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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1710.00924
Han et al. (2017)
OGLE-2016-BLG-0613LABb: A Microlensing Planet in a Binary System
(OGLE-2016-BLG-0613LABb:連星系中のマイクロレンズ惑星)
このイベントでは,2 つの焦線スパイクを持った典型的な連星レンズイベントの光度曲線を示したが,2 つスパイクの間の溝部分で不連続な特徴が見られた.この不連続な特徴は,連星レンズ天体が持つ惑星によって生成されたものだと結論付けた.
レンズ系のパラメータの解は,4 つが縮退している,この縮退は,マイクロレンズイベントのパラメータ推定でよく知られている wide/close planetary 縮退のペアによるものである.
これらのうち 1 つの解は,観測された光度曲線をあまりよくフィット出来ないため,解である可能性から除外した.残りの 3 つの解は,もっともらしい主星の質量は 0.7 太陽質量で,惑星はスーパージュピタークラスの質量である.
どの解の場合においても,惑星系は銀河円盤の中にあり,銀河バルジへの距離の半分程度の位置にある.しかしこれらの 3 つの解のうちの 1 つは,連星系の伴星は低質量の褐色矮星となり,相対質量比は 1:0.03:0.003 となる.他の 2 つの解は,連星の質量は同程度となる.この 2 つの解の縮退は,レンズ天体とソース天体の相対固有運動から示唆される,レンズ天体とソース天体が光学的に分解して観測できるようになる頃 (2024 年ごろ) に区別できるようになるだろう.
arXiv:1710.00924
Han et al. (2017)
OGLE-2016-BLG-0613LABb: A Microlensing Planet in a Binary System
(OGLE-2016-BLG-0613LABb:連星系中のマイクロレンズ惑星)
概要
OGLE-2016-BLG-0613 の重力マイクロレンズイベントの解析結果について報告する.このイベントでは,2 つの焦線スパイクを持った典型的な連星レンズイベントの光度曲線を示したが,2 つスパイクの間の溝部分で不連続な特徴が見られた.この不連続な特徴は,連星レンズ天体が持つ惑星によって生成されたものだと結論付けた.
レンズ系のパラメータの解は,4 つが縮退している,この縮退は,マイクロレンズイベントのパラメータ推定でよく知られている wide/close planetary 縮退のペアによるものである.
これらのうち 1 つの解は,観測された光度曲線をあまりよくフィット出来ないため,解である可能性から除外した.残りの 3 つの解は,もっともらしい主星の質量は 0.7 太陽質量で,惑星はスーパージュピタークラスの質量である.
どの解の場合においても,惑星系は銀河円盤の中にあり,銀河バルジへの距離の半分程度の位置にある.しかしこれらの 3 つの解のうちの 1 つは,連星系の伴星は低質量の褐色矮星となり,相対質量比は 1:0.03:0.003 となる.他の 2 つの解は,連星の質量は同程度となる.この 2 つの解の縮退は,レンズ天体とソース天体の相対固有運動から示唆される,レンズ天体とソース天体が光学的に分解して観測できるようになる頃 (2024 年ごろ) に区別できるようになるだろう.
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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1710.00076
Dai et al. (2017)
The discovery and mass measurement of a new ultra-short-period planet: EPIC~228732031b
(新しい超短周期惑星の発見と質量測定:EPIC 228732031b)
新しい惑星は EPIC 228732031b であり,ケプラー K2 ミッションの Champaign 10 の観測によって検出された.中心星は G 型星 であり,惑星半径は 1.81 地球半径,軌道周期は 8.9 時間である.
Magellan/PFS と TNG/HARPS-N を用いて視線速度を取得した.その結果,惑星の軌道運動に伴う恒星活動の存在を検出した.
この観測から,惑星の質量を以下の 2 つの異なる手法で決定した.
(1) “floating chunk offset” method,同じ夜に観測された速度の変化のみに基づくもの,
(2) ガウス過程回帰,視線速度と測光データの両方にもとづくもの.
これらの結果はお互いに整合的であり,惑星質量は 6.5 ± 1.6 地球質量と推定された.また,平均密度は 6.0 (+3.0, -2.7) g cm-3 である.
