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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1902.05998
Hobson et al. (2019)
The SOPHIE search for northern extrasolar planets XV. A Warm Neptune around the M-dwarf Gl378
(北天の系外惑星の SOPHIE による探査 XV.M 矮星グリーゼ378まわりのウォームネプチューン)
中心星はスペクトル型が M1 で,太陽金属量であり,距離は 14.96 pc である.
視線速度観測からは,単一の惑星グリーゼ378b が検出された.惑星の最小質量は 13.02 地球質量,軌道周期は 3.82 日である.
この惑星は,ホットネプチューン砂漠 (惑星の発見数が少ないパラメータ領域) の下限に位置している.M 型星周りのその様な数少ない惑星の一つであることから,この惑星はこれらの近接惑星の進化の歴史に対して重要な情報を与えるだろう.特に,軌道離心率が 0.1 とやや大きいことは,高軌道離心率の軌道を介した軌道移動を起こした可能性であるかもしれない.また,中心星からの輻射によってエンベロープの一部を失った可能性がある.
質量:0.56 太陽質量
半径:0.56 太陽半径
距離:14.9609 pc
有効温度:3879 K
光度:0.06 太陽光度
金属量:[Fe/H] = 0.06
軌道離心率:0.109
軌道長半径:0.039435 AU
最小質量:13.02 地球質量
arXiv:1902.05998
Hobson et al. (2019)
The SOPHIE search for northern extrasolar planets XV. A Warm Neptune around the M-dwarf Gl378
(北天の系外惑星の SOPHIE による探査 XV.M 矮星グリーゼ378まわりのウォームネプチューン)
概要
M 矮星グリーゼ378 を公転するウォームネプチューンの検出を報告する.この惑星は,Observatoire de Haute-Provence の SOPHIE 分光器を用いた視線速度測定より発見された.観測は,M 型矮星周りの惑星を発見するのを目的とした,SOPHIE 系外惑星コンソーシアムのサブプログラムの一貫として行われた.中心星はスペクトル型が M1 で,太陽金属量であり,距離は 14.96 pc である.
視線速度観測からは,単一の惑星グリーゼ378b が検出された.惑星の最小質量は 13.02 地球質量,軌道周期は 3.82 日である.
この惑星は,ホットネプチューン砂漠 (惑星の発見数が少ないパラメータ領域) の下限に位置している.M 型星周りのその様な数少ない惑星の一つであることから,この惑星はこれらの近接惑星の進化の歴史に対して重要な情報を与えるだろう.特に,軌道離心率が 0.1 とやや大きいことは,高軌道離心率の軌道を介した軌道移動を起こした可能性であるかもしれない.また,中心星からの輻射によってエンベロープの一部を失った可能性がある.
パラメータ
グリーゼ378
スペクトル型:M1質量:0.56 太陽質量
半径:0.56 太陽半径
距離:14.9609 pc
有効温度:3879 K
光度:0.06 太陽光度
金属量:[Fe/H] = 0.06
グリーゼ378b
軌道周期:3.822 日軌道離心率:0.109
軌道長半径:0.039435 AU
最小質量:13.02 地球質量
PR
論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1902.06004
Díaz et al. (2019)
The SOPHIE search for northern extrasolar planets. XIV. A temperate (Teq∼300 K) super-earth around the nearby star Gliese 411
(北天の系外惑星の SOPHIE による探査 XIV.近傍星グリーゼ411 まわりの温暖な (平衡温度 ~ 300 K) スーパーアース)
現在のデータでは 12.95 日周期とその 1 日のエイリアスである 1.08 日周期を区別することは出来ないが,前者の解がわずかに好ましい.測定された視線速度の振幅は 1.6 m s-1 であり,SOPHIE で検出された中では現在のところ最も低振幅のシグナルである.
このシグナルの有意性と,その起源の詳細な解析を行った.この解析は,恒星活動によって誘起されるシグナルによる非相関・相関ノイズの広範のシミュレーションを含む.
その結果,シグナルは有意に検出され,全ての試験の結果はこのシグナルが惑星起源であることを示した.さらに,視線速度の時系列におけるさらなる変動が存在することが現在のデータから示唆される.
一方で,この恒星に対してこれまでに HIRES を用いて報告されていた 9.9 日周期のシグナルは,SOPHIE のデータ中では発見されなかった.HIRES のデータセットの独立した再解析でもこの周期を発見することに失敗した.
