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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1511.03663
Quintana et al. (2015)
Giant Impacts on Earth-like Worlds
(地球類似環境への巨大衝突)
これまでのこの巨大衝突段階の数値モデルには、2つの制限があった。1つは、N体モデルの大部分では2体衝突の場合は完全合体を仮定していることである。2つ目は、これらのN体のカオス的な振る舞いを理解するための現実性に欠けるという点である。この2点を解決するため、最近開発されたコードを用いて多数のN体シミュレーションを行った。これは衝突時の破壊による破片の生成や、"hit-and-run衝突" を含むモデルである。
(※ "hit-and-run collision" は、合体や破壊によって大規模な質量の増加or現象を伴わず、衝突された側の自転速度の増加や外層の剥ぎ取りなどが起きるタイプの衝突のこと。"hit-and-run" は直訳すれば「轢き逃げ」や「当て逃げ」に相当する。いわゆる当て逃げ型の天体衝突のことである。)
ここでは、太陽を模した恒星の周りに木星と土星と同じ惑星を置き、その系での惑星の集積の計算を 140シミュレーション行った。この計算には衝突による破片形成などが含まれている。また比較のため、衝突時に完全合体を仮定した計算も同じく 140シミュレーション行った。
その結果、破片形成の効果が入っている場合のシミュレーション結果は、最終的に形成される惑星の質量や数は、完全合体を仮定した場合と同様であった。しかし最終結果に至るまでの進化経路は大きく異なる。破片形成を無視した場合は、微惑星が惑星に集積したり系から弾き出されるまでの時間を過小評価してしまう。
また、破片形成入りのシミュレーションの 90%で、地球類似の惑星が形成された。それらの惑星への巨大衝突を、衝突時のエネルギーの観点からパラメータ化を行った。その結果、164個のち旧類似惑星のうち 15個だけが、大気をすべて奪うほどのエネルギーの巨大衝突を経験した。
大気のおよそ半分を奪う衝突は、月を形成するのに必要な巨大衝突と同程度のエネルギーが必要である。また、ほぼ全ての地球類似惑星は、最低1回の月形成が可能なエネルギーを超えた巨大衝突を経験する。このような巨大衝突の平均回数は、2 Gyrの計算時間の間に 3.0回であった。一番最後の巨大衝突の中央値は、計算開始後 43 Myrであった。
1. 中心星か外側のガス惑星に衝突したものは計算から取り除く
2. 中心星から100 AUの距離を超えたものは計算から取り除く
3. 完全合体では、新しい天体の質量は、衝突体の質量と、ターゲット天体の質量の和である
4. かすめるような衝突 (grazing collision)では、集積か破壊が発生する。半分以下のプロジェクタイルがターゲット天体と相互作用するときにかすめるような衝突が発生する
5. インパクトパラメータ b < ターゲット天体半径 の時の衝突は、集積か破壊が発生する
6. "hit-and-run" (Asphaug et al. 2006, Genda et al. 2012)の場合、ターゲット天体は多くの質量を獲得 or 損失しないが、衝突体は破壊する
初期条件としては、微惑星の暴走的な成長 (runaway growth)と寡占的な成長 (origarchic growth)の終了後を想定している。26個の原始惑星と、260個の微惑星を置く。原始惑星は半径が 0.56地球半径 (~ 3500 km)の火星程度のサイズで0.093地球質量のものから、0.26地球半径 (~ 1600 km)の月程度のサイズで 0.0093地球質量のものまでを想定している。密度は全て 3 g cm-3である。
初期分布は 0.35 - 4 AUで、面密度は軌道長半径の -3/2乗になるような分布をもたせている。合計の円盤の質量は 4.85地球質量である。初期の起動はほぼ円軌道であり、同一平面上に置く。また木星質量の惑星を 5.2 AUに、土星質量の惑星を 9.6 AUに置く。
破壊で生じる破片は、質量が 0.0047地球質量、0.2地球半径 (~ 1300 km)としている。
arXiv:1511.03663
Quintana et al. (2015)