よく知られているのはケプラー78b であり.この惑星はおおむね地球サイズで, 8.5 時間で太陽型星の周りを公転している (Sanchis-Ojeda et al. 2013など).
ケプラーのデータを用いることで,これまでに 100 個程度の超短周期惑星が報告されている (Sanchis-Ojeda et al. 2014).
このうち,G 型星周りの超短周期惑星の存在頻度は 0.5%程度である.K, M 型星まわりではそれより存在頻度は高く,F 型星は低いと報告されている.
また超短周期惑星の全てではないが,多くの場合,より大きな軌道を持った別の惑星が系に存在していることが分かっている.
超短周期惑星はかつては大きな惑星であり,ガスのエンベロープを失った残骸であるとする説がある (Sanchis-Ojeda et al.2014,Lopez 2016,Lundkvist et al. 2016,Winn et al. 2017).
金属量:[Fe/H] = -0.00
質量:0.84 太陽質量
半径:0.81 太陽半径
自転周期:9.37 日
距離:174 pc
半径:1.81 地球半径
質量:6.5 ± 1.6 地球質量
平均密度:6.0 (+3.0, -2.7) g cm-3
arXiv:1710.00076
Dai et al. (2017)
The discovery and mass measurement of a new ultra-short-period planet: EPIC~228732031b
(新しい超短周期惑星の発見と質量測定:EPIC 228732031b)
概要
新しい ultra-short-period planet (USP planet, 超短周期惑星) の発見を報告する.また,超短周期惑星のうち質量と半径が測定されているものの特性についてまとめる.新しい惑星は EPIC 228732031b であり,ケプラー K2 ミッションの Champaign 10 の観測によって検出された.中心星は G 型星 であり,惑星半径は 1.81 地球半径,軌道周期は 8.9 時間である.
Magellan/PFS と TNG/HARPS-N を用いて視線速度を取得した.その結果,惑星の軌道運動に伴う恒星活動の存在を検出した.
この観測から,惑星の質量を以下の 2 つの異なる手法で決定した.
(1) “floating chunk offset” method,同じ夜に観測された速度の変化のみに基づくもの,
(2) ガウス過程回帰,視線速度と測光データの両方にもとづくもの.
これらの結果はお互いに整合的であり,惑星質量は 6.5 ± 1.6 地球質量と推定された.また,平均密度は 6.0 (+3.0, -2.7) g cm-3 である.
超短周期惑星
超短周期惑星は,軌道周期が 1 日未満の惑星を指し,一般に 2 地球半径より小さい半径を持つ.よく知られているのはケプラー78b であり.この惑星はおおむね地球サイズで, 8.5 時間で太陽型星の周りを公転している (Sanchis-Ojeda et al. 2013など).
ケプラーのデータを用いることで,これまでに 100 個程度の超短周期惑星が報告されている (Sanchis-Ojeda et al. 2014).
このうち,G 型星周りの超短周期惑星の存在頻度は 0.5%程度である.K, M 型星まわりではそれより存在頻度は高く,F 型星は低いと報告されている.
また超短周期惑星の全てではないが,多くの場合,より大きな軌道を持った別の惑星が系に存在していることが分かっている.
超短周期惑星はかつては大きな惑星であり,ガスのエンベロープを失った残骸であるとする説がある (Sanchis-Ojeda et al.2014,Lopez 2016,Lundkvist et al. 2016,Winn et al. 2017).
パラメータ
EPIC 228732031
有効温度:5200 K金属量:[Fe/H] = -0.00
質量:0.84 太陽質量
半径:0.81 太陽半径
自転周期:9.37 日
距離:174 pc
EPIC 228732031b
軌道周期:0.3693038 日半径:1.81 地球半径
質量:6.5 ± 1.6 地球質量
平均密度:6.0 (+3.0, -2.7) g cm-3
論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1710.00606
Demirci et al. (2017)
Is There a Temperature Limit in Planet Formation at 1000 K?
(1000 K に惑星形成における温度の限界があるか?)
室内実験では,玄武岩質のダストの温度を 873 - 1273 K の間で調整した結果,ダスト粒子のサイズと組成が温度によって変化することを発見した.これらの変化は,自己無撞着な低速度凝集実験で示された,1000 K での転移温度の結果に影響を及ぼす.