もし 12.95 日周期が実際のものであるとすると,SOPHIE で検出されたシグナルの振幅は,惑星グリーゼ411b が存在することを示唆する.惑星の最小質量はおよそ 3 地球質量,軌道長半径は 0.079 AU である.
惑星は地球のおよそ 3.5 倍の日射を受けており,平衡温度は 255-350 K である.そのためハビタブルゾーンには高温すぎる.この惑星系は地球からの距離がわずか 2.5 pc であり,これまでに発見された低質量の惑星の中では 3 番目に近い.地球に近いことから,次の十年の高コントラストの撮像と高分散分光によって大気を探査できるだろう.
アストロメトリ観測では,van de Kamp & Lippincott (1951) によって,離心軌道にある 1.14 年周期の伴星の存在が報告された.この時推定された伴星の最小質量は 0.03 太陽質量であった.この結果は後に Lippincott (1960) で修正され,8 年周期で最小質量は 0.01 太陽質量とされ,これは 10 木星質量程度に相当する.
さらに最近では,Gatewood (1996) でアストロメトリ観測から 5.8 年周期のシグナルの検出が報告された.この観測では惑星は 0.9 木星質量と示唆された.
ただしこれらの惑星の検出は,現在までに確認されていない.
また HIRES 分光器を用いた視線速度の観測では,Butler et al. (2017) が 9.9 日周期の周期シグナルを検出しており,最小質量が 3.8 地球質量の惑星の存在を報告している.
距離:2.5468 pc
有効温度:3563 K
自転周期:56.15 日
質量:0.386 太陽質量
半径:0.389 太陽半径
光度:0.0220 太陽光度
軌道離心率:0.22
最小質量:2.99 地球質量
軌道長半径:0.0785 AU
平衡温度:349.83 K (アルベド0.3) - 255.77 K (アルベド0.8)
これは過去の解析手法の違いによるものである可能性がある.結果の差異に関する詳細な調査が将来的に必要である.
注意点として,HIRES データの窓関数は,Butler et al. (2017) で報告されている仮説上の惑星の軌道周波数に一致するピークを含んでいる.これは最も重要な窓関数のピークからは大きく離れているものの,Rajpaul et al. (2015) によるアルファ・ケンタウリB の観測・解析結果を考慮すると,報告されたシグナルの性質には疑問を投げかける必要がある.特に,解析を行う前にデータから差し引かれている永年加速度のような低周波数の項を視線速度が含むことが分かっている場合はその必要性がある.
視線速度変動には 1.08 日周期のエイリアスも有意に見られたが,これが実際の周期性かどうかの結論は現在のデータでは不明である.しかし低質量星周りでの非常に短周期の惑星の存在頻度は,10 日周期のスーパーアース惑星のものよりもずっと低いことが分かっている (Sanchis-Ojeda et al. 2014,Bonfils et al. 2013).このことも,現実のシグナルは 12.9 日周期のものだということを補強する.
いずれにせよ,さらなる高頻度の観測がこの周期をより詳細に区別するのに役立つだろう.
発見された惑星は,スペクトル型 M2 の主星から 0.079 AU の距離を公転している.ハビタブルゾーンの内縁より内側を公転しているため,表面に液体の水を持てないだろう.
arXiv:1902.06004
Díaz et al. (2019)
The SOPHIE search for northern extrasolar planets. XIV. A temperate (Teq∼300 K) super-earth around the nearby star Gliese 411
(北天の系外惑星の SOPHIE による探査 XIV.近傍星グリーゼ411 まわりの温暖な (平衡温度 ~ 300 K) スーパーアース)
概要
SOPHIE 分光器を用いた分光観測で,近傍の M 型星グリーゼ411 での周期的な視線速度の変動が報告された.現在のデータでは 12.95 日周期とその 1 日のエイリアスである 1.08 日周期を区別することは出来ないが,前者の解がわずかに好ましい.測定された視線速度の振幅は 1.6 m s-1 であり,SOPHIE で検出された中では現在のところ最も低振幅のシグナルである.
このシグナルの有意性と,その起源の詳細な解析を行った.この解析は,恒星活動によって誘起されるシグナルによる非相関・相関ノイズの広範のシミュレーションを含む.
その結果,シグナルは有意に検出され,全ての試験の結果はこのシグナルが惑星起源であることを示した.さらに,視線速度の時系列におけるさらなる変動が存在することが現在のデータから示唆される.
