×
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1912.08049
Sucerquia et al. (2019)
Can close-in giant exoplanets preserve detectable moons?
(近接巨大系外惑星は検出可能な衛星を保てるか?)
惑星が,軌道進化する過程で系外衛星は中心の惑星に衝突する可能性が最も高いと考えられていたが,最近の系外衛星の潮汐駆動移動のモデルでは,衛星は外向きに押し出され,ここでは “satellite tidal orbital parking distance” と呼ぶ位置 \(a_{\rm stop}\) に到達する可能性があることが指摘されている.この軌道はしばしば不安定軌道に対する限界の内側に位置しており,系の初期条件である質量比,軌道長半径,自転に依存する.
半解析計算と数値シミュレーションから,異なる系の初期パラメータに対する \(a_{\rm stop}\) を計算した.また近接惑星の周囲の系外衛星のトランジット検出可能性に対して制約を与えた.
衛星と惑星の質量比が 10-4 以上の場合,軌道は安定であり,現在の観測装置 (ケプラーや TESS など) で,直接的もしくは惑星+衛星トランジットによる二次効果から検出可能である.これは,このような質量比の衛星は重く,サイズが大きく,また軌道移動がゆっくりであることが理由である.ただし,このような質量比の系は形成されづらいとされる.
対照的に質量比が低い場合は,衛星は一時的なものであり,そのため検出が難しい.さらに,小さい衛星を検出して確認し,完全な特徴付けを行うためには,TESS での短い間隔での観測と,地上観測による高感度の測光観測の両方が必要である.
現在参照可能なデータベース中には長周期の惑星の発見数は少ないが,潮汐軌道移動モデルは長周期の惑星が初めての検出可能な系外衛星を持つ可能性が高いことを示す.
Teachey & Kipping (2018) は,系外惑星ケプラー1625b の異常なトランジットの存在を検出した.この研究では,ケプラーによる観測データは,海王星サイズという一般的ではない系外衛星が存在している兆候を示していると主張した (Teachey et al. 2018).
暫定的にケプラー1625b I と呼ばれているこの天体のサイズは非常に大きく,「二重惑星」と呼ぶべきものであろう.
しかしこのシグナルは後の研究では検出されておらず,議論が続いている.
この報告の後にケプラーとハッブル宇宙望遠鏡を用いて得られたデータからは,光度曲線を説明するためには系外衛星が存在するという解釈ではなく,代替の説明が好ましいことが指摘されている (Heller et al. 2019).またハッブル宇宙望遠鏡による単独のトランジットの解析から,Kreidberg et al. (2019) では系外衛星によるシグナルは発見されなかったと報告されている.
ただし,もし今後の研究で存在が確認された場合,20 年以上前の系外惑星の初発見のような,顕著な発見になるだろう.
最近では ALMA の電波観測で,巨大系外惑星 PDS 70c まわりでの系外衛星形成の初期段階の状態が検出されている (Isella et al. 2019).この観測では,この惑星が衛星を形成可能な円盤を持っていることが判明しており,可視光と赤外線の VLT での観測との比較から,円盤と惑星の質量比が 10-5 - 10-4 と制約されている (Muller et al. 2018)
衛星が惑星の周囲を公転し,さらに惑星が恒星の前をトランジットする場合,transit timing variation (TTV) と transit duration variation (TDV) の 2 つの効果が同時に発生する.これらの効果は同時に検出が可能で,惑星がトランジットしていることが必要だが,衛星自身のトランジットは必ずしも必要ではない.
ケプラー1625b I の報告例を除くと,ケプラーの膨大なトランジット測光データの中には,衛星のようなシグナルを示すものは報告されていない (Kipping et al. 2012, 2013, 2014).これは系外衛星は “はかない” (ephemeral) 天体であることを支持するものである.系外衛星に由来するシグナルがほとんど見られないことは,規則衛星の長期間の軌道不安定性の結果である可能性がある.