温度が低い状態では,ダストは 2.02 ± 0.06 mm の最大サイズを持つ集合体に成長する.これは,高温における値の 1.49 ± 0.08 倍である.この遷移温度は,観測されている太陽系外惑星で推定された軌道温度と一致する.
多くの地球型系外惑星は,1000 K より低い温度に相当する位置で観測されている.温度が高いところでのミリメートルスケールのダストの凝集は,地球型惑星形成の重要な要素となる可能性がある.
arXiv:1710.00606
Demirci et al. (2017)
Is There a Temperature Limit in Planet Formation at 1000 K?
(1000 K に惑星形成における温度の限界があるか?)
概要
原始惑星系円盤の中を内側へ移動するダストは,中心星に近づくにつれて温度の上昇にさらされる.室内実験では,玄武岩質のダストの温度を 873 - 1273 K の間で調整した結果,ダスト粒子のサイズと組成が温度によって変化することを発見した.これらの変化は,自己無撞着な低速度凝集実験で示された,1000 K での転移温度の結果に影響を及ぼす.
温度が低い状態では,ダストは 2.02 ± 0.06 mm の最大サイズを持つ集合体に成長する.これは,高温における値の 1.49 ± 0.08 倍である.この遷移温度は,観測されている太陽系外惑星で推定された軌道温度と一致する.
多くの地球型系外惑星は,1000 K より低い温度に相当する位置で観測されている.温度が高いところでのミリメートルスケールのダストの凝集は,地球型惑星形成の重要な要素となる可能性がある.
論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1709.10398
Ciardi et al. (2017)
K2-nnnA~b: A Binary System in the Hyades Cluster Hosting a Neptune-Sized Planet
(K2-nnnAb:海王星サイズ惑星を持つヒアデス星団中の連星系)
中心星は連星系の中にあり,K5V 星と M7/8V 星が射影距離で 40 AU 離れた位置に存在している.惑星は主星である K5V 星を軌道周期 17.3 日で公転している,トランジット継続時間は 3 時間である.
主星は明るく (V = 11.2, J = 9.1),視線速度法による精密な測定のための良い対象である.
K2-nnnAb (※K2 としての番号が未確定のため暫定的にこの表記としている) は,散開星団の中の連星系に発見された,初めての海王星サイズ惑星である.
ヒアデス星団は太陽に最も近い星団であり,年齡は 625 - 750 Myr である.観測はケプラーの K2 ミッションの Champaign 13 にて行われた.
年齡:625 - 750 Myr
スペクトル型:K5V
有効温度:4364 K
金属量:[Fe/H] = 0.15
質量:0.71 太陽質量
半径:0.71 太陽半径
光度:0.164 太陽光度
軌道長半径:0.11728 AU
半径:3.03 地球半径
日射量:地球の日射量の 11.9 倍
arXiv:1709.10328
Mann et al. (2017)
Zodiacal Exoplanets in Time (ZEIT) VI: a three-planet system in the Hyades cluster including an Earth-sized planet
(Zodiacal Exoplanets in Time (ZEIT) VI:地球サイズ惑星を含むヒアデス星団中の 3 惑星系)
ここでは,ヒアデス星団 (~ 800 Myr) 中の晩期 K 型星 EPIC 247589423 をトランジットする,3 つの惑星の検出について報告する.ケプラーの K2 ミッションで得られた光度曲線から発見された.
今回発見された惑星の中で最も小さいものは半径が地球と同程度の 0.99 地球半径であり,知られている系外惑星のうち,若い恒星を公転する中では数少ない地球サイズの惑星である.
残りの 2 つは大きく,おそらくミニネプチューンとスーパーアースであり,半径はそれぞれ 2.91 地球半径と 1.45 地球半径であった.これらの惑星から予測される視線速度シグナルは 0.4 - 2 m/s の範囲であり,現在の視線速度の測定精度で検出可能である.
中心星は明るく (V = 11.2),若い恒星としては比較的恒星の活動度が小さい (2 - 6 mmag) ため,精密な視線速度観測を行うことができる若い散開星団中の天体であある.そのため,これらの惑星の質量を測定することによって,「若い惑星は古い惑星に比べて密度が小さくなる」という先行研究での主張を検証する事ができるだろう.
