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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1806.06822
Haqq-Misra & Heller (2018)
Exploring exomoon atmospheres with an idealized general circulation model
(理想化された大循環モデルによる系外衛星大気の探査)

概要

最近の研究では,大きな系外衛星は木星よりも重い系外惑星の周りの降着円盤で形成可能だと考えられている.これらの惑星は太陽型星周りの 1 AU 周辺に多く,これらの惑星が持つ仮説上の衛星は居住可能性の研究対象として興味深い.

技術の発展により,ケプラーや,将来の CHEOPS や PLATO による宇宙空間からのミッションによって,系外衛星を発見することが可能になることが期待される.

系外衛星の気候は,系外惑星のものとは大きく異なる可能性がある.これは,衛星の昼夜サイクルは,公転周期と同期している衛星の自転によって決定されるからである.さらに,衛星大気上層への惑星からの放射と,衛星表面での潮汐加熱が大きいため,これらは系外衛星中でのエネルギー再分配に影響を及ぼす.

ここでは,理想化された general circulation model (大循環モデル) を,単純化した水理学,輻射と対流過程と合わせ,系外衛星の大気の計算を行った.太陽類似星から 1 AU の距離を公転する 10 木星質量の惑星を公転する,2.5 火星質量の衛星での表面温度,風速,平均子午面循環,エネルギー輸送を計算した.

その結果,若い巨大惑星からの強い熱輻射は,衛星の極域を温暖にする効果がある事が分かった.この効果は,氷アルベドフィードバックが存在しない場合の地球モデルで見られるものであり,力学的に駆動される極域の増幅と整合的である.

また,若く明るい巨大惑星からの水の多い系外衛星への熱輻射は,衛星からの水の損失を誘起するのに十分な強度を持つ.これにより,衛星での暴走温室が発生しうる.

惑星と同期自転をし,また暴走温室を経験しない衛星は,惑星からの照射による極の増幅と潮汐効果による地熱の加熱による,一定の極溶融を経験する可能性がある.

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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1806.04672
Rodenbeck et al. (2018)
Revisiting the exomoon candidate signal around Kepler-1625b
(ケプラー1625b まわりの系外衛星候補シグナルの再検討)

概要

木星サイズの系外惑星候補ケプラー1625b のトランジット測光観測から,この惑星を公転する衛星の存在を示すシグナルがあるという解釈が提案されている.この前例の無い系外衛星 (exomoon) 候補天体は,海王星と同程度のサイズだと推定されており,太陽系内のいかなる衛星とも似ていない.

ここでは,この系外衛星状のシグナルが,実際にケプラー1625b の周りを公転する大きな天体によって引き起こされているのか,あるいは恒星のシグナルや機器のノイズ,データのトレンド除去手続きによって引き起こされているものかを検討した.

モデルフィッティングのためのトランジットデータを準備するため,いくつかのトレンド除去手段を調査した.二次,三次,四次の多項式と,Cosine Filtering with Autocorrelation Minimization (CoFiAM) の導入を用いた.

その後,惑星系の天体が同一平面上にあると仮定した軌道力学の光度曲線シミュレータを与え,その結果として得られる惑星-衛星系のトランジット光度曲線を,ケプラーデータにフィッティングした.さらに,ベイズ情報量規準 (Bayesian information critetion, BIC) を用いて,単一の惑星によるトランジットか,惑星-衛星系によるトランジットのどちらが光度曲線変化の解釈としてもっともらしいかを評価した.

その結果,系外衛星的シグナルの統計的有意性と特徴は,トレンド除去手続き (多項式かコサインか) と,トレンド除去に選んだデータ,および光度曲線中に存在するギャップの扱いに強く依存することが分かった.

ケプラー1625b の現在参照可能なデータ中に系外衛星のシグナルが存在するという解釈には,トレンド除去過程が明確に重要であるという心配が存在する.さらなる高精度のトランジット観測によってこの影響は抑えられると考えられるが,それに必要な追加のデータは大きくなるだろう.

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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1806.04145
Stephan et al. (2018)
A-type Stars, the Destroyers of Worlds: The lives and deaths of Jupiters in evolving stellar binaries
(A 型星,世界の破壊者:進化する伴星系での木星型惑星の一生と死)

概要

ホットジュピターは中心星の周りを数日オーダーの周期で公転している.ホットジュピターは,比較的重い恒星 (1.6 - 2.4 太陽質量,つまり A 型星) 周りや,進化した恒星の周りを含む,銀河系内では一般的な存在である.

