忍者ブログ
日々の感想などどうでもよいことを書き連ねるためだけのブログ。
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。


論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1708.00346
Morais & Namouni (2017)
First transneptunian object in polar resonance with Neptune
(海王星と極共鳴に入っている初めての太陽系外縁天体)

概要

太陽系内において,惑星との平均運動共鳴 (mean motion resonance) に捕獲されている小天体は,順行軌道だけではなく,比較的小さい軌道傾斜角を持つ逆行軌道でも観測されている.しかし,ほぼ極軌道 (軌道傾斜角が 90°に近い軌道) を持つ小天体では,惑星との平均運動共鳴に入っているものは発見されていなかった.

ここでは,ほぼ極軌道にある太陽系外縁天体 (471325),(ニックネーム Niku) は,海王星と 7:9 の平均運動共鳴に入っており,その共鳴の平均寿命は 1600 万 ± 1100 万年であることを報告する.

7:9 共鳴への捕獲と脱出は海王星との近接遭遇によって引き起こされるが,共鳴構造は惑星との共鳴を破壊するような近接遭遇を防ぐ一時的な保護機構にある.

(471325) 以外の他のほぼ極軌道にある太陽系外縁天体は海王星共鳴には入っていないように思われるが,2008 KV42 (Drac) は例外である可能性がある.この天体は,海王星と 8:13 の共鳴に入っている可能性がわずかにある.

(471325) の軌道長半径は 35.5895 AU,軌道離心率は 0.331647 であり,軌道傾斜角は 110.13335°
である.

拍手[0回]

PR

論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1707.08563
Teachey et al. (2017)
HEK VI: On the Dearth of Galilean Analogs in Kepler and the Exomoon Candidate Kepler-1625b I
(HEK VI:ケプラーでのガリレオ衛星類似の欠乏と系外衛星候補ケプラー1625b I)

概要

ケプラーの惑星候補天体の 284 個について,位相で折り畳んだトランジット光度曲線を用いて,系外衛星 (exomoon) の存在を探査した.ここで探査対象とした惑星は,サイズが地球から木星の範囲,軌道長半径が ~ 0.1 - 1.0 AU の間に存在するものであり,いわゆる “温暖 (warm)” な惑星である.

このデータの解析の結果,木星のガリレオ衛星に類似した衛星系が存在する頻度は,284 個の KOI 天体に対して 95%信頼区間で < 0.38 であった.また,68.3 %信頼区間では 0.16 (+0.13, -0.10) である.衛星が一つ存在すると仮定したモデルで衛星のサイズと軌道半径を変えた場合,スーパーイオ (~ 0.5 地球半径の衛星の通称) が 5 - 10 惑星半径の軌道長半径で公転しているものが多い傾向を示唆する.

しかしこの領域でのベイスファクターは 2 程度であり,現段階ではこれは存在の兆候以上のものではないことを強調しておく.今回分析したサンプル中には,衛星の存在を示す強いシグナルは発見されなかった

温暖な惑星の周りにおいてガリレオ衛星に類似した衛星系の存在頻度が低いことは,系外衛星形成モデルへの強い制約を与える.

最後に,ケプラー1628b-i の系外衛星候補の兆候について報告する.この系外衛星候補は,ハッブル宇宙望遠鏡で今後観測される予定である.

系外衛星について

衛星形成過程

木星のガリレオ衛星サイズの衛星 (~ 0.2 - 0.4 地球半径) は,一般に様々な方法で形成できると考えられている.

木星の規則衛星については,原始惑星系円盤中での惑星形成と同様に,周惑星円盤 (circumplanetary disk) の中で形成されたと考えられる (Canup & Ward 2002).この形成過程では,規則衛星の累積質量は中心星の 10-4 のオーダーが上限だと予想されている (Canup & Ward 2006).

より大きな質量比を持つ衛星,例えば地球の月の場合は,太陽系形成の初期数百万年の間に起きた,破壊的な衝突から形成された (Ida et al. 1997など).

最後に,海王星の逆行衛星トリトンは,連星交換機構を通じて海王星に捕獲されたという仮説がある (Agnor & Hamilton 2006).

これらの仮説を合わせると,ガリレオ衛星サイズの衛星は太陽系では少なくとも 3 つの独立した経路で形成しうる.

