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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1905.06370
Christiaens et al. (2019)
Evidence for a circumplanetary disc around protoplanet PDS 70 b
(原始惑星 PDS 70b 周囲の周惑星円盤の証拠)

概要

原始惑星 PDS 70b を VLT/SINFONI で K バンドで観測して得られた新しいスペクトルに基づき,PDS 70b の周りの周惑星円盤の初めての観測的な証拠を報告する

ここでは観測されたスペクトルを説明するために 3 つの仮説を検証する.検証するのは,
(1) 惑星の大気放射と合わさった減衰の単一の値
(2) 変動性のある減衰
(3) 大気と周惑星円盤を合わせたモデル
である.

解析の結果,適合度指標は 3 番目の選択肢を支持し,周惑星物質が観測された熱放射の超過に寄与していることを示唆している.これは波長 2.3 µm 程度以上で最も顕著である.

今回の観測から示唆される降着率 (10-7.8 - 10-7.3 木星質量/年) は,Hα 先と Brγ 線に基づく観測的な制約と整合的である.

惑星の PDS 70b に関しては,有効温度 1500 - 1600 K,表面重力 log(g) ~ 4.0,半径は 1.6 木星半径,質量は ~ 10 木星質量と導出した.また,大気中に厚い雲を持っている可能性がある.

(2) の変動性のある減光のモデルは,周惑星円盤のモデルよりもわずかに悪いフィットを示す.しかし,減衰には変動の振幅 (\(\Delta A_{V} \gtrsim\) 3 mag) とタイムスケール (数年未満) が必要であり,周惑星円盤が存在するというモデルを支持する.

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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1905.06070
Gallet & Delorme (2019)
Star-planet tidal interaction and the limits of gyrochronology
(恒星-惑星の潮汐相互作用とジャイロクロノロジーの限界)

概要

Gyrochronology (恒星の自転から年齢を推定する手法) や magnetochronology (恒星の磁気活動から年齢を推定する手法) といった恒星の年齢推定技術は,恒星に近接する周辺環境と角運動量の交換を行っている恒星に対しては適用することができない.これは,恒星に近接する重い惑星 (軌道周期が数日かそれ未満) を持つ場合は特に当てはまる.そのような系は,恒星の進化に伴って,恒星と惑星の潮汐相互作用を介して中心星の自転進化が影響を受ける.

ここでは,gyrochronology のような経験的な技術が確実に適用可能な信頼できるパラメータ領域についての調査を行った.恒星の角運動量進化を惑星軌道の進化コードと合わせ,恒星と惑星の潮汐相互作用が恒星の表面回転速度に及ぼす影響を詳細に研究した.

その結果,近接した巨大惑星とその中心星との相互作用が,中心星の表面自転速度を大きく変えることを示した.これは多くの場合,惑星の飲み込みに関連している.

潮汐相互作用による恒星の表面自転周期の 90% の変化は数億年の間継続する可能性があり,また 10% の変化は数十億年にわたって継続する可能性がある.このような場合,恒星の gyrochronology の解析では恒星の年齢は誤って若く見積もられてしまい,この手法で信頼性のある年齢推定を行うのを妨げる.

この問題を乗り越えるために,ここでは tidal-chronology (潮汐による年代学) と呼ぶ新しい年代決定技術の概念実証を提案する.これは,ある恒星-惑星系における Prot, * - Porb の 2 つの観測値を用いる手法である.なお,ここで Prot, * は恒星の表面自転周期,Porb は惑星の軌道周期である.

従来の gyrochronology の技術は,単独の恒星か,もしくは Prot, * - Porb の値が特定の範囲の外にある恒星-惑星系でしか適用出来ない.この範囲は,恒星と惑星の質量が大きくなるほど広くなる傾向がある.パラメータがこの "禁じられた領域" にある場合,あるいは恒星による惑星の飲み込みが疑われる場合は,gyrochronology は極めて注意深く使う必要があるが,一方で tidal-chronology は考慮可能である.

この tidal-chronology の技術は,系の詳細な年齢は与えない,しかし,これは gyrochronology 技術の拡張であり,中心星の質量が 0.3 - 1.2 太陽質量,惑星質量が 1 木星質量より重く,初期に中心星から 100 分の 1 au 程度に位置している場合の,惑星系の年齢の詳細な範囲を決定する手助けになる.

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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1905.04322
Currie et al. (2019)
No Clear, Direct Evidence for Multiple Protoplanets Orbiting LkCa 15: LkCa 15 bcd are Likely Inner Disk Signals
(LkCa 15 を公転する複数の原始惑星の明確な直接証拠は存在しない:LkCa 15 bcd はおそらく円盤内側のシグナルである)

概要

スパース開口マスキング干渉法 (sparse aperture-masking (SAM) interferometry) と Hα の微分撮像観測を用いた 2 つの研究で,若い太陽質量星 LkCa 15 の周りに複数の木星質量天体の検出が報告されている (LkCa 15b, c, d).これらは,新しく形成された若い惑星 (原始惑星) の初めての直接発見の主張である.

