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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1907.05906
dos Santos et al. (2019)
The Hubble PanCET program: an extensive search for metallic ions in the exosphere of GJ 436 b
(The Hubble PanCET program:GJ 436b の外気圏中の金属イオンの広範な探索)

概要

静穏な M2.5 星である GJ 436 は温暖な海王星質量の惑星 GJ 436b を持ち,その惑星は自身の主星を上回る大きく広がった大気を持つ.このような惑星での大気散逸は,水素原子は高層大気から衝突レジームで散逸し,大気の流れは高層大気中に重い元素を引きずることを予測する.しかし,この過程を駆動する天体物理学機構は不明瞭である.

ここでは,ハッブル宇宙望遠鏡の COS を用いた遠紫外線での GJ 436 のスペクトルを取得し,惑星の高層大気中に金属イオンのシグナルが存在するかどうかを探査した.また同時に,恒星活動に誘起される恒星の変動を研究した.

GJ 436 の遠紫外線スペクトルを解析し,地球の夜側付近で得られた COS のライマンアルファ線における地球コロナによる混入を除去した.GJ 436 のフレアイベントは 1 日あたりおよそ 10 回であり,最大で 20% の振幅で恒星の遠紫外線金属線を変調させる,おそらくは長寿命の活動領域もしくは経度の証拠が得られた.

COS で取得されたデータには地球コロナによる強い混入があるものの,ライマンアルファ線の青い側と赤い側で,~50% と ~30% の超過吸収シグナルが得られた.トランジットの最中の金属線の超過吸収水準は広い範囲において否定された

ライマンアルファ線の透過スペクトルで観測された GJ 436b の大きな大気散逸は数年のタイムスケールに渡って安定であり,赤い側のシグナルは,安定な外気圏のそばににある変動する水素吸収源の存在を支持する.

また,過去に存在が主張されたトランジット中の Si III 線の吸収は,おそらくは恒星の時期サイクルからくる artifact である.

金属イオンの吸収が検出されなかったことは,惑星からの大気散逸は流体力学的でないか,あるいは検出可能な十分なイオンの散逸率を実現するための,金属粒子の引きずりにおける大気の混合が効率的ではないことを示唆している.

観測結果と考察

ライマンアルファ線と金属イオンの特徴

ライマンアルファ線の blue wing でのトランジットは,過去の報告と同様に 50% 近い深い吸収を示した.これは blue wing での超過吸収は数年に渡って安定であることを示唆している.

さらに red wing でも 30% 程度の深い吸収が見られた観測があった (2018年1月後半の観測).これは Lavie et al. (2017) での報告よりも深く,また位相もシフトしている.しかしその他のトランジットでは再現されず,これは一時的な現象,場合によっては急激な現象である可能性もある.

また今回の観測波長の中ににはいくつかの金属イオンの線が存在するが,これらのイオンが散逸していることを示す兆候は得られなかった.特に,ライマンアルファ線と同様に非対称トランジットを仮定した場合,C II と N V の波長では,それぞれ 95% の信頼度で 12% と 11% 以上の吸収深さであることを否定する結果となり,これは Loyd et al. (2017) と整合的である.

一方で,Lavie et al. (2017) で報告された Si III の検出の兆候は見られなかった.これは,2015 年以降に GJ 436 の Si III フラックスが増加したことによって引き起こされた可能性がある.これは恒星の磁気活動サイクルと一致する.惑星の高層大気中のケイ素イオンの存在にさらに強い制約を与えるためには,今後の大きな観測的努力が必要だろう.

GJ 436b の大気の特性

GJ 436b の大気についてはまだ分からない点が多い.
遠紫外線透過スペクトルは惑星の高層大気の情報を与えてくれるが,一方で可視光と赤外線スペクトルでは低層大気を追うことができる.可視光での透過スペクトルは特徴を欠いており,この惑星大気が高金属量の大気を持つのか,あるいは雲の多い大気を持つのかは完全には明確ではない (Lothringer et al. 2018).スピッツァー宇宙望遠鏡の 3.6, 4.5, 8 µm での観測では,この惑星は金属豊富な大気で,メタンが欠乏し,CO/CO2 が多い大気とすると整合的であると結論付けている (Lanotte et al. 2014).

