忍者ブログ
日々の感想などどうでもよいことを書き連ねるためだけのブログ。
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。


論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1706.00466
Lewis et al. (2017)
Atmospheric Circulation and Cloud Evolution on the Highly Eccentric Extrasolar Planet HD 80606b
(非常に大きな軌道離心率を持つ惑星 HD 80606b における大気循環と雲の進化)

概要

非常に離心率の大きい (~ 0.9) ホットジュピター HD 80606b の,スピッツァー宇宙望遠鏡での観測から,系外惑星大気に関する情報を得ることができる.例えば,HD 80606b が近点を通過する時の観測からは,大気の輻射,移流,化学的なタイムスケールが直接測定でき,惑星の自転周期,潮汐散逸率,大気組成 (エアロゾルを含む) などの基本的な惑星の特性に制約を与えるのに使うことが出来る.

ここでは,HD 80606b の 3 次元 general circulation model を用いて,スピッツァー宇宙望遠鏡で
観測された位相曲線を再現出来る大気の力学について調査した.その結果,惑星の自転周期が擬同期 (pseudo-synchronous) 自転周期の 2 倍であった場合に,スピッツァーで観測した近点通過周辺の位相曲線をよく再現出来ることが判明した

さらに,近点通過周辺での惑星大気中における雲の速い形成と散逸,鉛直輸送が,観測された位相変動を良く説明することを発見した.

また,近点通過前後の可視光波長での観測が,この惑星大気中の主要な雲の成分の組成や,形成・移流のタイムスケールを制限するのに使えると予測される.

研究背景

HD 80606b は,3.94 木星質量,0.98 木星半径の惑星で,非常に軌道離心率が大きい (e=0.9332 ) 軌道にあるホットジュピターである (Pont et al. 2009).この惑星の極端に大きな軌道離心率は,伴星の存在による Kozai Migration (古在効果による軌道移動) の結果である (Qu & Murray 2003).

この惑星は最初に視線速度観測から発見された (Naef et al. 2001).その後,惑星の二次食 (Laughlin et al. 2009),トランジット (Moutou et al. 2009) が観測された.軌道離心率が非常に大きいため,軌道周期 ~ 111 日の間に,近点と遠点で ~ 800 倍もの入射フラックスの大きな変化を経験することになる.


スピッツァー宇宙望遠鏡でのこの惑星系の観測 (de Wit et al. 2016, Laughlin et al. 2009) では,近点通過の前後で惑星からのフラックスに大きな変化を持つことが観測されている.この観測からは,惑星大気の輻射のタイムスケールを推定する事ができる.de Wit et al. (2016) の観測では,4.5 µm と 8 µm でのこの惑星の大気の輻射タイムスケールの推定 (~ 4 時間) だけではなく,測定している場所の大気圧力における大気の吸収度と,惑星の全体の自転周期を測定した.

de Wit et al. (2016) によると惑星本体の自転周期は 93 時間で,”pseudo-synchronous (擬同期)” 自転周期 (Hut 1981) から予測されていた ~ 40 時間という値よりも有意に長かった.

これまでのスピッツァーの位相変化の観測の解釈 (Laughlin et al. 2009, de Wit et al. 2016) は半解析的なものであり,2 次元の大気流体モデル (Langton & Laughlin 2008) に基いていた.

モデル

Substellar and Planetary Atmospheric Radiation and Circulation (SPARC) モデル (Showman et al. 2009) を使用してシミュレーションを行った.大気組成は太陽組成を仮定し,また TiO と VO はオパシティの評価から取り除いた.これは,これらの分子種は大気の深いところに “cold trap” されてしまい,観測できる大気中には存在しなくなると考えられるためである (Fortney et al. 2008).

雲は global circulation model の中では無視した.ただし雲の効果は,シミュレーションの後処理の段階で考慮した.

自転周期は,Hut (1981) での 擬同期自転周期関係から,40.4761 時間を仮定した.しかし自転周期はこの基準値から大きく異なっている可能性もありうるため,その半分の 20.2380 時間と 2 倍の 80.9522 時間も計算した.

拍手[0回]

PR

論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1706.00509
Trifonov et al. (2017)
Three planets around HD 27894. A close-in pair with a 2:1 period ratio and an eccentric Jovian planet at 5.4 AU
(HD 27894 周りの 3 つの惑星.2:1 周期比を持つ近接したペアと 5.4 AU の高軌道離心率木星型惑星)

概要

HARPS を用いた視線速度観測で系外惑星の探査を行った.HARPS の新しい観測プログラムでは,惑星が一つ確実に発見されている系での,その惑星と平均運動共鳴に入っている惑星を持つような惑星系を探査している.このような系では,しばしば惑星の検出は観測頻度がスパースな (まばらな) 視線速度データのみを元に検出されている.

