を発見したグループから名付けられる.

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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1909.12144
Fitzsimmons et al. (2019)
Detection of CN gas in Interstellar Object 2I/Borisov
(恒星間天体 2I/Borisov の CN ガスの検出)

概要

太陽系内を通過する恒星間天体の検出は,他の太陽系外系での惑星形成の,物理的および化学的過程に制約を与える機会である.

初の恒星間天体であるオウムアムア (1I/2017 U1 ’Oumuamua) での脱ガスの効果は力学的には観測されたものの,放出された物質の直接検出は行われなかった.活発な恒星間彗星 2I/Borisov (ボリソフ彗星) の発見は,この天体に対する昇華した氷の分光的な研究が可能になることを意味する.

2019 年 9 月 20 日の,ボリソフ彗星が太陽中心距離 2.7 au にある時点での近紫外線での CN の観測から,恒星間彗星から放出されたガスを初検出したことを報告する.
ボリソフ彗星からの CN (シアンラジカル) ガスの生成率は (3.7±0.4) × 1024 s-1 と推定される.

その他のガスの放出は検出されず,C2 に関しては 4 × 1024 s-1 という上限値を与えた.

彗星のダストコマの 3900-6000 Å での反射スペクトルの傾きは,長波長領域で急になった.これは他の彗星と同様の特徴である.

広帯域の測光観測からは,ダスト生成率は 143 ± 10 cm-1 と推定される.

観測されたガスとダストの生成率から,ボリソフ彗星の核の特性として考えられるものを仮定した結果,核の半径は 0.7-3.3 km と制約される.全体として,初めての活発な恒星間天体のガスとダストと核の特性は,通常の太陽系の彗星と似ていることを発見した.

恒星間天体

2017 年 10 月 19 日に,初の恒星間天体オウムアムア (1I/2017 U1 ’Oumuamua) が発見された.この天体の高感度の観測が行われたものの,ガス等は何も検出されなかった.分光学的に判明したのは,輻射を受けた彗星の表面で予測されるものに似た,特徴に欠けた赤い表面を持つこと程度である (Fitzsimmons et al. 2018).

なお,観測により非重力的な加速は検出されている.この現象に対して唯一の考えられる説明は,観測された期間において検出限界以下の脱ガスが存在するというものである.


2019 年 8 月 30 日にクリミアの MARGO 観測所で,Gennady Borisov が彗星 C/2019 Q4 (Borisov,ボリソフ彗星) を発見した.この天体はすぐに,軌道が双曲線で離心率が 3 を超えることが判明した (MPEC 2019-R106; 2019 September 11, https://minorplanetcenter.net/mpec/K19/K19RA6.html).

この天体は 9 月 24 日に,国際天文学連合によって正式に 2I/Borisov と命名され,2 番目の恒星間天体と認定された.

1I (オウムアムア) とは異なり,2I (ボリソフ彗星) は天体が近日点を通過する前に発見された.
近日点距離は q = 2.0 au で,2019 年 12 月 8 日に通過予定である.また 2020 年 10 月に太陽と合の位置関係に入る前に,観測に適した位置に来る.

初期の測光観測では,広帯域での可視光の色は他の活発な彗星と類似し (Guzik et al. 2019),可視光のスペクトルでは特徴に欠けた赤い反射スペクトルを持つことが示されている (de Le ́on et al. 2019).

観測

観測には 4.2 m William Herschel Telescope と,La Palma の ISIS 分光器を使用し,2019 年 9 月 20 日に行われた.この段階で,ボリソフ彗星は太陽から 2.66 au の距離,地球から 3.25 au の距離にあった.

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arXiv:1909.12174
Morales et al. (2019)
A giant exoplanet orbiting a very low-mass star challenges planet formation models
(惑星形成モデルに異議を投げかける非常に低質量の恒星を公転する巨大系外惑星)

概要

系外惑星サーベイの統計的な解析では,低質量星周りの惑星は巨大惑星よりもスーパーアースや海王星質量の惑星が多いことが分かっており,これは惑星形成理論のコア降着理論の予想と一致する傾向である.

ここでは,可視光線と近赤外線スペクトルでの精密な視線速度測定から,非常に低質量な恒星 GJ 3512 の周りを 204 日の離心軌道で公転する,最小質量 0.46 木星質量の巨大惑星の発見を報告する.
力学モデルからは,この惑星の高軌道離心率は,惑星・惑星散乱によって引き起こされたと考えるのがもっともらしい.

今回報告された惑星系の存在は現在の惑星形成理論に疑問を投げかけるものであり,惑星形成と進化モデルにおける質量降着率と惑星軌道の移動率に大きな制約を与えるものである.これは,惑星形成においては,これまで考えられていたよりも円盤不安定性を介した形成がより効果的であることを示唆している.

低質量星まわりの惑星

視線速度法を用いた系外惑星サーベイでは,M 型矮星 1 個あたり 1-2.5 個の惑星が発見されており,その大部分は地球質量から海王星質量の範囲にある.低質量星周りでの木星質量の惑星は,発見例がわずかである.これはコア降着理論の予測と一致する.

惑星形成の別の理論,例えば円盤不安定性を介した形成では,大質量の原始惑星系円盤の中での巨大ガス惑星の形成を説明できる可能性がある.