Giant Impacts on Earth-like Worlds
(地球類似環境への巨大衝突)
概要
地球型惑星の形成の最終段階は巨大衝突 (giant impact)が占める。巨大衝突は、形成する全ての惑星に対して、成長・力学的安定性・組成・居住可能性といった要素を決める上で重要な影響がある。これまでのこの巨大衝突段階の数値モデルには、2つの制限があった。1つは、N体モデルの大部分では2体衝突の場合は完全合体を仮定していることである。2つ目は、これらのN体のカオス的な振る舞いを理解するための現実性に欠けるという点である。この2点を解決するため、最近開発されたコードを用いて多数のN体シミュレーションを行った。これは衝突時の破壊による破片の生成や、"hit-and-run衝突" を含むモデルである。
(※ "hit-and-run collision" は、合体や破壊によって大規模な質量の増加or現象を伴わず、衝突された側の自転速度の増加や外層の剥ぎ取りなどが起きるタイプの衝突のこと。"hit-and-run" は直訳すれば「轢き逃げ」や「当て逃げ」に相当する。いわゆる当て逃げ型の天体衝突のことである。)
ここでは、太陽を模した恒星の周りに木星と土星と同じ惑星を置き、その系での惑星の集積の計算を 140シミュレーション行った。この計算には衝突による破片形成などが含まれている。また比較のため、衝突時に完全合体を仮定した計算も同じく 140シミュレーション行った。
その結果、破片形成の効果が入っている場合のシミュレーション結果は、最終的に形成される惑星の質量や数は、完全合体を仮定した場合と同様であった。しかし最終結果に至るまでの進化経路は大きく異なる。破片形成を無視した場合は、微惑星が惑星に集積したり系から弾き出されるまでの時間を過小評価してしまう。
また、破片形成入りのシミュレーションの 90%で、地球類似の惑星が形成された。それらの惑星への巨大衝突を、衝突時のエネルギーの観点からパラメータ化を行った。その結果、164個のち旧類似惑星のうち 15個だけが、大気をすべて奪うほどのエネルギーの巨大衝突を経験した。
大気のおよそ半分を奪う衝突は、月を形成するのに必要な巨大衝突と同程度のエネルギーが必要である。また、ほぼ全ての地球類似惑星は、最低1回の月形成が可能なエネルギーを超えた巨大衝突を経験する。このような巨大衝突の平均回数は、2 Gyrの計算時間の間に 3.0回であった。一番最後の巨大衝突の中央値は、計算開始後 43 Myrであった。
計算の特徴とセットアップ
N体計算を行っている。微惑星と原始惑星に関しては、1. 中心星か外側のガス惑星に衝突したものは計算から取り除く
2. 中心星から100 AUの距離を超えたものは計算から取り除く
3. 完全合体では、新しい天体の質量は、衝突体の質量と、ターゲット天体の質量の和である
4. かすめるような衝突 (grazing collision)では、集積か破壊が発生する。半分以下のプロジェクタイルがターゲット天体と相互作用するときにかすめるような衝突が発生する
5. インパクトパラメータ b < ターゲット天体半径 の時の衝突は、集積か破壊が発生する
6. "hit-and-run" (Asphaug et al. 2006, Genda et al. 2012)の場合、ターゲット天体は多くの質量を獲得 or 損失しないが、衝突体は破壊する
初期条件としては、微惑星の暴走的な成長 (runaway growth)と寡占的な成長 (origarchic growth)の終了後を想定している。26個の原始惑星と、260個の微惑星を置く。原始惑星は半径が 0.56地球半径 (~ 3500 km)の火星程度のサイズで0.093地球質量のものから、0.26地球半径 (~ 1600 km)の月程度のサイズで 0.0093地球質量のものまでを想定している。密度は全て 3 g cm-3である。
初期分布は 0.35 - 4 AUで、面密度は軌道長半径の -3/2乗になるような分布をもたせている。合計の円盤の質量は 4.85地球質量である。初期の起動はほぼ円軌道であり、同一平面上に置く。また木星質量の惑星を 5.2 AUに、土星質量の惑星を 9.6 AUに置く。
破壊で生じる破片は、質量が 0.0047地球質量、0.2地球半径 (~ 1300 km)としている。
PR
