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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1812.06712
Toledo-Padrón et al. (2018)
Stellar activity analysis of Barnard's Star: Very slow rotation and evidence for long-term activity cycle
(バーナード星の恒星活動解析:非常に遅い自転と長周期活動サイクルの兆候)
太陽系近傍の恒星の中で,バーナード星 (GJ 699) を選択し,これらの現象の特徴付けを実施した.
この恒星は 14.5 年間に及ぶ 7 つの異なる機器を用いた分光観測のデータが存在する.観測装置は HARPS, HARPS-N, CARMENES, HIRES, UVES, APF, と PFS である.また 15.1 年間に及ぶ 4 つの異なる機器を用いた測光観測のデータも存在しており,ASAS, FCAPT-RCT, AAVSO, と SNO で観測が行われている.
恒星活動の解析には異なる彩層活動指標 (Hα,Ca II HK,Na I D) を使用し,また分光データのサブセットに対して計算した相互相関関数の FWHM も使用した.その結果,恒星の自転周期を 145 ± 15 日と測定した.これは,この恒星が低い活動度を示すことや,過去の主張と整合的な値である.
バーナード星の自転に伴う活動によって誘起される視線速度の上限値は 1 m/s 程度であると推定される.
また 10 ± 2 年周期の長周期サイクルの存在の兆候を発見した.この特徴は,他の類似した活動レベルを持つ M 型星の測光観測データから推定される磁気サイクルと整合的である.参照可能な測光データでも,長周期のシグナルと自転シグナルの両方を検出した.
arXiv:1812.06712
Toledo-Padrón et al. (2018)
Stellar activity analysis of Barnard's Star: Very slow rotation and evidence for long-term activity cycle
(バーナード星の恒星活動解析:非常に遅い自転と長周期活動サイクルの兆候)
概要
非常に安定な分光器を用いた晩期型星周りの地球類似惑星の探査では,恒星活動と恒星の磁気サイクルの非常に精密な測定が必要である.これは,これらの現象は視線速度シグナル中に惑星によるシグナルと誤って解釈されうる視線速度を誘起するからである.太陽系近傍の恒星の中で,バーナード星 (GJ 699) を選択し,これらの現象の特徴付けを実施した.
この恒星は 14.5 年間に及ぶ 7 つの異なる機器を用いた分光観測のデータが存在する.観測装置は HARPS, HARPS-N, CARMENES, HIRES, UVES, APF, と PFS である.また 15.1 年間に及ぶ 4 つの異なる機器を用いた測光観測のデータも存在しており,ASAS, FCAPT-RCT, AAVSO, と SNO で観測が行われている.
恒星活動の解析には異なる彩層活動指標 (Hα,Ca II HK,Na I D) を使用し,また分光データのサブセットに対して計算した相互相関関数の FWHM も使用した.その結果,恒星の自転周期を 145 ± 15 日と測定した.これは,この恒星が低い活動度を示すことや,過去の主張と整合的な値である.
バーナード星の自転に伴う活動によって誘起される視線速度の上限値は 1 m/s 程度であると推定される.
また 10 ± 2 年周期の長周期サイクルの存在の兆候を発見した.この特徴は,他の類似した活動レベルを持つ M 型星の測光観測データから推定される磁気サイクルと整合的である.参照可能な測光データでも,長周期のシグナルと自転シグナルの両方を検出した.
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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1812.05601
Alsubai et al. (2018)
Qatar Exoplanet Survey: Qatar-7b -- A Very Hot Jupiter Orbiting a Metal Rich F-Star
(カタール系外惑星サーベイ:Qatar-7b — 金属豊富な F 型星を公転する非常に高温な木星型惑星)
中心星は,比較的重い主系列の F 型星である.距離は 726 pc.年齢は 10 億歳と推定される.
惑星は中心星から 5 恒星半径の距離を 2.032 日周期で公転しており,平衡温度は 2100 K である.
参照可能な測光データと視線速度観測から,惑星は 1.88 木星質量と 1.70 木星半径と推定される.この惑星の半径と平衡温度は,これまでに発見されている系外惑星の中では上位 6% に入る.半径が大きく温度が高いことから,透過光分光観測を介した大気の研究のための候補天体である.