この事は,若い惑星は密度が小さいことを示唆している.しかしその原因と,小さい密度を持つ惑星の割合はあまり分かっていない.
K2-25 の年齡が ~ 800 Myr であることを考えると,予想される質量放出率は中心星からの高エネルギーフラックスから期待される値よりも大きく (Lopez et al. 2012),比較的明るい恒星の周りで観測されている値よりも大きくなってしまう (Linsky et al. 2010など).
自転周期:15.0 日
スペクトル型:K 5.5
金属量:[Fe/H] = 0.15
有効温度:4499 K
質量:0.74 太陽質量
半径:0.66 太陽半径
光度:0.163 太陽光度
軌道離心率:0.10
半径:0.99 地球半径
平衡温度:553 K
軌道離心率:0.13
半径:2.91 地球半径
平衡温度:425 K
軌道離心率:0.14
半径:1.45 地球半径
平衡温度:373 K
※平衡温度の推定の際,アルベドは 0.3 を仮定している.
同じ天体における惑星の新規発見の報告です.Ciardi et al. (2017) の方では惑星は 1 つしか検出されていませんが,Mann et al. (2017) では 3 つの惑星を検出しています.
arXiv:1709.10398
Ciardi et al. (2017)
K2-nnnA~b: A Binary System in the Hyades Cluster Hosting a Neptune-Sized Planet
(K2-nnnAb:海王星サイズ惑星を持つヒアデス星団中の連星系)
概要
ヒアデス星団 (Hyades Cluster) 中に,海王星サイズの惑星 (3.0 地球半径) を発見した.中心星は連星系の中にあり,K5V 星と M7/8V 星が射影距離で 40 AU 離れた位置に存在している.惑星は主星である K5V 星を軌道周期 17.3 日で公転している,トランジット継続時間は 3 時間である.
主星は明るく (V = 11.2, J = 9.1),視線速度法による精密な測定のための良い対象である.
K2-nnnAb (※K2 としての番号が未確定のため暫定的にこの表記としている) は,散開星団の中の連星系に発見された,初めての海王星サイズ惑星である.
ヒアデス星団は太陽に最も近い星団であり,年齡は 625 - 750 Myr である.観測はケプラーの K2 ミッションの Champaign 13 にて行われた.
パラメータ
EPIC 247589423
距離:50 - 60 pc年齡:625 - 750 Myr
スペクトル型:K5V
有効温度:4364 K
金属量:[Fe/H] = 0.15
質量:0.71 太陽質量
半径:0.71 太陽半径
光度:0.164 太陽光度
K2-nnnAb
軌道周期:17.3077 日軌道長半径:0.11728 AU
半径:3.03 地球半径
日射量:地球の日射量の 11.9 倍
arXiv:1709.10328
Mann et al. (2017)
Zodiacal Exoplanets in Time (ZEIT) VI: a three-planet system in the Hyades cluster including an Earth-sized planet
(Zodiacal Exoplanets in Time (ZEIT) VI:地球サイズ惑星を含むヒアデス星団中の 3 惑星系)
概要
若い星団中の惑星は,惑星系の進化を調べる上で重要な存在である.ここでは,ヒアデス星団 (~ 800 Myr) 中の晩期 K 型星 EPIC 247589423 をトランジットする,3 つの惑星の検出について報告する.ケプラーの K2 ミッションで得られた光度曲線から発見された.
今回発見された惑星の中で最も小さいものは半径が地球と同程度の 0.99 地球半径であり,知られている系外惑星のうち,若い恒星を公転する中では数少ない地球サイズの惑星である.
残りの 2 つは大きく,おそらくミニネプチューンとスーパーアースであり,半径はそれぞれ 2.91 地球半径と 1.45 地球半径であった.これらの惑星から予測される視線速度シグナルは 0.4 - 2 m/s の範囲であり,現在の視線速度の測定精度で検出可能である.
