忍者ブログ
日々の感想などどうでもよいことを書き連ねるためだけのブログ。
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。


論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1908.06994
Dupuy et al. (2019)
WISE J072003.20-084651.2B Is A Massive T Dwarf
(WISE J072003.20-084651.2B は重い T 型矮星)

概要

太陽系近傍の M9.5 星と T5.5 星の連星である WISE J072003.20−084651.2AB (別名:Scholz’s star,ショルツ星) の,独立した力学的質量の測定について報告する.これは,CFHT/WIRCam photocenter astrometry と Keck の補償光学で分解された撮像観測を元にしており,視差による距離 (6.80 (+0.05, -0.06) pc) の測定と,軌道周期 (8.06 (+0.24, -0.25) 年) の初めての高品質の測定である.

軌道離心率は 0.240 とやや偏心した軌道であり,少ないデータに基づいた過去の報告とは非整合的である.力学的質量はそれぞれ 99 ± 6 木星質量と 66 ± 4 木星質量である.

主星 WISE J072003.20−084651.2A の質量は,経験的な質量-等級-金属量関係,および主系列星のモデルとやや不整合であった (2.1σ).
また,比較的高質量の伴星の褐色矮星 WISE J072003.20−084651.2B が低温 (有効温度 1250 K) であることは,この天体の年齢が数十億年よりも年老いていることを示唆する.これは主星の年齢推定と調和的である.伴星の質量は,散在星における恒星と亜恒星の境界として最近推定されている 70 木星質量と整合的である.

今回の観測によって改善された視差と固有運動,および軌道の補正をした連星系の速度は,この系の太陽系への近接遭遇の精度を一桁改善した.この系は 8 万 500 年 ± 7000 年前に,太陽から 6 万 8700 AU ± 2000 AU 以内の距離を通過したと考えられる.この距離は,彗星が安定な軌道を持てる外オールトの雲の領域である.

拍手[0回]

PR

論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1908.06998
Hamer & Schlaufman (2019)
Hot Jupiters are Destroyed by Tides While Their Host Stars are on the Main Sequence
(ホットジュピターはその主星が主系列の間に潮汐で破壊される)

概要

低温の巨大惑星はしばしばゼロではない値の離心率を持っているが,ホットジュピターの短周期で円形の軌道は,これらの惑星は中心星との潮汐相互作用によって軌道エネルギーと角運動量を失っていることを示唆している.しかし,ホットジュピターの軌道崩壊はこれまでに明確には観測されていない.

ここでは,Gaia Data Release 2 の位置天文測定データを用いて,ホットジュピターを持つ恒星は,ホットジュピターを持たない類似の恒星と比較して銀河速度分散が小さい事を見出した
銀河内での恒星の速度分散はその年齢と相関している.そのためこの観測は,ホットジュピターを持つ恒星の集団は,平均的にはホットジュピターを持たない散在星の集団よりも若いことを示唆している

この観測結果に対する最良の説明は,ホットジュピターは潮汐相互作用によって中心星が主系列の間に落下してしまうというものである.この場合,観測を説明するためには,改良された恒星の潮汐クオリティーファクター \(Q’_{*}\) の典型的な値に対して,太陽型星の場合は \(Q’_{*} \lesssim 7\) であることを要求する.

ホットジュピターの軌道崩壊

これまでの観測的研究

ホットジュピターの大部分は円軌道であり,短周期の惑星では潮汐相互作用が重要であることを示唆している.大部分のホットジュピターは軌道崩壊に対して形式上は不安定であるが (Levrard et al. 2009),落下のライムスケールは中心星の主系列の寿命よりも長くなりうる.そのため,ホットジュピターが中心星の主系列段階を生き延びるか否かは不確定である.

多くの観測グループが様々な惑星系において,長期的な軌道周期の減少の測定という形で惑星軌道の潮汐減衰の直接的な証拠を探査しているが,明確な潮汐減衰の証拠は発見されていない (Maciejewski et al. 2016など).ほとんどのホットジュピター系では,線形の天体暦からのずれは見られていない.この場合,潮汐散逸効率への弱い上限値しか導出することができない.

一方で,WASP-12 と WASP-4 系では惑星の線形の天体暦からのずれが観測されているが,潮汐散逸以外の原因による長期的な軌道周期の減少である可能性は完全には否定されていない.


別のグループによる,潮汐崩壊の統計的な証拠の探査も行われている.
例えば,近接巨大惑星の軌道長半径分布において,潮汐崩壊によって分布が切り取られた証拠があるという議論が存在する (Jackson et al. 2009など).

さらに,ホットジュピターが潮汐崩壊を経験した系では,ホットジュピターが持っていた軌道角運動量は,中心星の自転角運動量に輸送されるはずである.McQuillan et al. (2013) は,高速自転星周りでは近接巨大惑星が欠乏していることを発見したが,Teitler & K ̈onigl (2014) ではこれはその角運動量の輸送の効果によるものだとした.
また Schlaufman & Winn (2013) では,主系列星が進化すると,時間の経過とともにホットジュピターの存在頻度が減少する事を示した.

年齢推定

これまでに様々な努力が行われているものの,ホットジュピターの主星の年齢を正確に推定するのが難しいという困難点がある.もっとも,孤立して存在している恒星の正確な年齢を推定することは,天文学で最も困難なものの一つである.

正確で精密な絶対年代を計算するのは依然として難しいが,相対的な年齢の精密な推定に関しては重要な進展が見られる.
銀河内での恒星の集団の速度分散は年齢との相関があり,速度分散を比較することで恒星の集団同士の相対年齢が明らかになる.

