忍者ブログ
日々の感想などどうでもよいことを書き連ねるためだけのブログ。
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。


論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1507.06719
Dipierro et al. (2015)
On planet formation in HL Tau
(HL Tauでの惑星形成について)

概要

HL TauにALMAで発見された軸対称なギャップ構造は、円盤内に存在する惑星に対する、ダストとガスの応答の違いで説明することができる。
大局的な、3次元のダストを含んだ円盤の計算をSPH法を用いて行った。その結果、ALMAで撮影された画像の再現に成功した。
それぞれのギャップに、0.2, 0.27, 0.55木星質量の惑星が存在することで説明出来る。
ただし円盤モデルの不定性がある。

計算

SPH計算にはPHAMTOMのコードを用いた。
各計算ごとに、単一サイズの粒子を仮定している。
mmサイズのダストとそれより大きなダストには、two-fluidアルゴリズムを適用して計算している。
それよりも小さい粒子に対しては、終端速度近似をベースにした新しいアルゴリズムを用いている。
ダストサイズは、1 μm, 10 μm, 100 μm, 1 mm, 1 cm, 10 cmを用いた。

結果

(1) スパイラル構造がHL Tauの円盤中に見られないのは、惑星に対する応答がガスとダストでは異なるからである。ダストを観測している時は、惑星による軸対称のリング構造は自然な構造であると考えられる。ガスで観測した場合はスパイラル構造が観測できるかもしれない。

(2) 先行研究と同じく、ガスよりもダストの方が惑星によってギャップを空けやすい。

(3) 13.2, 32.3, 68.8 AUに存在するHL Tauの主要な構造は。それぞれ 0.2, 0.27, 0.55木星質量の惑星によって説明出来る。モデルによる不定性は存在する。この計算から推定した惑星質量は、先行研究における推定値や上限値と無矛盾である。

(4) ストークス数が10を超えるダスト (cmサイズ以上のダスト)の密度構造は、原始惑星によって励起された波である軸対称な構造を示す。この波はダストを含む円盤中を自由に減衰されずに伝播する。ALMAの観測画像の中にある、"惑星軌道"の外側にある軸対称の擾乱は、mmサイズ粒子のカップリングによるものである可能性がある。

拍手[0回]

PR

論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1507.06723
Jenkins et al. (2015)
Discovery and Validation of Kepler-452b: A 1.6-Re Super Earth Exoplanet in the Habitable Zone of a G2 Star
(ケプラー452bの発見と検証:G2型星まわりのハビタブルゾーン内の1.6地球半径スーパーアース)

概要

ケプラー宇宙望遠鏡の観測データから、ケプラー452bを発見した。
この惑星はおそらくは岩石質の、1.63地球半径を持ち、G2型星を 384.843日で公転している。
これは、トランジット法で発見された 2地球半径以下の系外惑星の中で、最も公転周期が長い惑星である。

ケプラー452bが岩石主体である可能性は、 49% - 62%である。
また、軌道長半径は 1.046 AUであり、"楽観的な"ハビタブルゾーン内に存在する系外惑星である。
現在は地球よりも 10%大きい放射を受けており、"保守的な"ハビタブルゾーン (暴走温室効果が起きる限界から最大温室効果がはたらく限界までの間)よりはわずかに外に位置している。

恒星のパラメータから考えると、ケプラー452bは誕生からこれまでハビタブルゾーン内におり、今後 30億年にわたってハビタブルゾーン内に居続ける。

これまでのハビタブル惑星

これまでのケプラー宇宙望遠鏡による系外惑星探査でも、半径が地球の2倍未満で、ハビタブルゾーン内かその付近にいる惑星は複数発見されている。
これまでに発見されているのは、ケプラー62e、ケプラー62f、ケプラー186f、ケプラー283c、ケプラー296e、ケプラー296f、ケプラー438b、ケプラー440b、ケプラー443bである。
また、K2-3dも発見されている。

視線速度法でもハビタブルゾーン内もしくは付近の惑星は発見されている。
ハビタブルゾーン内もしくはその付近を公転し、最小質量 (msini)が10地球質量を下回る系外惑星には、
グリーゼ163c、グリーゼ667Cc、HD 40307g、カプタイン星b、グリーゼ832cがある。
(※注:カプタイン星bの存在については論争あり)

