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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1901.02578
Stern et al. (2019)
Overview of initial results from the reconnaissance flyby of a Kuiper Belt planetesimal: 2014 MU69
(カイパーベルト微惑星の調査フライバイからの初期結果の概要:2014 MU69)
この天体は小さく,強い内部の地質学的活動を起こしていないであろうと考えられることから,この天体は惑星探査機で探査された中では最も始原的な天体だと言える.
接近観測を行う前に,明るさと軌道要素の他にこの天体について分かっていることは,その赤っぽい色と,推定直径がおよそ 25-30 km であること,また 2017 年 7 月 17 日の掩蔽から推定された形状と,可視光でのアルベドが 0.1 程度であることのみである.アルベドは,掩蔽観測で測定されたサイズからの推定である.
フライバイ観測で行うことの目標は,パンクロマチック撮像,可視光/近赤外線波長の 4 色撮像,表面のステレオ撮像である.これらの観測から,天体の表面の組成をマッピングし,また環や衛星や,ガスや微粒子のコマを観測することである.
その次の目的が,昼と夜の円盤面で積分した平均輝度温度を 4 cm の波長で測定すること,4 cm 波長でのバイスタティック・レーダーの反射率の測定,天体付近での探査機へのダストの衝突を探査すること,太陽風とのプラズマ相互作用を探査することである.
この天体の見た目と,接触連星の一般的な性質から,この天体は微惑星がペブル降着で形成されたことと整合的である.2 つの天体がどのように合体したのか,どの程度穏やかな衝突だったのか,初期から接触までどれだけの角運動量が失われたのかは今後のデータにて明らかになるだろう.
現時点で参考可能な画像では,2014 MU69 を構成する 2 つの球体は非常に似ていて,
ほぼ球状をしている.球に類似しているという性質は,この天体の降着機構の重要な鍵であろうと考えられる.天体全体の主軸の長さは 31.7 ± 0.5 km である.
議論のため,この天体の大きい方の球を “Ultima”,小さい方を “Thule” と,ニューホライズンズチームによって非公式に命名している.Ultima は直径 19.5 km,Thule は 14.2 kmで,体積比は 2.6:1 であり,おそらく質量比もこれと同じだろう.
自転周期は 15 ± 1 時間である.衝突後にどのようにしてこの比較的長い自転周期にまで減速したのかは,今後の課題である.
2 つの球はほとんど同じ反射率だが,どちらの球にも 0.06 - 0.14 の有意なアルベドの変化が見られる.初期解析では,平均アルベドは 0.09 と推定され,他の冷たい古典的カイパーベルト天体に類似している.
最も顕著なアルベドの特徴は,球が接続しているネックの部分の狭く明るい領域である.この注目に値する特徴の起源は不明である.内因性 (微粒子の蓄積),外因性 (球の合体) のどちらか,あるいは両方が原因である可能性がある.
天体のヒル球の中では,探査機で衝突が検出されたダストはゼロであった.また天体から 1000 km より遠方における,1.5 km 直径以上の衛星 (反射率がこの天体と同等と仮定した場合) は検出されなかった.さらに近い距離での環や衛星の探査はまだ行われていない.
arXiv:1901.02578
Stern et al. (2019)
Overview of initial results from the reconnaissance flyby of a Kuiper Belt planetesimal: 2014 MU69
(カイパーベルト微惑星の調査フライバイからの初期結果の概要:2014 MU69)
概要
NASA の探査機ニューホライズンズの first Kuiper Extended Mission (KEM-1) では,カイパーベルト天体 2014 MU69 (Ultima Thule) へのフライバイを行った.フライバイは 2019 年 1 月 1 日に行われた.これは小さいカイパーベルト天体への初めての接近観測である.ニューホライズンズがフライバイする前の最終軌道予測では,探査機は天体から 3500 km の距離を通過すると推定された.ここでは,フライバイで得られた初期結果について報告する.2014 MU69 の概要
2014 MU69 (Ultima Thule,ウルティマ・トゥーレ) は,ニューホライズンズのチームによってハッブル宇宙望遠鏡を用いて 2014 年に発見された天体である.軌道は冷たい古典的カイパーベルト天体に属している.このことは,この天体が現在の太陽中心距離 (43 AU) に過去 45 億年にわたって低温な環境で存在し続けていたことを示唆している.この天体は小さく,強い内部の地質学的活動を起こしていないであろうと考えられることから,この天体は惑星探査機で探査された中では最も始原的な天体だと言える.
