忍者ブログ
日々の感想などどうでもよいことを書き連ねるためだけのブログ。
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。


論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1911.10569
Bowler et al. (2019)
Population-Level Eccentricity Distributions of Imaged Exoplanets and Brown Dwarf Companions: Dynamical Evidence for Distinct Formation Channels
(撮像された系外惑星と褐色矮星伴星の集団レベルでの離心率分布:異なる形成経路の力学的証拠)

概要

直接撮像で発見されている系外惑星と褐色矮星の軌道離心率は,それらの形成と力学的な歴史についての情報を与えてくれる.ここでは,Keck/NIRC2 での亜恒星質量の伴星の高コントラスト撮像観測と,位置天文観測データを合わせ,5-100 AU の軌道長半径を持つ 27 の長周期巨大惑星と褐色矮星伴星の集団レベルでの軌道離心率分布を,階層的ベイズモデリングを用いて導出した.

今回分析した全てのサンプルにおいて,離心率分布の形状は離心率 0-1 の間でおおむね平坦であった.

サンプルを伴星の質量と中心星との質量比でサブクラスに分割した場合,巨大惑星と褐色矮星の間の離心率分布は大きな違いを示した
中心星との質量比が小さい伴星は離心率が低い傾向にあり,これは視線速度とトランジットで発見されているウォームジュピターと類似した軌道要素の特徴である.これは,広がった重い円盤内部での,大きく乱されていない軌道でのその場形成 (in situ formatino) の証拠であると解釈できる.

褐色矮星質量の伴星は,離心率分布に軌道周期への依存性の兆候が見られるとともに,離心率 e~0.6-0.9 に広いピークを示す.これは軌道間隔が 1-200 AU の広い恒星の連星に見られる軌道特性と軌道・離心率の傾向と非常に似ている.このことは,この範囲にある褐色矮星は同じようなメカニズムで形成されたことを示唆する.

また,”eccentricity dichotomy” (離心率の二分化) の兆候についても報告する,これは複数惑星系 HR 8799 の平均離心率は,単一の惑星系での離心率よりも小さいというものである.

将来的には,より多くのサンプルと継続的な位置天文的軌道モニタリングから,これらの離心率分布が中心星質量や惑星の個数,年齢などのパラメータと相関しているかどうかが分かるだろう.

拍手[0回]

PR

論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1911.09758
Uyama et al. (2019)
Atmospheric Characterization and Further Orbital Modeling of κ And b
(アンドロメダ座カッパ星b の大気の特徴付けとさらなる軌道のモデル化)

概要

Subaru/SCExAO+HiCIAO と Keck/NIRC2 による,アンドロメダ座カッパ星b (κ And b) の測光観測と位置天文観測について報告する.最近公開された SCExAO/CHARIS の低分散分光観測と,公開されている熱赤外線測光観測を合わせ,伴星の大気組成と軌道に制約を与えた.


アンドロメダ座カッパ星b の Y/Y-K カラーは散在する矮星よりも赤く,この天体が若く低重力であることと整合的である.Y バンドの測光と CHARIS スペクトルを,孤立した散在矮星のスペクトルの大きなライブラリと経験的に比較し,この天体は低重力ではあるがもっともらしいスペクトル型 (L0-L2) の広い範囲に入るという Currie et al. (2018) の結論を再確認した.

今回の重力的な分類では,この天体に対するベストフィットな天体モデルは,これまでに報告されていたよりも低重力であることが示唆された.

ダスト・雲を持たない大気モデルは,1-4.7 µm のスペクトルエネルギー分布全体を再現できない.~1700-2000 K の雲あり大気モデルが,観測データとより良く一致する.最も良くフィットできるモデルは,1700-1900 K,表面重力 log(g) = 4-4.5,1.3-1.6 木星半径である.ベストフィットモデルは,最も低温で最も重力が小さいモデルを示唆し,1700 K と log(g) = 4.0 という値になった.

7 年にわたる新しい位置天文観測データから,ExoSOFT を用いた軌道要素の更新を行い,この天体が大きな離心率 (0.77±0.08) を持つことを再確認した.


ここでは,アンドロメダ座カッパ星b を遠方かつ高離心率の軌道に散乱した原因として,未発見の伴星が存在するというシナリオについて考察した.もしアンドロメダ座カッパ星b を含めて 3 つの惑星が同一平面上で形成され,そのうちの 1 つが重力散乱で系外に放出されたとした場合,内側の伴星は 10 木星質量程度以上で 25 au 程度以内に存在する可能性がある.

パラメータ

アンドロメダ座カッパ星
スペクトル型:B9
質量:2.6-2.8 太陽質量
距離:50.0 pc
アンドロメダ座カッパ星b
軌道長半径:103.6 au
軌道周期:631.1 年
軌道離心率:0.77
アンドロメダ座カッパ星系について
亜恒星質量の伴星がmすばる望遠鏡の観測で報告されている (Carson et al. 2013).その後の観測でこの系の年齢は ~4000 万歳と推定されている (Jones et al. 2016).また運動学的見地からは,~2000-5000 万歳の Columbia アソシエーションのメンバーであると推定されている (Currie et al. 2018).

