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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1903.11903
Lacour et al. (2019)
First direct detection of an exoplanet by optical interferometry; Astrometry and K-band spectroscopy of HR8799 e
(可視光の干渉法による系外惑星の初めての直接検出:HR 8799e のアストロメトリと K バンド分光)

概要

現時点では,赤外線干渉法が明るい観測対象に対して 10-4 の数倍というコントラスト比を達成している.GRAVITY のデュアルフィールドモードでは現在,高いコントラスト比の観測が可能となり,系外惑星の直接観測を行うことを可能にしている.この技術を HR 8799 に対して実演した.

HR 8799 系は,4 つの巨大系外惑星があることが知られている若い惑星系である.
中心星 HR 8799 にフリンジを固定し,恒星から 390 mas 離れた位置にある惑星 HR 8799e を観測ターゲットにした.

事後処理を含むデータリダクションで,中心星からのフラックスの漏れを除去し,また惑星の可干渉性フラックスを抽出した.赤外線 K バンドの惑星のスペクトルは,スペクトル分解能 500 で取得した.また,恒星に対する惑星の位置天文的な位置を 100 µas のオーダーの精度で導出した.

GRAVITY による位置天文測定は,惑星が完全に同一平面上に存在する安定な軌道解には不利な結果を示した.この問題は,HR 8799e の軌道傾斜角を数度小さくずらすことによって解決できる.このことは,この系の惑星の軌道面は同一平面に近いが,完全に同一平面上にあるわけではないことを示唆している.

惑星のスペクトルは,各スペクトルチャンネルでシグナルノイズ比が 5 程度であった.また,晩期 L 型の褐色矮星と整合的なスペクトルであった.

Exo-REM 合成スペクトルを用いて,惑星の温度は 1150 K,表面重力は 104.3 ± 0.3 cm/s2 と導出した.これは HR 87993 が 1.17 木星半径.10 (+7, -4) 木星質量であることに対応している.この質量推定は,惑星の進化モデルからの推定とは独立した確認手法である.

今回の結果は,中心星からの角距離が小さい位置にある系外惑星の直接検出と分光観測における,干渉法の力を示すものである.

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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1903.10507
Dattilo et al. (2019)
Identifying Exoplanets with Deep Learning II: Two New Super-Earths Uncovered by a Neural Network in K2 Data
(深層学習を用いた系外惑星の同定 II:K2 データのニューラルネットワークで明らかになった 2 つの新しいスーパーアース)

概要

何年にも渡って,科学者たちは NASA のケプラーのデータを用いて,数千ものトランジット系外惑星を探し発見してきた.ケプラーのメインミッションの拡張である K2 ミッションでは,ケプラーは全ての黄道面の様々な領域の恒星を観測した.従って,K2 ミッションでは異なる銀河環境にある恒星を観測したことになる.

天文学者たちは,これらの異なる環境で系外惑星のポピュレーションがどう異なるかを調査したいと考えている.しかしそのためには,これらの領域で系外惑星を自動的かつ無バイアスで同定する必要があり,またトランジット惑星のシグナルを模倣する偽陽性シグナルを排除しなければならない.


ここでは,深層学習を用いてこれらの系外惑星のシグナルをクラス分けする手法を提供する.これは,医療科学から言語学に至る分野でポピュラーになりつつある,機械学習アルゴリズムの一種である.

ケプラーの視野内にある系外惑星を同定するのに使われたニューラルネットワークを改良し,銀河環境の異なる領域における K2 キャンペーンでの観測結果から,系外惑星を同定できるようにした.ここでは,AstroNet-K2 という畳み込みニューラルネットワークを学習させ,系外惑星の可能性がある与えられたシグナルが,本当に系外惑星によって引き起こされているか,それとも偽陽性かを見分けられるようにした.

その結果,AstroNet-K2 は系外惑星と偽陽性シグナルをクラス分けするのに大きな成功を収め,今回のテストセットでは判定の精度は 98% であった.この手法は偽陽性を同定して選別するのに特に効率的であるが,現在の所,完全で信頼できる惑星候補サンプルを作成するには人間の監督が必要である.

ここでは AstroNet-K2 を用いて,K2 データ中からこれまでに知られていなかった 2 つの系外惑星を同定し確認した.この手法は,K2 データから新しい系外惑星を自動的に同定し,系外惑星のポピュレーションが銀河中での生まれた場所にどのように依存するのかを調べることへと繋がる第一歩である.