接近観測を行う前に,明るさと軌道要素の他にこの天体について分かっていることは,その赤っぽい色と,推定直径がおよそ 25-30 km であること,また 2017 年 7 月 17 日の掩蔽から推定された形状と,可視光でのアルベドが 0.1 程度であることのみである.アルベドは,掩蔽観測で測定されたサイズからの推定である.
フライバイ観測で行うことの目標は,パンクロマチック撮像,可視光/近赤外線波長の 4 色撮像,表面のステレオ撮像である.これらの観測から,天体の表面の組成をマッピングし,また環や衛星や,ガスや微粒子のコマを観測することである.
その次の目的が,昼と夜の円盤面で積分した平均輝度温度を 4 cm の波長で測定すること,4 cm 波長でのバイスタティック・レーダーの反射率の測定,天体付近での探査機へのダストの衝突を探査すること,太陽風とのプラズマ相互作用を探査することである.
初期成果
天体の形状および外見
ニューホライズンズによる 2014 MU69 へのフライバイ観測では,この天体の二葉構造をした接触連星は,明らかに低速な合体によって形成されたことを示している.この天体は,探査機で探査された中では最も始原的な太陽系天体であるのに加え,初めての始原的な接触連星でもある.この天体の見た目と,接触連星の一般的な性質から,この天体は微惑星がペブル降着で形成されたことと整合的である.2 つの天体がどのように合体したのか,どの程度穏やかな衝突だったのか,初期から接触までどれだけの角運動量が失われたのかは今後のデータにて明らかになるだろう.
現時点で参考可能な画像では,2014 MU69 を構成する 2 つの球体は非常に似ていて,
ほぼ球状をしている.球に類似しているという性質は,この天体の降着機構の重要な鍵であろうと考えられる.天体全体の主軸の長さは 31.7 ± 0.5 km である.
議論のため,この天体の大きい方の球を “Ultima”,小さい方を “Thule” と,ニューホライズンズチームによって非公式に命名している.Ultima は直径 19.5 km,Thule は 14.2 kmで,体積比は 2.6:1 であり,おそらく質量比もこれと同じだろう.
自転周期は 15 ± 1 時間である.衝突後にどのようにしてこの比較的長い自転周期にまで減速したのかは,今後の課題である.
2 つの球はほとんど同じ反射率だが,どちらの球にも 0.06 - 0.14 の有意なアルベドの変化が見られる.初期解析では,平均アルベドは 0.09 と推定され,他の冷たい古典的カイパーベルト天体に類似している.
最も顕著なアルベドの特徴は,球が接続しているネックの部分の狭く明るい領域である.この注目に値する特徴の起源は不明である.内因性 (微粒子の蓄積),外因性 (球の合体) のどちらか,あるいは両方が原因である可能性がある.
天体の周辺環境
予想していた通り,初期解析ではガスのコマが存在する兆候は発見されなかった.ただしこれに関連するデータの大部分は,現在もダウンリンクの最中である.またこちらも予想通り,太陽風との相互作用やピックアップイオンの放出は初期解析では発見されなかった.ただしこちらも同様に関連するデータの大部分はダウンリンクの最中である.天体のヒル球の中では,探査機で衝突が検出されたダストはゼロであった.また天体から 1000 km より遠方における,1.5 km 直径以上の衛星 (反射率がこの天体と同等と仮定した場合) は検出されなかった.さらに近い距離での環や衛星の探査はまだ行われていない.
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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1901.02367
Nagel et al. (2019)
The CARMENES search for exoplanets around M dwarfs - The enigmatic planetary system GJ 4276: One eccentric planet or two planets in a 2:1 resonance?
(M 矮星まわりの系外惑星の CARMENES 探査 - 謎めいた惑星系 GJ 4276:1 つのエキセントリックプラネットか 2 つの 2:1 惑星?)
観測された中心星の視線速度変動は,最小質量 16 地球質量,13.35 日周期の一つの惑星が存在すると考えると最もよく説明できる.恒星の活動指標の解析とスペクトルの診断から,恒星が誘起する視線速度の擾乱である可能性は否定され,観測された視線速度シグナルは惑星由来であることを示す.
また,この恒星が円軌道の惑星を 1 つ持っているという解は,尤度比検定によって除外できることも示す.