現在の巨大惑星と規則衛星の形成モデルでは,衛星の質量や半径,軌道長半径といった初期の物理的特徴や軌道特性は,ランダムに分布しているのではなく惑星の特性に密接に関連していることが知られている.例えば,その場形成される衛星の総質量は,惑星質量の 10-4 に制限されることが指摘されている (Canup & Ward 2006).ただし,最近のガリレオ衛星的な衛星系の形成のシミュレーションでは,惑星質量の 10-3 - 10-2 倍の質量のものも形成可能としている (Cilibrasi et al. 2018).仮説上の系外衛星が惑星移動を生き延びる場合,最終的な惑星の軌道半径における潮汐に誘起される軌道崩壊が衛星の最終的な運命を決める (Barnes & O’Brien 2002など).
初期の潮汐モデルでは,多くの場合で系外衛星は外側に移動し,その後の後期段階で内側に引かれるまでの間,一時的に生き残るとされる,しかし他の衛星は,潮汐相互作用によって遠方に押されるのに十分な角運動量の交換が発生するため,軌道が不安定となり母星である惑星から離脱する.これらの切り離された系外衛星の多くは,惑星と衝突したり,恒星に飲み込まれたり,十分に成長した準惑星もしくは惑星の胚となるだろう (Sucerquia et al. 2019).
Alvarado-Montes et al. (2017) は初期の軌道の潮汐進化モデルを拡張し,惑星の半径収縮と内部構造進化を含めたモデルを構築した.その結果,大部分のケースで,(もし衛星が存在する場合) 内側移動のフェーズは抑制されることを見出した.この物理的シナリオが正しい場合,大部分の規則衛星は「安全な」漸近的な最大距離にとどまることになる.
arXiv:1912.08049
Sucerquia et al. (2019)
Can close-in giant exoplanets preserve detectable moons?
(近接巨大系外惑星は検出可能な衛星を保てるか?)
概要
系外惑星の発見は,見えない系外衛星を発見するための数多くの試みを動機付けるきっかけとなったが,系外衛星は未だに発見されていない.系外衛星が発見されていないことに対するもっともらしい説明は,大部分の発見されている惑星は中心星に近接した軌道にあり,そのような惑星の衛星は潮汐進化に晒され軌道からの離脱を引き起こすというものである,惑星が,軌道進化する過程で系外衛星は中心の惑星に衝突する可能性が最も高いと考えられていたが,最近の系外衛星の潮汐駆動移動のモデルでは,衛星は外向きに押し出され,ここでは “satellite tidal orbital parking distance” と呼ぶ位置 \(a_{\rm stop}\) に到達する可能性があることが指摘されている.この軌道はしばしば不安定軌道に対する限界の内側に位置しており,系の初期条件である質量比,軌道長半径,自転に依存する.
半解析計算と数値シミュレーションから,異なる系の初期パラメータに対する \(a_{\rm stop}\) を計算した.また近接惑星の周囲の系外衛星のトランジット検出可能性に対して制約を与えた.
衛星と惑星の質量比が 10-4 以上の場合,軌道は安定であり,現在の観測装置 (ケプラーや TESS など) で,直接的もしくは惑星+衛星トランジットによる二次効果から検出可能である.これは,このような質量比の衛星は重く,サイズが大きく,また軌道移動がゆっくりであることが理由である.ただし,このような質量比の系は形成されづらいとされる.
対照的に質量比が低い場合は,衛星は一時的なものであり,そのため検出が難しい.さらに,小さい衛星を検出して確認し,完全な特徴付けを行うためには,TESS での短い間隔での観測と,地上観測による高感度の測光観測の両方が必要である.
現在参照可能なデータベース中には長周期の惑星の発見数は少ないが,潮汐軌道移動モデルは長周期の惑星が初めての検出可能な系外衛星を持つ可能性が高いことを示す.
太陽系外衛星について
ケプラー1625b I
これまでのところ,系外衛星の発見例はない.Teachey & Kipping (2018) は,系外惑星ケプラー1625b の異常なトランジットの存在を検出した.この研究では,ケプラーによる観測データは,海王星サイズという一般的ではない系外衛星が存在している兆候を示していると主張した (Teachey et al. 2018).
暫定的にケプラー1625b I と呼ばれているこの天体のサイズは非常に大きく,「二重惑星」と呼ぶべきものであろう.
しかしこのシグナルは後の研究では検出されておらず,議論が続いている.