アンドロメダ座カッパ星b のスペクトルエネルギー分布の観測では,有効温度は 1700-2000 K と推定されていたが,表面重力は制約できていなかった (Bonnefoy et al. 2014).その後,すばる望遠鏡を用いた近赤外線分光観測では,低重力の天体であるスペクトル型 L0-L1 のものとよく一致する結果が得られていた (Currie et al. 2018)

拍手[0回]


論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1911.09131
Yee et al. (2019)
The Orbit of WASP-12b is Decaying
(WASP-12b の軌道は崩壊している)

概要

WASP-12b は,晩期 F 型星を 1.09 日の周期で公転するトランジットホットジュピターである.

2008 年に発見されて以降,この惑星のトランジットの間隔は 29 ± 2 ミリ秒/年 で減少している.これはこの惑星の軌道が徐々に減衰している軌道崩壊を示している可能性があるが,過去の参照可能な観測データでは,惑星軌道が僅かに離心率を持ち近点歳差を起こしていることが原因である可能性も残されている.

ここでは,新しいトランジットと掩蔽の観測から,より決定的な軌道崩壊の証拠を得られたことを報告する.また視線速度観測も行い,そのデータを元に,Rømer 効果が軌道周期の変化の原因である可能性も否定した.

そのため,この系は惑星軌道が崩壊していると確実に言える初めての惑星系である.
軌道崩壊のタイムスケールは \(P/\dot{P} = 3.25\pm0.23\) Myr である.この軌道崩壊を潮汐散逸によるものだと解釈すると,恒星の modified tidal quality factor は \(Q'_{\star}=1.8\times 10^{5}\) と推定される.

拍手[0回]


論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1911.09673
Piro & Vissapragada (2019)
Exploring Whether Super-Puffs Can Be Explained as Ringed Exoplanets
(スーパーパフは環を持った系外惑星として説明できるかどうかの調査)

概要

発見数が増えている興味深い惑星の分類として,「スーパーパフ」(super-puffs) と呼ばれる,質量の割に非常に大きな半径を持ち,そのために密度が低い (≦0.3 g cm-3) ものがある.

このような広がった大気を持つ惑星を,現在の進化モデルで説明するのは難しい.これは,そのような惑星は大気の光蒸発の影響を受けやすいためである.

ここではスーパーパフの成因として別の説明を考える.つまり,惑星が環を持っているために大きな半径に見えるという仮説である.この仮説は,スーパーパフのトランジットスペクトルが特徴に欠けている理由も自然に説明することができる.

この仮説は,スーパーパフとされる全ての天体を説明することはできないものの,現在参照可能なデータのある特定のスーパーパフを説明可能であることを見出した.

スーパーパフの軌道半径は中心星に近いことから,環は氷組成ではなく岩石組成である必要がある.このことは想定される環の半径への制約を与え,環が空隙の多い物質で構成されていない限り,ケプラー51b, 51c, 51d, 79d の大きなサイズを環で説明するのは難しい.

さらに,ケプラー18d, 223d, 223e の潮汐固定のタイムスケールは短いため,これらの天体は非常に低速で自転していると考えられる.その場合惑星の扁平度は小さくなり,惑星の周りの環は中心星の影響によって歪められる.

ケプラー87c と 177c の見かけの大きさは環で説明できる可能性が高いが,この仮説を検証するためには ~10 ppm の測光精度が要求される.

ここでの議論では環で説明できる可能性は低いとしたものの,ケプラー18d, 223d, 223e の周りの環の存在は,50-150 ppm の測光でより簡単に検証可能である.また最近発見されたスーパーパフ惑星 HIP 41378f についても触れる.

スーパーパフ惑星について

スーパーパフと呼ばれる,推定密度が 0.3 g cm-3 以下の非常に低密度な系外惑星が次々と発見されている.

スーパーパフのに関しては,研究者によって定義が異なることに注意が必要である.例えば,質量は 10 地球質量未満という厳密な境界を与えている研究者もいる (Lee 2019,Jontof-Hutter 2019など).ここではより寛容な基準として,15 地球質量程度以下の惑星を含めることとする.

理論的な予想よりも大きな半径を持つこれらの惑星は,従来のホットジュピターの膨張半径の問題とある程度類似している.しかしホットジュピターの膨張半径は惑星の平衡温度と強い相関があり (Miller & Fortney 2011など),より低温なスーパーパフに同じメカニズムを拡張できないことを意味する.

