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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1905.12491
Casasayas-Barris et al. (2019)
Atmospheric characterization of the ultra-hot Jupiter MASCARA-2b/KELT-20b
(ウルトラホットジュピター MASCARA-2b/KELT-20b の大気の特徴付け)

概要

ウルトラホットジュピターは中心星に非常に近い軌道を公転している.そのため恒星からの強い輻射を受け,その大気化学は一般的な巨大ガス惑星とは異なったものになる.
ここでは,この特徴的な高温惑星のひとつである MASCARA-2b/KELT-20b の大気の観測を行った.

高分散分光装置を用いてこの惑星の 4 回のトランジットを観測.そのうち 3 回は HARPS-N を用いて,1 回は CARMENES を用いて観測した.さらに,恒星の表面にある可能性がある黒点をモニターするため,MuSCAT2 で 1 回のトランジットを同時観測した.

その結果,透過光スペクトルの残差には Rossiter-McLaughlin 効果 (ロシター効果) と,恒星のスペクトルの center-to-limb variation が検出された.

さらに今回の観測では,この惑星の大気中での Ca II,Fe II,Na I,Hα と Hβ の吸収が明確に検出され,Hγ と Mg I の吸収を示唆するシグナルが,低いシグナルノイズ比で得られた.Na I の場合,実際の吸収は地球大気での吸収と星間空間の混入と分離するのが難しい.

CARMENES と HARPS-N でのそれぞれの結果は整合的であり,Hα の吸収深さはそれぞれ 0.68% と 0.59% であった.また Na I の吸収深さは 0.75Å のパスバンドで 0.11% と 0.09% であった.

Hα 線での吸収深さは 1.2 惑星半径に対応しており,これは中心星から受け取った輻射によるガスの加熱の結果として広がった大気を持つことを示唆している.

Hβ と Hγ については,この波長域をカバーしている観測装置は HARPS-N のみである.吸収深さはそれぞれ 0.28%,0.21% であった.一方で Ca II は CARMENES だけがこの波長域をカバーしており,吸収深さは 0.28,0.41,0.27% (8498,8542,8662Å での値) であった.

また,Fe II の 3 本のさらなる吸収線が HARPS-N で得られたデータ中に見られた.また部分的に CARMENES でも検出された.この吸収線の平均の吸収深さは 0.08% であった.

今回の結果は,このような高温の惑星の昼側には電離されたガスが存在することを示唆しているウルトラホットジュピターの大気の理論モデルと整合的であった.カルシウム,鉄やその他の元素は,このウルトラホットジュピターの温度領域では一階電離していることが期待され,中性状態よりも多く存在する.
なお,カルシウムの三重項の線が系外惑星大気の透過スペクトル中に検出されたのはこれが初めてである

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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1905.12520
Morgado et al. (2019)
First stellar occultation by the Galilean moon Europa and upcoming events between 2019 and 2021
(ガリレオ衛星エウロパの初めての恒星の掩蔽と 2019 から 2021 までの今後のイベント)

概要

Gaia DR2 により,明るい恒星の位置は現在では 1mas 未満の不定性で判明している.
2019 年から 2020 年の間に,木星は銀河面の手前を通過する.その期間は高密度の恒星の分布が木星の背後に来ることによって恒星の掩蔽の数が増えることになるが,Gaia DR2 のカタログはその影の軌跡の予測における不定性を減らす.

ここでは,木星のガリレオ衛星エウロパによる恒星の掩蔽を観測した.また,今後の全てのガリレオ衛星の恒星の掩蔽を観測するキャンペーンを提案する.

掩蔽が発生することが予測される期間の間,フラックスが減少した時刻と再び上昇した時刻をそれぞれの観測地点について決定するために,複数個の参照星について掩蔽される恒星の光束を測定した.高密度な観測から得られた恒星の軌跡の弦から,エウロパの見かけの大きさ,扁平度,位置をキロメートルの精度で決定することが可能となった.


ここでは,2017 年 3 月 31 日に発生した,ガリレオ衛星エウロパによる恒星の掩蔽の初めての観測結果を提供する.

掩蔽から判明した見かけの楕円からは,エウロパの実効半径は 1561.2 ± 3.6 km,扁平率は 0.0010 ± 0.0028 と測定された.また,0.8 mas の不定性で非常に精密なエウロパの位置の決定も行った.

さらに,全てのガリレオ衛星の 2019 年から 2020 年の間の将来の掩蔽イベントの可能性についても調査を行った.

恒星の掩蔽は,主星に近い明るい衛星の物理パラメータや,非常に精密な位置を得るために適した手法である.多くの掩蔽イベントを観測することで,高い精度でガリレオ衛星の三次元形状を得ることが可能である.

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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1905.09075
Lalitha et al. (2019)
The CARMENES search for exoplanets around M dwarfs Detection of a mini-Neptune around LSPM J2116+0234 and refinement of orbital parameters of a super-Earth around GJ 686 (BD+18 3421)
(M 矮星周りの系外惑星の CARMENES 探査 LSPM J2116+0234 まわりのミニネプチューンの検出と GJ 686 (BD+18 3421) まわりのスーパーアースの軌道要素の更新)

概要

M 型矮星は高水準の恒星活動を持つことが知られているが,視線速度法を用いた低質量の系外惑星の探査を行う理想的な対象でもある.

ここでは,LSPM J2116+0234 を公転する惑星質量の伴星の発見について報告する.この恒星のスペクトル型は M3.0V である.また,GJ 686 (BD+18 3421) の周りを公転する惑星の存在を確認した.こちらの恒星のスペクトル型は M1.0V である.