中心星は明るく (V = 11.2),若い恒星としては比較的恒星の活動度が小さい (2 - 6 mmag) ため,精密な視線速度観測を行うことができる若い散開星団中の天体であある.そのため,これらの惑星の質量を測定することによって,「若い惑星は古い惑星に比べて密度が小さくなる」という先行研究での主張を検証する事ができるだろう.
若い惑星の密度
これまでに発見されている若い惑星のうち 3 つ (K2-25b, K2-33b, K2-95b) は,似た質量の恒星 (< 0.6 太陽質量) の周りを公転し,同程度の軌道周期を持つ惑星と比較すると有意に大きな半径を持つことが分かっている (Obermeier et al. 2016, Pepper et al. 2017など).この事は,若い惑星は密度が小さいことを示唆している.しかしその原因と,小さい密度を持つ惑星の割合はあまり分かっていない.
※関連記事
天文・宇宙物理関連メモ vol.305 Obermeier et al. (2016) プレセペ星団中の初めてのトランジット惑星 K2-95b の発見
天文・宇宙物理関連メモ vol.436 Pepper et al. (2017) プレセペ星団中の恒星 JS 183 でのトランジット惑星の発見
Mann et al. (2016) は,活発な中心星との相互作用によって進行しているの大気散逸が原因であるという可能性について議論している.しかし,観測結果を説明するために必要とされる質量放出の量がこの説明を複雑にする.例えば K2-25b の半径は 4 地球半径であり,ケプラーによって発見されている近接軌道を持つ惑星は,全て 2 地球半径以下である (Dressing & Charbonneau 2013, Gaidos et al. 2016).天文・宇宙物理関連メモ vol.305 Obermeier et al. (2016) プレセペ星団中の初めてのトランジット惑星 K2-95b の発見
天文・宇宙物理関連メモ vol.436 Pepper et al. (2017) プレセペ星団中の恒星 JS 183 でのトランジット惑星の発見
K2-25 の年齡が ~ 800 Myr であることを考えると,予想される質量放出率は中心星からの高エネルギーフラックスから期待される値よりも大きく (Lopez et al. 2012),比較的明るい恒星の周りで観測されている値よりも大きくなってしまう (Linsky et al. 2010など).
パラメータ
EPIC 247589423
距離:59.4 ± 2.8 pc (運動学的な推定に基づくもの),63 ± 10 pc (測光学的な推定に基づくもの)自転周期:15.0 日
スペクトル型:K 5.5
金属量:[Fe/H] = 0.15
有効温度:4499 K
質量:0.74 太陽質量
半径:0.66 太陽半径
光度:0.163 太陽光度
EPIC 247589423b
軌道周期:7.975292 日軌道離心率:0.10
半径:0.99 地球半径
平衡温度:553 K
EPIC 247589423c
軌道周期:17.307137 日軌道離心率:0.13
半径:2.91 地球半径
平衡温度:425 K
EPIC 247589423d
軌道周期:25.575065 日軌道離心率:0.14
半径:1.45 地球半径
平衡温度:373 K
※平衡温度の推定の際,アルベドは 0.3 を仮定している.
同じ天体における惑星の新規発見の報告です.Ciardi et al. (2017) の方では惑星は 1 つしか検出されていませんが,Mann et al. (2017) では 3 つの惑星を検出しています.
論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1709.09678
Pino et al. (2017)
Combining low- to high-resolution transit spectroscopy of HD189733b
(HD 189733b の低-高分散トランジット分光観測の結合)
これら 2 つのテクニックは,いくつかの要素において違いがある.
(1) Line Spread Function (線広がり関数) は,宇宙空間での観測よりも地上観測のほうが ~ 103 倍細い.
(2) 宇宙区間からの透過スペクトル観測では,最大で熱圏の底部 (≳ 10-6 bar) の領域までを探査する一方,地上からの観測の場合はその高い分解能により,さらに低い気圧領域 (~ 10-11 bar) まで探査できる.
(3) 宇宙空間からの観測からは惑星のトランジット深さを直接得ることが出来るが,地上観測の場合は異なる波長での惑星の見かけの大きさの違いしか測定できない.
これらの違いが存在する影響で,2 つのテクニックで得られた情報を合わせることが難しくなっている.ここでは,異なる分解能を用いた観測結果と理論的モデルとを比較するための堅牢な手法を開発した.