この報告の後にケプラーとハッブル宇宙望遠鏡を用いて得られたデータからは,光度曲線を説明するためには系外衛星が存在するという解釈ではなく,代替の説明が好ましいことが指摘されている (Heller et al. 2019).またハッブル宇宙望遠鏡による単独のトランジットの解析から,Kreidberg et al. (2019) では系外衛星によるシグナルは発見されなかったと報告されている.
ただし,もし今後の研究で存在が確認された場合,20 年以上前の系外惑星の初発見のような,顕著な発見になるだろう.
系外衛星の検出の試み
系外衛星の直接観測は,赤外線波長で,少なくとも形成の最も初期の段階では可能性がある.例えば ALMA の観測による原始月円盤の質量への制約などである (Perez et al. 2019).最近では ALMA の電波観測で,巨大系外惑星 PDS 70c まわりでの系外衛星形成の初期段階の状態が検出されている (Isella et al. 2019).この観測では,この惑星が衛星を形成可能な円盤を持っていることが判明しており,可視光と赤外線の VLT での観測との比較から,円盤と惑星の質量比が 10-5 - 10-4 と制約されている (Muller et al. 2018)
衛星が惑星の周囲を公転し,さらに惑星が恒星の前をトランジットする場合,transit timing variation (TTV) と transit duration variation (TDV) の 2 つの効果が同時に発生する.これらの効果は同時に検出が可能で,惑星がトランジットしていることが必要だが,衛星自身のトランジットは必ずしも必要ではない.
ケプラー1625b I の報告例を除くと,ケプラーの膨大なトランジット測光データの中には,衛星のようなシグナルを示すものは報告されていない (Kipping et al. 2012, 2013, 2014).これは系外衛星は “はかない” (ephemeral) 天体であることを支持するものである.系外衛星に由来するシグナルがほとんど見られないことは,規則衛星の長期間の軌道不安定性の結果である可能性がある.
系外衛星の進化と生存
何人かの研究者は,近接惑星周りでの比較的短いタイムスケールでの衛星が欠乏していることを説明する,異なる機構を提案している.例えば永年摂動・共鳴摂動 (Barnes & O’Brien 2002,Spalding et al. 2016),惑星散乱 (Hong et al. 2018),潮汐離脱 (tidal detachment) (Sucerquia et al. 2018,Martinez et al. 2019) が挙げられる.現在の巨大惑星と規則衛星の形成モデルでは,衛星の質量や半径,軌道長半径といった初期の物理的特徴や軌道特性は,ランダムに分布しているのではなく惑星の特性に密接に関連していることが知られている.例えば,その場形成される衛星の総質量は,惑星質量の 10-4 に制限されることが指摘されている (Canup & Ward 2006).ただし,最近のガリレオ衛星的な衛星系の形成のシミュレーションでは,惑星質量の 10-3 - 10-2 倍の質量のものも形成可能としている (Cilibrasi et al. 2018).仮説上の系外衛星が惑星移動を生き延びる場合,最終的な惑星の軌道半径における潮汐に誘起される軌道崩壊が衛星の最終的な運命を決める (Barnes & O’Brien 2002など).
初期の潮汐モデルでは,多くの場合で系外衛星は外側に移動し,その後の後期段階で内側に引かれるまでの間,一時的に生き残るとされる,しかし他の衛星は,潮汐相互作用によって遠方に押されるのに十分な角運動量の交換が発生するため,軌道が不安定となり母星である惑星から離脱する.これらの切り離された系外衛星の多くは,惑星と衝突したり,恒星に飲み込まれたり,十分に成長した準惑星もしくは惑星の胚となるだろう (Sucerquia et al. 2019).
Alvarado-Montes et al. (2017) は初期の軌道の潮汐進化モデルを拡張し,惑星の半径収縮と内部構造進化を含めたモデルを構築した.その結果,大部分のケースで,(もし衛星が存在する場合) 内側移動のフェーズは抑制されることを見出した.この物理的シナリオが正しい場合,大部分の規則衛星は「安全な」漸近的な最大距離にとどまることになる.
