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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1811.01882
Nielsen et al. (2018)
A Jovian planet in an eccentric 11.5 day orbit around HD1397 discovered by TESS
(TESS により発見された HD 1397 周りの 11.5 日の離心軌道の木星型惑星)
TESS の観測結果と,CORALIE の視線速度測定と合わせて,中心星と惑星のパラメータ推定を行った.惑星は木星型であり,0.419 木星質量,1.023 木星半径である.
金属量:[Fe/H] = 0.254
年齢:45.2 億歳
質量:1.322 太陽質量
半径:2.328 太陽半径
光度:4.56 太陽光度
半径:1.023 木星半径
軌道長半径:0.1097 AU
軌道離心率:0.265
平衡温度:1228.0 K
質量:0.419 木星質量
平均密度:0.486 g cm-3
arXiv:1811.02156
Brahm et al. (2018)
HD 1397b: a transiting warm giant planet orbiting a V = 7.8 mag sub-giant star discovered by TESS
(HD 1397b:TESS によって発見された V = 7.8 等の準巨星を公転するトランジットする温暖な巨大惑星)
HD 1397b は 0.335 木星質量,1.021 木星半径の惑星で,V = 7.8 の明るい中心星を 11.53508 日で公転している,軌道はやや離心率が大きく e = 0.210 である.
中心星は太陽金属量であり,主系列段階から既に離れて進化している.
視線速度測定の中に長周期の加速の兆候が検出された,また 18 日程度の周期的なシグナルがあり,これは恒星活動による自転変動と解釈した.
この系はトランジット惑星を持つ恒星として知られている中では最も明るい系のひとつであり,進化した恒星を公転する巨大惑星の特性を特徴付けるための詳細なフォローアップ観測を行うことが出来る.
金属量:[Fe/H] = 0.04
質量:1.284 太陽質量
半径:2.314 太陽半径
光度:4.32 太陽光度
年齢:47 億歳
軌道離心率:0.210
質量:0.335 木星質量
半径:1.021 木星半径
軌道長半径:0.10866 AU
平衡温度:1213 K
異なるグループによる同じ系外惑星の発見報告です.どちらも最近打ち上げられた系外惑星探査衛星 TESS の同じデータを用いています.
arXiv:1811.01882
Nielsen et al. (2018)
A Jovian planet in an eccentric 11.5 day orbit around HD1397 discovered by TESS
(TESS により発見された HD 1397 周りの 11.5 日の離心軌道の木星型惑星)
概要
Transiting Exoplanet Survey Satellite (TESS) が,明るい主星周りの系外惑星探査の新時代を開いている.ここでは TESS によって検出された系外惑星 HD 1397b (TOI-120.01,TIC 394137592) の発見について報告する.V = 7.9 の明るい G 型星まわりを離心軌道で 11.54 日周期で公転する巨大惑星である.TESS の sector 1 で観測された.TESS の観測結果と,CORALIE の視線速度測定と合わせて,中心星と惑星のパラメータ推定を行った.惑星は木星型であり,0.419 木星質量,1.023 木星半径である.
パラメータ
HD 1397
有効温度:5528 K金属量:[Fe/H] = 0.254
年齢:45.2 億歳
質量:1.322 太陽質量
半径:2.328 太陽半径
光度:4.56 太陽光度
HD 1397b
軌道周期:11.53604 日半径:1.023 木星半径
軌道長半径:0.1097 AU
軌道離心率:0.265
平衡温度:1228.0 K
質量:0.419 木星質量
平均密度:0.486 g cm-3
arXiv:1811.02156
Brahm et al. (2018)
HD 1397b: a transiting warm giant planet orbiting a V = 7.8 mag sub-giant star discovered by TESS
(HD 1397b:TESS によって発見された V = 7.8 等の準巨星を公転するトランジットする温暖な巨大惑星)
概要
Transiting Exoplanet Survey Satellite (TESS) の Sector 1 の観測で惑星候補として最初に同定されたトランジット惑星の発見を報告する.精密な視線速度観測を行い,これが惑星であることを確認した.HD 1397b は 0.335 木星質量,1.021 木星半径の惑星で,V = 7.8 の明るい中心星を 11.53508 日で公転している,軌道はやや離心率が大きく e = 0.210 である.
中心星は太陽金属量であり,主系列段階から既に離れて進化している.
視線速度測定の中に長周期の加速の兆候が検出された,また 18 日程度の周期的なシグナルがあり,これは恒星活動による自転変動と解釈した.