パラメータ

GJ 3512
別名:LP 90-18
スペクトル型:M5.5V
質量:0.123 太陽質量
半径:0.139 太陽半径
光度:0.00157 太陽光度
有効温度:3081 K
距離:9.489 pc
自転周期:87 日
金属量:[Fe/H] = -0.07
GJ 3512b
軌道周期:203.59 日
軌道離心率:0.4356
最小質量:0.463 木星質量
軌道長半径:0.3380 au
(GJ 3512c)
軌道周期:1390 日以上
質量:0.17 木星質量以上
軌道長半径:1.2 au 以上

GJ 3512 について

恒星はやや磁気的に活発な恒星であり,87 日周期の変動を示す.これは自転周期に対応していると考えられる.自転周期が比較的長いため,年老いた恒星 (30-80 億歳) と推測される.

約 204 日の視線速度の周期性が惑星ではなく恒星の活動である可能性は否定される.これは視線速度変動の振幅がこのタイプの低速自転星に見られるものよりも大きいから.また波長ごとの振幅の依存性が見られないからである.

惑星の軌道傾斜角は不明だが,2 度未満のほぼ face-on の場合のみ,惑星の真の質量が 13 木星質量を超え褐色矮星になる.そのためこの天体が惑星質量の天体である可能性は >99.9% と非常に高い.

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arXiv:1909.11090
Scholtz & Unwin (2019)
What if Planet 9 is a Primordial Black Hole?
(もしプラネット・ナインが原始ブラックホールだったら?)

概要

現在までに,似た質量を持つが,非常に異なる起源を持つ重力的異常が未解決問題となっている.

1 つ目は,太陽系外縁天体の軌道に関連した観測的なアノマリーである.これらの観測結果は太陽系内に新しい 9 番目の惑星が存在する証拠だと考えられており,Planet 9 (プラネット・ナイン) と呼称される.
この天体の質量は 5-15 地球質量,軌道長半径は 300-1000 AU と推定される.

2 つ目は,最近 Optical Gravitational Lensing Experiment (OGLE) で観測された,一連の重力的なアノマリーである.OGLE は,通過時間が 0.1-0.3 日の超短期間のマイクロレンズイベント 6 例の検出を報告した.これらのレンズ天体は,銀河バルジの方向およそ 8 kpc の方向に位置している.
これらのイベントは,0.5-20 地球質量の天体に対応しており,これは自由浮遊惑星 (free-floating planet) か,もしくは原始ブラックホール (primordial black hole) と解釈可能である.

これらのイベントは 2 つとも,想定される質量範囲が似ていることが特徴的である.


可能性としては,OGLE が捉えたのは恒星の密度よりも大きい自由浮遊惑星であり,プラネット・ナインはこれらの惑星が太陽系に捕獲されたというのが自然な説明である.この仮説では自由浮遊惑星を形成するための理論モデルをアップデートする必要が生じるが,現在行われているプラネット・ナインを捜索するための観測プログラムに影響を与えるものではないだろう.

ここでは,より興味深い可能性に注目する.
もし OGLE のイベントが原始ブラックホールによるものであった場合,太陽系外縁天体の軌道のアノマリーも,太陽系に捕獲された原始ブラックホールで説明できる可能性がある.ここではそのシナリオは不合理なものではないことを示し,また観測的な制約についても議論する.

地球質量程度の天体は,重力崩壊を介して形成される天体物理的なブラックホールとしては軽すぎるものの,初期宇宙の過剰密度から形成される原始ブラックホールの場合は,太陽質量よりも十分軽い質量になり得る.興味深い偶然として,電弱スケール周辺での強い一次相転移を介して放射優勢期の間に形成された原始ブラックホールは,プラネット・ナインの推定質量と同程度の質量のオーダーになる \(\sim M_{\oplus}\left(125\,{\rm GeV}/T\right)^{2}\).

プラネット・ナインの起源仮説としては,a) その場形成,b) 太陽系の内側で形成された後に現在の軌道まで散乱された,c) 太陽系外で形成後に太陽系に捕獲された,というものが考えられている.3 つのどれも確率は低いものの,観測されている太陽系外縁天体の軌道が偶然揃っているだけだという可能性に比べるとあり得るものである.


5 地球質量の原始ブラックホールのホーキング温度は 0.004 K であり,これは宇宙マイクロ波背景放射より冷たい.,またこのようなブラックホールの半径は ~5 cm と,単独での放射は極めて小さい.

しかし原始ブラックホール周りのダークマターハローは,もし対消滅を起こしていれば,強いシグナルを発生させうる.

現在のプラネット・ナインの捜索は可視光・赤外線とマイクロ波波長でのサーベイ観測で行われているが,原始ブラックホールの場合は大きく異なるシグナルになりうる.そのため原始ブラックホール説では,太陽系外縁天体の軌道に影響を与えている天体について,X 線,ガンマ線やその他の高エネルギー宇宙線での運動天体の捜索が必要である.

反対に,プラネット・ナインの現在の捜索が失敗し,さらに太陽系外縁天体の軌道のアノマリーの証拠が補強されるづけるのであれば,原始ブラックホール仮説が対抗する仮説になるだろう.

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