系外衛星の検出

衛星は系外惑星の周りにも存在することが期待される.しかしガリレオ衛星サイズの衛星の検出は,多くの理由により困難である.

まず初めに検出感度の問題がある.
0.2 - 0.4 地球半径の衛星が太陽型星をトランジットする時のトランジット深さは 3 - 13 ppm となる.この値は,ケプラーで達成可能な典型的な感度より低い.

2 番目に,シグナルが現れる場所の変動が挙げられる.
衛星のシグナルはほぼ確実に,中心の惑星に対して各時期に異なる位置に発見されるはずであり,ある時は惑星のトランジットの前に,ある時は後に,それぞれ惑星からの射影距離が異なる場所に見える (Kipping 2011).

3 番目に,複数衛星によるシグナルの消失がある.
一つの惑星の周りに複数の衛星が存在する場合,衛星が存在することによる惑星のトランジット時刻の変動のシグナル (Sartoretti & Schneider 1999) や,トランジット継続時間変動 (Kipping 2009) のシグナルを消してしまうことがある.

4 番目に,観測機会の少なさがある.
衛星を持つと思われる惑星は軌道周期が長いという性質より (※注釈:短周期の惑星は恒星に近すぎるため衛星を持ちにくい),惑星のトランジットは比較的頻度が低く,観測できるタイミングが限られる.

このような系外衛星探査の困難さはあるが,Hunt for Exomoons with Kepler (HEK) プロジェクトが行われており,これまでに ~ 60 個の系外惑星の光力学的なベイズフィットが行われている (Kipping et al. 2012など).

拍手[0回]


論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1707.08328
Mallonn & Wakeford (2017)
Near-UV transit photometry of HAT-P-32 b with the LBT: Silicate aerosols in the planetary atmosphere
(LBT による HAT-P-32b の近紫外トランジット測光:惑星大気中のシリケイトエアロゾル)

概要

ホットジュピター HAT-P-32b の,地上から観測できる最も短い波長でのトランジット観測を行った.観測には Large Binocular Telescope (LBT) を用いた.(※大型の双眼天体望遠鏡)

系外惑星の地上からの U バンド測光観測の中で,これまでで最も良いクオリティのデータが得られた.

過去の中間波長・長波長の可視光でのトランジット観測と比較したところ,透過光スペクトルにおける明瞭な散乱スロープが検出された.この散乱の原因と鳴っている粒子は,粒径が 0.1 µm よりも大きいマグネシウムシリケイトのエアロゾルであると考えられる.

HAT-P-32b の散乱特性を他の惑星と比較するため,スペクトル指数 (spectral index) を定義して比較を行った.その結果,今回比較したサンプルの中では,近紫外線でのトランジット振幅は非常に典型的な値であることが判明した.

さらに,サンプル中における,スペクトル指数と惑星の平衡温度,表面加速度,恒星の活動度の指標との相関について調べた.しかし明らかな傾向は見いだせなかった.

研究背景

これまでの系外惑星のトランジット観測は,中心星のスペクトル型は晩期の F, G, K 型のものが多かった.これらの恒星はあまり紫外線を放射しないため,多くの紫外線観測ではノイズに悩まされ,また可視光でのトランジット測光観測と同程度の品質には達しないものであった.紫外線の波長は,系外惑星科学における少なくとも 2 つの未解決点に深く関係しているため,これは不幸な状況である.

1 つは,近接ガス惑星と恒星のコロナとの相互作用,あるいは惑星前方へのバウショックの形成に関することである.
このバウショックは,紫外線の吸収によって検出できる可能性がある (Vidotto et al. 2011).

2 つ目は,系外惑星の透過スペクトル中の散乱の特徴についてである.これは,最も青い側の波長 (短波長側) で報告されている.


WASP-12b は,ハッブル宇宙望遠鏡を用いて近紫外線 (254- 258 nm) で非対称なトランジット光度曲線を示すことが分かっている (Fossati et al. 2010).この観測によると,近紫外線でのトランジットは,可視光での観測より明らかに早く始まった.この早い食への入り (ingress) は 278.9 - 282.9 nm でのフォローアップ観測でも確認されている (Haswell et al. 2012).