論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1511.03689
Louden & Wheatley (2015)
Spatially resolved eastward winds and rotation of HD189733b
(HD 189733bの東向きの風と自転の空間分解)
(※ホットジュピターの大気が高速で吹く東西方向の流れで占められている場合、先にトランジットを起こす先行する側の縁では風は視線方向の向こう側へ遠ざかる方向に吹き、逆に最後にトランジットから出る後行する側の縁では風は視線方向のこちらがわへ近づく方向へ吹くことになる。そのため、先行する側では大気成分はドップラー効果で赤方偏移を起こし、後行する側では逆に青方偏移を起こす。)
この速度は、潮汐固定された惑星の自転と、東向きの赤道ジェット (equatorial jet)で説明することが可能である。これはホットジュピターにおける大気循環モデルによる予言と一致する結果である。
この観測結果は、HD 189733bの大気におけるナトリウムの吸収線は大気の運動速度によって本質的に広がった形状になるため、全球で平均した透過スペクトルにおける過去の研究では、スペクトル線の圧力による広がり (pressure broadening)によるスペクトル線の形状の変化の影響を過大評価している可能性があることを示唆するものである。
また HD 189733bでは、HARPS (High Accuracy Radial Velocity Planet Searcher)によるナトリウムの二重線の観測から、青方偏移の値として 8 ± 2 km s-1という値を得ている (Wyttenbach et al. 2015)。ただしこの値は大きすぎるということを本観測と解析の中で示す。
平均した透過スペクトルにおける青方偏移の観測結果は、惑星の昼側からよる側への全体的な風の流れの存在を示す。しかし平均したドップラーシフトでは大気循環モデルの検証を行うことは出来ない。大気循環のモデルによると、惑星の両端 (先行側と後行側)で大きな速度差を持つはずである。
ホットジュピターは潮汐固定された自転周期を持ち、大気の東方向の赤道ジェットを持つというモデル (Shwman et al. 2011など)は、先行側の縁では吸収線の赤方偏移、後行側の縁では青方偏移を示すことを予言する (Showman et al. 2013)。また赤道ジェットは、中心星からの強い輻射を受けている惑星では普遍的であるとも予想されている (Showman et al. 2015)。この赤道ジェットは、惑星の昼側からよる側への熱の輸送をコントロールしている。
大気循環と赤道ジェットの直接検出はまだ無いものの、HD 189733bでは最も温度が高い点が、恒星直下点 (sub-stellar point)よりも 30°ずれているという結果が観測から示されており、これは東向きのジェットの存在を支持する結果である (Knutson et al. 2007, 2008)。
ここでは、この大気の回転の様子を空間分解する観測を行った。
惑星の自転周期が、公転周期の 2.22日に潮汐固定されているとすると、両端では対称に 2.9 km s-1の赤方偏移・青方偏移が現れる。これを差し引くと、先行側では潮汐固定された自転速度と整合的な値である -0.6 (+1.3, -1.5) km s-1という速度が得られる。しかし後行側では東方向の速度超過があり、その値は2.4 (+1.0, -1.4) km s-1となる。
この速度超過は、HD 209458bでの平均の透過スペクトルの青方偏移の過去の観測 (Snellen et al. 2010)や、HD 189733bでの観測 (Wyttenbach et al. 2015)と整合的なものである。しかし今回の観測は空間分解を行っている。
今回の観測結果を平均した場合、全体の青方偏移は 1.9 (+0.7, -0.6) km s-1となる。これは、HD 209458bにおける一酸化炭素の吸収線での観測 (Snellen et al. 2010)と整合的な値である。しかし、HD 189733bにおけるナトリウムの吸収線による値である 8 ± 2 km s-1よりもずっと小さな値である。これはロシター効果の影響によるものと考えられる。今回の解析に用いたモデルでは、ロシター効果が結果に及ぼす影響は暗に含まれている。