LSPM J2116+0234 の周りの惑星の発見は,CARMENES を用いた可視光線と近赤外線での視線速度観測で行われた.また,GJ 686 の周りの惑星は,CARMENES VIS,HARPS-N,HARPS,HIRES を用いた 20 年にわたる視線速度観測結果の解析から確認された.軌道周期はそれぞれ 14.44 日と 15.53 日である.

さらに,視線速度,測光観測の時系列データ,様々な分光指標から,LSPM J2116+0234 には 42 日周期,GJ 686 には 37 日周期の変動の兆候が検出された.これは恒星の自転周期に起因すると考えられる.

LSPM J2116+0234 周りの惑星はミニネプチューンで,最小質量は 11.8 地球質量,視線速度変動の半振幅は 6.19 m s-1 である.
GJ 686 周りの惑星はスーパーアースで,最小質量は 6.6 地球質量,視線速度変動の半振幅は 3.0 m s-1 である.
どちらの惑星も,15 地球質量未満かつ軌道周期 20 日未満の系外惑星のグループに属する.

パラメータ

LSPM J2116+0234 系

LSPM J2116+0234
距離:17.64 pc
スペクトル型:M3.0V
有効温度:3475 K
金属量:[Fe/H] = -0.05
光度:0.02 太陽光度
半径:0.431 太陽半径
質量:0.430 太陽質量
LSPM J2116+0234b
最小質量:13.3 地球質量
軌道周期:14.4399 日
軌道離心率:0.183
軌道長半径:0.0876 au

GJ 686 系

GJ 686
別名:BD+18 3421
距離:8.16 pc
スペクトル型:M1.0V
有効温度:3654 K
金属量:[Fe/H] = -0.22
光度:0.03 太陽光度
半径:0.427 太陽半径
質量:0.426 太陽質量
GJ 686b
最小質量:6.64 地球質量
軌道周期:15.5314 日
軌道長半径:0.0917 au

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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1905.07891
Tsukagoshi et al. (2019)
Discovery of an au-scale excess in millimeter emission of TW Hya
(うみへび座TW星のミリメートル放射中の au スケールの超過の発見)

概要

ALMA を用いた,解像度が ~3 au スケールの高感度観測で,TW Hya (うみへび座TW星) の周りの原始惑星系円盤の中に,233 GHz (1.3 mm 波長) のダスト連続放射中に超過を検出したことを報告する.今回の 233 GHz での画像の感度は,過去の cycle 3 観測と比べて 3 倍改善された.

今回得られた全体的な円盤の構造はほとんど軸対称であり,過去に報告された通り,25 au と 41 au の距離にギャップが存在することが確認された.

今回の観測での最も特徴的な新しい発見は,原始惑星系円盤の南西部分に,数 au スケールの超過放射の存在が検出されたことである.この超過放射は,円盤の中心から 52 au の位置にあり,12σ の確度で周囲の円盤よりも 1.5 倍明るい.

円盤の軸対称放射成分を取り除いた後に,ビジビリティフィッティングを行って放射を抽出した,
超過放射に示唆されるサイズは 4.4 au であり,超過放射のフラックス密度は 250 µJy である.超過放射のダスト質量は 0.03 地球質量に相当する.なおこれはダストの温度として 18 K を仮定した場合の推定である.

Band 7 の画像の中でも,ほとんど同じ位置に超過吸収を暫定的に同定することができた.そのため,この特徴が背景天体によるものである可能性は低い.
この超過放射は,小さく細長い渦に蓄積されたダストの塊か,あるいは形成中の海王星質量の惑星の周りに存在する重い周惑星円盤で説明できる

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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1905.07781
Jackson et al. (2019)
Variability in the Atmosphere of the Hot Jupiter Kepler-76b
(ホットジュピターケプラー76b の大気中の変動性)

概要

系外ガス惑星の位相曲線と二次食は惑星の大気組成と気象の診断方法であり,ケプラーによる長い観測期間と高精度の測光は,そのデータセットから位相曲線の変動を探るのに適している.位相曲線の変動は,大気力学に対するさらなる考察をもたらす.

ホットジュピターであるケプラー76b の観測は 1000 日以上にも及び,この惑星の大気の変動を探るための良いデータセットが存在している.ここでは,データ中からこの惑星の二次食を発見したことを報告する,

二次食の深さは 87 ppm であり,これは惑星の有効温度が 2830 K であることに相当する.この結果は,この惑星の大気放射と反射率に変動が存在していることを明確に示唆している

この惑星の位相曲線の振幅は典型的には 50.5 ppm であったが,数十日にわたって 35 - 70 ppm の間を変動していることが分かった.
またホットジュピターには一般的なことだが,この惑星の位相曲線はホットスポットの恒星直下点からの東向きへのずれが存在することを示しており,そのずれの大きさは 9 ± 1.3° であった.このずれは,位相曲線の振幅に呼応して変動している.

今回検出されたこれらの変動は,この惑星の大気中の温度構造と雲の形成・後退によって発生する可能性がある.その結果として生じる熱的な摂動は,大気中のエアロゾルを輸送すると考えられるスーパーローテーションと結びつき,フィードバックループを形成する可能性がある.

将来的に,TESS ミッションではこの惑星の新しい二次食と位相曲線の両方を観測できることが期待される.TESS の赤い波長での観測感度はケプラーと比べると良いため,惑星大気の異なる特性を探ることが出来る可能性がある.

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