非常に高い分解能 (R ~ 106,波長幅 Δλ ~ 0.01 Å) での,広い波長範囲にわたる理論的な透過スペクトルを計算するための line-by-line 1D 輻射輸送コードを使用した.
この技術を HD 189733b に適用した.この惑星では,ハッブル宇宙望遠鏡による観測によって,エアロゾルの影響のため平坦になったスペクトルが観測されている.一方でHARPS を用いた地上からの高分散分解能観測では,ナトリウムのラインのコアにおける鋭いスペクトルの特徴が検出されている.
ここでは,惑星の対流圏から熱圏までの両方のデータセットを同時に再現するモデルを構築し,これらの宇宙空間からと地上からの観測結果の明らかな違いを調和させることを目指した.
その結果,確認する事ができたのは以下の項目である.
(1) 対流圏のエアロゾルによる散乱が存在する.
(2) 従ってナトリウムのラインのコアの特徴は熱圏起源である.
大気中のエアロゾルの存在を考慮した場合,HARPS で測定されたナトリウムのラインのコアの大きなコントラストは,熱圏での温度が最大で 1000 K 程度であることを示唆する.これは過去の報告よりも高い温度である.また,熱圏の温度の詳細な値は,ナトリウムの存在度によって変わる相対的な光学的深さと,エアロゾルの底部の位置と縮退することを示す.
この観測は 1.1 - 1.4 µm の波長帯の水 (水蒸気) の吸収に感度がある.観測される水の吸収強度はしばしば,理論モデルが予測するものより低い.この原因として考えられているのが,大気中に存在するエアロゾル (Seager & Sasselov 2000など) や,あるいは水の存在度が太陽存在度より低いこと (Seager et al. 2005など) である.ハッブル宇宙望遠鏡での可視光と赤外線での観測を組み合わせることでこの縮退を破ることが出来,エアロゾルが原因だとするモデルがより好ましいと考えられている (Sing et al. 2016).
ハッブル宇宙望遠鏡の ACS と STIS を用いた可視光での透過光分光観測では,増幅されたレイリー散乱的な特徴がいくつかの系外惑星で検出されている (Lecavelier Des Etangs et al. 2008;Pont et al. 2008; Sing et al. 2016).これは,小さいエアロゾルによる散乱で説明することができる.
ナトリウムやカリウムの二重線のような最も強いスペクトルの特徴はエアロゾルより上空で作られ,透過スペクトル中に現れる (Ehrenreich et al. 2014など).
ハッブル宇宙望遠鏡による,可視光と近赤外線での広い範囲のスペクトルとその観測精度のおかげで,系外惑星の大気中から多くの化学種やスペクトルの特徴が検出されている (ナトリウム,カリウム,水,エアロゾルなど).しかし宇宙望遠鏡のスペクトル分解能は比較的限定されている (R ~ 102 - 103).
地上観測の場合は,分解能をもっと高くする事が出来る (R ~ 105).この程度の分解能であれば,単一の吸収線がスペクトルとして分解でき,分子の特徴も位置にに同定できる(Snellen et al. 2010; de Kok et al. 2014;Brogi et al. 2016).
ナトリウムやカリウムの単一のラインも分解することができ,ラインの鋭いコア構造を通じて大気の高高度における低い圧力領域を探査することも可能である (Vidal-Madjar et al. 2011, Wyttenbach et al. 2015).
低分散・中間分散分解能のデータは,雲や分子のバンド吸収,アルカリ金属の二重線が生成される領域である,対流圏 (10 - 10-4 bar) の大気層を探査することができる.
一方で高分散分光観測の可視光でのデータは,アルカリ元素の微細なコア構造に感度がある (Wyttenbach et al. 2015, 2017).これらの特徴は,より高い高度の熱圏低部 (10-4 - 10-11 bar) あたりで現れる.
これらの観測は近紫外線での透過スペクトル観測と相補的である.近紫外線では,惑星の上部熱圏と外気圏の遷移領域を探査することができる (Vidal-Madjar et al. 2013).また,遠紫外線のトランジット分光観測では,外気圏を探査することができる.これは惑星大気の最も外側部分に相当する.