また、Brogi et al. (submitted)の最近の観測では、高分散の赤外線領域での分光観測より、HD 189733bにおける二酸化炭素と水の吸収線から、全球的な青方偏移が -1.7 (+1.1, -1.2) km s-1と測定されており、これは今回の結果と整合的である。
今回の結果では、ホットジュピター大気中の吸収線は、大気の速度によってスペクトル線の形状が広げられる。従って、過去の観測結果では、吸収線の形状の変化に対する圧力による広がりの効果を過大評価している可能性がある。また同様に、平均のスペクトル線の深さから示唆される大気の広がりに関しては、過小評価をしている可能性がある。
ホットジュピターの高速な大気循環の、ほぼ直接的な検出と言えるのではないでしょうか。
これまでは、先行側や後行側を全部平均した時の青方偏移は得られていたり、二次食時の観測から惑星の表面温度分布を調べた際に、恒星直下点と最も温度が高い場所がずれているという結果などから、間接的に大気のジェットの存在は示唆されていました。
(大気の運動が静穏であったり、東西風的な移動ではない場合は、恒星直下点が最も多くエネルギーを受け取っているためその場所が最も高温になっているはず。それがずれているということは、東方向への強い流れが存在するはずだ、ということです)
arXiv:1511.03689
Louden & Wheatley (2015)
Spatially resolved eastward winds and rotation of HD189733b
(HD 189733bの東向きの風と自転の空間分解)
概要
HARPSによる、トランジット時のナトリウムの吸収線の高精度分光観測のモデリングから、ホットジュピターである HD 189733bの両端の風速の測定を行った。観測結果の解析から、HD 189733bの大気における強い東向きの風の存在を検出した。トランジット時の惑星の先行する側 (leading limb)の端における赤方偏移は 2.3 (+1.3, -1.5) km s-1、後行する側 (trailing limb)での青方偏移は 5.3 (+1,0, -1.4) km s-1という結果となった。(※ホットジュピターの大気が高速で吹く東西方向の流れで占められている場合、先にトランジットを起こす先行する側の縁では風は視線方向の向こう側へ遠ざかる方向に吹き、逆に最後にトランジットから出る後行する側の縁では風は視線方向のこちらがわへ近づく方向へ吹くことになる。そのため、先行する側では大気成分はドップラー効果で赤方偏移を起こし、後行する側では逆に青方偏移を起こす。)
この速度は、潮汐固定された惑星の自転と、東向きの赤道ジェット (equatorial jet)で説明することが可能である。これはホットジュピターにおける大気循環モデルによる予言と一致する結果である。
この観測結果は、HD 189733bの大気におけるナトリウムの吸収線は大気の運動速度によって本質的に広がった形状になるため、全球で平均した透過スペクトルにおける過去の研究では、スペクトル線の圧力による広がり (pressure broadening)によるスペクトル線の形状の変化の影響を過大評価している可能性があることを示唆するものである。
ホットジュピターの大気循環
系外惑星の風は、トランジット時の高精度分光観測における、惑星の縁における吸収線の平均のドップラー測定によって行われている。例えば、HD 209458bでは一酸化炭素の平均したスペクトル線形状から、平均の青方偏移が 2 ± 1 km s-1であるという結果が得られている。これは CRyogenic high resolution InfraRed Echelle Spectrograph (CRIRES)で観測された結果である (Snellen et al. 2010)。また HD 189733bでは、HARPS (High Accuracy Radial Velocity Planet Searcher)によるナトリウムの二重線の観測から、青方偏移の値として 8 ± 2 km s-1という値を得ている (Wyttenbach et al. 2015)。ただしこの値は大きすぎるということを本観測と解析の中で示す。