一方で,この恒星に対してこれまでに HIRES を用いて報告されていた 9.9 日周期のシグナルは,SOPHIE のデータ中では発見されなかった.HIRES のデータセットの独立した再解析でもこの周期を発見することに失敗した.
もし 12.95 日周期が実際のものであるとすると,SOPHIE で検出されたシグナルの振幅は,惑星グリーゼ411b が存在することを示唆する.惑星の最小質量はおよそ 3 地球質量,軌道長半径は 0.079 AU である.
惑星は地球のおよそ 3.5 倍の日射を受けており,平衡温度は 255-350 K である.そのためハビタブルゾーンには高温すぎる.この惑星系は地球からの距離がわずか 2.5 pc であり,これまでに発見された低質量の惑星の中では 3 番目に近い.地球に近いことから,次の十年の高コントラストの撮像と高分散分光によって大気を探査できるだろう.
グリーゼ411について
グリーゼ411 (Gl411, Gliese 411, Lalande 21185, HD 95735) は,最も明るい M 型星のひとつである.そのためこれまでにも多数の観測が行われてきた.アストロメトリ観測では,van de Kamp & Lippincott (1951) によって,離心軌道にある 1.14 年周期の伴星の存在が報告された.この時推定された伴星の最小質量は 0.03 太陽質量であった.この結果は後に Lippincott (1960) で修正され,8 年周期で最小質量は 0.01 太陽質量とされ,これは 10 木星質量程度に相当する.
さらに最近では,Gatewood (1996) でアストロメトリ観測から 5.8 年周期のシグナルの検出が報告された.この観測では惑星は 0.9 木星質量と示唆された.
ただしこれらの惑星の検出は,現在までに確認されていない.
また HIRES 分光器を用いた視線速度の観測では,Butler et al. (2017) が 9.9 日周期の周期シグナルを検出しており,最小質量が 3.8 地球質量の惑星の存在を報告している.
パラメータ
グリーゼ411
スペクトル型:M1.9距離:2.5468 pc
有効温度:3563 K
自転周期:56.15 日
質量:0.386 太陽質量
半径:0.389 太陽半径
光度:0.0220 太陽光度
グリーゼ411b
軌道周期:12.9532 日軌道離心率:0.22
最小質量:2.99 地球質量
軌道長半径:0.0785 AU
平衡温度:349.83 K (アルベド0.3) - 255.77 K (アルベド0.8)
過去の惑星検出の主張との比較
van de Kamp & Lippincott (1951) および Lippincott (1960)
SOPHIE の視線速度観測では,van de Kamp & Lippincott (1951) および Lippincott (1960) での伴星・惑星の存在主張は否定される.それぞれ 1 km s-1 と 265 m s-1 の振幅のシグナルが視線速度に見られるはずであるが,この大きさの変動は検出されていない.Gatewood (1996)
Gatewood (1996) での主張では惑星の傾斜角の情報が不明だが,45° という値を仮定すると,視線速度変動の振幅が 18.5 m s-1,周期 5.8 年が見られるはずであるが,このような変動は見られなかった.Butler et al. (2017)
Butler et al. (2017) は,9.8693 日周期で 3.8 地球質量相当のシグナルを HIRES で検出したと報告している.しかしこのシグナルは,SOPHIE では検出可能な水準にもかかわらず発見されなかった.また,HIRES の参照可能なデータの再解析でも発見できなかった.これは過去の解析手法の違いによるものである可能性がある.結果の差異に関する詳細な調査が将来的に必要である.
注意点として,HIRES データの窓関数は,Butler et al. (2017) で報告されている仮説上の惑星の軌道周波数に一致するピークを含んでいる.これは最も重要な窓関数のピークからは大きく離れているものの,Rajpaul et al. (2015) によるアルファ・ケンタウリB の観測・解析結果を考慮すると,報告されたシグナルの性質には疑問を投げかける必要がある.特に,解析を行う前にデータから差し引かれている永年加速度のような低周波数の項を視線速度が含むことが分かっている場合はその必要性がある.
結論
SOPHIE の長期間にわたる観測により,グリーゼ411 の周囲に 2.99 地球質量の惑星グリーゼ411b が 12.95 日周期で存在することが判明した.視線速度変動には 1.08 日周期のエイリアスも有意に見られたが,これが実際の周期性かどうかの結論は現在のデータでは不明である.しかし低質量星周りでの非常に短周期の惑星の存在頻度は,10 日周期のスーパーアース惑星のものよりもずっと低いことが分かっている (Sanchis-Ojeda et al. 2014,Bonfils et al. 2013).このことも,現実のシグナルは 12.9 日周期のものだということを補強する.