PR
論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1912.06773
Wong et al. (2019)
TESS Phase Curve of the Hot Jupiter WASP-19b
(ホットジュピター WASP-19b の TESS 位相曲線)
この惑星は,可視光と赤外線波長の両方で位相曲線全体が観測されているトランジット系外惑星系としては,わずか 5 個のうちの 1 つである.
解析の結果,二次食の深さを 470 ppm と測定した.また,半振幅が 319 ppm の大気の明るさの強い変動シグナルを検出した.恒星直下点と,惑星昼側の輝度が最大になる点には有意なずれは検出されなかった.
また,夜側からの有意なフラックスも検出されなかった.これは,公開されているデータであるスピッツァー宇宙望遠鏡を用いたこの惑星の観測から導出された,夜側の有効黒体温度が 1090 K という測定結果の一致する.
二次食深さの過去の観測値と,今回の TESS のバンドパスでの測定値から,この惑星の二次食スペクトルの初めての大気復元を SCARLET コードを用いて行った.復元解析から,この惑星の昼側温度は 2240 K と整合的で,可視光の波長での幾何学的アルベドは 0.16 であり,TESS のバンドバスでは恒星の反射光が大きな寄与をしていることと,やや効率的な昼夜間の熱輸送の存在が示唆される.
arXiv:1912.06773
Wong et al. (2019)
TESS Phase Curve of the Hot Jupiter WASP-19b
(ホットジュピター WASP-19b の TESS 位相曲線)
概要
短周期トランジットホットジュピター WASP-19b の位相曲線を解析した.TESS の Sector 9 で取得されたデータを用いた.この惑星は,可視光と赤外線波長の両方で位相曲線全体が観測されているトランジット系外惑星系としては,わずか 5 個のうちの 1 つである.
解析の結果,二次食の深さを 470 ppm と測定した.また,半振幅が 319 ppm の大気の明るさの強い変動シグナルを検出した.恒星直下点と,惑星昼側の輝度が最大になる点には有意なずれは検出されなかった.
また,夜側からの有意なフラックスも検出されなかった.これは,公開されているデータであるスピッツァー宇宙望遠鏡を用いたこの惑星の観測から導出された,夜側の有効黒体温度が 1090 K という測定結果の一致する.
二次食深さの過去の観測値と,今回の TESS のバンドパスでの測定値から,この惑星の二次食スペクトルの初めての大気復元を SCARLET コードを用いて行った.復元解析から,この惑星の昼側温度は 2240 K と整合的で,可視光の波長での幾何学的アルベドは 0.16 であり,TESS のバンドバスでは恒星の反射光が大きな寄与をしていることと,やや効率的な昼夜間の熱輸送の存在が示唆される.
論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1912.06913
García Muñoz et al. (2019)
Is pi Men c's atmosphere hydrogen-dominated? Insights from a non-detecton of Hy Ly-alpha absorption
(テーブルさん座パイ星c の大気は水素主体か? 水素ライマンアルファ吸収の非検出からの洞察)
ここではこの惑星の高層大気において,H2/H2O の光解離によって発生する水素を探査した.これには,ハッブル宇宙望遠鏡の STIS 装置を用いた中性水素原子のライマンアルファ線での透過分光観測を用いた.
しかし,この惑星の高層大気からはライマンアルファ線の吸収は検出されなかった.
非検出という結果から,この波長でのテーブルさん座パイ星c と中心星の実効的な半径比の上限値を,[-215, -91] km/s と [+57, +180] km/s の速度成分においてそれぞれ測定した.1σ の上限値はそれぞれ 0.13 と 0.12 であった.
恒星のスペクトルを再構築した結果,この惑星が中心星から受ける輻射は,波長が 5 - 912 Å の範囲内のエネルギーで 1350 erg cm-2 s-1 と推定される.これは急速な大気散逸を引き起こすには十分な強さである.
この惑星での水素大気の非検出を説明する興味深いシナリオは,惑星大気は水素・ヘリウム主体ではなく,水蒸気かその他の重い分子が主体であるという可能性である.このモデルによると,酸素が豊富で重いため大気はあまり広がらない構造を持ち,惑星に近い場所で中性水素から電離水素に遷移する.
今回の水素大気の非検出を,他の惑星での同様の検出の試みと比較した結果,暫定的に 2 つの異なる傾向があることを同定した.