この系はトランジット惑星を持つ恒星として知られている中では最も明るい系のひとつであり,進化した恒星を公転する巨大惑星の特性を特徴付けるための詳細なフォローアップ観測を行うことが出来る.
パラメータ
HD 1397
有効温度:5479 K金属量:[Fe/H] = 0.04
質量:1.284 太陽質量
半径:2.314 太陽半径
光度:4.32 太陽光度
年齢:47 億歳
HD 1397b
軌道周期:11.53508 日軌道離心率:0.210
質量:0.335 木星質量
半径:1.021 木星半径
軌道長半径:0.10866 AU
平衡温度:1213 K
異なるグループによる同じ系外惑星の発見報告です.どちらも最近打ち上げられた系外惑星探査衛星 TESS の同じデータを用いています.
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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1811.00935
Alam et al. (2018)
The HST PanCET Program: Hints of Na I & Evidence of a Cloudy Atmosphere for the Inflated Hot Jupiter WASP-52b
(The HST PanCET Program:膨張したホットジュピター WASP-52b の Na I の兆候と雲の多い大気の証拠)
中心星はやや活発な恒星であるため,All-Sky Automated Survey for Supernovae (ASAS-SN) と Tennessee State University’s Automatic Imaging Telescope (AIT) による地上からの測光モニタリングを用いて,恒星活動による影響をトランジット光度曲線に対して補正した.結果的に,トランジット深さを 90 ppm の精度で測定した.
大気モデルと比較したところ,雲の多いスペクトルと整合的であり,また惑星大気中のナトリウムの兆候が 2.3 σ の信頼度で検出された.しかし最も狭いスペクトルチャンネルでも,カリウムの吸収の観測可能な兆候は検出されなかった.
この惑星の可視光の透過スペクトルは,よく研究された膨張ホットジュピター HAT-P-1b と類似している.HAT-P-1b は,表面重力,平衡温度,質量,半径と恒星の輻射レベルが WASP-52b と類似している.しかし長波長では,WASP-52b と HAT-P-1b のベストフィットモデルは大きく異なる特性を予測し,これは ~ 1 µm より長波長での観測によって確認可能だろう.共通の大気特性と類似した系のパラメータを持った惑星の同定は,ジェームズウェッブ宇宙望遠鏡を用いた今後の大気の比較研究のために有用である.
arXiv:1811.00935
Alam et al. (2018)
The HST PanCET Program: Hints of Na I & Evidence of a Cloudy Atmosphere for the Inflated Hot Jupiter WASP-52b
(The HST PanCET Program:膨張したホットジュピター WASP-52b の Na I の兆候と雲の多い大気の証拠)
概要
膨張した半径を持つホットジュピター WASP-52b の可視光から近赤外線の透過スペクトルを観測した.ハッブル宇宙望遠鏡の Space Telescope Imaging Spectrograph (STIS) を用い,合計 3 回のトランジットを観測した,またスピッツァー宇宙望遠鏡の Infrared Array Camera (IRAC) で 3.6, 4.5 µm でのトランジットも観測した.中心星はやや活発な恒星であるため,All-Sky Automated Survey for Supernovae (ASAS-SN) と Tennessee State University’s Automatic Imaging Telescope (AIT) による地上からの測光モニタリングを用いて,恒星活動による影響をトランジット光度曲線に対して補正した.結果的に,トランジット深さを 90 ppm の精度で測定した.
大気モデルと比較したところ,雲の多いスペクトルと整合的であり,また惑星大気中のナトリウムの兆候が 2.3 σ の信頼度で検出された.しかし最も狭いスペクトルチャンネルでも,カリウムの吸収の観測可能な兆候は検出されなかった.
この惑星の可視光の透過スペクトルは,よく研究された膨張ホットジュピター HAT-P-1b と類似している.HAT-P-1b は,表面重力,平衡温度,質量,半径と恒星の輻射レベルが WASP-52b と類似している.しかし長波長では,WASP-52b と HAT-P-1b のベストフィットモデルは大きく異なる特性を予測し,これは ~ 1 µm より長波長での観測によって確認可能だろう.共通の大気特性と類似した系のパラメータを持った惑星の同定は,ジェームズウェッブ宇宙望遠鏡を用いた今後の大気の比較研究のために有用である.