この早い食への入りを説明するための主要なモデルが 2 つ提案されている.一つは磁気的な起源とするもの (Vidotto et al. 2010, 2011),もう一つは非磁気的な起源とするもの (Lai et al. 2010) であり,どちらもバウショックの形成を含むモデルである.

最近では,Turner et al. (2016) によって複数のホットジュピターの Johnson U バンドでのトランジット観測が行われ,早いトランジットへの入りが近接ガス惑星で一般的かどうかが調査された.その観測の結果,WASP-12b でハッブル宇宙望遠鏡で観測されたトランジットの非対称性の存在は排除された.そのため,バウショック現象の観測は,300 nm よりも短い側の波長でのみ可能であると考えられる.


雲とヘイズの無い大気では,水素分子による光の散乱の影響で,青い側の波長と近紫外線の方向へ向かって不透明度が増加することが期待される (Fortney et al. 2010).また,小さい粒径を持つヘイズ粒子 (エアロゾル) も近紫外線と可視光の透過光スペクトル中に主要なスロープを持つ散乱を起こす (Nikolov et al. 2015など).

この大気中での散乱による不透明度の増加は,惑星の有効半径の増加として測定可能である.そのため,長波長と比較した場合,トランジット深さの増加として現れる.
Sing et al. (2016) の 10 個の近接ガス惑星の解析では,全てのケースで最も青い波長での惑星半径は短い波長での惑星半径よりも大きい値を示した.
惑星の有効半径は短波長側では大きくなるが,その変化の大きさは様々である.

また,これまでの地上からの U バンドトランジットは多数行われてきたが,導出された惑星サイズの値が,2 スケールハイトかそれを下回る精度に到達したケースは稀である.

議論

近紫外線トランジットの特徴

HAT-P-32b の近紫外線でのトランジット光度曲線中には,早い食への入りや光度曲線の非対称性は見られなかった.トランジット深さは可視光よりも僅かに大きい程度であり,惑星のロッシュローブに広がる外気圏による吸収の兆候は無かった.

この結果は,Turner et al. (2016) での 15 個の異なるホットジュピターの地上からの U バンド観測では,光度曲線の非対称性や早いトランジットへの入りは見られなかったという結果と一致する.従って,これらのトランジットの非対称性の起源の研究は,宇宙空間からの UV 波長のみで可能であると考えられる.

エアロゾルによる散乱

U バンドでの光度曲線の解析からは,長波長側での測定に比べると惑星と恒星の半径比が大きくなった.恒星の半径が波長と独立であると仮定すると,これは惑星の有効半径が近紫外線で大きくなっていると解釈できる.これのもっともらしい説明としては,惑星大気中での散乱である.

散乱している粒子は,ガス相にある水素分子かもしれない.しかし,このシナリオはありそうにない.水素分子による散乱が見えるためには,この惑星の大気は雲・ヘイズ無し大気である必要がある.しかし,この惑星の全ての過去の観測において,この惑星が雲・ヘイズ無し大気を持つ可能性については否定的な結果が出ている (Gibson et al. 2013,Mallonn & Strassmeier 2016,Nortmann et al. 2016).

エアロゾルによる散乱は起きる可能性がある.これは,ホットジュピターの大気中では広く現れる現象だと考えられる.

エアロゾルの特性

HAT-P-32b の大気の温度圧力分布 (T-P profile) と凝結曲線を用いて,大気中に発生しうるヘイズの特性について考察した.

近紫外線で観測した大気の圧力領域で形成する可能性が高いものは,マグネシウムシリケイトからなる粒子である.これは多くのホットジュピターで可視光の散乱を起こしている原因であると考えられている (Nikolov et al. 2015など).また,この物質は巨大系外惑星大気中に豊富に含まれると考えられている (Lodders 2010など).

スペクトル指数を用いた評価

スペクトル指数の定義

他惑星との比較のため,スペクトル指数 \(\Delta_{\rm u-z}\) を定義した.これは,k (惑星半径と恒星半径比) の値の,U バンド波長 (ここでは 300 - 420 nm) と z’ バンド波長 (同じく 880 - 1000 nm) での値の差分を取ったものである.これを,各惑星の大気圧力スケールハイト H で規格化して表す (\(H = k_{\rm B} T_{\rm eq}/\mu_{\rm m} g\)).\(k_{\rm B}\) はボルツマン定数,\(T_{\rm eq}\) は惑星の平衡温度,\(\mu_{\rm m}\) は大気の平均分子質量,\(g\) は局所的な重力加速度である.