ここでは,過去のアーカイブデータと,HARPS での観測による新しい視線速度データから,K2V 星 HD 27894 の解析を行った.その結果,観測データは 3 つの惑星を持つモデルと整合的であった.また,最もよく合う軌道のパラメータにおける,惑星軌道の長期的な安定性も確認した.


結果,HD 27894 は少なくとも 3 つの重い惑星を持つ恒星であることが分かった.過去の観測で既に存在が知られていた周期 18 日の木星型惑星に加え,軌道周期 36 日の土星質量惑星を検出した.この惑星はおそらく 1 番目の惑星と 2:1 平均運動共鳴に入っている.

さらに,軌道周期 5170 日のややエキセントリック (e=0.39) な軌道を持つ,冷たく重い (5.3 木星質量) 惑星も検出した.


HD 27894 は,非対称な 2:1 平均運動共鳴に入っていると思われる,恒星近傍の狭い範囲に存在する重い惑星ペアと,それを周回する高軌道離心率の巨大惑星を持つ系である.この系は,惑星系の形成と進化シナリオの重要なマイルストーンとなるかもしれない.

パラメータ

HD 27894
スペクトル型:K2V
質量;0.8 太陽質量
金属量:[Fe/H] = 0.30
等級:V = 9.36

この恒星は非活発な太陽型星である.自転周期は遅く,およそ 44 日である (Moutou et al. 2005).過去の HARPS の観測で HD 27894b が検出されていた (Moutou et al. 2005).
HD 27894b
軌道周期:18.02 日
軌道離心率:0.047
軌道長半径:0.125 AU
最小質量:0.665 木星質量
HD 27894c
軌道周期:36.07 日
軌道離心率:0.015
軌道長半径:0.198 AU
最小質量:0.162 木星質量
HD 27894d
軌道周期:5174 日
軌道離心率:0.389
軌道長半径:5.448 AU
最小質量:5.414 木星質量

系の安定性の解析

この惑星系の軌道安定性を調べるため,SyMBA (Duncan et al. 1998) を用いて軌道積分を行った.その結果,一般に 10 Myr の間は安定であることが確かめられた.

重い外側の惑星 HD 27894d は,軌道間隔と離心率にほとんど変化は見られなかった.軌道間隔が大きいため,HD 27894d による内側の惑星ペア対する永年摂動は無視できる.

しかし HD 27894b と c は力学的に非常に活発であることが分かった.これは両惑星の質量が大きいことと,惑星同士の軌道間隔が小さいことから予想される結果である.

内側の 2 惑星は軌道周期比が 2:1 に近く,平均軌道離心率はそれぞれ 0.036 と 0.047 となった.

議論

この系は,重く,距離が離れたやや軌道離心率の大きい木星型惑星と,おそらく共鳴に入っている重い惑星のペアが共存するという独特な系である.これらの惑星の軌道配置からは,惑星形成と進化は,円盤の特性と原始惑星系円盤の段階での惑星の軌道移動率に大きく依存することが示唆される.内側の惑星ペアはおそらく,スムーズな軌道移動によって共鳴に捕獲されたと思われる.一方で外側の重い惑星は星周円盤が蒸発する前に 5.4 AU まで移動したと考えられ,そのため軌道移動が止まったと思われる.


内側の 2 惑星については 2:1 平均運動共鳴に入っていることを示す強い示唆があるが,最も良く合う軌道パラメータから間違いなく確認することは出来ていない.ベストフィットモデルでは軌道周期は 2:1 に非常に近いが,共鳴角は 0° から 360° を循環している.共鳴の配置としては,反平行の共鳴か,非対称配置であると思われる.

知る限りでは,この系は非対称の 2:1 平均運動共鳴を示す初めての系である.ただし,共鳴の性質とその起源を理解するためにはさらなる観測が必要である.例えば,現段階では 3 惑星の存在自体は確認できるが,内側の 2 惑星の共鳴の性質の解明や,軌道のパラメータの制限 (特に d について) はさらなるデータが必要である.

外側の d の視線速度データはデータの取得間隔が空いているため,真の軌道のパラメータがベストフィットモデルの不定性の範囲内に存在しないという可能性は排除できない.

拍手[0回]


論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1706.00058
Esplin et al. (2017)
A survey for planetary-mass brown dwarfs in the Chamaeleon I star-forming region
(カメレオン I 星形成領域における惑星質量褐色矮星のサーベイ)

概要

Chamaeleon I 星形成領域 (star-forming region) での惑星質量を持つ褐色矮星のサーベイを行った.サーベイには,固有運動の測定と,スピッツァー宇宙望遠鏡,ハッブル宇宙望遠鏡,地上望遠鏡での観測から得た可視光と赤外線の測光データを用いた.