論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1811.00011
Pinhas et al. (2018)
H2O abundances and cloud properties in ten hot giant exoplanets
(10 個の高温な巨大系外惑星の水存在度と雲の特性)
現在までに,ホットジュピターのいくつかの透過スペクトルが得られており,太陽金属量の雲なし大気を持つ場合の予測に比べて,水蒸気によるスペクトルの特徴の振幅が小さいことが分かっている.このような大気でのスペクトル振幅が小さい原因としては,大気の一部にエアロゾルが存在するためか,あるいは本質的に大気中の水の存在度が低いためかのどちらの可能性もあり得る.
最近の 10 個のホットジュピターにおける透過スペクトルのサーベイは,これらの大気の雲/ヘイズ特性を明らかにするために経験的な手法を用いたが,これらの惑星大気で水が欠乏している証拠は得られなかった.
ここでは,全体のサンプルで詳細かつ一様な大気復元解析を行い,大気中の水の存在度,雲の特性,昼夜境界の温度分布,化学種の検出の有意性について報告する.
その結果,ホットジュピターの大部分は昼夜境界領域では太陽より低い水の存在度と整合的であることを発見した.水の存在度の範囲は log(H2O) = -5.04 - -3.16 と推定される.太陽組成の化学平衡状態と比較すると,0.018 - 1.40 太陽組成に相当する.
水の他に,その他の化学種と雲・ヘイズ特性への統計的な制約についても報告する.これは大気の雲・ヘイズ被覆率も含み,これは 0.18 - 0.76 と推定される.
復元された水の存在度は,これらの惑星大気が太陽より低い酸素存在量を持っているか,あるいは太陽より大きい C/O 比を持っていることを示唆している.また高温な巨大惑星の形成と移動経路に対して重要な制約を与えうる.
arXiv:1811.00011
Pinhas et al. (2018)
H2O abundances and cloud properties in ten hot giant exoplanets
(10 個の高温な巨大系外惑星の水存在度と雲の特性)
概要
系外惑星の透過分光観測では,大気の化学組成を精密に測定できる可能性がある.特にホットジュピターの場合は,天体サイズが大きいことと温度が高いことから,そのような観測に適している.現在までに,ホットジュピターのいくつかの透過スペクトルが得られており,太陽金属量の雲なし大気を持つ場合の予測に比べて,水蒸気によるスペクトルの特徴の振幅が小さいことが分かっている.このような大気でのスペクトル振幅が小さい原因としては,大気の一部にエアロゾルが存在するためか,あるいは本質的に大気中の水の存在度が低いためかのどちらの可能性もあり得る.
最近の 10 個のホットジュピターにおける透過スペクトルのサーベイは,これらの大気の雲/ヘイズ特性を明らかにするために経験的な手法を用いたが,これらの惑星大気で水が欠乏している証拠は得られなかった.
ここでは,全体のサンプルで詳細かつ一様な大気復元解析を行い,大気中の水の存在度,雲の特性,昼夜境界の温度分布,化学種の検出の有意性について報告する.
その結果,ホットジュピターの大部分は昼夜境界領域では太陽より低い水の存在度と整合的であることを発見した.水の存在度の範囲は log(H2O) = -5.04 - -3.16 と推定される.太陽組成の化学平衡状態と比較すると,0.018 - 1.40 太陽組成に相当する.
水の他に,その他の化学種と雲・ヘイズ特性への統計的な制約についても報告する.これは大気の雲・ヘイズ被覆率も含み,これは 0.18 - 0.76 と推定される.
復元された水の存在度は,これらの惑星大気が太陽より低い酸素存在量を持っているか,あるいは太陽より大きい C/O 比を持っていることを示唆している.また高温な巨大惑星の形成と移動経路に対して重要な制約を与えうる.
論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1810.12766
Dybczyński & Królikowska (2018)
Have we missed an interstellar comet four years ago?
(我々は 4 年前の恒星間彗星を見逃していたのか?)
この天体は R. Wainscoat と R. Weryk によって,2014 年 12 月 5 日に小惑星センターのサーキュラー (CBET 4030) で発見が報告された.Pan-STARRS1 望遠鏡で 2014 年 11 月 25 日に発見された天体である.フォローアップ観測で 1-8 秒角レベルの認識可能なコマの存在が報告され,また僅かに尾が見られた.解析の結果,離心率の推定値は 1.653 ± 0.409 となる解もあり,双曲線軌道であることを示唆している.
arXiv:1810.12766
Dybczyński & Królikowska (2018)
Have we missed an interstellar comet four years ago?
(我々は 4 年前の恒星間彗星を見逃していたのか?)