A 型主系列星の大部分は恒星質量の伴星を持っており,主星・伴星双方の周りにある惑星の力学的進化に強く影響を及ぼす.ここでは,遠方の恒星質量の伴星による重力的擾乱,いわゆる Eccentric Kozai-Lidov (EKL) 機構によって,主星の A 型星を公転する巨大ガス惑星の軌道進化が受ける影響を調査した.なお計算には,一般相対論効果,主系列段階後の恒星進化,潮汐効果を含んでいる.


その結果,A 型星は主系列星の間に,わずか 0.15% のみがホットジュピターを持ちうるということを見出した.

しかし新しい分類の惑星,"一時的なホットジュピター" (temporary hot Jupiters, THJs) が,主系列段階後の寿命の間に,かつて A 型主系列星であった恒星に対して一定の割合で形成されることも分かった (3.7%).
これらの一時的なホットジュピターは,10 - 100 日周期程度で中心星を公転し,中心星が膨張してきて飲み込まれるまでの数十万年の間のみ存在する.しかし一時的なホットジュピターは,恒星の光度が増すに伴い “古典的な” ホットジュピターと同じ表面温度になる.

一時的なホットジュピターの spin-orbit 角度 (恒星の自転軸と惑星の公転軸が成す角度) は,大部分がずれていると考えられる.

一時的なホットジュピターとそれらの中心星との潮汐相互作用は,中心星のエンベロープに大きな影響を及ぼす.一方で進化後に起きる惑星の飲み込みは中心星の自転を加速させ,また一時的な増光シグナルも起こす.これらの影響によって,一時的なホットジュピターが存在している時期である数十万年よりもずっと長い間に渡り,一時的なホットジュピターの痕跡を観測できるようになる.

全体としては,A 型星を公転している巨大ガス惑星のおよそ 70% は,いずれ中心星に破壊されるか,飲み込まれるかという運命を辿る.25% は中心星が主系列星の間に,45% は主系列段階後の進化の間に破壊されるか飲み込まれる.

計算のセットアップ

用いたのは,階層的三体系の力学的進化を追う,大規模モンテカルロシミュレーションである.
主星である恒星とそれを公転する木星サイズ惑星の比較的近距離の連星と,それらから離れた位置で恒星が外側の伴星として公転しているという連星系を考える.

中心星は 1.6 - 3.0 太陽質量の間とし,主系列段階では A 型星か小さい B 型星に相当する.この中心星は 1 つの木星質量惑星を持つと設定する.惑星は,サイズ・自転ともに木星と同じとする.
外側の伴星の質量は Duquennoy & Mayor (1991) の伴星質量分布から設定する.

惑星の軌道長半径は,1 - 10 AU まで一様な分布を持つと仮定し.外側の伴星の軌道長半径は同じく Duquennoy & Mayor (1991) の伴星分布から設定する.

惑星の初期の軌道離心率は 0.01 と小さい値に設定し,また spin-orbit angle も同様に小さい値とする.これは,惑星は原始惑星系円盤内で形成された仮定しているためである.

一方で外側の伴星は軌道離心率は 0 - 1 の間に一様分布させた.ただし軌道安定性を保証するため,外側の伴星の軌道長半径が ~ 10000 AU を超えるものは除外した.これは,軌道長半径が大きすぎる場合は,銀河潮汐によって比較的速く中心星から分離されてしまう傾向があるからである.
また,階層的三重星系の長期的な安定性を保証するため,惑星の軌道長半径と伴星の軌道長半径・離心率には一定の制約を与えた.また,内側惑星と外側伴星の軌道角運動量の傾斜角はコサインで一様になるように設定した.

全体で 4070 通りのシミュレーションを実行した.
計算の途中で惑星が恒星に接触したりロッシュ限界をまたいだ場合,そこで時間積分を停止した.

結果

全シミュレーションのうち,70% で木星型惑星の破壊が起き,中心星が白色矮星になるまで生き残ったのは 30% のみであった.

計算結果は大きく以下の 4 つのケースに分類される.

1. Classical Hot Jupiters (古典的なホットジュピター)

軌道周期が 10 日未満の (一般的な) ホットジュピターである.ホットジュピターの形成過程として,高軌道離心率移動モデルとして過去の研究で想定されていたものである.