代わりに,観測された視線速度変動は,高軌道離心率軌道か,あるいは 2:1 の周期比に近い円軌道の 2 つの惑星のどちらでも説明できることを示す.単一の高軌道離心率惑星とする解がわずかに可能性が高いものの,統計的な解析からは,これまでに得られている視線速度データではどちらのシナリオも高い信頼度では除外できない.
軌道離心率が大きい単一の惑星という解釈に基づくと,この惑星は e=0.37 であり,現在までに知られている M 型星まわりの短周期惑星の中では最も軌道離心率が大きい.
金属量:[Fe/H] = 0.12
質量:0.406 太陽質量
半径:0.407 太陽半径
光度:0.0197 太陽光度
自転周期:64.3 日
年齢:69 億歳
軌道離心率:0.37
軌道長半径:0.082 au
質量:16.57 地球質量
軌道周期:13.350 日
軌道長半径:0.082 au
質量:15.58 地球質量
GJ 4276c
軌道周期:c 6.675 日
軌道長半径:0.051 au
質量:4.40 地球質量
arXiv:1901.02367
Nagel et al. (2019)
The CARMENES search for exoplanets around M dwarfs - The enigmatic planetary system GJ 4276: One eccentric planet or two planets in a 2:1 resonance?
(M 矮星まわりの系外惑星の CARMENES 探査 - 謎めいた惑星系 GJ 4276:1 つのエキセントリックプラネットか 2 つの 2:1 惑星?)
概要
GJ 4276 (G 232-070) での海王星質量惑星の検出を報告する.中心星は M4.0 矮星 であり,CARMENES 分光器を用いた視線速度観測を用いた発見である.観測された中心星の視線速度変動は,最小質量 16 地球質量,13.35 日周期の一つの惑星が存在すると考えると最もよく説明できる.恒星の活動指標の解析とスペクトルの診断から,恒星が誘起する視線速度の擾乱である可能性は否定され,観測された視線速度シグナルは惑星由来であることを示す.
また,この恒星が円軌道の惑星を 1 つ持っているという解は,尤度比検定によって除外できることも示す.
代わりに,観測された視線速度変動は,高軌道離心率軌道か,あるいは 2:1 の周期比に近い円軌道の 2 つの惑星のどちらでも説明できることを示す.単一の高軌道離心率惑星とする解がわずかに可能性が高いものの,統計的な解析からは,これまでに得られている視線速度データではどちらのシナリオも高い信頼度では除外できない.
軌道離心率が大きい単一の惑星という解釈に基づくと,この惑星は e=0.37 であり,現在までに知られている M 型星まわりの短周期惑星の中では最も軌道離心率が大きい.
パラメータ
GJ 4276
有効温度:3387 K金属量:[Fe/H] = 0.12
質量:0.406 太陽質量
半径:0.407 太陽半径
光度:0.0197 太陽光度
自転周期:64.3 日
年齢:69 億歳
1 惑星モデル
軌道周期:13.352 日軌道離心率:0.37
軌道長半径:0.082 au
質量:16.57 地球質量
2 惑星モデル
GJ 4276b軌道周期:13.350 日
軌道長半径:0.082 au
質量:15.58 地球質量
GJ 4276c
軌道周期:c 6.675 日
軌道長半径:0.051 au
質量:4.40 地球質量
論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1901.02383
Kovacs & Kovacs (2019)
The secondary transit of the hot Jupiter WASP-121b at 2 μm
(2 µm でのホットジュピター WASP-121b の二次食)
観測の結果,有意な二次食深さ 0.228% を検出した.
ハッブル宇宙望遠鏡での近赤外線放射スペクトルと合わせ,単純で滑らかな黒体放射よりも,分子種が放射・吸収を起こしている特徴の大気モデルを支持するという結果が得られた.また,トランジットと二次食の間の時間の違いと継続時間から,軌道離心率を 0.0207 と推定,これは以前の推定における軌道離心率が低いかゼロであるという結論と整合的だが,今回の推定の方が誤差が小さい.