いずれにせよ,さらなる高頻度の観測がこの周期をより詳細に区別するのに役立つだろう.
発見された惑星は,スペクトル型 M2 の主星から 0.079 AU の距離を公転している.ハビタブルゾーンの内縁より内側を公転しているため,表面に液体の水を持てないだろう.
論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1902.04100
Moro-Martín et al. (2019)
Could 1I/'Oumuamua be an icy fractal aggregate ejected from a protoplanetary disk? A fluffy radiation-pressure-driven scenario
(オウムアムアは原始惑星系円盤から放出された氷のフラクタル凝集体でありうるか?空隙率の高い放射圧駆動シナリオ)
非重力的な加速については,オウムアムアからの脱ガスによるとする仮説が提案されている.しかしスピッツァー宇宙望遠鏡の観測からの脱ガス量への厳しい上限値を考えると,一般的な揮発性物質の相対的な存在量が彗星のものと大幅に異なっていない限り,脱ガス由来の加速とは考えづらいという事が指摘されている (Trilling et al. 2018).
代替説として Bialy & Loeb (2018) では,この特徴的な加速は太陽の輻射圧によるものだと提案している.この仮説が正しかった場合オウムアムアは,未知の天然の物質もしくは人工物による平面状のシート形状をしている必要があると考えられる.
ここでは,輻射圧によって非重力的な加速が発生しているとする仮説について,オウムアムアの形状ではなく内部構造の違いによってこの仮説を支持し得るかを評価した.
天体の内部がフラクタル構造であることを仮定する.この場合,非重力的な加速を輻射圧で説明するのに必要な面積質量比を実現するためには,オウムアムアは非常に空隙の多い 10-5 g cm-3 程度の密度を持つ必要がある.
このような空隙率の高いアグリゲイトは,原始惑星系円盤のスノーラインを超えたところでの氷ダスト粒子の衝突成長によって自然に形成されうる.そのためオウムアムアはこのような部類に属する天体であると提案する.
この仮説はさらなる調査を行う価値がある.なぜなら,もしこの仮説が本当であれば,オウムアムアは他の恒星の周りでの惑星の材料物質を研究するための新しい観測ウィンドウを開いた可能性があること,また惑星形成モデルにこれまでにない制約を与えることが可能であるからである.
arXiv:1902.04100
Moro-Martín et al. (2019)
Could 1I/'Oumuamua be an icy fractal aggregate ejected from a protoplanetary disk? A fluffy radiation-pressure-driven scenario
(オウムアムアは原始惑星系円盤から放出された氷のフラクタル凝集体でありうるか?空隙率の高い放射圧駆動シナリオ)
概要
オウムアムアは初めての星間空間からの天体であり,非重力的な加速も見せていることが報告されている (Micheli et al. 2018).非重力的な加速については,オウムアムアからの脱ガスによるとする仮説が提案されている.しかしスピッツァー宇宙望遠鏡の観測からの脱ガス量への厳しい上限値を考えると,一般的な揮発性物質の相対的な存在量が彗星のものと大幅に異なっていない限り,脱ガス由来の加速とは考えづらいという事が指摘されている (Trilling et al. 2018).
代替説として Bialy & Loeb (2018) では,この特徴的な加速は太陽の輻射圧によるものだと提案している.この仮説が正しかった場合オウムアムアは,未知の天然の物質もしくは人工物による平面状のシート形状をしている必要があると考えられる.
ここでは,輻射圧によって非重力的な加速が発生しているとする仮説について,オウムアムアの形状ではなく内部構造の違いによってこの仮説を支持し得るかを評価した.
天体の内部がフラクタル構造であることを仮定する.この場合,非重力的な加速を輻射圧で説明するのに必要な面積質量比を実現するためには,オウムアムアは非常に空隙の多い 10-5 g cm-3 程度の密度を持つ必要がある.
このような空隙率の高いアグリゲイトは,原始惑星系円盤のスノーラインを超えたところでの氷ダスト粒子の衝突成長によって自然に形成されうる.そのためオウムアムアはこのような部類に属する天体であると提案する.