これらの惑星は,中心星に近い短周期軌道に,中心星の主系列寿命の間に到達する.これは EKL による大きな軌道離心率と潮汐の効果が働いた結果である.

これらは,恒星が進化して半径が膨張すると,最終的には中心星に飲み込まれて破壊されることになる.進化の最中で,典型的には表面温度が 2000 - 5000 K に到達し,その後飲み込まれる.

全シミュレーションの 1.5% がこの結果になった.

2. Roche-limit crossers (ロッシュ限界を越える惑星)

これらは EKL 機構を介して非常に大きな軌道離心率に到達した惑星であり,中心星のロッシュ限界を横断したり恒星の表面をかすめたりする.

このような惑星の実際の運命は複雑である可能性があり (Dosopoulou et al. 2017).いくつかは生き残ることもあるだろうと考えられる.しかしここでは単純のため,全てをまとめて “Roche-limit crossers” と名付けた.

全シミュレーションの 31% で,惑星が中心星のロッシュ限界を越える Roche-limit crossers となった.23% は中心星が主系列星の間に,8% は主系列段階後に発生した.

主系列段階後の進化の間に恒星のロッシュ限界を越える惑星は,単に十分に高い離心率の励起が起きなかったか,主系列寿命の間は近い近点距離を持つには初期軌道が大きすぎたかだと考えられる.

3. “Temporary” Hot Jupiters ("一時的な" ホットジュピター)

これらの惑星は,中心星の主系列星でいる間には潮汐による円軌道化と軌道の減衰を経験できるような十分大きな軌道離心率には到達しなかったが,中心星が主系列段階を離れて巨星になるにつれてそれらを経験するようになったものである.

これらの全ては,表面温度と軌道離心率という文脈で,それらの寿命の短い間だけ事実上 "ホットジュピター" と分類できる

これらの一時的なホットジュピターは中心星が膨張を続けるにつれ,また潮汐相互作用によって惑星が恒星表面に近付くつれ,中心星に飲み込まれることになる.

中心星による惑星の飲み込み過程は中心星に高エネルギーの擾乱を引き起こし,これは観測可能である可能性がある (MacLeod et al. 2018など).

全シミュレーションの 37% がこの結果となった.
しかしそのうち 1/5 (全体の 7%) は,伴星による EKL 擾乱が無視できる場合でもこの結果に到達した.これは,惑星の初期の軌道長半径が 1-3 AU と恒星に近い場合に起きる.

惑星が一時的なホットジュピターの状態を保つのは数十万年の間だけであり,その後ロッシュローブを超えて中心星に飲み込まれる.しかし飲み込みの際に恒星のエンベロープに一定の影響を与え,また拡大する恒星のロッシュローブに入る前には表面温度は 2000 - 3000 K に到達する.

4. Surviving Jupiters (生き残る惑星)

これは中心星とは明確な作用を起こさず,中心星が白色矮星になるまで生き残る惑星である.

伴星による EKL 擾乱が惑星の軌道離心率を大きくするには弱すぎ,また中心星の主系列段階後の潮汐進化の影響を受けるには軌道長半径が大きい場合,この状態になる.このポピュレーションは主に,これらの惑星系の初期条件に関する我々の知識の欠如を示している.

全シミュレーションの 30% がこの段階に到達する.

少ない割合で (全体の 0.3%),恒星からの質量放出が系の軌道要素を変えるのに伴って惑星が破壊され,白色矮星に降着する.これは EKL 機構で生き残った惑星の軌道離心率が大きく励起され,最終的に白色矮星のロッシュ限界を越えて潮汐破壊されるという進化を辿るものである.この白色矮星表層の汚染機構は,Stephan et al. (2017) などで詳細に議論されている.

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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1806.03494
Peterson et al. (2018)
A 2 Earth Radius Planet Orbiting the Bright Nearby K-Dwarf Wolf 503
(明るい近傍の K 矮星ウォルフ503 を公転する 2 地球半径惑星)

概要

2009 年の打ち上げ以降,ケプラーは地球と海王星の中間サイズの惑星を多数発見している.