他の系での K バンドでのデータと合わせると,この惑星はほとんどすべてのホットジュピターで見られる,昼側と夜側の間の効率的な熱の輸送の欠如をさらに支持する..
arXiv:1901.02383
Kovacs & Kovacs (2019)
The secondary transit of the hot Jupiter WASP-121b at 2 μm
(2 µm でのホットジュピター WASP-121b の二次食)
概要
ホットジュピター WASP-121b の 2MASS K バンドでの二次食の地上観測について報告する.この観測は,1 メートルクラスの望遠鏡に設置された装置で実施された太陽系外惑星の掩蔽観測の初めての例である.観測の結果,有意な二次食深さ 0.228% を検出した.
ハッブル宇宙望遠鏡での近赤外線放射スペクトルと合わせ,単純で滑らかな黒体放射よりも,分子種が放射・吸収を起こしている特徴の大気モデルを支持するという結果が得られた.また,トランジットと二次食の間の時間の違いと継続時間から,軌道離心率を 0.0207 と推定,これは以前の推定における軌道離心率が低いかゼロであるという結論と整合的だが,今回の推定の方が誤差が小さい.
他の系での K バンドでのデータと合わせると,この惑星はほとんどすべてのホットジュピターで見られる,昼側と夜側の間の効率的な熱の輸送の欠如をさらに支持する..
論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1901.01643
Huber et al. (2019)
A Hot Saturn Orbiting An Oscillating Late Subgiant Discovered by TESS
(TESS で発見された脈動する晩期準巨星を公転するホットサターン)
中心星の TOI-197 (HIP116158) は V = 8.2 の明るい恒星で,分光学的には準巨星に分類される.この恒星は平均周波数およそ 430 µHz で振動し,混合モデルの明確な兆候を示す.振動の振幅は,ケプラーと比較して赤い波長の TESS のバンドパスでは小さいことが確認され,TESS の 2 分間スパンでの観測で,数千の太陽に類似した振動を示す恒星を観測できるという期待を支持する結果となった.
星震学モデリングから,中心星の半径と質量と年齢の精密な推定値が得られた.また,赤色巨星分枝から進化し始めた段階であることが判明した.
星震学で得られた結果をトランジットモデリングと視線速度観測と組み合わせることで,検出された惑星はホットサターンであることを示した.惑星の半径は 9.17 地球半径,輻射は地球の 343 倍であった.質量は 60.5 地球質量と中間的である,また密度は 0.431 g cm-3 である.
この惑星の特性より,サブサターン (4 - 8 地球半径) で見られている中心星の金属量と惑星質量の相関は,惑星半径が大きい領域までは続いていないことを示す.そのためサブサターンと木星の間の遷移領域にいる惑星が示す密度は,比較的狭い範囲に収まる.
この惑星の密度は 15% の精度で測定されており,これまでに最もよく特徴付けられた土星サイズの惑星である.進化した恒星周りの既知のトランジット惑星の少ない個数を補強し,また TESS の系外惑星とその中心星を星震学を用いて特徴付けする能力を示す結果である.
等級:V=8.15
光度:5.15 太陽光度
有効温度:5080 K
金属量:[Fe/H] = -0.08
質量:1.212 太陽質量
半径:2.943 太陽半径
年齢:49 億歳
軌道離心率:0.115
軌道長半径:0.1228 AU
半径:9.17 地球半径 (0.836 木星半径)
質量:60.5 地球質量 (0.190 木星質量)
密度:0.431 g cm-3
arXiv:1901.01643
Huber et al. (2019)
A Hot Saturn Orbiting An Oscillating Late Subgiant Discovered by TESS
(TESS で発見された脈動する晩期準巨星を公転するホットサターン)
概要
新しい系外惑星 TOI-197.01 の発見について報告する,これは,中心星の星震学が可能な系としては初めて Transiting Exoplanet Survey Satellite (TESS) によって同定されたトランジット惑星である.中心星の TOI-197 (HIP116158) は V = 8.2 の明るい恒星で,分光学的には準巨星に分類される.この恒星は平均周波数およそ 430 µHz で振動し,混合モデルの明確な兆候を示す.振動の振幅は,ケプラーと比較して赤い波長の TESS のバンドパスでは小さいことが確認され,TESS の 2 分間スパンでの観測で,数千の太陽に類似した振動を示す恒星を観測できるという期待を支持する結果となった.
星震学モデリングから,中心星の半径と質量と年齢の精密な推定値が得られた.また,赤色巨星分枝から進化し始めた段階であることが判明した.