今回の観測で金属元素が外気圏中に検出されなかったこと,とくにケイ素が発見されなかったことは,この惑星がもし雲の多い大気を持ち,大気散逸が流体力学的である場合,昇華を起こして金属イオンを散逸させるのに十分なほどの,重元素の引きずりにおけるケイ素豊富な雲の効率的な混合が発生していないことを示唆している.
一方で,ケイ素が非検出であったことから,静水力学的な散逸過程を否定することは出来ない.

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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1907.06534
Freudenthal et al. (2019)
Kepler Object of Interest Network III. Kepler-82f: A new non-transiting 21M⨁ planet from photodynamical modelling
(Kepler Object of Interest Network III.ケプラー82f:光力学モデリングからの 21 地球質量の新しい非トランジット惑星)

概要

Kepler Object of Interest Network (KOINet) は,大きなトランジット時刻変化 (transit timing variations (TTVs)) を持つトランジット惑星候補である Kepler objects of interest (KOIs) のフォローアップ観測を行うための,地球規模の複数箇所の望遠鏡ネットワークである.このプロジェクトの主要目標は,ケプラーが 2013 年に初期観測を停止した時までに得られていた TTV 曲線を完成させることである.

ここでは,ケプラーのデータと地上望遠鏡でのデータを合わせて解析し,ケプラー82 系に適用した
.これは,この惑星系の初めての力学的な解析である.

光力学モデルとマルコフ連鎖モンテカルロ法のアルゴリズムを組み合わせ,パラメータ空間を調査した.ケプラー82b/c の 2 つの惑星は正弦曲線状の TTV を示す.これは 2 つの惑星が 2:1 共鳴に近い力学的相互作用を起こしていることによるものである.


ケプラー82c の TTV における特徴から,3:2 か 3:1 共鳴に近い状態にあるさらなる惑星の兆候が示唆された.ケプラーの長期間および短期間の観測データ,さらに 2014-2018 年に得られたKOINet で得られた 3 回の新しいトランジット観測から,光力学的解析を実施した.

その結果,20.9 地球質量のトランジットしない外側の惑星ケプラー82f の存在が明らかになった.これは既知の最も外側の惑星 ケプラー82c と 3:2 共鳴に近い状態にある.

さらに,ケプラー82b と c の密度をより精密に測定し,それぞれ 0.98, 0.494 g cm-3 という値を与えた.

ケプラー82 系について

ケプラー82 系では,これまでに 4 つのトランジット惑星が発見されていた.

内側の 2 惑星のペアである ケプラー82d と e は,軌道周期がそれぞれ 2.38 日と 5.90 日である (Rowe et al. 2014),

2 つの外側の惑星は軌道周期比が 2:1 に近く,26.44 日と 51.54 日である.軌道周期が尽数関係になっていることにより,これらの惑星の TTV の振幅は大きくなっている.そのためこの 2 つの惑星によるトランジットシグナルは,内側の 2 つの惑星よりも 1 年早く TTV を用いた検証により惑星であることが確認されていた (Xie 2013).

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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1907.03732
Gupta & Schlichting (2019)
Signatures of the Core-Powered Mass-Loss Mechanism in the Exoplanet Population: Dependence on Stellar Properties and Observational Predictions
(系外惑星ポピュレーションにおけるコア駆動質量放出機構の痕跡:恒星の特性への依存性と観測的予測)

概要

最近の研究では,惑星のコアの冷却光度によって駆動される大気の質量放出 (core-powered mass-loss) によって,大気の光蒸発を考慮しなくてもスーパーアースとサブネプチューンを分ける半径の谷 (radius valley) を説明できるとされている.ここでは,コア駆動質量放出の,恒星質量と金属量,年齢への依存性について調査を行った.

その結果コア駆動質量放出は,惑星のポピュレーションに変化を与えること無く,より重い恒星の周りでの大きい半径への半径の谷の移動が起きることを示した.この半径の谷のスロープは \(d\log R_{\rm p}/ d\log M_{*}\simeq 0.35\) となり,これは観測と一致する.

一次の依存性としては,このスロープはコア駆動質量放出の中心星のボロメトリック光度への依存性に起因しており,\(d\log R_{\rm p}/ d\log M_{*}\simeq \left(3\alpha-2\right)/36\simeq 0.36\),\(\left(L_{*}/L_{\odot}\right)=\left(M_{*}/M_{\odot}\right)^{\alpha}\) が恒星の質量光度関係で,CKS のデータセットでは \(\alpha \simeq 5\).そのため,光蒸発モデルとは対象的に,惑星と恒星質量への相関の証拠はない.