Gemini Observatory での近赤外分光観測の結果から,6 つの新しい晩期型天体の候補を検出した.このうちの一つ,Cha J11110675−7636030 は,extinction-correlated MK が最も小さく,天体の進化モデルに依存して変化するが,観測値に対応する質量は 3 - 6 木星質量と推定される

この天体と他の 2 つの天体の中間赤外での色は,スペクトル型で ≦ M9.5 より若い光球面よりも赤い色を示す.これは天体の周囲に円盤が存在することをを示唆する結果である.しかし,これらの天体は M9.5 よりも晩期型の天体であると考えられ,これらのタイプの天体では若い光球面の中間赤外色はあまりはっきりとは分かっていない.そのため,色の超過が円盤によるものかは明確には決定できない.

もし Cha J11110675−7636030 が円盤を持っているのであれば,この天体は円盤を持つ褐色矮星の中で最も軽いもののひとつになる.

ここで発見した新しい褐色矮星の推定質量はこのサーベイ観測での completeness limit (完全性限界) である 6 - 10 木星質量を下回るため,Chamaeleon I における初期質量関数の最小質量の測定のためのより詳細な観測が必要である.

研究背景

若い恒星と褐色矮星の質量の分布 (言い換えれば初期質量関数 (initial mass function, IMF)) は,星形成過程で決まる.そのため IMF の測定を行うことによって,星形成理論を検証する事ができる.

星形成理論では,IMF の最小質量の予言値は広い範囲を取る (1 - 100 木星質量,Low & Lynden-Bell 1976, Larson 1992など).IMF の最小質量は,太陽近傍の褐色矮星のサーベイ (Kirkpatrick et al. 2012),若い運動星団 (Gagné et al. 2015),散開星団 (Moraux et al. 2004),星形成領域 (Lhuman et al. 2009など) によって与えられてきた.

拍手[0回]


論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1706.00027
Allart et al. (2017)
Search for water vapor in the high-resolution transmission spectrum of HD189733b in the visible
(HD 189733b の可視光での高分散透過スペクトル中における水蒸気の探査)

概要

最近の地上望遠鏡での高分解能の透過・放射スペクトルから,系外惑星の大気の構造と組成についての研究が盛んに行われている.これらの観測から,ナトリウムや一酸化炭素,水などの多数の原子や分子種が,多くのホットジュピターで検出されている.

ほっとじゅぴたー大気中の分子種は近赤外領域でのみ検出されているが,大気中の原子は可視光で検出されている.とりわけ,水蒸気の検出と存在度の決定は,惑星形成過程に重要な制限を与える.

ここでは,HARPS を用いて可視光での高分散分光観測を行い,HD 189733b の大気中の水蒸気の検出を試みた.大気の透過光コード Molecfit を使用して,地球大気での吸収特性の補正を行った.その後 3 回のトランジットのデータセットを用いて,HD 189733b の高分散透過光スペクトルを計算し,6500 Å 周辺の水分子による吸収を探した.

結果として,地球大気による吸収の特徴はノイズレベルにまで補正することが出来た.また,HD 189733b 大気中における水の吸収については,100 ppm という 5 σ の上限値を与えた.

透過光スペクトルの検出精度は 1 σ で 20 ppm を達成し,地球大気に強い吸収源がある分子 (例えば今回の水分子) に対しても,地上観測から宇宙望遠鏡での観測に匹敵する程度の感度が実現できることを示した.
この手法は, VLT に設置される ESPRESSO のような将来的な装置を用いて,系外惑星大気中の様々な原子や分子を検出するための新しい視点を与える.今回の結果を外挿すると,ESPRESSO では 1 回のトランジットで HD 189733b のような雲の無い大気を持つホットジュピター中の水蒸気を十分検出できるだろうと考えられる.

今後の近赤外分光観測装置によって,より広い範囲の分子種に対して効果的で十分な感度の観測が期待される.さらに,同じ分子種を異なるバンド (例えば可視光と近赤外で) で検出することは,惑星大気のレイリー散乱やエアロゾル (雲 and/or ヘイズ) の存在などの大気の構造や組成の制限につながる.

研究背景

ホットジュピターの大気観測

ホットジュピターのトランジット観測からは大気に関する様々な情報が明らかになる.例えば,一次食 (primary transit) では惑星大気の透過スペクトル,二次食 (secondary eclipse) では惑星からの熱放射や表面での反射光が検出出来る.