星震学で得られた結果をトランジットモデリングと視線速度観測と組み合わせることで,検出された惑星はホットサターンであることを示した.惑星の半径は 9.17 地球半径,輻射は地球の 343 倍であった.質量は 60.5 地球質量と中間的である,また密度は 0.431 g cm-3 である.
この惑星の特性より,サブサターン (4 - 8 地球半径) で見られている中心星の金属量と惑星質量の相関は,惑星半径が大きい領域までは続いていないことを示す.そのためサブサターンと木星の間の遷移領域にいる惑星が示す密度は,比較的狭い範囲に収まる.
この惑星の密度は 15% の精度で測定されており,これまでに最もよく特徴付けられた土星サイズの惑星である.進化した恒星周りの既知のトランジット惑星の少ない個数を補強し,また TESS の系外惑星とその中心星を星震学を用いて特徴付けする能力を示す結果である.
パラメータ
TOI-197
別名:HIP116158等級:V=8.15
光度:5.15 太陽光度
有効温度:5080 K
金属量:[Fe/H] = -0.08
質量:1.212 太陽質量
半径:2.943 太陽半径
年齢:49 億歳
TOI-197.01
軌道周期:14.2767 日軌道離心率:0.115
軌道長半径:0.1228 AU
半径:9.17 地球半径 (0.836 木星半径)
質量:60.5 地球質量 (0.190 木星質量)
密度:0.431 g cm-3
論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1901.01875
King et al. (2019)
The XUV irradiation and likely atmospheric escape of the super-Earth π Men c
(スーパーアースさいだん座パイ星c の XUV 輻射と起きているであろう大気散逸)
ここでは過去の ROSAT と Swift による観測データから,惑星大気への中心星からの X 線と極端紫外線の輻射を解析し,惑星からの大気散逸が現在も進行しているかどうかを調べた.中心星は太陽と同じ水準の X 線放射を起こしており,X 線光度は \(L_{\rm X}/L_{\rm bol}=\left(4.84^{+0.92}_{-0.84}\times 10^{-7}\right)\) である.しかし惑星の軌道間隔が小さいため,惑星が受ける高エネルギー輻射は地球が受けるものよりも 2000 倍強い.これはウォームネプチューン GJ 436b で検出されているものよりも大きな大気散逸率を駆動するのに十分な強度であることを示す.また,この恒星の Lyα での明るさは GJ 436 よりも 4 倍明るいと推定される.
スーパーアースの大気スケールハイトが小さいことと,おそらくはこの惑星は雲の多い大気であること,それにより惑星大気の透過スペクトルを得ることが困難であることを考えると,この惑星から散逸する物質による紫外線の吸収は,スーパーアースの大気組成を決定するのに現時点で最良の手段であると結論づけられる.
arXiv:1901.01875
King et al. (2019)
The XUV irradiation and likely atmospheric escape of the super-Earth π Men c
(スーパーアースさいだん座パイ星c の XUV 輻射と起きているであろう大気散逸)
概要
さいだん座パイ星c (π Men c) は,TESS ミッションで発見された初めての系外惑星である.2 地球半径で,太陽系近傍の肉眼視できる明るい太陽類似星をトランジットしており,スーパーアースの大気特徴付けに適した対象である.ここでは過去の ROSAT と Swift による観測データから,惑星大気への中心星からの X 線と極端紫外線の輻射を解析し,惑星からの大気散逸が現在も進行しているかどうかを調べた.中心星は太陽と同じ水準の X 線放射を起こしており,X 線光度は \(L_{\rm X}/L_{\rm bol}=\left(4.84^{+0.92}_{-0.84}\times 10^{-7}\right)\) である.しかし惑星の軌道間隔が小さいため,惑星が受ける高エネルギー輻射は地球が受けるものよりも 2000 倍強い.これはウォームネプチューン GJ 436b で検出されているものよりも大きな大気散逸率を駆動するのに十分な強度であることを示す.また,この恒星の Lyα での明るさは GJ 436 よりも 4 倍明るいと推定される.
スーパーアースの大気スケールハイトが小さいことと,おそらくはこの惑星は雲の多い大気であること,それにより惑星大気の透過スペクトルを得ることが困難であることを考えると,この惑星から散逸する物質による紫外線の吸収は,スーパーアースの大気組成を決定するのに現時点で最良の手段であると結論づけられる.
天文・宇宙物理関連メモ vol.993 Huang et al. (2018) および Gandolfi et al. (2018) TESS による系外惑星の初発見