さらに,半径の谷が生じる場所は,恒星の年齢と金属量とは独立であることを示す.対照的に,大気の不透明度が恒星の金属量で線形にスケールできると仮定すると,サプネプチューンのポピュレーションのサイズは金属量に伴って増加し,年齢に伴って減少する.このことは,サブネプチューンに対するスーパーアースの存在度は年齢に伴って増加するが,恒星の金属量に伴って減少することを示唆している.
一連の観測的な検証により,コア駆動質量放出と光蒸発モデルを区別できるだろうと結論付けた.

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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1907.00449
Benneke et al. (2019)
A Sub-Neptune Exoplanet with a Low-Metallicity Methane-Depleted Atmosphere and Mie-Scattering Clouds
(低金属量のメタン欠乏大気とミー散乱雲を持つサブネプチューン系外惑星)

概要

太陽系には類似したものが存在しないタイプである,地球と海王星の中間程度の半径を持つ惑星が系外惑星には多数発見されている.これらのスーパーアースとサブネプチューンは,おそらく惑星形成の結果としては最も一般的なものだろうと考えられる.

このような惑星の質量と半径の測定からは,全体の組成は巨大ガス惑星よりも多様性があることが示唆されている.しかし大気中の分子吸収の分光学的な直接検出と,大気ガスの混合比への制約は,海王星よりも重い惑星に限られていた.

ここでは,ハッブル宇宙望遠鏡とスピッツァー宇宙望遠鏡を用いた 12 回のトランジットと 20 回の二次食観測から,サブネプチューン GJ 3470b を解析した.この惑星は 12.6 地球質量であり,これまでに探査された系外海王星型惑星 (22-23 地球質量),および岩石惑星の密度を持つことが分かっている 7 地球質量のものたちの中間に位置している.

何年にもわたるデータ取得から,大気中の水の吸収の確実な検出を報告する (5σ 以上).また,これまでで最も弱い輻射を受けている惑星からの熱放射の検出も報告する.

今回の観測から,この惑星が巨大ガス惑星に似た低金属量で水素主体の大気を持つことが明らかになったが,大気中のメタンガスは大きく欠乏していることが分かった.

この惑星が太陽に近く,大気の金属量が低い (O/H = 0.1- 18) ことは,低質量惑星の形成過程や,その後の固体の降着過程に対して重要な制約を与える.
大気中のメタンの存在度が低いことは,これまでに予想されていたよりもメタンが効率的に破壊されていることを示唆する.このことから,中心星に近接する惑星においては,CH4/CO の遷移曲線を再考する必要があることを指摘する結果である.

最後に,ミー散乱の特徴である 2-3 µm での雲の不透明度の急激な減少も検出した.これにより雲の粒子サイズ対して狭い制約を与えることを可能とした.これらの結果は,この惑星を JWST を用いた中間赤外線での特徴付け観測の主要なターゲットとするものである.

GJ 3470b について

ハッブル宇宙望遠鏡を用いた低質量系外惑星の大気のスペクトルサーベイの一環として GJ 3470b を観測した.この惑星は軌道周期 3.3 日,12.6 地球質量であり,中心星に近接したサブネプチューン惑星の典型例である.

惑星の表面重力が小さく,中心星に近く,また中心星のサイズが小さいことから,大気の詳細な特徴付のための良い観測対象である.

観測

波長 1.1-1.7 µm を観測できる Wide Field Camera 3 を用いて観測を行った.また Space Telescope Imaging Spectrograph で可視光 (0.55-1.0 µm) の範囲も観測した.

さらに,スピッツァー宇宙望遠鏡の IRAC でも 3.6, 4.5 µm の波長帯を用いて観測した.

結果

観測の結果,1.4 µm の波長帯で,弱まってはいるものの統計的に有意な水の吸収を検出した.また,大気は低金属量で水素主体の大気であるとするモデルと一致し,O/H (水素に対する酸素の存在比) は太陽の 0.2-18 倍であった
トランジット深さの波長ごとの変化から,高金属量で高分子量の大気を持つ可能性は否定される.