しかしこれらは全て、中心星が小さく(太陽半径未満)、低温な(有効温度 5000 K未満)恒星の周りに発見されたものである。

中心星ケプラー452のデータ

中心星は当初表面温度が 5578 K、0.79太陽半径と推定されていた。これは異常に大きい表面重力の観測結果が原因である。
しかし表面温度から考えてもっと大きいと思われており、実際にその通りであった。

ケプラー452 (別名KIC 8311864)は、干渉法や星震学を用いて恒星のパラメータを決定するには暗すぎる恒星である。そのため、恒星質量や半径、平均密度は大気特性と内部のマッチングに依存する。

解析の結果、平均的には、太陽よりわずかに低温で少し大きく、60%金属量の多い恒星であることが判明した。

表面温度は 5757 K、金属量は [Fe/H] = 0.21 dex、1,11太陽半径、1,037太陽質量。
平均密度は 0.83 g cm-3であり、年齢は ~ 60億年 ± 20億年。

惑星ケプラー452bのデータ

マルコフチェーンを用いてパラメータを決定する。

軌道周期は 384.843日、惑星と中心星の半径比は 0.0128。トランジットのImpact parameterは 0.69である。
軌道傾斜角は 89.806°で、トランジット深さは 199 ppmであった。
1.63地球半径で、軌道長半径は 1.046 AU。
アルベドを 0.3、受け取った熱を極めて効率的に惑星上に再分配していると仮定すると、平衡温度は 265 Kとなる。
またこの軌道で中心星から受け取る恒星からの照射は、地球が現在受けている太陽からの放射の 1.10倍である。

惑星の居住可能性と組成について

この惑星に関して最も興味深いのは、現在の恒星輻射の環境下でケプラー452bの表面に海が存在できるかどうかと、この惑星が固体の表面を持つかどうかである。

惑星の居住可能性

居住可能性 (habitability)については、
- 楽観的なハビタブルゾーン (optimistic habitable zone)
- 保守的なハビタブルゾーン (conservative habitable zone)

の基準がある。前者は「広いハビタブルゾーン (wide habitable zone)」、後者は「狭いハビタブルゾーン (narrow habitable zone)」と呼ばれることもある。

現在の金星と、初期の火星での日射が、楽観的なハビタブルゾーンの内縁と外縁にそれぞれ対応する。
また、暴走温室効果と最大温室効果が起きるような日射が、保守的なハビタブルゾーンの内縁と外縁にそれぞれ対応する(Kopparapu et al. 2013)。

ここでは、MCMC計算の結果得た恒星のパラメータを用いて、惑星が受ける恒星からのフラックスを計算した。
(軌道長半径、恒星半径、恒星の有効温度から計算可)
その結果、楽観的なハビタブルゾーン内に存在する確率は 96.8%、保守的なハビタブルゾーン内に存在する確率は 28.0%という結果となった。

上記の計算では恒星のパラメータをSpecMatchを用いて決めた。これは保守的な見積もりの結果である。
SPCを用いた恒星のパラメータ決定の場合は、楽観的なハビタブルゾーンに存在する確率は 99.0%、保守的なハビタブルゾーン内に存在する確率は 59.3%である。

軌道離心率の影響

トランジット観測しか行っていないため、軌道離心率は制限できていない。
軌道周期が 384.84日、惑星の質量が 5地球質量だとした場合、視線速度は ~45 m s-1となる。
中心星は Kp = 13.43と暗く、視線速度観測を行うのはしばらくは無理である。

軌道離心率と惑星が受け取る中心星からのフラックスの関係を調べた。
その結果、軌道離心率が 0.475を超えた場合は、惑星が受け取る最大の輻射が現在地球が受け取っている輻射の4倍となる。
また軌道離心率が 0.8を超えない限り、平均の日射が楽観的なハビタブルゾーンの限界を超えることはない。

また、これまでのケプラーで発見された惑星系の統計から考えると、このような系の軌道離心率は一般に低い傾向がある。
軌道離心率の確率分布関数を用い、軌道離心率分布で重みをつけて平均した場合の惑星の日射量は、地球で受け取る太陽放射の 1.17倍である。この値は、離心率を 0としたときの受け取る日射よりも 9%高いだけである。