もし潮汐散逸が効率的で,ホットジュピターは中心星が主系列にいる間に潮汐破壊されるのであれば,ホットジュピターを持つ恒星は同様の散在星と比較して若いはずである.代わりに潮汐散逸が非効率的な場合は,ホットジュピターは中心星が準巨星になるまで生き残るため,ホットジュピターを持つ恒星と持たない恒星の速度分散は類似するはずである.

拍手[0回]


論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1908.07424
Lombardo et al. (2019)
Detection of Propadiene on Titan
(タイタンでのプロパジエンの検出)

概要

土星最大の衛星タイタンの大気は有機分子が豊富であり,非常に還元性が高く全球的にヘイズが存在していることから,地球の前生物環境に類似している可能性があるとされている.

タイタン大気の光化学モデルでは,プロパジエン (歴史的にはアレンとして知られる) の存在が予測されている (CH2CCH2).これはよく測定されているプロピン (メチルアセチレンとも) CH3CCH の異性体であるが,プロパジエン分子の分光学的な情報が不十分であることから,その検出はまだ報告されていない.
なお,最近になって,これらの分子のスペクトル線のリストが更新・修正された.

ここでは,タイタンの大気中でのプロパジエンの初めての明確な検出について報告する
観測は,2017 年 7 月に NASA Infrared Telescope Facility (IRTF) の Texas Echelle Cross Echelle Spectrograph (TEXES) を用いて行われた.

プロパジエンによる波長 12 µm 付近の放射をモデル化し,大気中のプロパジエンの体積混合比を 6.9 ± 0.8 × 10-10 (高度 175 km での値) と測定した.この値は,光化学モデルで予測されている,鉛直方向に増加する存在度分布を仮定している.

2017 年 4 月のカッシーニによるプロピンの測定からは,プロパジエンに対するプロピンの存在度は同じ高度で 8.2 ± 1.1 と報告されている.

タイタンの成層圏におけるプロパジエン分子の初期測定は,タイタン大気中に存在する水素原子の総量への制約を与えるための道筋をつけ,また将来の 8 m 望遠鏡やそれより大きな地上望遠鏡でのプロパジエン分布のマッピング,また他の天体での将来の検出にも繋がるものである.

拍手[0回]


論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1908.06299
Dai et al. (2019)
Homogeneous Analysis of Hot Earths: Masses, Sizes, and Compositions
(高温地球型惑星の一様解析:質量,サイズ,組成)

概要

太陽類似の恒星を極めて短周期で公転している地球型惑星が発見されており,そのいくつかは軌道周期がわずか 4 時間程度である.
これらの「超短周期惑星」あるいは「ホットアース」は非常に強い輻射を受けており,初期の H/He 大気は光蒸発によって失われていると考えられる.そのため,ホットアースのサンプルは,遠方軌道にある惑星の場合は一般に分厚い H/He エンベロープに覆われている,岩石コアについての情報を与えてくれる可能性がある.

しかしホットアースの質量と半径の測定は,異なるモデル化のアプローチにより継ぎ接ぎに導出されており,またいくつかの食い違う結果を含む場合がある.ここでは,地球の 650 倍以上の輻射を受けている 11 個の既知のホットアースの,完全なサンプルの一様な解析を実行した.

それぞれの惑星に対して参照可能なデータを組み合わせ,Gaia による視差の観測情報から恒星と惑星のパラメータを改善した.また,ガウス過程回帰を用いて視線速度データ中のノイズに対処した.

一様な解析により,ホットアースの見かけの組成の分散は小さくなった.しかし,いくらかの固有の分散も依然として存在する.
惑星の大部分は,地球類似の組成と整合的であったが (鉄 35%,岩石 65%), K2-141b と K2-229b の 2 つは鉄の割合が高いという証拠が得られた.また 55 Cnc e は,鉄の存在度が低いか,もしくはエンベロープが低密度な揮発性物質で出来ているかであることが示唆された.

系外惑星の探査では重い惑星が発見されやすいという選択バイアスがあるにも関わらず,今回のサンプル中の全ての惑星は 8 地球質量よりも軽い.これは,暴走的降着の臨界質量が 8 地球質量であることを示唆する結果である.

拍手[0回]


論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1908.06834
Kreidberg et al. (2019)
Absence of a thick atmosphere on the terrestrial exoplanet LHS 3844b
(地球型系外惑星 LHS 3844b の厚い大気の欠如)

概要

多くの地球型惑星は,太陽の 60% 未満の質量を持つ小さい恒星を公転している.理論モデルでは,これらの惑星の大気は太陽型星周りの地球型惑星よりも脆弱であることが予測されている.

小さい惑星において,高温の大気が生き残れるかどうかを決定するための一つの手法は,熱位相曲線から大気の熱再分配の特徴を探査することである.
過去のスーパーアース 55 Cancri e (かに座55番星e,1.9 地球半径) の位相曲線からは,輝度が最大になる地点が恒星直下点からずれていることが判明している.これはこの惑星における大気循環の存在を示唆している可能性がある.

ここでは,より小さく低温な LHS 3844b の位相曲線の測定について報告する.
この惑星は 1.3 地球半径で,太陽系近傍の小さい恒星を 11 時間周期で公転している.

観測された位相曲線は,対称で大きな振幅を持つ.位相曲線の特徴からは,惑星の昼側の輝度温度は 1040 K と推定され,また夜側の温度は 1σ で 0 K と整合的であった.

この結果から,3σ の信頼度で,惑星表面での圧力が 10 bar を超える厚い大気が存在することは否定される.また,それより軽い大気が存在する可能性はあるが,そのような大気は恒星風の侵食に対して不安定である.

観測データは,ボンドアルベドが低い裸の岩石モデルでよくフィット可能である (2σ で 0.2 未満).この結果は,小さい恒星を公転する高温の地球型惑星は一定量の大気を持てないという理論的な予測を支持するものである

拍手[0回]