この仮説はさらなる調査を行う価値がある.なぜなら,もしこの仮説が本当であれば,オウムアムアは他の恒星の周りでの惑星の材料物質を研究するための新しい観測ウィンドウを開いた可能性があること,また惑星形成モデルにこれまでにない制約を与えることが可能であるからである.
論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1902.04268
Galanti et al. (2019)
Saturn's deep atmospheric flows revealed by the Cassini Grand Finale gravity measurements
(カッシーニ・グランドフィナーレ重力測定によって明らかになった土星の深層大気流)
カッシーニのグランドフィナーレ重力実験では,この疑問に初めて回答を与えることができる.この測定では,惑星の重力のハーモニクスは剛体の密度構造だけではなくその流れ場によっても影響を受けるという前提で.広い範囲の剛体の内部モデルと随伴する熱的風バランスを用いて,雲が存在する高度とそれよりも下部での最適な流れ構造を計算するというものである.
その結果,帯状風の深さがおよそ 8800 km にまで広がっているとした場合,観測された風とほぼ一致する風の分布で,カッシーニで測定された重力モーメントが説明可能である事が判明した.今回得られたこの解は,角運動量保存の観点からも一致し,また磁気流体力学的な制約とも整合するものである.
雲が存在する層での帯状風はカッシーニによる測定でよく分かっており,速度が 400 m s-1 に達する帯状風が赤道領域の広い範囲で測定されており,また高緯度領域ではいくつかの狭いジェットがあることが分かっている (Garcia-Melendo et al. 2011).
この流れは南北の半球の大部分で対称的であり,中緯度から高緯度では小さい非対称性成分が見られる.
しかし,上部対流圏と中部対流圏で観測されている風の強さの変動を除くと,雲層より下での大気の流れの性質についてはほとんど分かっていない.惑星内部を探るためには,惑星の重力場の精密な測定から導かれる重力モーメントの情報が必要である.カッシーニの観測では,典型的な内部の剛体モデルから予測される重力モーメントとは異なる結果が得られた.
ガス惑星内部での大気の流れは,角運動量の制限を考えると自転軸に平行に揃っていることが期待されるが,その流れが雲がある高度で観測されている風でよく表されているかは明確ではない.
まず,雲が存在する層での風の感度は ± 20 m s-1 である.二番目に,大気の上層と中層での風には最大 ± 100 m s-1 の速度差がある.ただしこれは赤道付近での速度差であり,中緯度ではその差は ± 20 m s-1 になる.
そのため重力的なシグナルに対応する深さ (数千 km 程度) での流れは,雲がある高度で観測される風の流れとは異なる可能性がある.
arXiv:1902.04268
Galanti et al. (2019)
Saturn's deep atmospheric flows revealed by the Cassini Grand Finale gravity measurements
(カッシーニ・グランドフィナーレ重力測定によって明らかになった土星の深層大気流)
概要
土星の帯状風が雲の下のどれくらいの深さまで存在しているかは,長い間にわたって謎だった.これは大気力学の重要な問題というだけではなく,内部の密度構造,組成,磁場とコア質量という観点からも重要な問題である.カッシーニのグランドフィナーレ重力実験では,この疑問に初めて回答を与えることができる.この測定では,惑星の重力のハーモニクスは剛体の密度構造だけではなくその流れ場によっても影響を受けるという前提で.広い範囲の剛体の内部モデルと随伴する熱的風バランスを用いて,雲が存在する高度とそれよりも下部での最適な流れ構造を計算するというものである.
その結果,帯状風の深さがおよそ 8800 km にまで広がっているとした場合,観測された風とほぼ一致する風の分布で,カッシーニで測定された重力モーメントが説明可能である事が判明した.今回得られたこの解は,角運動量保存の観点からも一致し,また磁気流体力学的な制約とも整合するものである.
土星の帯状風
土星の雲層の下が静穏なのか,あるいは強い帯状風が存在するのかは,長い間にわたって未解決の問題だった.雲が存在する層での帯状風はカッシーニによる測定でよく分かっており,速度が 400 m s-1 に達する帯状風が赤道領域の広い範囲で測定されており,また高緯度領域ではいくつかの狭いジェットがあることが分かっている (Garcia-Melendo et al. 2011).
この流れは南北の半球の大部分で対称的であり,中緯度から高緯度では小さい非対称性成分が見られる.