惑星大気からの初めての原子の検出は,HD 209458b の透過スペクトル中から得られた (Chabonneau et al. 2002).この観測では,ハッブル宇宙望遠鏡の STIS 分光器を用いて,可視光の波長でナトリウムの doublet の吸収を検出した.

地上望遠鏡での初めての大気成分の検出は,Redfield et al. (2008) によるものである.この観測では,HD 189733b でナトリウムの doublet を検出した,その後 HD 209458b でも,Snellen et al. (2008) が地上からの観測でナトリウムを検出している.

CO の検出は,赤外線の高分散透過スペクトル観測で行われた.HD 209458b と HD 189733b でそれぞれ検出されている (Snellen et al. 2010, Brogi et al. 2016).これらの観測は,超大型望遠鏡 (Very Large Telescope, VLT) の CRIRES 分光器を用いて行われている.

さらに Deming et al. (2013) と McCullough et al. (2014) では,両惑星の赤外透過スペクトル中に水の存在を検出している.この観測はハッブル宇宙望遠鏡の WFC3 を用いて行われている.

これまでに数十個のホットジュピターで,同種の観測がおこなれている.いくつかの惑星では大気中のエアロゾルの存在が,レイリー散乱やミー散乱の特徴を介して検出されている (Lecavelier des Etangs et al. 2008など).また,大気散逸の存在 (Lecavelier des Etangs et al. 2008など),大気中での温度勾配の存在 (Huitson et al. 2012など).大気循環 (Snellen et al. 2010).大きな C/O 比の検出 (Mashusudhan et al. 2011など) も報告されている.

HD189733b について

今回観測するのは HD 189733b である.主星の HD 189733 は活発で明るい金属豊富な K0V 星である.この惑星は潮汐固定していると思われるホットジュピターで,可視光では青い色を示すことが分かっている (Evans et al. 2013).

大気大気はナトリウム (Redfield et al. 2008など),水 (Birkby et al. 2013など),一酸化炭素 (de Kok et al. 2013など) を含む.また,青い波長ではレイリー散乱を示す (Pont et al. 2008など).これは大気中の高高度にあるヘイズと,Ly α 吸収で存在が示されている,水素原子の散逸によって引き起こされていると考えられる (Lecavelier des Etangs et al. 2010など).

結論

Molecfit ツールを用いることにより,地球大気による水の吸収の影響は,ノイズレベルにまで除去することができた.

HD 189733b 大気中での水の吸収の相互相関関数においての 1 σ で 10 ppm の精度を達成した.
理論的に予想されるスペクトルの最大のコントラストは 46 ppm であり,今回のデータは HD 189733b における水蒸気の存在に意味のある制限を与えるにはノイズが多すぎる.

今回の手法を元に,HD 189733b 的な惑星で水蒸気を検出するためには何回のトランジットが必要か検証した.観測手段として,HARPS や将来の ESPRESSO での観測を念頭において検証を行った.ESPRESSO の波長カバー領域などを考慮すると,より強いシグナルが期待される 7400 Å のバンドでは,1 回のトランジットで水を検出可能と考えられる.そのため,ESPRESSO は地球型惑星探査だけではなく,可視光での惑星大気の特徴付けの機器としても使える.

拍手[0回]


論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1706.00207
Bérard et al. (2017)
The structure of Chariklo's rings from stellar occultations
(恒星掩蔽からのカリクローの環の構造)

概要

ケンタウルス族天体 10199 カリクローの周りには,細く濃い 2 つのリング (C1R と C2R) が発見されている.この環は,2013 年 6 月 3 日のカリクローによる恒星の掩蔽の最中に発見された (Braga-Ribas et al. 2014).

この天体自体の物理特性と,環のより良い特徴付けのために,カリクロー系の掩蔽観測を複数回行った.その結果,2014 年から 2016 年の間に発生した 12 回のカリクローの掩蔽観測に成功した.

この掩蔽観測から,環の分布 (物理的な幅,オパシティ,環の縁の構造) についての情報が得られ,またそれらの半径と極の位置を制約した.その結果,環の発見論文で導出されている環の構造と整合的な結果を得た.

掩蔽観測からは,C1R の構造は 6 箇所測定できた.この 6 箇所の分布からは,~ 5.5 - 7 km の範囲で有意な幅の変化が見つかった.薄い方の環 C2R はあまりパラメータの制限ができなかったが,0.1 - 1 km の幅の変動があると思われる.

C1R の内側と外側の縁は,無限に鋭い境界とするモデルと整合的であり,環の物質は鋭い分布を持っていると考えられる.C1R の環の領域と,周囲の何もない領域の間の遷移層の上限値は 1 km であった.一方,C2R については縁の鋭さの制限は得られなかった.

拍手[0回]