最近の系外惑星の半径分布の研究では,1.5 - 2.0 地球半径付近での分布のギャップが確認されており,ここを境に非公式に “スーパーアース” と “サブネプチューン” に分割されている.
このギャップの起源はよく分かっていない.これは主に,ケプラーで発見されている惑星の大部分は遠方の暗い恒星を公転しており,視線速度法でのフォローアップ観測やトランジット分光観測に適しておらず,惑星の密度や大気の測定が難しいことが原因である.


ここでは,2.03 地球半径の惑星ウォルフ403b をトランジット法によって新しく発見し,その特徴付けを行った.観測は,ケプラー K2 ミッションの Campaign 17 の期間中に行われた.

中心星のウォルフ403 (Wolf 403,EPIC 212779563) は J バンド等級が 8.32 と明るい恒星で,太陽系から 44.5 pc と近傍であり,固有運動が大きい.この恒星はスペクトル型は K3.5V 星と分類され,銀河系の厚い円盤に属する恒星である.

伴星の存在確率や偽陽性検出の確率を,アーカイブ画像とパロマー天文台での高コントラスト補償光学観測結果を用いて求めた.その結果,伴星の混入や偽陽性である可能性は非常に低いと考えられる.

中心星は明るいため,視線速度のフォローアップ観測や,ハッブルでのトランジット分光観測,ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡での大気の詳細な特長付けに適している.
この惑星の半径は,惑星半径と存在率分布のギャップの近くに位置しているため,半径ギャップの起源を理解する良い機会であるとともに,“スーパーアース” と “サブネプチューン” の分布の性質を知る良い機会となる.

パラメータ

ウォルフ403
距離:44.583 pc
年齢:110 億歳
スペクトル型:K3.5V
金属量:[Fe/H] = -0.47
有効温度:4716 K
質量:0.688 太陽質量
半径:0.690 太陽半径
光度:0.227 太陽光度
ウォルフ403b
軌道周期:6.00118 日
半径:2.030 地球半径
軌道長半径:0.0571 AU
日射量:地球の 69.6 倍
平衡温度:805 K (アルベドをゼロとした場合)

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arXiv:1806.03870
Bonfils et al. (2018)
Radial velocity follow-up of GJ1132 with HARPS. A precise mass for planet 'b' and the discovery of a second planet
(HAPRS での GJ 1132 の視線速度フォローアップ:惑星 b の精密な質量と 2 番目の惑星の発見)

概要

GJ 1132 は,トランジットする地球サイズの惑星 GJ 1132b を持つことが知られている,太陽系近傍の赤色矮星である.

GJ 1132b のトランジットが検出された後,HAPRS で集中的な視線速度のフォローアップ観測を行った.その結果,GJ 1132b を視線速度単独でも検出したことを確認し,観測データをもとに軌道要素を更新した.質量は 1.66 地球質量,密度は 6.3 g cm-3 であり,軌道離心率は 95% の信頼度で 0.22 未満である.


また,少なくとももう一つの惑星 GJ 1132c を新たに検出した

GJ 1132c はスーパーアースで,8.93 日周期,最小質量は 2.64 地球質量である.地球の 1.9 倍の日射量を受けており,平衡温度は温暖で,アルベドの範囲を 0.75 - 0.00 とすると平衡温度は 230 - 300 K である.この温度は,いわゆるハビタブルゾーンの内縁付近に相当する.

スピッツァーの観測では,GJ 1132c がトランジットを起こす軌道配置になっている可能性は否定され,トランジットを起こしている可能性は 1% 未満と推定される.


その他にも,GJ 1132(d) として 177 日周期の 3 番目の視線速度シグナルも検出された.このシグナルは,最小質量が 8.4 地球質量の惑星候補によるものか,もしくは恒星活動によって引き起こされるものである.

この 3 番目のドップラーシグナルは,今回の HAPRS の観測の中で最も強いものだったが,惑星ではなく,恒星の自転や磁気的周期によっても説明が可能である.一方で,シグナルの周期は恒星の自転周期として測定された値 (~ 125 日) とは異なり,マルコフ連鎖モンテカルロ計算を用いたベイズ統計解析とガウス過程では,相関ノイズよりもケプラー関数として良くシグナルを再現できることが分かった.

しかし,恒星活動に対して敏感な指標であるスペクトル指数のピリオドグラムは,この 3 番目のシグナルと同じ周期で超過を示す.また,恒星活動に誘起された視線速度のずれも,同様にケプラー関数によく一致する.最終的に,GJ 1132(d) のシグナルの原因については未決定としておく.

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