パラメータ

EPIC 246151543 系

EPIC 246151543
質量:0.958 太陽質量
半径:0.947 太陽半径
金属量:[M/H] = 0.218
有効温度:5532 K
EPIC 246151543b (K2-293b)
軌道周期:13.1225 日
半径:2.45 地球半径
EPIC 246151543b (K2-293b) について
Rogers (2015) によると,1.6 地球半径以上のもので軌道周期が 50 日未満のものは,岩石惑星ではないとされる.そのため,この惑星は揮発性物質のエンベロープを持った惑星だろう.

軌道周期が 13.1 日で恒星からの強い輻射にさらされているものの,エンベロープが光蒸発を起こすほどではない.

EPIC 246078672 系

EPIC 246078672
質量:0.987 太陽質量
半径:1.20 太陽半径
金属量:[M/H] = 0.194
有効温度:5612 K
EPIC 246078672b (K2-294b)
軌道周期:2.50387 日
半径:1.66 地球半径
EPIC 246078672b (K2-294b) について
惑星半径が 1.66 地球半径と,Rogers (2015) での岩石惑星・エンベロープを持った惑星との遷移半径に近い.軌道周期は 2.5 日と短周期であるため,明らかに地球類似惑星ではない.

これらの 2 つの惑星は,K2 で発見された惑星としては典型的なものである (Mayo et al. 2018).

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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1903.10772
Odert et al. (2019)
Modeling the Lyα transit absorption of the hot Jupiter HD 189733b
(ホットジュピター HD 189733b のライマンアルファトランジット吸収のモデル化)

概要

高温の系外惑星の水素が主体の大気は,中心星からの X 線と極端紫外線 (XUV) による強い加熱によって拡大し,惑星から流体力学的に流出する.いくつかの近接ガス系外惑星のトランジットの最中にライマンアルファ線の波長において中性水素の超過吸収が検出されており,これは広がった大気が存在していることを示唆している.

ホットジュピター HD 189733b では,このライマンアルファ線の吸収が時間変動を示していることが分かっている.この現象の説明として,恒星の XUV の放射の変動か恒星風の変動,あるいはその両方の変動が考えられる.

ここでは 1D の惑星の高層大気の流体力学モデルと,3D の磁気流体力学 (MHD) 恒星風流れモデルを適用し,惑星軌道における恒星の XUV 輻射と恒星風の状況の変化による効果が,惑星周囲の中性水素分布にどう影響を及ぼすかの計算を行った.これは,高エネルギー中性原子の生成と,それに関連したライマンアルファ線でのトランジットの特徴を含む.

その結果,恒星の XUV フラックスが 1.8 × 104 erg cm-2 s-1 の場合に,2011 年に観測されたライマンアルファ線での観測を再現可能であることがわかった.このフラックスは,この恒星の活動としては典型的な値である.なお,トランジットの 8 時間前に観測されたフレアと同じパラメータは,トランジットの特徴に大きな変化をもたらしたとは考えられない.

ライマンアルファ線の吸収は大気の拡大に占められることを見出し,高エネルギー中性原子の寄与は無視できる.従って,吸収の度合いは恒星風のパラメータには依存しない.

ライマンアルファ線でのトランジット時の吸収は,典型的な恒星の XUV と恒星風のパラメータでモデル化出来るため,2010 年にライマンアルファ線での吸収が検出されなかったことは,典型的な状態ではない恒星のパラメータに影響された可能性がある.例えば,非常に強度や形状が異なる恒星の XUV 放射スペクトル,あるいはトランジット吸収の決定に影響するライマンアルファ線の時間的・空間的変動などである.

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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1903.09157
Reichert et al. (2019)
Precise radial velocities of giant stars. XII. Evidence against the proposed planet Aldebaran b
(巨星の精密な視線速度 XII.提案されている惑星アルデバランb への反証)

概要

K 型巨星アルデバラン (α Tau) の視線速度変動は,1990 年代前半に初めて存在が報告された.その後の解析では,視線速度の変動は ~629 日周期で,数木星質量の惑星によって引き起こされると解釈されてきた.

ここでは,アルデバラン周りに系外惑星アルデバランb が存在するという仮説についてさらなる調査を行った.
リック天文台の 165 セットの新しい視線速度測定と,7 つの既に公開されたデータセットを合わせ,373 セットの視線速度測定結果を得た.

これらの観測データの統計的な解析を実行し,視線速度にケプラーモデルがよく合うかどうかを調査した.また仮説上の 2 つの惑星の解の力学的な安定性解析を行った.さらに,観測された視線速度変動の原因として,振動星の対流モードに起因するという可能性について議論した.


視線速度データへの最も良いケプラーフィットでは,仮説上の惑星の周期は過去に報告されているよりも短く (607 日),また大きい軌道離心率 (0.33) を得た.しかし,そのフィットの後の視線速度の残差は依然として大きく,標準偏差は 117 m s-1 であった.