平均した透過スペクトルにおける青方偏移の観測結果は、惑星の昼側からよる側への全体的な風の流れの存在を示す。しかし平均したドップラーシフトでは大気循環モデルの検証を行うことは出来ない。大気循環のモデルによると、惑星の両端 (先行側と後行側)で大きな速度差を持つはずである。
ホットジュピターは潮汐固定された自転周期を持ち、大気の東方向の赤道ジェットを持つというモデル (Shwman et al. 2011など)は、先行側の縁では吸収線の赤方偏移、後行側の縁では青方偏移を示すことを予言する (Showman et al. 2013)。また赤道ジェットは、中心星からの強い輻射を受けている惑星では普遍的であるとも予想されている (Showman et al. 2015)。この赤道ジェットは、惑星の昼側からよる側への熱の輸送をコントロールしている。
大気循環と赤道ジェットの直接検出はまだ無いものの、HD 189733bでは最も温度が高い点が、恒星直下点 (sub-stellar point)よりも 30°ずれているという結果が観測から示されており、これは東向きのジェットの存在を支持する結果である (Knutson et al. 2007, 2008)。
ここでは、この大気の回転の様子を空間分解する観測を行った。
観測結果
先行する側の縁では、赤方偏移が 2.3 (+1.3, -1.5) km s-1、後行する側の縁では、青方偏移が 5.3 (+1,0, -1.4) km s-1という結果が得られた。惑星の自転周期が、公転周期の 2.22日に潮汐固定されているとすると、両端では対称に 2.9 km s-1の赤方偏移・青方偏移が現れる。これを差し引くと、先行側では潮汐固定された自転速度と整合的な値である -0.6 (+1.3, -1.5) km s-1という速度が得られる。しかし後行側では東方向の速度超過があり、その値は2.4 (+1.0, -1.4) km s-1となる。
議論
HD 189733bのような中心星に近接した惑星は、潮汐力によって数百万年以内に自転が公転周期と同期すると予測されている (Guillot et al. 1996)。またスーパーローテーションがある後行側の縁の場所は、恒星直下点からずれた最高温地点から経度にしてわずか 60°しか離れていない (Knotson et al. 2007, 2008)。従って、この速度超過は東向きの赤道ジェットの直接検出だろうと考えられる。これはホットジュピターの大気循環モデルで予言されていたものである。また、最も温度が高い場所が恒星直下点からずれている事を説明することが可能である。観測されたジェットの速度と、先行側での小さい速度は、HD 189733bの最新の大気循環モデルと非常に整合的である。この速度超過は、HD 209458bでの平均の透過スペクトルの青方偏移の過去の観測 (Snellen et al. 2010)や、HD 189733bでの観測 (Wyttenbach et al. 2015)と整合的なものである。しかし今回の観測は空間分解を行っている。
今回の観測結果を平均した場合、全体の青方偏移は 1.9 (+0.7, -0.6) km s-1となる。これは、HD 209458bにおける一酸化炭素の吸収線での観測 (Snellen et al. 2010)と整合的な値である。しかし、HD 189733bにおけるナトリウムの吸収線による値である 8 ± 2 km s-1よりもずっと小さな値である。これはロシター効果の影響によるものと考えられる。今回の解析に用いたモデルでは、ロシター効果が結果に及ぼす影響は暗に含まれている。
また、Brogi et al. (submitted)の最近の観測では、高分散の赤外線領域での分光観測より、HD 189733bにおける二酸化炭素と水の吸収線から、全球的な青方偏移が -1.7 (+1.1, -1.2) km s-1と測定されており、これは今回の結果と整合的である。
今回の結果では、ホットジュピター大気中の吸収線は、大気の速度によってスペクトル線の形状が広げられる。従って、過去の観測結果では、吸収線の形状の変化に対する圧力による広がりの効果を過大評価している可能性がある。また同様に、平均のスペクトル線の深さから示唆される大気の広がりに関しては、過小評価をしている可能性がある。
ホットジュピターの高速な大気循環の、ほぼ直接的な検出と言えるのではないでしょうか。
これまでは、先行側や後行側を全部平均した時の青方偏移は得られていたり、二次食時の観測から惑星の表面温度分布を調べた際に、恒星直下点と最も温度が高い場所がずれているという結果などから、間接的に大気のジェットの存在は示唆されていました。