半径:1.564 太陽半径
光度:3.66 太陽光度
有効温度:6387 K
金属量:[Fe/H] = 0.276
年齢:16.9 億歳
距離:725 pc
軌道長半径:0.0352 AU
質量:1.88 木星質量
半径:1.70 木星半径
密度:0.502 g cm-3
平衡温度:2053 K
arXiv:1812.05601
Alsubai et al. (2018)
Qatar Exoplanet Survey: Qatar-7b -- A Very Hot Jupiter Orbiting a Metal Rich F-Star
(カタール系外惑星サーベイ:Qatar-7b — 金属豊富な F 型星を公転する非常に高温な木星型惑星)
概要
新しい系外惑星 Qatar-7b の発見を報告する.この惑星は中心星の近くを公転する非常に高温で膨張した巨大ガス惑星である.中心星は,比較的重い主系列の F 型星である.距離は 726 pc.年齢は 10 億歳と推定される.
惑星は中心星から 5 恒星半径の距離を 2.032 日周期で公転しており,平衡温度は 2100 K である.
参照可能な測光データと視線速度観測から,惑星は 1.88 木星質量と 1.70 木星半径と推定される.この惑星の半径と平衡温度は,これまでに発見されている系外惑星の中では上位 6% に入る.半径が大きく温度が高いことから,透過光分光観測を介した大気の研究のための候補天体である.
パラメータ
Qatar-7
質量:1.409 太陽質量半径:1.564 太陽半径
光度:3.66 太陽光度
有効温度:6387 K
金属量:[Fe/H] = 0.276
年齢:16.9 億歳
距離:725 pc
Qatar-7b
軌道周期:2.032046 日軌道長半径:0.0352 AU
質量:1.88 木星質量
半径:1.70 木星半径
密度:0.502 g cm-3
平衡温度:2053 K
論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1812.05881
Esposito et al. (2018)
HD219666b: a hot-Neptune from TESS Sector 1
(HD 219666b:TESS Sector 1からのホットネプチューン )
この惑星のトランジットのシグナルは,The Transiting Exoplanet Survey Satellite (TESS) の Sector 1 の観測で検出された (TOI-118).
TESS で検出されたトランジット状のシグナルは,3.6 m ESO HAPRS での精密な視線速度測定を用いて,惑星に由来するものであるということを確定させた.また HARPS の観測から,中心星の基本的なパラメータも導出した.さらに多くの揮発性元素と難揮発性元素の存在度も決定した.
中心星の明るさ (V = 9.9) は,トランジット中の分光観測でのさらなる特徴付けに適している.
質量:0.92 太陽質量
半径:1.03 太陽半径
有効温度:5527 K
金属量:[Fe/H] = 0.04
年齢:100 億歳
射影した自転速度:2.2 km s-1
質量:16.6 地球質量
半径:4.17 地球半径
密度:0.87 g cm-3
軌道長半径:0.06356 AU
平衡温度:1073 K
arXiv:1812.05881
Esposito et al. (2018)
HD219666b: a hot-Neptune from TESS Sector 1
(HD 219666b:TESS Sector 1からのホットネプチューン )
概要
新しい系外惑星の発見と質量測定について報告する.発見されたのは,年老いて非活発な G7 矮星 HD 219666 をトランジットする惑星である.惑星 HD 219666b は,発見されている系外惑星の希少なグループであるホットネプチューンに分類される.この惑星のトランジットのシグナルは,The Transiting Exoplanet Survey Satellite (TESS) の Sector 1 の観測で検出された (TOI-118).
TESS で検出されたトランジット状のシグナルは,3.6 m ESO HAPRS での精密な視線速度測定を用いて,惑星に由来するものであるということを確定させた.また HARPS の観測から,中心星の基本的なパラメータも導出した.さらに多くの揮発性元素と難揮発性元素の存在度も決定した.
中心星の明るさ (V = 9.9) は,トランジット中の分光観測でのさらなる特徴付けに適している.