ここでは,すばる望遠鏡の Subaru Coronagraphic Extreme Adaptive Optics (SCExAO) を用いた新しい近赤外線直接撮像/分光観測と,Coronagraphic High Angular Resolution Imaging Spectrograph (CHARIS) (カリス,高コントラスト近赤外線面分光装置) の面分光観測,および Keck/NIRCs による複数時期の高いストレールレシオでの熱赤外線撮像観測を実施した.これらのデータは,過去の研究が LkCa 15 の原始惑星を同定したのと同じ波長と場所での初めての直接撮像での画像であり,従ってこれらの惑星の存在の初めての決定的な検証を提供するはずである.

しかし,今回の観測データ中にはこれらの惑星は見られなかった.代わりに,LkCa 15 bcd の存在主張と明るさ・位置が整合的な,ダスト円盤をトレースする広がった放射が解像された.このシグナルが公転する惑星によるものだとするフォワードモデルは,SCExAO/CHARIS と Keck/NIRC2 を合わせた観測データとは非整合であった.

内側円盤からの放射は,SAM での観測結果に対するより説得力のある説明である.またおそらくは,検出主張のある惑星からの Hα 放射についても内側円盤起源である可能性がある.

結論としては,この LkCa 15 系は少なくとも 1 つの未発見の木星質量天体を持っている可能性はあるものの,LkCa 15 を公転する複数の原始惑星が存在することを示す明確な直接証拠は,現在の所存在しない.

将来の観測でこの天体の周りに木星質量天体が存在することを同定するためには,内側円盤が検出され,その影響がモデル化され,観測結果から取り除かれ,惑星と識別可能であることが示される必要がある.
また,これまでに同様の惑星系で同定された原始惑星候補天体も,モデル化を通じて円盤の放射と明確に区別されるべきである.

LkCa 15 系について

原始惑星系円盤の検出

LkCa 15 は太陽質量の T Tauri 星 (おうし座T型星) で,100万-300万歳 の Taurus-Auriga 星形成領域の一員である (Kenyon et al. 2008).

この天体は,ガスが豊富な降着する原始惑星系円盤に取り囲まれている.
円盤は複数のダスト成分を持つ.有効温度 1400 K の高温な sub-au スケール (1 au 程度よりも小さいスケール) のダスト成分は広帯域での近赤外線の超過を生み出しており,また低温で重い外側のダストとは太陽系スケールの空隙で隔てられている.この空隙は木星質量程度の原始惑星によって形成された可能性がある (Espaillat t al. 2007など).

複数の原始惑星の発見主張

Kraus & Ireland (2012) はスパース開口マスキング干渉法 (SAM) を用いて,はっきりとしたダスト放射のギャップの中にある原始惑星 1 つを検出したと報告した.
同じく SAM を用いて,Sallum et al. (2015) は 25 au 以内に 3 つの原始惑星を検出したと報告した (LkCa 15b, c, d).

これらの報告により,LkCa 15 は複数の木星型原始惑星の徴候を示す天体となり,そのような系の初めての報告例となった.

しかし SAM データ中の円盤の closure phase signal は,これらの原始惑星を模倣するシグナルを発生させうる (Cieza et al. 2013,Kraus et al. 2013).この天体の散乱光に見られる星周環境は複雑であり,この中には明るい外側のダストのウォールが見られる (Thalmann et al. 2010, 2014).さらに,現在では内側のダスト円盤物質が可視光の波長と近赤外線の偏光観測で,惑星が存在するあたりまで解像された (Oh et al. 2016,Thalmann et al. 2016)

結果と議論

今回の観測では,過去に発見が報告されていた原始惑星の代わりに,直接撮像では広がった分解されていない内側円盤が検出された.

フォワードモデルでは,SCExAO のデータは K バンドの測光と位置天文で円盤放射と点源を区別する能力があることを示す.一方で内側の円盤からのシグナルは,Sallum et al. (2015) による LkCa 15b, c, d の合計のフラックス密度と同程度.そのため,Sallum et al. (2018) の SAM データは多波長で内側円盤を検出したものだろうということを強調する.

さらに,この天体の周囲の円盤構造の中に分解されているギャップとずれ,また sub-au 要素から存在が示唆される円盤のワープ構造 (Alencar et al. 2018) は,未発見の木星型惑星が存在する可能性を示唆している (Dong & Fung 2017).この未発見の惑星は,将来の装置で発見可能だろう.