概要
PANSTARRS による観測で,彗星 C/2014 W10 の新しい軌道要素が得られた.この天体の軌道離心率の推定値は 1.65 と明確な双曲線軌道であり,この彗星が星間起源であることを示唆している可能性がある.この重要かもしれないイベントが見逃された理由の可能性について議論し,様々なアーカイブデータ中にある,恒星間天体である可能性がある天体について追加の観測を行うことの必要性を提言する.この天体は R. Wainscoat と R. Weryk によって,2014 年 12 月 5 日に小惑星センターのサーキュラー (CBET 4030) で発見が報告された.Pan-STARRS1 望遠鏡で 2014 年 11 月 25 日に発見された天体である.フォローアップ観測で 1-8 秒角レベルの認識可能なコマの存在が報告され,また僅かに尾が見られた.解析の結果,離心率の推定値は 1.653 ± 0.409 となる解もあり,双曲線軌道であることを示唆している.
論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1810.11490
Bialy & Loeb (2018)
Could Solar Radiation Pressure Explain 'Oumuamua's Peculiar Acceleration?
(太陽放射圧はオウムアムアの奇妙な加速を説明できるか?)
このような天体の非重力的な加速は彗星では自然に起こることであり,彗星では表面から蒸発する物質によって加速が駆動される.しかし最近の観測と理論研究では,オウムアムアは活動的な彗星ではないことが示唆されている.
ここでは,太陽光圧によるオウムアムアの加速について検証を行った.その結果,観測された加速を太陽光圧で説明するのに必要な質量対面積比は,0.1 g cm-2 と推定される.薄いシート状の構造を考えた場合,これは厚みが 0.3 - 0.9 mm であることを要求する.これは天体としては著しく薄い値であるが,このような天体はガスとダスト粒子との衝突,自転や潮汐からの応力などに耐えて銀河系内を 5 kpc 程度の距離を生き延びることが出来ると結論付けた.
Micheli et al. (2018) ではオウムアムアの軌道を分析した結果,オウムアムアの非重力的な加速の検出を報告している.この加速の存在の統計的信頼度は 30σ である.Micheli et al. (2018) では,これは彗星活動による加速だと推定されている.
しかしオウムアムアは太陽に 0.25 AU の距離まで接近したにも関わらず,彗星活動の兆候は示していない.彗星の尾も,ガスの輝線や吸収線のいずれも観測されていない.理論的には,Rafikov (2018) は非重力的な加速が天体からの脱ガスによる加速だとした場合,脱ガスによるトルクがオウムアムアの自転を急速に進化させるため観測と一致しないことを指摘している.
では,もし彗星活動が原因でなかった場合,非重力的な加速の原因はなんだろうか?
ここでは,太陽光圧によってオウムアムアが加速されているという可能性について考慮した.
このような薄い天体が,ダスト粒子との衝突,ガス粒子との衝突でのエネルギー輸送でどの程度ダメージを受けるかなどを推定した.また自転や太陽との潮汐に耐えうる引張応力も推定した.その結果,チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星などで測定されている引張応力の典型値よりも十分小さいため,耐えうると結論付けた.
このような天体の起源について考察する.太陽系内の小惑星や彗星の質量対面積比は,今回推定されたものよりも数桁大きい.もし太陽光圧がオウムアムアの加速の原因である場合,オウムアムアは薄い恒星間物質という新しい分類に属するかもしれない.
もしオウムアムアが人工物起源だとすると,高度文明からのデブリとして恒星間天体を漂う太陽帆のような物体であるかもしれない.例えば,IKAROS や Starshot Initiative のような人工物である.
オウムアムアで観測されている非重力的な加速が,もし太陽光圧起源だとしたらオウムアムアはどのような天体である必要があるか?という趣旨の論文です.その結果非常に薄い天体である必要があるというのが論文の結論ですが,論文中で太陽系外文明の太陽帆のような物体である可能性に言及しており,ニュースではその部分が大きく取り上げられて話題になりました.
例:
「オウムアムア」の正体は異星人の探査機? ハーバード大の研究者が驚くべき論文
恒星間天体「オウムアムア」は宇宙人の探査機? - ハーバード大が論文発表
arXiv:1810.11490
Bialy & Loeb (2018)
Could Solar Radiation Pressure Explain 'Oumuamua's Peculiar Acceleration?
(太陽放射圧はオウムアムアの奇妙な加速を説明できるか?)