(大気の運動が静穏であったり、東西風的な移動ではない場合は、恒星直下点が最も多くエネルギーを受け取っているためその場所が最も高温になっているはず。それがずれているということは、東方向への強い流れが存在するはずだ、ということです)
論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1511.03941
Mortier et al. (2015)
The HARPS search for southern extra-solar planets. XXXIX. HD175607 b, the most metal-poor G dwarf with an orbiting sub-Neptune
(HARPSによる南天の系外惑星探査:最も金属量に乏しいG型星を公転するサブネプチューン、HD 175607b)
HARPSでの分光観測では、低金属星 (metal-poor star、金属欠乏星とも)まわりでの海王星質量の惑星やスーパーアースの探査を行ってきた。ここでは、古い G型星である HD 175607の観測結果について報告する。この恒星は金属量が [Fe/H] = -0.62 dexと低金属星である。この恒星の、110夜の 119回、9年以上に渡る視線速度観測の結果である。
観測と解析の結果、最小質量 Msini = 8.98地球質量、軌道周期 29.01日、軌道離心率がやや大きめの e = 0.11の惑星 HD 175607bを発見した。この惑星の公転周期は、測定された恒星の自転周期と近い。しかし視線観測データと恒星の活動を合わせた詳細な解析から、この視線速度観測のシグナルは恒星の活動起源ではなく、惑星によるものとするのが最も良い説明である。
更に長い、~ 1400日のシグナルも検出した。この変動の原因を特定するためにはさらなる観測が必要である。
中心星のHD 175607は、小さい惑星を持つ F, G, K型星の中では最も金属量が少ない恒星である。この恒星周りでの惑星の発見は、惑星の形成と進化へ重要な影響をおよぼすかもしれない。
距離:45.27 pc
有効温度;5392 K
金属量;[Fe/H] = -0.62
質量:0.74太陽質量
半径:0.71太陽半径
年齢:10.32 Gyr
自転周期:28.95日 or 29.68日
arXiv:1511.03941
Mortier et al. (2015)
The HARPS search for southern extra-solar planets. XXXIX. HD175607 b, the most metal-poor G dwarf with an orbiting sub-Neptune
(HARPSによる南天の系外惑星探査:最も金属量に乏しいG型星を公転するサブネプチューン、HD 175607b)
概要
最近の観測の結果からは、質量が 0.1木星質量以下の小さい惑星の存在頻度は、中心星の金属量とは相関がないように思える。しかし理論的な予想では、太陽より金属量に乏しい恒星は、より小さい惑星を持つ傾向にあるという事が示されている。HARPSでの分光観測では、低金属星 (metal-poor star、金属欠乏星とも)まわりでの海王星質量の惑星やスーパーアースの探査を行ってきた。ここでは、古い G型星である HD 175607の観測結果について報告する。この恒星は金属量が [Fe/H] = -0.62 dexと低金属星である。この恒星の、110夜の 119回、9年以上に渡る視線速度観測の結果である。
観測と解析の結果、最小質量 Msini = 8.98地球質量、軌道周期 29.01日、軌道離心率がやや大きめの e = 0.11の惑星 HD 175607bを発見した。この惑星の公転周期は、測定された恒星の自転周期と近い。しかし視線観測データと恒星の活動を合わせた詳細な解析から、この視線速度観測のシグナルは恒星の活動起源ではなく、惑星によるものとするのが最も良い説明である。
更に長い、~ 1400日のシグナルも検出した。この変動の原因を特定するためにはさらなる観測が必要である。
中心星のHD 175607は、小さい惑星を持つ F, G, K型星の中では最も金属量が少ない恒星である。この恒星周りでの惑星の発見は、惑星の形成と進化へ重要な影響をおよぼすかもしれない。