HAT-P-32b のスペクトル指数は 2.18 ± 0.95 H であり,この値は純粋なレイリー散乱スロープで期待される ~ 4 H よりもやや小さい.

その他の U バンドと z’ バンドでの半径が測定されているホットジュピター 11 個と,HAT-P-32b とを比較した.その結果,この惑星のスペクトル指数は平均的な値である事が分かった.

スペクトル指数と惑星の平衡温度の相関

雲の組成は温度によって変わるため,惑星の平衡温度とスペクトル指数の相関を調べた.
スペクトル指数は粒子サイズと関係していると考えられるものの,ここでは平衡温度とスペクトル指数の間に相関は見つからなかった.

今回分析したサンプル中で最も低温な GJ 3470b は,最も大きなスペクトル指数を持つ.しかし他のサンプルはおおむね一定の値であった.

スペクトル指数と惑星の表面重力の相関

次に,スペクトル指数と惑星の表面重力の相関についても調べた.
惑星が大きな表面重力を持つ場合,大きな粒子は観測できる高度よりも下へ沈むと考えられる.そのため,スペクトル指数と表面重力 g には正の相関があると期待される.

その結果,サンプル中で最も大きな表面重力を持つ HD 189733b は,大きなスペクトル指数を示した.しかしその他の惑星では明確な相関は見られなかった.

スペクトル指数と恒星の活動度の相関

さらに,恒星の活動指標 log(R’HK) との相関も調べた.

惑星大気中のエアロゾルは,ガスの凝縮か光化学過程で生成される.後者の過程は低温なホットジュピター大気で重要であり,前者は高温の大気で主要だと考えられる.光化学過程は,大気に入射する UV フラックスと関係している.また恒星の UV の増加は恒星の活動と相関しているため,恒星の活動度指数を用いて比較することとした.光化学によって生成される炭化水素種は粒子サイズの小さいものを形成する事が期待される.そのため,活動度とスペクトル指数には正の相関が期待される.

しかし分析の結果,サンプル中では活動度指数は広い範囲に分布し,活動度とスペクトル指数が非常に大きな値を持つ HD 189733b を除いて,依存性の兆候は見られなかった.

拍手[0回]


論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1707.07920
Przybilla et al. (2017)
Candidate exoplanet host HD131399A: a nascent Am star
(系外惑星の主星候補 HD 131399A:発生期の Am 星)

概要

直接撮像観測から,三重星系 HD 131399 系にある主星の A 型星の周りには木星型惑星が存在することが示唆されている.

恒星の大気と基本的なパラメータを特徴づけするため,また高精度で元素組成を決定するため,この系の主星 HD 131399 の高品質なスペクトルを,ESO/MPG 2.2 m 望遠鏡の FEROS を用いて取得した.これにより,この系が誕生した分子雲の化学組成や,仮説上の惑星のバルク組成について制約を与えるのが目的である.

スペクトルの定量的な解析のために,ハイブリッド非局所熱平衡モデル大気の技術を適用した.最も新しい恒星進化モデルとの比較から,恒星の基本的なパラメータを決定した.

その結果,有効温度は 9200 K,質量は 1.95 太陽質量,半径は 1.51 太陽半径,光度は太陽光度の 101.17 倍と測定された.

導出した金属の存在度における非局所熱平衡の効果はおおむね 0.1 dex より小さいが,各スペクトル線での効果については最大で ~ 0.8 dex に達した.

観測によって測定された,カルシウムまでの軽い元素の存在度は現在の宇宙存在度と整合し,C/O 比は 0.45 であった.しかし,より重い元素はやや過剰に存在する傾向を示した.これらの結果より,この系が誕生した分子雲は一般的な化学組成を持っていたが,自転が遅い恒星における Am 星の特徴を持った状態への進化段階を目撃していると結論付けた.

この系について

この系は,Upper Centaurus-Lupus アソシエーション (UCL, de Zeeuw et al. 1999など) の一員である.このアソシエーションの年齢は 16 ± 7 Myr である.