密度が 2 g cm-3 程度以下の惑星 (かつおそらく水素主体の大気を持つ惑星) は,中性水素のライマンアルファ線の吸収を起こすが,3 g cm-3 以上 (かつおそらく水素主体ではない大気を持つ惑星) では惑星は測定可能な吸収を起こさないと考えられる.
強く輻射を受けるサブネプチューンのサンプルを調査した結果として一般に広がった大気を持たないことが示された場合,この傾向を統計的に確認できる可能性がある.
arXiv:1912.06913
García Muñoz et al. (2019)
Is pi Men c's atmosphere hydrogen-dominated? Insights from a non-detecton of Hy Ly-alpha absorption
(テーブルさん座パイ星c の大気は水素主体か? 水素ライマンアルファ吸収の非検出からの洞察)
概要
スーパーアースからサブネプチューンサイズの惑星の組成への制約を与えることは,惑星形成と進化の理解において重要である.pi Men c (テーブルさん座パイ星c) は,そのような惑星の特徴付けを行う良い対象である.これはこの惑星が強い輻射を受け,バルク密度は水を多く含むと考えた場合と整合的な値を持つためである.ここではこの惑星の高層大気において,H2/H2O の光解離によって発生する水素を探査した.これには,ハッブル宇宙望遠鏡の STIS 装置を用いた中性水素原子のライマンアルファ線での透過分光観測を用いた.
しかし,この惑星の高層大気からはライマンアルファ線の吸収は検出されなかった.
非検出という結果から,この波長でのテーブルさん座パイ星c と中心星の実効的な半径比の上限値を,[-215, -91] km/s と [+57, +180] km/s の速度成分においてそれぞれ測定した.1σ の上限値はそれぞれ 0.13 と 0.12 であった.
恒星のスペクトルを再構築した結果,この惑星が中心星から受ける輻射は,波長が 5 - 912 Å の範囲内のエネルギーで 1350 erg cm-2 s-1 と推定される.これは急速な大気散逸を引き起こすには十分な強さである.
この惑星での水素大気の非検出を説明する興味深いシナリオは,惑星大気は水素・ヘリウム主体ではなく,水蒸気かその他の重い分子が主体であるという可能性である.このモデルによると,酸素が豊富で重いため大気はあまり広がらない構造を持ち,惑星に近い場所で中性水素から電離水素に遷移する.
今回の水素大気の非検出を,他の惑星での同様の検出の試みと比較した結果,暫定的に 2 つの異なる傾向があることを同定した.
密度が 2 g cm-3 程度以下の惑星 (かつおそらく水素主体の大気を持つ惑星) は,中性水素のライマンアルファ線の吸収を起こすが,3 g cm-3 以上 (かつおそらく水素主体ではない大気を持つ惑星) では惑星は測定可能な吸収を起こさないと考えられる.
強く輻射を受けるサブネプチューンのサンプルを調査した結果として一般に広がった大気を持たないことが示された場合,この傾向を統計的に確認できる可能性がある.
論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1912.06456
Scheirich et al. (2019)
A satellite orbit drift in binary near-Earth asteroids (66391) 1999 KW4 and (88710) 2001 SL9 -- Indication of the BYORP effect
(地球近傍連星小惑星 (66391) 1999 KW4 と (88710) 2001 SL9 での衛星軌道ドリフト - BYORP 効果の示唆)
(66391) 1999 KW4 については,相互軌道の極,軌道長半径および軌道離心率を導出した.これらの値は,レーダー観測から導出された値と一致した (Ostro et al. 2006).
しかし,軌道周期が一定だとするとデータと矛盾することを見出し,また衛星の平均近点離角の二次ドリフトを伴う単一の解が得られ,その値は -0.65 ± 0.16 deg/yr2 であった.
これは,お互いの軌道要素の軌道長半径が,1 年あたり 1.2 ± 0.3 cm の割合で増加していることを意味している.
(88710) 2001 SL9 に関しては,相互軌道は 10° 程度以内の極を持ち,離心率は 0.07 未満と円軌道に近いと決定された.データはこちらも一定の軌道周期とは非整合であり,平均近点離角の二次ドリフトを伴う 2 つの可能な解を得た.それぞれ 2.8 ± 0.2 もしくは 5.2 ± 0.2 deg/yr2 である.