その他の議論としては,LkCa 15b, c, d を実際には円盤放射の散乱光であるとみなすには赤すぎるという議論もある (Kraus & Ireland 2012,Ireland & Kraus 2014).しかしこの天体のような前遷移円盤 (pre-transitional disk) では,円盤の散乱光は非常に赤くなりうる.それは,sub-au スケールのダスト成分は近赤外線広帯域フラックスに大きく寄与し,また恒星光の大部分を受け取って再放射するからである (Mulders et al. 2013,Currie et al. 2017).そのため,LkCa 15 周りの 20 au スケールの円盤が「見る」のは,恒星が実際に放射するものよりもずっと赤い光である.

今回の解析は,LkCa 15b の MagAO の Hα 線での一回の観測で主張された検出を直接否定するものではない.これは厳密には候補天体として残る.

中心星自身が降着により Hα 波長で明るいため,円盤構造も Hα 光度は上昇するだろう.Mendigutia et al. (2018) は最近,この天体の Hα 波長での分光位置天文学的な特徴が惑星のものとは整合的ではないが,円盤のものとは整合的であることを指摘している.

現在のところ,LkCa 15 の周囲に複数の原始惑星が存在する明確な直接的な証拠は存在しない.この系は少なくとも 1 つの未発見の木星型惑星を持つという間接的な証拠は示している一方,明るい内側円盤の存在がこの未発見の惑星の検出を阻害する.将来の観測で LkCa 15 の周囲に惑星を検出するためには,内側円盤が解像され,その影響がモデル化され取り除かれ,惑星と識別できることが示される必要がある.

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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1905.04625
Mills et al. (2019)
CKS VIII: Eccentricities of Kepler Planets and Tentative Evidence of a High Metallicity Preference for Small Eccentric Planets
(CKS VIII:ケプラー惑星の離心率と小さいエキセントリック・プラネットは高金属量を好む暫定的な証拠)

概要

惑星の軌道配置と形成環境の軌道離心率分布への依存性を特徴付けることは,惑星形成を理解する上で有意義である.ここでは,トランジット系外惑星の離心率に関する統計的な研究を行った.

ケプラーで測定されたトランジット継続時間と,California-Kepler Survey および Gaia の観測による詳細で正確な恒星半径と組み合わせた解析を行った.トランジット継続時間から離心率分布を特徴付けた過去の研究と比較して,この研究では恒星半径をより高精度 (~3%) で測定することができており,また解析に用いた惑星数も多い (~1000 個).

解析の結果,単独のトランジット惑星のみが観測されている惑星系では平均の軌道離心率が ~0.21 であり,これは複数のトランジット惑星を持つ惑星系の平均である ~0.05 よりも大きかった.これは過去の研究と一致する.

ここでは,単一のトランジット惑星の系において,軌道離心率が大きいものと小さいものの下位集団が存在する傾向を確認した.さらにケプラーのサンプル中において,高軌道離心率の惑星は金属量が大きい ([Fe/H] > 0) 恒星の周りに多い傾向があるという新しい暫定的な証拠が得られた.

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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1905.02593
Eigmüller et al. (2019)
NGTS-5b: a highly inflated planet offering insights into the sub-Jovian desert
(NGTS-5b:サブジュピター砂漠への洞察を提供する大きく膨張した惑星)

概要

系外惑星のポピュレーションの解析は,惑星の形成と進化過程に関する洞察を与えてくれる.
短周期惑星においては,質量-周期と半径-周期パラメータ空間における惑星のポピュレーションに関し,中心星のパラメータを考慮に入れずにサブジュピター砂漠 (sub-Jovian desert) について議論が行われきた.

Next Generation Transit Survey (NGTS) はこのサブジュピター砂漠領域の惑星を検出するのに最適化されており,サブジュピター砂漠のさらなる解析を可能とするサーベイである.

特に M/K 型星の主星の周りに短周期惑星を検出することを目的とした高精度の測光サーベイ (NGTS や TESS など) では,経験的なデータをモデルの予測と比較する際には恒星のパラメータを考慮する必要がある.ここでは,サブジュピター砂漠の境界において新しく発見された惑星について報告し,その全体的な特性を解析し,それを用いてサブジュピター砂漠の境界にある系外惑星の特性を示す.

NGTS で得られた光度曲線とフォローアップの分光観測から,新しい系外惑星 NGTS-5b の存在を確認し,またその質量を決定した.この惑星は軌道周期 3.3569866 日の短周期惑星で,0.229 木星質量,1.136 木星半径と大きく膨張した半径を持っている.

この惑星の質量は,サブジュピター砂漠の上端に位置している.中心星 NGTS-5 は K2 型の矮星であるため,NGTS-5b が惑星のポピュレーションに関して解析される時,この恒星のパラメータを考慮する必要がある.

パラメータ

NGTS-5
有効温度:4987 K
金属量:[Fe/H] = 0.12
スペクトル型:K2V
質量:0.661 太陽質量
半径:0.739 太陽半径
NGTS-5b
軌道周期:3.3569866 日
質量:0.229 木星質量
半径:1.136 木星半径
平衡温度:952 K

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