HD 175607のデータ
スペクトル型:G6V距離:45.27 pc
有効温度;5392 K
金属量;[Fe/H] = -0.62
質量:0.74太陽質量
半径:0.71太陽半径
年齢:10.32 Gyr
自転周期:28.95日 or 29.68日
論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1511.03274
Sutherland & Fabrycky (2015)
On the Fate of Unstable Circumbinary Planets: Tatooine's Close Encounters with a Death Star
(不安定な周連星惑星の運命について:タトゥーインのデススターとの近接遭遇)
連星系の軽い方の恒星 (seconday)が主星 (primary)に対して質量比が 0.1で、軌道長半径が 1 AUの時、周連星惑星の最も一般的な最終結果は系からの弾き出しであった。これは ~ 80%の確率で発生した。もし連星系が周連星惑星を素早く、かつ "だらしなく" 形成する場合は、このプロセスは銀河系内に浮遊惑星 (free-floating planet)を大量に供給する効果がある。
また、~ 20%の確率で惑星は主星か伴星のどちらかに衝突する。
さらに、木星質量の惑星が、恒星への近接遭遇によって潮汐による剥ぎ取りを受けるかどうかも評価した。このイベントは惑星の進路を変えるほど強くはないが、このプロセスで出来た浮遊惑星の変化を受けた構造は観測可能であると考えられる。考えられる特徴としては、近接遭遇による浮遊惑星の高速自転 (Faber et al. 2005)である。反対に、浮遊惑星が衛星や伴星を持っていた場合は、潮汐による剥ぎ取りを経験していない可能性が高い。
映画「スター・ウォーズ」シリーズに出てくるタトゥーインは連星の周りを公転する、いわゆる周連星惑星だったため、このような学術論文においても、周連星惑星は「タトゥーイン」というニックネームで呼ばれることがしばしばあります。
ここでは、周連星惑星の軌道は一般に不安定であるため、連星の周りで形成された惑星は銀河系内に多数存在すると言われる浮遊惑星の供給源になる可能性を提示しています。
arXiv:1511.03274
Sutherland & Fabrycky (2015)
On the Fate of Unstable Circumbinary Planets: Tatooine's Close Encounters with a Death Star
(不安定な周連星惑星の運命について:タトゥーインのデススターとの近接遭遇)
概要
連星の周りを公転する惑星、周連星惑星 (circumbinary planet)が不安定になったものは、系から弾き出されるか、恒星へ落下するか、あるいはどちらか一方の恒星に捕獲される。これらの進化経路の相対的な割合を評価した。連星系の軽い方の恒星 (seconday)が主星 (primary)に対して質量比が 0.1で、軌道長半径が 1 AUの時、周連星惑星の最も一般的な最終結果は系からの弾き出しであった。これは ~ 80%の確率で発生した。もし連星系が周連星惑星を素早く、かつ "だらしなく" 形成する場合は、このプロセスは銀河系内に浮遊惑星 (free-floating planet)を大量に供給する効果がある。
また、~ 20%の確率で惑星は主星か伴星のどちらかに衝突する。
さらに、木星質量の惑星が、恒星への近接遭遇によって潮汐による剥ぎ取りを受けるかどうかも評価した。このイベントは惑星の進路を変えるほど強くはないが、このプロセスで出来た浮遊惑星の変化を受けた構造は観測可能であると考えられる。考えられる特徴としては、近接遭遇による浮遊惑星の高速自転 (Faber et al. 2005)である。反対に、浮遊惑星が衛星や伴星を持っていた場合は、潮汐による剥ぎ取りを経験していない可能性が高い。
映画「スター・ウォーズ」シリーズに出てくるタトゥーインは連星の周りを公転する、いわゆる周連星惑星だったため、このような学術論文においても、周連星惑星は「タトゥーイン」というニックネームで呼ばれることがしばしばあります。
ここでは、周連星惑星の軌道は一般に不安定であるため、連星の周りで形成された惑星は銀河系内に多数存在すると言われる浮遊惑星の供給源になる可能性を提示しています。
