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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1910.11930
Petrucci et al. (2019)
Discarding orbital decay in WASP-19b after one decade of transit observations
(10 年のトランジット観測の後の WASP-19b の軌道崩壊の否定)

概要

系外惑星 WASP-19b の軌道崩壊の経験的研究について報告する.これは 10 年に渡る計 74 回の完全なトランジットの中心時刻の測定に基づくもので,このうち 12 回は新規観測,残りの 62 回は過去の文献によるものである.

その結果,線形の天体暦がトランジット中心時刻をよく再現することが分かった.そのため,この惑星の軌道周期が短くなっているという証拠は検出されず,惑星の軌道周期の変化率の上限値として -2.294 ミリ秒/年という値を得た.

また改良潮汐 Q 値 \(Q’_{\star}\)は,下限値が 1.23 × 106 という制約が得られた.これらは過去の研究と一致する.またこれは,一様に解析されたトランジット測定によって得られた WASP-19b のトランジット中心時刻から直接導出された,初めての \(Q’_{\star}\) の推定である.

さらに,トランジット時刻でも周期的な変動は検出されなかった.そのため,1 次の平均運動共鳴 (1:2 と 2:1) に入っている,数地球質量よりも大きい惑星天体が存在する可能性は否定される (円軌道を仮定した最も保守的なケースの場合).

最後に,系外惑星を持つ 15 個の恒星の経験的な \(Q’_{\star}\) の値を測定し,有効温度が 5600 K よりも低い恒星は,より高温な恒星よりも効率的に潮汐エネルギー散逸を起こすことが示唆された.この暫定的な傾向は,より多くのサンプルで \(Q’_{\star}\) を経験的に測定することによって確認する必要がある.

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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1910.12188
Gomes-Júnior et al. (2019)
The first observed stellar occultations by the irregular satellite (Saturn IX) Phoebe and improved rotational period
(不規則衛星フェーベによる恒星の掩蔽の初観測と改善された自転周期)

概要

土星の不規則衛星フェーベの 6 回の恒星掩蔽を観測した.観測は 2017 年中盤から 2019 年後半までの間に行われたものであり,2017 年 7 月 6 日のイベントが,不規則衛星による恒星の掩蔽としては初めて観測されたものである.

フェーベによる掩蔽の弦を,カッシーニの観測から得られている衛星の三次元形状モデルと比較した.その結果,過去の文献でのフェーベの自転周期では,三次元モデルと掩蔽観測が合わないことが判明した.

解析過程を改良し,現在知られている文献の値よりも精度が向上したフェーベの自転周期を取得した.解析では,自転周期に関して 2 つの可能な解が示された.これらの値を,最近観測された自転の光度曲線と恒星の掩蔽観測と合わせた結果,フェーベの自転周期として 9.27365 時間が最も良いと結論付けた.

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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1910.07523
Chachan et al. (2019)
A Hubble PanCET Study of HAT-P-11b: A Cloudy Neptune with a Low Atmospheric Metallicity
(HAT-P-11b のハッブル PanCet Study:低金属量大気を持った雲の多い海王星型惑星)

概要

ウォームネプチューン (~800 K) である HAT-P-11b の 0.35-5 µm 波長の透過スペクトルについての,初めての包括的な研究を行った.

ハッブル宇宙望遠鏡とスピッツァー宇宙望遠鏡を用いた 13 回の独立したトランジット観測から.過去に報告されていた 1.1-1.7 µm バンドパスでの分子の吸収特徴の他に,1.15 µm での異なる吸収特徴を検出し,また 0.95 µm での弱い吸収の特徴を検出した.これは,水もしくはメタン (あるいはその両方) の存在を示唆する結果である.

この惑星はほぼ平坦な可視光での透過スペクトルを持つことを見出し,また近赤外線では減衰された分子の吸収特徴を持つ.これは高高度の雲層を含んだ大気モデルと最もよく合うスペクトルである.

ハッブル宇宙望遠鏡での 0.35-1.7 µm の透過スペクトルをあわせた大気の復元を行い,大気の雲頂の圧力と金属量に強い制約を与えた.しかし,近赤外線の分子吸収バンドの強度を過小評価することなしに,比較的浅いスピッツァーでのトランジット深さを一致させることはできない.

この惑星のハッブル宇宙望遠鏡での透過スペクトルは,微物理雲モデルに基づく予測とよく一致する.フォワードモデルと復元モデルのどちらも,この惑星は比較的低い金属量の大気を持ち,これは太陽系の惑星に基づく傾向から予測されるものとは対照的な結果である.

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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1910.06804
Feng et al. (2019)
Detection of the nearest Jupiter analog in radial velocity and astrometry data
(視線速度とアストロメトリデータでの最近傍の木星類似惑星の検出)

概要

最新の位置天文衛星 Gaia と,その先駆者である衛星ヒッパルコスによって観測された天体の位置と動きの違いを検出することで,木星類似の惑星を発見した.