概要
恒星間天体 ’Oumuamua (1I/2017 U1) (オウムアムア) について,Micheli et al. (2018) では高い信頼度でケプラー軌道からのズレが見られることを報告している.そこでは,観測されたオウムアムアの軌跡は太陽からの距離の 2 乗に反比例する形の加速で説明できるとした.このような天体の非重力的な加速は彗星では自然に起こることであり,彗星では表面から蒸発する物質によって加速が駆動される.しかし最近の観測と理論研究では,オウムアムアは活動的な彗星ではないことが示唆されている.
ここでは,太陽光圧によるオウムアムアの加速について検証を行った.その結果,観測された加速を太陽光圧で説明するのに必要な質量対面積比は,0.1 g cm-2 と推定される.薄いシート状の構造を考えた場合,これは厚みが 0.3 - 0.9 mm であることを要求する.これは天体としては著しく薄い値であるが,このような天体はガスとダスト粒子との衝突,自転や潮汐からの応力などに耐えて銀河系内を 5 kpc 程度の距離を生き延びることが出来ると結論付けた.
背景
オウムアムアは,明確に双曲線軌道にあることが確認された初めての恒星間天体である (Meech et al. 2017).オウムアムアの光度曲線には,見かけの等級の大きな変動と非自明な周期変動が見られており,この天体が励起された自転状態 (タンブリング状態) にあり,極端なアスペクト比 (少なくとも 5:1 以上) を持つ天体だと推定されている (Fraser et al. 2018,Drahus et al. 2018).Micheli et al. (2018) ではオウムアムアの軌道を分析した結果,オウムアムアの非重力的な加速の検出を報告している.この加速の存在の統計的信頼度は 30σ である.Micheli et al. (2018) では,これは彗星活動による加速だと推定されている.
しかしオウムアムアは太陽に 0.25 AU の距離まで接近したにも関わらず,彗星活動の兆候は示していない.彗星の尾も,ガスの輝線や吸収線のいずれも観測されていない.理論的には,Rafikov (2018) は非重力的な加速が天体からの脱ガスによる加速だとした場合,脱ガスによるトルクがオウムアムアの自転を急速に進化させるため観測と一致しないことを指摘している.
では,もし彗星活動が原因でなかった場合,非重力的な加速の原因はなんだろうか?
ここでは,太陽光圧によってオウムアムアが加速されているという可能性について考慮した.
太陽光圧による加速
太陽光圧が加速源として十分働くためには,天体の質量対面積比 (あるいは有効幅) が非常に小さい必要がある.報告された非重力的加速を説明するためには,この値が 0.1 g cm-2 である必要があると推定される.これは 0.3 mm の厚さに相当する.天体の密度が 1 - 3 g cm-3 とすると,天体の厚みは 0.9 - 0.3 mm である必要がある.このような薄い天体が,ダスト粒子との衝突,ガス粒子との衝突でのエネルギー輸送でどの程度ダメージを受けるかなどを推定した.また自転や太陽との潮汐に耐えうる引張応力も推定した.その結果,チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星などで測定されている引張応力の典型値よりも十分小さいため,耐えうると結論付けた.
このような天体の起源について考察する.太陽系内の小惑星や彗星の質量対面積比は,今回推定されたものよりも数桁大きい.もし太陽光圧がオウムアムアの加速の原因である場合,オウムアムアは薄い恒星間物質という新しい分類に属するかもしれない.
もしオウムアムアが人工物起源だとすると,高度文明からのデブリとして恒星間天体を漂う太陽帆のような物体であるかもしれない.例えば,IKAROS や Starshot Initiative のような人工物である.
オウムアムアで観測されている非重力的な加速が,もし太陽光圧起源だとしたらオウムアムアはどのような天体である必要があるか?という趣旨の論文です.その結果非常に薄い天体である必要があるというのが論文の結論ですが,論文中で太陽系外文明の太陽帆のような物体である可能性に言及しており,ニュースではその部分が大きく取り上げられて話題になりました.
例:
「オウムアムア」の正体は異星人の探査機? ハーバード大の研究者が驚くべき論文
恒星間天体「オウムアムア」は宇宙人の探査機? - ハーバード大が論文発表
天文・宇宙物理関連メモ vol.948 Micheli et al. (2018) オウムアムアの軌跡における脱ガスによる非重力的加速
天文・宇宙物理関連メモ vol.995 Rafikov (2018) オウムアムアの自転状態進化と彗星という解釈への批判的考察