パラメータ
HD 219666
別名:TIC 266980320,TOI 118質量:0.92 太陽質量
半径:1.03 太陽半径
有効温度:5527 K
金属量:[Fe/H] = 0.04
年齢:100 億歳
射影した自転速度:2.2 km s-1
HD 219666b
軌道周期:6.03607 日質量:16.6 地球質量
半径:4.17 地球半径
密度:0.87 g cm-3
軌道長半径:0.06356 AU
平衡温度:1073 K
論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1812.02773
Hooton et al. (2018)
A ground-based NUV secondary eclipse observation of KELT-9b
(KELT-9b の地上からの近紫外線二次食観測)
この惑星の平衡温度は 4000 Kを 超え.水素分子の多くは解離しており,昼側の大気には金属原子が存在している.そのためガス惑星と言うよりは K 型星に類似した特徴を持っている.
この惑星の単一の二次食を,La Palma にある Observatorio del Roque de los Muchachos の Isaac Newton Telescope (INT) に設置された Wide Field Camera で観測した.この望遠鏡は口径 2.5 メートルである.
この観測は,惑星大気中のでレイリー散乱に敏感な観測ウィンドウである U バンドで実施された.観測日時は 2017 年 7 月 20 日である.
その結果,二次食のシグナルは検出されなかったが,3σ の二次食深さの上限値として 181 ppm という値を導出した.この結果を元に,大気の ~ 30 mbar 高度での昼側の温度を 4995 K と制約した.
この惑星の幾何アルベドの観測的上限値として 0.14 を与えたが,理論モデルでは実際の値はこれよりも H- による不透明度の影響で更に低くなることが示唆される.この結果は,その他のより低温な類似した惑星のアルベドの傾向と類似したものであり,それらの大部分は昼側への入射光のうち非常に小さい量のみを反射する.
この研究は,INT のような 2 メートル規模の地上望遠鏡による近紫外線での二次食研究の可能性を示すものである.これまでの類似の観測は宇宙空間の機器によって行われてきた.
近赤外線波長とより長波長側では,ホットジュピターからのフラックスは熱放射が主な起源である.この波長域での熱放射の測定からは,惑星の全球的な熱の再分配や大気の温度逆転層,大気変動などを探ることができる.
一方で可視光や短波長では熱放射起源のホットジュピターからの放射は急激に減少し,中心星の放射光の反射が主要な起源となる.
長波長側でのホットジュピターからの熱放射の検出は現在の観測機器でも行われているが,可視光でのホットジュピターからの反射光の研究の大部分は,非検出に終わっている.この結果は,可視光における散乱が雲なし大気におけるアルカリ金属の吸収で抑制されるという予測と整合的である (Sudarsky et al. 2000,Burrows et al. 2008).
しかし Bell et al. (2017) では WASP-12b (~2500 K) での近紫外線の反射光は非検出という結果が報告されている.また Evans et al. (2013) は HD 189733b (~1200 K) の 190-450 nm での幾何アルベドを 0.40 ± 0.12 と測定した (この波長域は U バンドの波長と被っている).
これらの研究は,最も強く輻射を受けている惑星は大気中に雲を持っていないという理論研究と整合的である.また HD 189733b は大気中に雲を持っていそうであるという研究とも整合的である.
Hoeijmakers et al. (2018) では,惑星のトランジット時の高分散スペクトルから,大気中から Fe,Fe+,Ti+ の特徴を高い信頼度で検出した.この観測では,惑星の大気温度は昼夜境界で 4000 K を超えていることが示唆された.
また,z’ バンドの食の観測では,昼側の温度は 4600 K と推定され (Collins et al. 2019),これは K4 型の恒星に相当する温度である.そのため U バンドでの二次食の深さは 50 ppm を超えると予想されている.
arXiv:1812.02773
Hooton et al. (2018)
A ground-based NUV secondary eclipse observation of KELT-9b
(KELT-9b の地上からの近紫外線二次食観測)
概要
KELT-9b は,スペクトル型が B9.5/A0 型の恒星の周りを 1.49 日周期で公転しているのが発見された惑星である.比類のないレベルの紫外線輻射を中心星から受けており,ウルトラホットジュピターという種類に分類されるこの惑星の平衡温度は 4000 Kを 超え.水素分子の多くは解離しており,昼側の大気には金属原子が存在している.そのためガス惑星と言うよりは K 型星に類似した特徴を持っている.