しかし,上部対流圏と中部対流圏で観測されている風の強さの変動を除くと,雲層より下での大気の流れの性質についてはほとんど分かっていない.惑星内部を探るためには,惑星の重力場の精密な測定から導かれる重力モーメントの情報が必要である.カッシーニの観測では,典型的な内部の剛体モデルから予測される重力モーメントとは異なる結果が得られた.
ガス惑星内部での大気の流れは,角運動量の制限を考えると自転軸に平行に揃っていることが期待されるが,その流れが雲がある高度で観測されている風でよく表されているかは明確ではない.
まず,雲が存在する層での風の感度は ± 20 m s-1 である.二番目に,大気の上層と中層での風には最大 ± 100 m s-1 の速度差がある.ただしこれは赤道付近での速度差であり,中緯度ではその差は ± 20 m s-1 になる.
そのため重力的なシグナルに対応する深さ (数千 km 程度) での流れは,雲がある高度で観測される風の流れとは異なる可能性がある.
論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1902.04188
Wang & Dai (2019)
Dusty outflows in planetary atmospheres: Understanding "super-puffs" and transmission spectra of sub-Neptunes
(惑星大気中のダストの多いアウトフロー:「スーパーパフ」とサブネプチューンの透過スペクトルの理解)
さらに謎なのは,スーパーパフは大気のスケールハイトが 3000 km 程度あるが,最近の観測ではケプラー51b と 51d では完全に平坦な透過スペクトルが見られていることである.
ここでは,両方の観測を説明する新しいシナリオについて調査を行った.
非静的な大気の流出 (10-10 地球質量/年程度以上) が,大気中の非常に小さいダスト粒子 (サイズ ~ 10Å,質量比 10-2 程度) を大気の高高度まで輸送する (気圧が 10-6 bar 未満) というシナリオを考える.高高度のダストが観測される惑星のトランジット半径を膨張させ,透過スペクトルを平坦にする.
過去の静的な大気モデルでは,大気中の雲を持ち上げたり,光化学ヘイズをその様な高高度で生成するのが困難だった.ここではこのシナリオを検証するために,透過スペクトルの波長の範囲を広げることを提案する.
もしこのシナリオが正しければ,ダストの多い大気アウトフローは,多数の若い (109 yr 未満),低質量 (10 地球質量程度以下) の系外惑星に影響を及ぼす.そのため透過光での大気の組成を調査する機会が制限され,観測される惑星のトランジット半径を膨張させ,惑星の質量-半径関係を隠すだろう.
arXiv:1902.04188
Wang & Dai (2019)
Dusty outflows in planetary atmospheres: Understanding "super-puffs" and transmission spectra of sub-Neptunes
(惑星大気中のダストの多いアウトフロー:「スーパーパフ」とサブネプチューンの透過スペクトルの理解)
概要
Super-puffs (スーパーパフ) は,平均密度が 10-1 g cm-3 程度以下の異常に低密度の惑星である.このような惑星は表面重力が小さく,広がった大気は惑星系の年齢より十分短いタイムスケールで極端な流体力学的質量放出 (“boil off”) を起こす.さらに謎なのは,スーパーパフは大気のスケールハイトが 3000 km 程度あるが,最近の観測ではケプラー51b と 51d では完全に平坦な透過スペクトルが見られていることである.
ここでは,両方の観測を説明する新しいシナリオについて調査を行った.
非静的な大気の流出 (10-10 地球質量/年程度以上) が,大気中の非常に小さいダスト粒子 (サイズ ~ 10Å,質量比 10-2 程度) を大気の高高度まで輸送する (気圧が 10-6 bar 未満) というシナリオを考える.高高度のダストが観測される惑星のトランジット半径を膨張させ,透過スペクトルを平坦にする.
過去の静的な大気モデルでは,大気中の雲を持ち上げたり,光化学ヘイズをその様な高高度で生成するのが困難だった.ここではこのシナリオを検証するために,透過スペクトルの波長の範囲を広げることを提案する.
もしこのシナリオが正しければ,ダストの多い大気アウトフローは,多数の若い (109 yr 未満),低質量 (10 地球質量程度以下) の系外惑星に影響を及ぼす.そのため透過光での大気の組成を調査する機会が制限され,観測される惑星のトランジット半径を膨張させ,惑星の質量-半径関係を隠すだろう.
天文・宇宙物理関連メモ vol.101 Rajpaul et al. (2015) ケンタウルス座アルファ星Bbが誤認である可能性について