以上より、軌道離心率の不定性はこの惑星の居住可能性には大きく影響しないと考えられる。

惑星の組成

トランジットによる観測であり、視線速度による追観測もされていないため、ケプラー452bの質量は不明である。
そのため、質量半径関係 (mass-radius relationship)から質量を推定する。

中心星のケプラー452のパラメータは、SpecMatchとSPCのそれぞれでわずかに異なる値を示すが、双方のパラメータを用いてこの惑星の組成について推定すると、Weiss & Marcy (2014)のモデルではこの惑星が岩石惑星である確率は 40%と 64%である(それぞれSpecMatch, SPCの値を使用)。
また、Wolfgang et al. (2015)のモデルを用いた場合は、同じく 49%と 62%であった。

そのため、49-62%の確率でケプラー452bは岩石惑星だと推定される

ただし、ケプラー452bは地球と同じ組成ではないだろうと考えられる。
SpecMatchのパラメータを用い、地球の組成 (岩石と金属の混合比率が 2/3)で推定した結果、Weiss & Marcy (2014)とWolfgang et al. (2015)それぞれのモデルでわずか 16%と 22%であった。
そのため、地球組成と同一である可能性は低いと推定できる。

居住可能性の歴史

中心星の温度と質量は太陽と類似している。また軌道長半径はおよそ 1 AUと地球と近い値になっている。
そのため、この惑星の過去の居住可能性の歴史というのは興味深い対象である。
ただし中心星の年齢の推定は不確かなものであることには注意が必要。年齢の推定には 20億年の不定性がある。

中心星の半径と金属量から、中心星の有効温度の進化を計算し、そこからハビタブルゾーンの移動について計算した。

現在のケプラー452の年齢は ~ 60億歳であり、太陽より15億年年老いている。
また半径は太陽より 10%大きく、惑星の受ける輻射は地球が現在受け取っている輻射よりも 10%大きい。
恒星質量は太陽より 4%大きいだけであり、ケプラー452bは誕生後の 約50億年間を保守的なハビタブルゾーン内で過ごしたと考えられる。
また、惑星は今後 35億年の間、楽観的なハビタブルゾーン内に留まる。
これはつまり、ケプラー452が主系列段階を終え、赤色巨星分枝へ移行する直前までということである。

仮に金星と火星に対応する位置に惑星があった場合の居住可能性について考える。
金星の位置に惑星があった場合、その惑星は初めの 30億年間は楽観的なハビタブルゾーンの中にいて、その後ハビタブルゾーンを永久に外れることになる。
対照的に火星の位置に惑星があった場合は、その惑星は誕生後 110億年間楽観的なハビタブルゾーン内に存在し続け、中心星が主系列段階の間ずっとその中に留まり続けることとなる。

ケプラー452の系では、ケプラー452b以外の惑星は発見されていない。また発見される確率も低い。

他の系外惑星サーベイプロジェクトによってこの系に他の惑星が発見されるか、あるいはこの系のSETI観測プロジェクトが地球外の技術文明の存在を明らかにするまでは、我々はケプラー452bかその周りの衛星に最初に発生したかもしれない古代文明の運命に思いを巡らせるしかない。
例えば、およそ8億年前にケプラー452bの軌道距離で起きた暴走温室効果の効果によって起きる、惑星が元来持っていた大部分の水の不可避の喪失から逃れるために、まだ地球からは発見されていない外側の惑星に移住したところである、などである。

まとめ

G2型の太陽に類似した恒星の周りの 1.05 AUの軌道に、1.6地球半径の系外惑星ケプラー452bを発見した。
これはこれまで発見された中で、地球-太陽のシステムに最も似た系外惑星系である。

この惑星の組成は、49-62%の確率で岩石惑星である。しかし地球類似の組成ではない。

中心星は 10%太陽より大きく、また 15億年年老いている。
そのため、この系は太陽が進化して赤色巨星になるまでの間の、将来の太陽系の環境を示しているものであるかもしれない。
現在はケプラー452bは暴走温室効果の水準を超える量の日射を受けているが、楽観的なハビタブルゾーンの中ではある。また、今後も 30億年間はその中に留まる。
しかし形成後の最初の 50億年は、保守的なハビタブルゾーン内にいて、現在の地球より少ない日射を受けていただろう。