この惑星の単一の二次食を,La Palma にある Observatorio del Roque de los Muchachos の Isaac Newton Telescope (INT) に設置された Wide Field Camera で観測した.この望遠鏡は口径 2.5 メートルである.
この観測は,惑星大気中のでレイリー散乱に敏感な観測ウィンドウである U バンドで実施された.観測日時は 2017 年 7 月 20 日である.
その結果,二次食のシグナルは検出されなかったが,3σ の二次食深さの上限値として 181 ppm という値を導出した.この結果を元に,大気の ~ 30 mbar 高度での昼側の温度を 4995 K と制約した.
この惑星の幾何アルベドの観測的上限値として 0.14 を与えたが,理論モデルでは実際の値はこれよりも H- による不透明度の影響で更に低くなることが示唆される.この結果は,その他のより低温な類似した惑星のアルベドの傾向と類似したものであり,それらの大部分は昼側への入射光のうち非常に小さい量のみを反射する.
この研究は,INT のような 2 メートル規模の地上望遠鏡による近紫外線での二次食研究の可能性を示すものである.これまでの類似の観測は宇宙空間の機器によって行われてきた.
背景
二次食による系外惑星の大気観測
惑星が恒星の背後に隠れる二次食という現象を観測することによって,惑星の大気を探ることができる.近赤外線波長とより長波長側では,ホットジュピターからのフラックスは熱放射が主な起源である.この波長域での熱放射の測定からは,惑星の全球的な熱の再分配や大気の温度逆転層,大気変動などを探ることができる.
一方で可視光や短波長では熱放射起源のホットジュピターからの放射は急激に減少し,中心星の放射光の反射が主要な起源となる.
長波長側でのホットジュピターからの熱放射の検出は現在の観測機器でも行われているが,可視光でのホットジュピターからの反射光の研究の大部分は,非検出に終わっている.この結果は,可視光における散乱が雲なし大気におけるアルカリ金属の吸収で抑制されるという予測と整合的である (Sudarsky et al. 2000,Burrows et al. 2008).
近紫外線波長での二次食観測
これまでは,ホットジュピターの近紫外線での二次食観測はハッブル宇宙望遠鏡の STIS を用いて行われてきた.この波長帯ではアルカリ金属による吸収が弱く,またレイリー散乱の散乱断面積がより大きいため,反射光を探るのに適している.しかし Bell et al. (2017) では WASP-12b (~2500 K) での近紫外線の反射光は非検出という結果が報告されている.また Evans et al. (2013) は HD 189733b (~1200 K) の 190-450 nm での幾何アルベドを 0.40 ± 0.12 と測定した (この波長域は U バンドの波長と被っている).
これらの研究は,最も強く輻射を受けている惑星は大気中に雲を持っていないという理論研究と整合的である.また HD 189733b は大気中に雲を持っていそうであるという研究とも整合的である.
KELT-9b について
最近発見された KELT-9b の平衡温度 4050 K (Gaudi et al. 2017) は,既知の系外惑星の中では最も高い.軌道周期,中心星のスペクトル型などを考慮すると,これまでに知られている系外惑星の中で最も強く紫外線輻射を受けている惑星である.Hoeijmakers et al. (2018) では,惑星のトランジット時の高分散スペクトルから,大気中から Fe,Fe+,Ti+ の特徴を高い信頼度で検出した.この観測では,惑星の大気温度は昼夜境界で 4000 K を超えていることが示唆された.
また,z’ バンドの食の観測では,昼側の温度は 4600 K と推定され (Collins et al. 2019),これは K4 型の恒星に相当する温度である.そのため U バンドでの二次食の深さは 50 ppm を超えると予想されている.