Wagner et al. (2016) によって,HD 131399 は階層的な三重星 (hierarchal triple) であることが,ESO VLT の SPHERE での観測を用いて明らかにされた.この系は A 型星の主星 HD 131399A と,~ 3.2” 離れた位置にある近接連星 HD 131399B, C からなり,後者 2 つは測光学的には G, K 型星と分類された.
さらに,主星から ~ 0.8” 離れた場所にある木星型惑星 HD 131399Ab の存在が示唆されている.これは A 型星まわりに直接撮像で発見されている系外惑星としては 4 個目であり,また直接撮像で発見された系外惑星を持つ恒星としては最も高温なものである.ただし HD 131399Ab については,惑星ではなく背景星であるとする説もある (Nielsen et al. 2017).

議論

HD 131399A の射影した自転速度は 26 km s-1 であった.これは今回の観測で初めて測定されたものである.

Wagner et al. (2016) では HD 131399B, C のペアが HD 131399A を公転する傾斜角について 45 - 65°という緩い制限しか与えていないが,もし HD 131399B, C ペアの軌道面と HD 131399A の自転軸が揃っているとすると,実際の自転速度の上限値は 40 km s-1 となる.そのため,HD 131399A は自転が遅い


元素の存在度について,カルシウムまでの軽い元素は予想される値と整合的であった.特に C/O 比は 0.45 ± 0.07 であり,これは cosmic abundance standard (CAS) の平均値 0.43 ± 0.06 とよく一致する.

しかし重い元素では存在度の超過が見られ,例えばバリウムではファクター 6 の超過が見られた.

HD 131399A は,自転速度が 120 km s-1 程度より遅い恒星で化学組成異常を発達させる傾向にある,非常に浅い表面対流層を持つ.HD 131399A は Am 星に特徴的な存在度のパターンを示さない.Am 星に特徴的なパターンとは,炭素とスカンジウムの際立って低い存在度,酸素とカルシウムの低い存在度,および鉄族元素の存在度の超過である (Vick et al. 2010など).しかし典型的な Am 星の年齢は 108 年程度であり,HD 131399A では Am 星に特有のスペクトルの特徴はまだ進化中であると考えられる.
※注釈
Am 星 (Am star, metallic-line star) は,スペクトル型が A 型の恒星のうち,スペクトル線に以上が見られる化学特異星の事を指す.Am 星では金属元素の強い吸収線が見られ,表面に金属が多く含まれることを示す.また,カルシウムやスカンジウムの線は見られないことも特徴である.

このような化学異常を示す原因は,表面の対流層の発達に起因する.表面対流によって金属が表面まで運ばれて存在度の過剰を示し,カルシウムやスカンジウムなどは対流で内部に運ばれて欠乏を示す.このような表面対流の発達は,A 型星の自転が遅い時に見られる.通常は A 型星は自転が速いが,伴星があるなどの要因により自転速度が遅くなる場合があり,そのような場合に化学異常を示す.

拍手[0回]


論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1707.08007
Cabrera et al. (2017)
Disproval of the validated planets K2-78b, K2-82b, and K2-92b
(確認されたされた惑星 K2-78b,K2-82b と K2-92b の反証)

概要

ケプラー K2 のデータ中に確認された惑星のリストの中から,更なる特徴付けに適したスーパーアースを選定している最中に,検出されたトランジットシグナルの性質を再評価するべき幾つかの疑わしいケースを発見した.

これらの惑星について,K2 の光度曲線を解析した.
その結果,認証された (validated) 惑星 K2-78b, K2-82b と K2-92b は惑星のトランジットによるシグナルではなく,背景の食連星によるシグナルであることが判明した

これらの食連星はケプラーの測光アパーチャの範囲内にあったが,地上からの高分解能の撮像観測では視野の外にあった.宇宙空間からのミッションで発見された惑星候補シグナルの確認の際には,細心の注意が必要である.

研究背景

Crossfield et al. (2016) では,K2 データの解析と地上からのフォローアップ観測を行い,104 個の惑星候補天体が惑星であると確認した (惑星に由来するシグナルであることを統計的に確認).その 104 個のうち,64 個はこれまでに存在が確認されておらず,Crossfield et al. (2016) が初めての発見報告であった.

ここでは,Crossfield et al. (2016) で偽陽性確率が 1%を下回ると評価され,惑星であるとされた 64 個の惑星のうち,3 個は視野に混入した食連星によるシグナルであったことを示す.

拍手[0回]