熱圏下部における恒星の X/EUV 光子による熱圏加熱は,HD 189733b の高層大気が拡大している原因である (Vidal-Madjar et al. 2003など).これは惑星大気からの水素と重い粒子の散逸の原因になっている (Lecavelier Des Etangs et al. 2010など).
HD 189733b の低分散透過スペクトル観測では,透過スペクトルは惑星の対流圏に存在するエアロゾルの散乱によって平坦な形状になっている (Pont et al. 2013, Sing et al. 2016).対照的に,地上からの高分散透過スペクトル観測では,ナトリウムの二重線の鋭い吸収特性の存在が確認されている (Wyttenbach et al. 2015).これらの結果は,見かけ上整合しない.ここではこれらのデータを整合させることを目的としている.
さらに,Vidal-Madjar et al. (2011) と Wyttenbach et al. (2015) では,ナトリウムの二重線の観測から,大気中に正の温度勾配が存在することを指摘している,これは,熱圏加熱の存在を示唆する結果である.
arXiv:1709.09678
Pino et al. (2017)
Combining low- to high-resolution transit spectroscopy of HD189733b
(HD 189733b の低-高分散トランジット分光観測の結合)
概要
宇宙空間からの低分散・中間分散の観測 (R ~ 102 - 103) と,地上からの高分散観測 (R ~ 105) は,可視光・近赤外線での系外惑星大気の透過スペクトルを得るために一般的に使われている.この波長帯では,宇宙空間からの観測は最も広いスペクトルの特徴 (アルカリ金属の二重線,分子の吸収バンド,散乱など) を検出し,一方で高分散分解能を持つ地上からの観測では,最も細い特徴 (アルカリ金属のラインのコア,分子のライン) を探査する.これら 2 つのテクニックは,いくつかの要素において違いがある.
(1) Line Spread Function (線広がり関数) は,宇宙空間での観測よりも地上観測のほうが ~ 103 倍細い.
(2) 宇宙区間からの透過スペクトル観測では,最大で熱圏の底部 (≳ 10-6 bar) の領域までを探査する一方,地上からの観測の場合はその高い分解能により,さらに低い気圧領域 (~ 10-11 bar) まで探査できる.
(3) 宇宙空間からの観測からは惑星のトランジット深さを直接得ることが出来るが,地上観測の場合は異なる波長での惑星の見かけの大きさの違いしか測定できない.
これらの違いが存在する影響で,2 つのテクニックで得られた情報を合わせることが難しくなっている.ここでは,異なる分解能を用いた観測結果と理論的モデルとを比較するための堅牢な手法を開発した.
非常に高い分解能 (R ~ 106,波長幅 Δλ ~ 0.01 Å) での,広い波長範囲にわたる理論的な透過スペクトルを計算するための line-by-line 1D 輻射輸送コードを使用した.
この技術を HD 189733b に適用した.この惑星では,ハッブル宇宙望遠鏡による観測によって,エアロゾルの影響のため平坦になったスペクトルが観測されている.一方でHARPS を用いた地上からの高分散分解能観測では,ナトリウムのラインのコアにおける鋭いスペクトルの特徴が検出されている.
ここでは,惑星の対流圏から熱圏までの両方のデータセットを同時に再現するモデルを構築し,これらの宇宙空間からと地上からの観測結果の明らかな違いを調和させることを目指した.
その結果,確認する事ができたのは以下の項目である.
(1) 対流圏のエアロゾルによる散乱が存在する.
(2) 従ってナトリウムのラインのコアの特徴は熱圏起源である.
大気中のエアロゾルの存在を考慮した場合,HARPS で測定されたナトリウムのラインのコアの大きなコントラストは,熱圏での温度が最大で 1000 K 程度であることを示唆する.これは過去の報告よりも高い温度である.また,熱圏の温度の詳細な値は,ナトリウムの存在度によって変わる相対的な光学的深さと,エアロゾルの底部の位置と縮退することを示す.