論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1812.05119
Bourrier et al. (2018)
Hubble PanCET: An extended upper atmosphere of neutral hydrogen around the warm Neptune GJ 3470 b
(Hubble PanCET:ウォームネプチューン GJ 3470b まわりの中性水素の広がった高層大気)
ここでは,ハッブル宇宙望遠鏡を用いてライマンアルファ波長で GJ 3470b の 3 回のトランジットを観測した結果について報告する.この観測は Panchromatic Comparative Exoplanet Treasury (PanCET) の一貫として行われた.
その結果,ライマンアルファの吸収特徴は 3 回のトランジットそれぞれで検出され,スペクトル線の吸収深さは blue wing で 35%,red wing で 23%であった.これらの特徴の反復性と,惑星トランジットとの位相の一致,および吸収ガスの視線速度から,この惑星の周囲には中性水素の広がった高層大気があると結論付けた.
また観測から,恒星の輻射圧と XUV 放射強度を決定し,この惑星の高層大気を EVaporating Exoplanets (EVE) コードで数値計算するのための条件として用いた.
異常に赤方偏移したスペクトルの特徴は,ロッシュローブを越えて惑星の運動の方向に延びて広がっている,中性水素の濃い層が存在することで説明可能である.この構造は,広がる熱圏と恒星風との衝突によって形成される,惑星物質のショック層に対応している可能性がある.
青方偏移の特徴は,中性水素原子が 1010 g s-1 で散逸しているとするとよく説明できる.散逸する大気は恒星の強い輻射圧によって吹き流されており,また輻射によって急速に光電離されており,結果としてウォームネプチューン GJ 436b と比べると小さい外気圏になる.
この惑星からの大気散逸量は大きいものの,20 億年程度の寿命の間にその全質量の 4-35% を失う程度の値である.
arXiv:1812.05119
Bourrier et al. (2018)
Hubble PanCET: An extended upper atmosphere of neutral hydrogen around the warm Neptune GJ 3470 b
(Hubble PanCET:ウォームネプチューン GJ 3470b まわりの中性水素の広がった高層大気)
概要
GJ 3470b は M 型矮星をトランジットするウォームネプチューンであり,軌道周期と惑星質量のパラメータ空間における「蒸発砂漠 (evaporation desert)」の縁に位置している.この惑星は,低質量の近接系外惑星が中心星からの輻射のもとでどのように進化していくかを探査する良い対象である.ここでは,ハッブル宇宙望遠鏡を用いてライマンアルファ波長で GJ 3470b の 3 回のトランジットを観測した結果について報告する.この観測は Panchromatic Comparative Exoplanet Treasury (PanCET) の一貫として行われた.
その結果,ライマンアルファの吸収特徴は 3 回のトランジットそれぞれで検出され,スペクトル線の吸収深さは blue wing で 35%,red wing で 23%であった.これらの特徴の反復性と,惑星トランジットとの位相の一致,および吸収ガスの視線速度から,この惑星の周囲には中性水素の広がった高層大気があると結論付けた.
また観測から,恒星の輻射圧と XUV 放射強度を決定し,この惑星の高層大気を EVaporating Exoplanets (EVE) コードで数値計算するのための条件として用いた.
異常に赤方偏移したスペクトルの特徴は,ロッシュローブを越えて惑星の運動の方向に延びて広がっている,中性水素の濃い層が存在することで説明可能である.この構造は,広がる熱圏と恒星風との衝突によって形成される,惑星物質のショック層に対応している可能性がある.
青方偏移の特徴は,中性水素原子が 1010 g s-1 で散逸しているとするとよく説明できる.散逸する大気は恒星の強い輻射圧によって吹き流されており,また輻射によって急速に光電離されており,結果としてウォームネプチューン GJ 436b と比べると小さい外気圏になる.
この惑星からの大気散逸量は大きいものの,20 億年程度の寿命の間にその全質量の 4-35% を失う程度の値である.
天文・宇宙物理関連メモ vol.586 Bell et al. (2017) WASP-12b の二次食観測と非常に低いアルベド