いくつかのスーパーパフ系は若く,そのためこのような惑星はまだ収縮中であるために膨張して見えるという可能性はある (Libby-Roberts et al. 2019).しかしスーパーパフとされる惑星を持つ系の大部分は年老いており,系の年齢が若いという理由だけでは説明できない.他の説明としては,惑星からダストの流出があるというもの (Wang & Dai 2019),光化学ヘイズの影響 (Kawashima et al. 2019),潮汐加熱による膨張 (Milliholland 2019),非常に厚いガスエンベロープを持っている (Lee & Chiang 2016) というものがある.最後の仮説の場合,スーパーパフのトランジット分光観測での主要な観測ターゲットとなるが,観測された例ではスペクトルは特徴に欠けていたことが報告されている (Libby-Roberts et al. 2019).
分厚いエンベロープ説は他にも問題点があり,光蒸発によって惑星からの大きな質量放出を経験してしまうという点である.

結論と議論

  • スーパーパフが大きな半径を持つ理由が惑星周りの環であるとすると,ケプラー18d, 87c, 223d, 223e の環は岩石組成である必要がある.ケプラー117c は氷と岩石の境界線に位置する.
  • 惑星は,環が歪むのを防ぐために十分に扁平である必要がある.そのためケプラー51c, 51d, 79d, 87c, 177c は環で説明が可能な有望な候補である.これはこれらの惑星では自転の潮汐同期時間が長いことと,環が歪むのを防ぐのに必要な J2 が小さいからである.
  • 環が存在したとしても,スーパーパフの元となる惑星にはかなりの量のガスエンベロープが存在している必要がある.そうでない場合,自転の潮汐同期のタイムスケールが短くなりすぎてしまい,環が歪むのを防ぐのに必要な J2 の値が低くなってしまう.
  • 総合すると,環はスーパーパフの全てを説明できるわけではないが,ケプラー87c, 177c は環で説明できる可能性がある.ケプラー18d, 223d, 223e は,ここで推定したよりも自転が速い場合は興味深い対象である.ケプラー79c は,もし環の物質が特に空隙率の高いものであった場合のみ,環で説明できる.
  • 環のトランジットでの検出は,より高い密度 (≳0.2 g cm-3) を持つスーパーパフか,観測による見かけの半径と実際の推定惑星半径に大きな比率があるものであれば検証が容易である.このため,仮説の検証にはケプラー18d, 51b, 51c, 51d, 223d, 223e が適している.
  • より低密度 (≦0.1 g cm-3) で小さい比率のもの,例えばケプラー79d, 87c は環を検出するのが難しい.
  • HIP 41378f を除くと,現在の地上望遠鏡と宇宙望遠鏡は,環の仮説を検証するのに十分な観測精度がない.ケプラーで発見されたスーパーパフについては,検証を行うためにはジェイムス・ウェッブ宇宙望遠鏡の打ち上げを待たなければならない.
この論文の最終段階で,新しいスーパーパフ HIP 41378f の発見が公表された (Santerne et al. 2019).この惑星は 1.37 AU と大きな軌道長半径を持つため,環が中心星によって歪められている可能性が低い.また中心星が明るいため (J = 7.98),現在の地上望遠鏡および宇宙望遠鏡で 100 ppm の精度での測光が期待できる.

しかしこの惑星のトランジット継続時間が長いため,検証に必要な位相のカバーをするための日程調整が難しい観測対象である.

拍手[0回]


論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1911.08859
Spake et al. (2019)
A super-solar metallicity atmosphere for WASP-127b revealed by transmission spectroscopy from HST and Spitzer
(HST とスピッツァーの透過光分光観測で明らかになった WASP-127b の超太陽金属量大気)

概要

系外惑星大気の化学存在度は,惑星のバルク組成,形成過程と進化の歴史についての情報を含んでいる.サイズが大きく,比較的雲の無い大気を持つ系外惑星で,かつ明るい恒星を公転しているものは,正確な組成の測定を行うのに適している.

ここでは,明るい (V ~ 10.2) 恒星を公転する,土星より軽い (0.19 木星質量),大きい (1.37 木星半径) 系外惑星 WASP-127b の透過スペクトルを測定した.観測は近紫外線から近赤外線までの波長 (0.3-5 µm) で,ハッブル宇宙望遠鏡とスピッツァー宇宙望遠鏡を使用した.

その結果,特徴に富んだ透過スペクトルが得られた.
スペクトル中には,ナトリウム,水蒸気,二酸化炭素と,小さい粒子の凝縮物による波長依存性のある散乱の特徴,および分子の吸収をいくらか減衰させている灰色の吸収体の特徴が見られた


得られたスペクトルを元に,2 つの大気復元モデルを実行した.一つは化学平衡を仮定したもの,もう一つは大気組成を自由にフィットするものである.

復元された大気組成は,化学平衡を仮定したモデルでは,ナトリウムと酸素,炭素は太陽組成より大きく,太陽での値に対してそれぞれ 51, 23, 33 倍と推定された.矛盾する C/O 比であるものの,どちらの復元モデルでも二酸化炭素の体積混合比は太陽組成を超える値を得る.そのため,この惑星の全体の金属量は太陽組成を上回っている可能性が高い.これは,二酸化炭素の存在度は大気の金属量に非常に敏感であるためである.

将来的に,ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡によってこの惑星の C/O 比に制約を与え,また重元素の多い,非常に観測可能な系外惑星の形成史を明らかにできるだろう.

拍手[0回]