論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1511.03550
Berta-Thompson et al. (2015)
A rocky planet transiting a nearby low-mass star
(近傍の低質量星をトランジットする岩石惑星)
このようなタイプの惑星で最も近いトランジット惑星は 39 pcの距離にあり、これは視線速度観測で惑星の質量を測定したり、大気観測を行うための詳細なフォローアップ観測をするには遠い天体である。
ここでは、GJ 1132bの観測を報告する。この惑星は、1.2地球半径であり、距離は 12 pcと近傍にある。視線速度観測による質量の測定も行われ、地球類似の平均密度を持つことが判明した。この惑星は地球の 19倍の日射を受けており、ハビタブル惑星ではない。しかし大気を持つことが出来ると考えられる。その場合、大気は水素が散逸して欠乏した大気であろうと考えられる。
GJ 1132の視等級は 13.49であり、0.181太陽質量、0.207太陽半径、0.00438太陽光度、有効温度は 3270 Kである。また金属量は [Fe/H] = -0.12 ± 0.15、年齢は 5 Gyr以上である。
トランジット観測と視線速度観測から、軌道周期は 1.628930日、1.16地球半径、1.62地球質量であり、平均密度は 6.0 g cm-3である。ボンドアルベドが 0の場合の平衡温度は 579 K、ボンドアルベドが 0.75 (金星を想定)の場合は 409 Kである。
惑星の内部構造のモデルより、75%がマグネシウムを含む岩石、25%が金属 (質量比)とすると半径・質量をよく説明できる。
Natureに掲載された論文です。
太陽近傍の岩石惑星であり、視線速度で質量まで測定されたという点がニュースのようです。
arXiv:1511.03550
Berta-Thompson et al. (2015)
A rocky planet transiting a nearby low-mass star
(近傍の低質量星をトランジットする岩石惑星)
概要
M型矮星 (水素燃焼を起こし、太陽よりも 60%程度小さいサイズの恒星)は、銀河系内では普遍的な恒星であり、太陽型星との存在比は 12:1である。最近の研究では、M型星は地球型惑星を多く持つことが示唆されており、0.5 - 1.5地球半径の惑星を平均で少なくとも 1.4個持つと考えられている。このようなタイプの惑星で最も近いトランジット惑星は 39 pcの距離にあり、これは視線速度観測で惑星の質量を測定したり、大気観測を行うための詳細なフォローアップ観測をするには遠い天体である。
ここでは、GJ 1132bの観測を報告する。この惑星は、1.2地球半径であり、距離は 12 pcと近傍にある。視線速度観測による質量の測定も行われ、地球類似の平均密度を持つことが判明した。この惑星は地球の 19倍の日射を受けており、ハビタブル惑星ではない。しかし大気を持つことが出来ると考えられる。その場合、大気は水素が散逸して欠乏した大気であろうと考えられる。
観測
この惑星は、MEarth-South望遠鏡を用いて観測された。チリのCerro Tololo Inter-American Observatory (CTIO)にある、8つの 40 cm望遠鏡のセットで観測された。MEarthによるアストロメトリ観測で視差が測定され、距離は 12.04 pcと判明した。GJ 1132の視等級は 13.49であり、0.181太陽質量、0.207太陽半径、0.00438太陽光度、有効温度は 3270 Kである。また金属量は [Fe/H] = -0.12 ± 0.15、年齢は 5 Gyr以上である。
トランジット観測と視線速度観測から、軌道周期は 1.628930日、1.16地球半径、1.62地球質量であり、平均密度は 6.0 g cm-3である。ボンドアルベドが 0の場合の平衡温度は 579 K、ボンドアルベドが 0.75 (金星を想定)の場合は 409 Kである。
惑星の内部構造のモデルより、75%がマグネシウムを含む岩石、25%が金属 (質量比)とすると半径・質量をよく説明できる。
Natureに掲載された論文です。
太陽近傍の岩石惑星であり、視線速度で質量まで測定されたという点がニュースのようです。