お互いの軌道要素の軌道長半径は,それぞれの場合において 1 年あたり -2.8 ± 0.2 cm あるいは -5.1 ± 0.2 cm と減少していることが示唆される.
(66391) 1999 KW4 の徐々に拡大する軌道は,連星 YORP 効果 (binary YORP, BYORP) と相互作用する相互潮汐によって説明できる可能性がある (McMahon & Scheeres 2010).
しかしレーダーで導出された連星天体の形状を用いた BYORP 移動のモデル化では,観測されたものよりもずっと大きな軌道移動が予測される.このことは,レーダーで導出された伴星天体の形状は BYORP 効果を計算するのには適していないか,もしくは現在の BYORP 効果の理論は軌道移動の速度を過大評価をしているか,あるいはその両方かであると考えられる.
BYORP 係数が予測とは反対の符号になることもありうる.この場合,この系は BYORP 効果と潮汐効果の間の平衡状態に向かって移動している可能性がある.(88710) 2001 SL9 の場合,相互軌道の内側移動を引き起こしうる既知の物理過程としては BYORP 効果が唯一の可能性である.
別の連星系 (175706) 1996 FG3 では平均近点離角の移動がゼロと整合的であり,BYORP 効果と相互潮汐の安定平衡に位置していることが示唆されている (Scheirich et al. 2015).これと合わせると,観測されている連星小惑星系のうち長周期の力学モデルが示唆されているものに関しては,3 つの異なるケースがあることになる.
(88710) 2001 SL9 はパロマー山天文台の Near-Earth Asteroid Tracking で 2001 年 9 月 18 日に発見され,連星であることは Pravec et al. (2001) で明らかにされた.
arXiv:1912.06456
Scheirich et al. (2019)
A satellite orbit drift in binary near-Earth asteroids (66391) 1999 KW4 and (88710) 2001 SL9 -- Indication of the BYORP effect
(地球近傍連星小惑星 (66391) 1999 KW4 と (88710) 2001 SL9 での衛星軌道ドリフト - BYORP 効果の示唆)
概要
地球近傍の連星小惑星 (66391) 1999 KW4 (固有名 Moshup) および (88710) 2001 SL9 の測光観測を,2000 年 6 月から 2019 年 6 月まで行った.観測データをモデル化し,連星系の物理的および力学的特性を導出した.(66391) 1999 KW4 については,相互軌道の極,軌道長半径および軌道離心率を導出した.これらの値は,レーダー観測から導出された値と一致した (Ostro et al. 2006).
しかし,軌道周期が一定だとするとデータと矛盾することを見出し,また衛星の平均近点離角の二次ドリフトを伴う単一の解が得られ,その値は -0.65 ± 0.16 deg/yr2 であった.
これは,お互いの軌道要素の軌道長半径が,1 年あたり 1.2 ± 0.3 cm の割合で増加していることを意味している.
(88710) 2001 SL9 に関しては,相互軌道は 10° 程度以内の極を持ち,離心率は 0.07 未満と円軌道に近いと決定された.データはこちらも一定の軌道周期とは非整合であり,平均近点離角の二次ドリフトを伴う 2 つの可能な解を得た.それぞれ 2.8 ± 0.2 もしくは 5.2 ± 0.2 deg/yr2 である.
お互いの軌道要素の軌道長半径は,それぞれの場合において 1 年あたり -2.8 ± 0.2 cm あるいは -5.1 ± 0.2 cm と減少していることが示唆される.
(66391) 1999 KW4 の徐々に拡大する軌道は,連星 YORP 効果 (binary YORP, BYORP) と相互作用する相互潮汐によって説明できる可能性がある (McMahon & Scheeres 2010).
しかしレーダーで導出された連星天体の形状を用いた BYORP 移動のモデル化では,観測されたものよりもずっと大きな軌道移動が予測される.このことは,レーダーで導出された伴星天体の形状は BYORP 効果を計算するのには適していないか,もしくは現在の BYORP 効果の理論は軌道移動の速度を過大評価をしているか,あるいはその両方かであると考えられる.