この惑星の高高度の雲は,過去に報告されていたヘイズによるレイリー散乱や,単純な灰色の雲層では再現できない.そのかわり,有限サイズのミー散乱エアロゾル粒子による消散の直接的な観測的証拠が得られた.
エアロゾル雲は波長 2-3 µm で急速に透明になり,雲の最も上層での有効粒子サイズは 0.60 µm であるとの制約が得られた

メタン欠乏の原因

この惑星の透過スペクトルでは,メタンの吸収が明確に欠乏していることが判明した.
この惑星のように比較的低温で低金属量の大気に対しては,炭素-酸素比が太陽と同じ場合は,炭素を保持する分子としてメタンが主要な成分になることが予測される.しかし WFC3 の 1.6 µm のメタンの吸収とスピッツァー宇宙望遠鏡 IRAC 3.3 µm での吸収ではメタンは検出されず,この惑星の大気はメタンが大きく欠乏していることが示唆された.

メタンの欠乏に関しては二次食の観測からも支持されており.ベストフィットモデルでは,メタンの存在度は化学平衡状態の予測と比べて 3 桁も低いものであった.

光化学モデルを用いてメタン欠乏の原因を評価した.その結果,今回の観測で探査された大気層においては,層中のメタンの存在量は光化学反応によって実質的に減少はしないことが示された.
欠乏の原因として考えられるのは,惑星内部での加熱,大気の深い層でのメタンの触媒作用による光化学的欠乏,あるいは惑星形成過程の結果としての低い C/O 比などが考えられる.

内部加熱シナリオの場合,内部温度を 300 K 以上にして CO 主体の状態にする必要がある.GJ 3470b の進化モデルは,形成による内部熱は惑星の年齢よりもずっと短い数百万年の間に放射で失われてしまう.しかし系内に未発見の惑星があり,強制離心率による潮汐加熱が存在する場合は,内部加熱の原因になりうる.これは木星の衛星イオと似た状況である.

その他には,大気の深層で NH3 と H2S の光解離によって大量の水素原子が放出されてメタンの触媒破壊が発生している可能性がある.この惑星の大気組成を化学-運動学モデリングと比較するとアンモニアも不足していることから,この触媒破壊の可能性と整合的である.

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arXiv:1907.02112
Hughes et al. (2019)
Constraining the Radio Emission of TRAPPIST-1
(TRAPPIST-1 の電波放射の制約)

概要

TRAPPIST-1 は 7 つの地球型惑星を持つ超低温矮星で,これらの惑星のうち少なくとも 3 つはハビタブルゾーン内を公転している.

このような低質量星からの電波放射に関してはあまり理解が進んでいない.電波放射が検出されている超低温矮星はわずかであり,検出の尤度と恒星の特性の間にはわずかな相関しか見られていない.その他の低質量星に対して,TRAPPIST-1 のような自転の低速な超低温矮星は電波では暗く,自転の速い超低温矮星は強い電波放射を持つ傾向があるが,この傾向は常に現れるものではない.

ここでは,ALMA の 97.5 GHz と VLA の 44 GHz 周波数帯を用いた TRAPPIST-1 の電波観測について報告する.どちらの波長でも TRAPPIST-1 は検出されず,電波強度の 3σ の上限値はそれぞれ 10.6 µJy と 16.2 µJy であった

この上限値を用いて,TRAPPIST-1 の磁場特性と恒星から放出されている可能性のある高エネルギー粒子についての制約を与えた.

超低温矮星からの電波放射の存在は,周囲にある惑星の生命を危機に晒す恒星環境の指標となる.20 GHz と 100 GHz の間の周波数で識別できるジャイロシンクロトロン放射は,磁気リコネクションイベントの最中に放出される高エネルギー粒子の存在を示唆するのに用いることができる最良のプロセスのひとつである.

M 型矮星は多くが地球型惑星を持つため,恒星の放射を特徴づけることは惑星の居住可能性を評価する上で重要な部分.高エネルギー粒子放射への曝露の可能性は電波フラックスの観測から探ることができるが,この暴露は惑星大気を侵食する可能性がある.
今回の結果は TRAPPIST-1 の惑星が生命に適することを示唆するものではないが,恒星からの陽子フラックスのためあからさまに生命の居住に適さないという証拠も発見されなかった.

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