インディアン座イプシロン星 (ε Indi A) の位置天文観測と視線速度観測から,予想される伴星天体の軌道を独立に検出した.インディアン座イプシロン星b (ε Indi Ab) は最も近い木星類似系外惑星であり,質量は 3 木星質量,軌道周期は 45 年でやや離心軌道である.

長周期の系外惑星は他にも発見されているが,この惑星は質量がよく制約されており,また中心星の周りを公転するよく研究された褐色矮星の連星もある.そのためこの系は巨大ガス惑星と褐色矮星の形成を理解する上で重要な存在である.

背景

インディアン座イプシロン星A (ε Indi A, HIP 108870, HR 8387, HD 209100, GJ 845) は,近傍の K2V 星であり,距離は 3.62 pc である (van Leeuwen 2007).質量は 0.762 太陽質量,光度は 0.22 太陽光度である.

この恒星から 1459 au 離れた位置に,褐色矮星が発見されている (Scholz et al. 2003).
さらに,明確な長周期のシグナルが視線速度中に発見されている (Endl et al. 2002, Zechmeister et al. 2013).このシグナルは比較的遠い褐色矮星によってひきおこされるものよりもずっと小さく,30 年よりも長い周期を持つ別の天体の存在を示唆している.

Jansen et al. (2009) による直接撮像では天体が未検出だったことから,比較的低温の天体であることが予想される.小さいケプラー運動のシグナルを検出するため,過去の HAPRS の視線速度のアーカイブデータを解析した.

視線速度とアストロメトリは,いくつかの短周期惑星を検出して特徴付けるために組み合わせて利用されているが,低温な木星型惑星に対してはまだその例は無い.ヒッパルコスと Gaia による 20 年にわたる観測のおかげで,木星類似惑星による恒星の動きを検出することが可能になった.

パラメータ

インディアン座イプシロン星
質量:0.754 太陽質量
光度:0.239 太陽光度
インディアン座イプシロン星b
質量:3.25 木星質量
軌道周期:45.20 年
軌道長半径:11.55 au
軌道離心率:0.26

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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1910.06882
Turner et al. (2019)
Detection of ionized calcium in the atmosphere of the ultra-hot Jupiter KELT-9b
(ウルトラホットジュピター KELT-9b の大気中の電離カルシウムの検出)

概要

ウルトラホットジュピター KELT-9b は,昼側の温度が 4500 K を超える.これは中期 K 型星と同程度の温度であり,知られている中では最も高温の系外惑星である.極端に高温なため,この惑星は巨大ガス惑星の性質と多様性を調査するための特に興味深い対象である.

ここでは,Calar Alto 3.5 m 望遠鏡の CARMENES を用いて,高スペクトル分解能 (R~94600) でトランジット観測を行った.この観測データから,この惑星の大気から初めて電離したカルシウム (Ca II triplet) の吸収を検出した.ホットジュピターの大気中から Ca II が検出されたのはこれが 2 例目である.

今回の観測では Hα の吸収の存在も確認し,この惑星の広がった水素エンベロープの存在を確認した

今回の検出を大気モデルと比較した.
検出された 4 つのスペクトル線は大気温度が 6100 K から 8000 K の領域に由来しており,Ca II 線は大気の圧力が 50-100 nbar の領域に由来する一方,Hα 線はより低圧 (~10 nbar) の高層大気から来ていると推定される.

Hα 線のラインコアの元となっている高度は 1.33 惑星半径であり,これは惑星のロッシュローブである ~1.91 惑星半径よりは十分内側である.したがって,これは高層大気の散逸を直接見ているわけではなく,Hα 線とその他の観測されたバルマー線,金属原子のスペクトル線は,惑星大気の温度分布,すなわちエネルギー収支を探査することを可能とする大気の温度計として使えることを示す.

KELT-9 の観測

中心星の KELT-9 は A0V/B9V 星であり,惑星 KELT-9b は 0.034 au の距離を公転している (Gaudi et al. 2017).この惑星は,これまで発見されている中で最も高温な系外惑星である.

惑星が非常に高温であることから,金属の吸収線といくつかの近紫外線の共鳴線が,惑星大気の透過スペクトル中に見られるはずと予想されていた (Kitzmann et al. 2018).

鉄原子および鉄イオンは後に HARPS-N の観測で検出された (Hoeijmakers et al. 2018, 2019).また Yan & Henning (2018) は Hα 線での観測で ~1.64 惑星半径まで広がった水素大気を CARMENES 分光器の観測から報告している.この Hα 検出は後に,Cauley et al. (2019) で確認されている.

また HARPS-N を用いた高分散可視光スペクトルがこの惑星のトランジット中に取得され,惑星大気によるロシター効果の検出が報告された.これに合わせて,14 の原子種がこの惑星の大気から検出されたことも報告された.

ここでは,大気中の Ca II (カルシウムイオン) の探査を行った.
Ca II は,ホットジュピターの大気中に存在することが予測されている.スーパーアースである 55 Cnc e (かに座55番星e) では検出が報告されている (Ridden-Harper et al. 2016).また,ホットジュピター KELT-20b でも検出されている (Casasayas-Barris et al. 2019).

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