太陽型星、特にG型星まわりのハビタブルゾーン内にある小さい惑星の欠乏は、太陽型星まわりのハビタブルゾーン内にある地球型惑星の本来の存在頻度を、外挿を用いずに正確に決定するのを困難にしている。今回の発見はその欠乏している領域の惑星の発見であり、今後の観測に対して重要なものである。






ニュースでも話題になった、「地球のいとこ発見」の発見論文がこちら。

ニュースの一例がこちら。
太陽と同タイプの恒星のハビタブルゾーンに地球サイズの系外惑星 - AstroArts

NASAのプレスリリースはこちら。
NASA's Kepler Mission Discovers Bigger, Older Cousin to Earth

この惑星(ケプラー452b)の特徴は、中心星(ケプラー452)は太陽によく似た恒星であること、また恒星から程よい距離にあってハビタブルゾーン内にあると考えられている点です。
太陽に似ていると言っても金属量はかなり太陽とは異なりますが(そのためソーラーツインでは無い)、表面温度や質量・半径はよく似ています。

ハビタブルゾーン内にあるということですが、本文中にも書いてあったように"楽観的"な見積もりをした際の広いハビタブルゾーンの中なので、地球が受け取っているエネルギーよりも多い量を受け取っています。

また惑星半径は1.6地球半径なので、地球よりもひと回り大きい、いわゆるスーパーアースと呼ばれる部類の系外惑星ということになります。
狭い意味でのハビタブルゾーン(保守的なハビタブルゾーン)よりは内側の熱い領域に位置し、さらに地球より一回りも大きい惑星であるため、地球の環境とは大きく異なるだろうということが予想されます。

しかしそれでも、これまで発見されてきた地球類似の系外惑星の中では、比較的太陽と地球の関係に似ていると言えそうです。
これまでのものは全てが太陽より軽く暗い恒星の周りを公転するものでした。
中心星が太陽より軽いため、ハビタブルゾーンも中心星に近く、そこを公転する惑星の公転周期も短くなります。

今回発見されたケプラー452bの公転周期は、中心星が太陽に似ているため、地球と同程度の長さになっています。
ハビタブルゾーン内にあると思われる系外惑星の中では、これまでに発見されている中で最も長い公転周期ということで、科学的にも大きな価値がある発見と言えそうです。

拍手[0回]


論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1507.06300
Margot (2015)
A Quantitative Criterion for Defining Planets
(惑星の定義の定量的な基準)

概要

この論文では、惑星もしくは系外惑星が、系の特徴的なタイムスケール内に軌道上を一掃しているかどうかのシンプルな基準を与える。

恒星質量、惑星質量、惑星の軌道周期のみから、99%の発見済みの系外惑星をクラス分けすることができる。
結果、太陽系内の8個の惑星と、分類可能な系外惑星の全ては惑星の条件を満たしている。
これによって、惑星の基準の簡単化と一般化が可能である。

(太陽系の)惑星の条件

2006年のIAU決議B5では、惑星の条件は
(a) 太陽の周りを公転している
(b) 自己重力が剛体力に打ち勝つのに十分な質量を持ち、(球形に近い)静水圧平衡の状態にある
(c) 軌道上の天体を一掃している

の3つ全てを満たしているものとされている。

ここでは、(c)の定義をシンプルな基準を用いて定量化する。

提案する惑星の基準

これまでの基準では、オールトの雲の形成過程を考え、恒星の寿命以内の時間に、彗星が惑星によって弾き飛ばされるという条件を課していた。
しかし(c)の条件は「軌道を一掃している」であるため、惑星が小天体を全て弾き飛ばす必要は無い。
軌道を一掃しているという条件を満たすためには、小天体が惑星からヒル半径の定数倍だけ離れていれば良いということになる。