これまでの観測
様々な分解能で探る系外惑星大気
近赤外線では,ハッブル宇宙望遠鏡の WFC3 を用いた大気の透過スペクトルが,数十の惑星で得られている.観測は,ホットジュピター,ホットネプチューン,ウォームネプチューン,さらにはスーパーアースでも行われている.この観測は 1.1 - 1.4 µm の波長帯の水 (水蒸気) の吸収に感度がある.観測される水の吸収強度はしばしば,理論モデルが予測するものより低い.この原因として考えられているのが,大気中に存在するエアロゾル (Seager & Sasselov 2000など) や,あるいは水の存在度が太陽存在度より低いこと (Seager et al. 2005など) である.ハッブル宇宙望遠鏡での可視光と赤外線での観測を組み合わせることでこの縮退を破ることが出来,エアロゾルが原因だとするモデルがより好ましいと考えられている (Sing et al. 2016).
ハッブル宇宙望遠鏡の ACS と STIS を用いた可視光での透過光分光観測では,増幅されたレイリー散乱的な特徴がいくつかの系外惑星で検出されている (Lecavelier Des Etangs et al. 2008;Pont et al. 2008; Sing et al. 2016).これは,小さいエアロゾルによる散乱で説明することができる.
ナトリウムやカリウムの二重線のような最も強いスペクトルの特徴はエアロゾルより上空で作られ,透過スペクトル中に現れる (Ehrenreich et al. 2014など).
ハッブル宇宙望遠鏡による,可視光と近赤外線での広い範囲のスペクトルとその観測精度のおかげで,系外惑星の大気中から多くの化学種やスペクトルの特徴が検出されている (ナトリウム,カリウム,水,エアロゾルなど).しかし宇宙望遠鏡のスペクトル分解能は比較的限定されている (R ~ 102 - 103).
地上観測の場合は,分解能をもっと高くする事が出来る (R ~ 105).この程度の分解能であれば,単一の吸収線がスペクトルとして分解でき,分子の特徴も位置にに同定できる(Snellen et al. 2010; de Kok et al. 2014;Brogi et al. 2016).
ナトリウムやカリウムの単一のラインも分解することができ,ラインの鋭いコア構造を通じて大気の高高度における低い圧力領域を探査することも可能である (Vidal-Madjar et al. 2011, Wyttenbach et al. 2015).
HD 189733b の場合
ここでは HD 189733b に焦点を当てる.低分散・中間分散分解能のデータは,雲や分子のバンド吸収,アルカリ金属の二重線が生成される領域である,対流圏 (10 - 10-4 bar) の大気層を探査することができる.
一方で高分散分光観測の可視光でのデータは,アルカリ元素の微細なコア構造に感度がある (Wyttenbach et al. 2015, 2017).これらの特徴は,より高い高度の熱圏低部 (10-4 - 10-11 bar) あたりで現れる.
これらの観測は近紫外線での透過スペクトル観測と相補的である.近紫外線では,惑星の上部熱圏と外気圏の遷移領域を探査することができる (Vidal-Madjar et al. 2013).また,遠紫外線のトランジット分光観測では,外気圏を探査することができる.これは惑星大気の最も外側部分に相当する.
熱圏下部における恒星の X/EUV 光子による熱圏加熱は,HD 189733b の高層大気が拡大している原因である (Vidal-Madjar et al. 2003など).これは惑星大気からの水素と重い粒子の散逸の原因になっている (Lecavelier Des Etangs et al. 2010など).
HD 189733b の低分散透過スペクトル観測では,透過スペクトルは惑星の対流圏に存在するエアロゾルの散乱によって平坦な形状になっている (Pont et al. 2013, Sing et al. 2016).対照的に,地上からの高分散透過スペクトル観測では,ナトリウムの二重線の鋭い吸収特性の存在が確認されている (Wyttenbach et al. 2015).これらの結果は,見かけ上整合しない.ここではこれらのデータを整合させることを目的としている.
さらに,Vidal-Madjar et al. (2011) と Wyttenbach et al. (2015) では,ナトリウムの二重線の観測から,大気中に正の温度勾配が存在することを指摘している,これは,熱圏加熱の存在を示唆する結果である.
天文・宇宙物理関連メモ vol.233 Lundkvist et al. (2016) エンベロープの剥ぎ取りによる高温スーパーアースの欠乏
天文・宇宙物理関連メモ vol.438 Winn et al. (2017) 超短周期惑星と中心星の金属量の関係性