2006〜2007 年には,620 日程度の周期の統計的検出力が,一時的だが有意な減少を見せた.検出力の増加を年代の逆順にプロットすると,最新のデータ中には 620 日程度の周期が明確に存在するが,2006 年頃以前に取得されたデータでは存在しなかった.さらに,視線速度データと軌道の解の間にある見かけの位相のずれが特定の段階で観測可能である.

2 つの惑星を仮定したケプラーフィットは,単一の惑星を仮定した解よりもずっとよく一致するが,この場合は深刻な力学的安定性の問題を抱えている.

リック天文台での観測で得られた視線速度データは,アルデバラン周りに準恒星質量の伴星が存在するという仮説に対してさらなる支持は与えず,仮説を弱める結果となった.観測された視線速度の変動のもっともらしい代替仮説は,振動性の対流モードである.

アルデバランの視線速度変動

K 型巨星であるアルデバランの視線速度データでは,643 日周期の弱い変動が存在することが報告されている (Hatzes & Cochran 1993).これは太陽型星周りの系外惑星の初検出の 2 年前のことであったが,

彼らはこの変動の原因として,最小質量が 11.4 木星質量の惑星質量の伴星が存在することが原因であるとの可能性を考慮していた (恒星質量が 2.5 太陽質量とした場合).これは,観測された変動の周期は恒星の動径方向の脈動によるものとしては長すぎたからである.しかし彼らは,恒星表面の特徴による自転性の変動や,非動径方向の脈動による変動である可能性は否定しなかった.

その後の解析では,643 日程度の周期性は,スペクトル線の形状の解析では現れていなかった (Hatzes & Cochran 1998).しかし彼らは 50 日の周期をスペクトル線の二等分線の測定中に発見し,これは恒星の振動によるものだと推定した.

Gatewood (2008) によるアストロメトリの測定では,(Hatzes & Cochran 1998) によって報告された惑星仮説を否定はできなかったが,その報告よりも天体の質量は軽いと注記した.Gatewood (2008) では仮説上の天体の質量は 3-4 木星質量であり,Hatzes & Cochran (1998) が導出した 11 木星質量ほどは大きくないとした.

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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1903.09151
MacDonald & Madhusudhan (2019)
The Metal-Rich Atmosphere of the Neptune HAT-P-26b
(海王星型惑星 HAT-P-26b の金属豊富な大気)

概要

透過光分光観測は,数多くの巨大系外惑星の大気中の H2O 存在度の詳細な測定を可能にしている.ホットジュピターでは,水の存在度を金属量と結び付けることで惑星の形成環境を探る強力なツールとなる.しかし,海王星質量の系外惑星の金属量測定はわずかな例しか行われていない.

海王瀬質量の系外惑星は,水が豊富な,そして固体成分が豊富な微惑星の降着によって,太陽を超える金属量を持つと考えられる.しかし系外海王星型惑星 HAT-P-26b の初期探査では,惑星形成のコア降着理論から予測される金属量,および天王星や海王星の値から期待される金属量よりも有意に低い金属量であることが示唆されている.

ここでは全ての利用可能な観測データを組み合わせ,HAT-P-26b の徹底した大気復元解析を行った.この解析は,惑星大気の組成,温度構造,雲の特性を解き明かすことを目的としている.

その結果,この惑星の大気の水蒸気含有率は 1.5 (+2.1, -0.9)%,O/H 比は太陽の値の 18.1 (+25.9, -11.3) 倍,C/O 比は < 0.33 (2σ の上限値) と推定された.今回の改定された金属量は,系外海王星型惑星に対して報告された中では現時点で最も正確なものである.

この結果は,大量の微惑星降着を伴う形成過程で形成されたことを示唆しているが,海王星と天王星の金属量よりは低い.

また 4.1σ の信頼度で水素化金属が存在する兆候も報告された.考えられる候補物質は,TiH (3.6σ),CrH (2.1),ScH (1.8σ) である.
推定される平衡温度 563 K で水素化金属を気相に保っておくためには,強い非平衡な化学過程か,外部からの供給が必要である.

最後に,将来のジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡 (James Webb Space Telescope, JWST) での観測をシミュレーションした.現在の観測と整合的な大気組成であることを仮定すると,水蒸気は 20σ,メタンは 5.2σ,二酸化炭素は 13σ,一酸化炭素は 3.7σ で検出できると予測される.そのため,金属量と C/O 比の測定値を 0.2 dex と 0.35 dex 改善できることが期待される.
また,JWST の NIRISS を用いた観測で,いくつかの水素化金属を 5σ 以上の信頼度で検出できるだろう.

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