小天体が惑星のfeeding zoneより外側へ行くには、定数倍は 2√3 が必要である。
より強い条件としては、10倍程度である。
ケプラーで発見された多重惑星系においては少なくとも10倍のヒル半径程度の軌道間隔があり、平均的には20ヒル半径の間隔がある。
この領域内を、系の寿命中に一掃できる質量を持つかどうかで、惑星か否かを判断する。
パルサー惑星の取り扱いは難しいが、これらも惑星に分類可能である。





惑星の定義の定量化についての論文です。
太陽系の惑星の定義はIAUによって定められ、結果として冥王星が惑星から外れることになりました。
冥王星が惑星から外れることになったのは、「軌道を一掃している」という条件を満たしていなかったからです。軌道を一掃しているというのは、言い換えればその軌道で支配的な天体となっているかどうかということです。

太陽系外惑星については、惑星の定義は定められていません。
この論文では、一定期間内に惑星が小天体を数倍のヒル半径の外に追いやることができる質量を考え、それが出来る質量を持つものを惑星と呼ぶという定義を提案しています。

拍手[0回]


論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1507.05963
von Essen et al. (2015)
A temperature inversion in WASP-33b? Large Binocular Telescope occultation data confirm significant thermal flux at short wavelengths
(WASP-33bの温度逆転層:短波長での有意な熱フラックスの確認)

概要

WASP-33bのsecondary eclipseを観測した。
観測波長は可視光線の ~ 0.55 μmと、近赤外線の ~ 1.05 μmであり、観測に用いたのは 2 × 8.4 mのLarge Binocular Telescopeである。

食の深さは 1.03 ‰である。
また惑星の輝度温度は 3398 Kであった。
過去の観測のデータを合わせて計算した結果、惑星の有効温度は 3358 Kとなった。

大気モデルと照らし合わせた結果、観測結果を説明するために惑星大気の温度逆転層は必要無い。しかし温度逆転層の有無を排除することは出来ていない。

WASP-33bは最も高温な惑星のひとつである。
観測から求められた平衡温度は、速い再放射と、低いアルベドの存在を示している。

拍手[0回]


論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1507.05658
Charnoz & Michaut (2015)
Evolution of the protolunar disk: dynamics, cooling timescale and implantation of volatiles onto the Earth
(原始月円盤の進化:ダイナミクス、冷却タイムスケールと、揮発性物質の地球への降着)

概要

月は、地球への最後の巨大衝突 (giant impact)によって作られた原始月円盤 (protolunar disk)から形成されたと考えられている。
原始月円盤は高温のため、円盤中の物質が月に取り込まれるまでの"熱化学反応器"としてはたらく。
物質の液化や等方的進化などの未解決の問題は円盤の進化に重要である。しかし、円盤の寿命や力学、熱力学は不明である。

ここでは、原始月円盤の粘性進化の数値計算を行う。
1次元計算で、長時間の進化を追う。また蒸気と凝縮物の二相は垂直方向に成層していると考える。
計算では、円盤中での粘性加熱、輻射冷却、物質の相転移、重力不安定を考慮する。月の降着による形成はここでは考慮しない。

気体、液体、固体相での粘性が円盤の進化を決める。

計算の結果以下のような特徴が得られた。

(1) 蒸気は、円盤形成後 ~ 10年のうちに液体相となる。
(2) 円盤質量の大部分は内側へ降着し、半径 1 - 1.7地球半径の間に高温でコンパクトな液体の円盤を形成する。この領域は液相が重力的に安定であり、また蓄積も可能である。
(3) 最終的に円盤は 103 - 105年のうちに固化する。


円盤中の粘性加熱は計算期間中輻射冷却とバランスすることはなかった。

ガス相の粘性度が異常に高い場合は、例えば磁気回転不安定性などの機構によって円盤内の揮発性成分の大部分は地球に落下し、円盤には難揮発性成分が濃集する。
これは、揮発性物質に乏しい月の形成を助ける。この計算に結果によると、月に欠乏している揮発性物質は、落下してきて地球に存在する。

円盤の冷却タイムスケールは、惑星と円盤の同位体平衡 (isotopic equillibration)のためには十分長いだろう。
しかし、複数相の構造の複雑さのせいで、円盤の物理には大きな不定性がある。

拍手[0回]