BYORP 係数が予測とは反対の符号になることもありうる.この場合,この系は BYORP 効果と潮汐効果の間の平衡状態に向かって移動している可能性がある.(88710) 2001 SL9 の場合,相互軌道の内側移動を引き起こしうる既知の物理過程としては BYORP 効果が唯一の可能性である.
別の連星系 (175706) 1996 FG3 では平均近点離角の移動がゼロと整合的であり,BYORP 効果と相互潮汐の安定平衡に位置していることが示唆されている (Scheirich et al. 2015).これと合わせると,観測されている連星小惑星系のうち長周期の力学モデルが示唆されているものに関しては,3 つの異なるケースがあることになる.
観測対象について
(66391) 1999 KW4 は固有名が Moshup と命名されており,ニューメキシコ・ソコロの Lincoln Near-Earth Asteroid Research によって 1999 年 5 月 20 日に発見された小惑星である.この小惑星が連星であることは Benner et al. (2001) によって明らかにされた.(88710) 2001 SL9 はパロマー山天文台の Near-Earth Asteroid Tracking で 2001 年 9 月 18 日に発見され,連星であることは Pravec et al. (2001) で明らかにされた.
論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1912.05556
Shporer et al. (2019)
GJ 1252 b: A 1.2 R⊕ planet transiting an M-dwarf at 20.4 pc
(GJ 1252b:20.4 pc にある M 矮星をトランジットする 1.2 地球半径の惑星)
TESS の測光観測データと,地上からの測光および分光観測,ガイアの位置天文観測データ,高分解能撮像観測から,TESS で検出されたトランジットシグナルが惑星由来であることを確認し,トランジットシグナルが恒星の食連星に由来するという偽陽性の可能性を否定した.
詳細な視線速度のモニタリング観測では,この惑星の質量の暫定的な値として,2.09 地球質量という値が得られた.
中心星が近いことと明るいこと,恒星の活動度が低いこと,また惑星の軌道周期が短いことから,将来的な特徴付け観測の魅力的な対象である.
半径:0.391 太陽半径
光度:0.0196 太陽光度
有効温度:3458 K
金属量:[Fe/H] = 0.1
距離:20.4 pc
スペクトル型:M3
半径:1.193 地球半径
質量:2.09 地球質量
平衡温度:997 K
arXiv:1912.05556
Shporer et al. (2019)
GJ 1252 b: A 1.2 R⊕ planet transiting an M-dwarf at 20.4 pc
(GJ 1252b:20.4 pc にある M 矮星をトランジットする 1.2 地球半径の惑星)
概要
新しい系外惑星 GJ 1252b の発見を報告する.TESS の測光観測データと,地上からの測光および分光観測,ガイアの位置天文観測データ,高分解能撮像観測から,TESS で検出されたトランジットシグナルが惑星由来であることを確認し,トランジットシグナルが恒星の食連星に由来するという偽陽性の可能性を否定した.
詳細な視線速度のモニタリング観測では,この惑星の質量の暫定的な値として,2.09 地球質量という値が得られた.
中心星が近いことと明るいこと,恒星の活動度が低いこと,また惑星の軌道周期が短いことから,将来的な特徴付け観測の魅力的な対象である.
パラメータ
GJ 1252
質量:0.381 太陽質量半径:0.391 太陽半径
光度:0.0196 太陽光度
有効温度:3458 K
金属量:[Fe/H] = 0.1
距離:20.4 pc
スペクトル型:M3
GJ 1252b
軌道長半径:0.00916 AU半径:1.193 地球半径
質量:2.09 地球質量
平衡温度:997 K
天文・宇宙物理関連メモ vol.539 Teachey et al. (2017) ケプラー惑星中の系外衛星シグナルの探査
天文・宇宙物理関連メモ vol.1013 Teachey & Kipping (2018) 系外衛星候補 ケプラー1625b-i のハッブル宇宙望遠鏡による観測結果
天文・宇宙物理関連メモ vol.1096 Heller et al. (2019) ケプラー1625b まわりの系外衛星候補シグナルの別の解釈
天文・宇宙物理関連メモ vol.1135 Kreidberg et al. (2019) 系外衛星候補ケプラー1625b I の存在への反証