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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:2001.11511
Hardegree-Ullman et al. (2020)
Scaling K2. I. Revised Parameters for 222,088 K2 Stars and a K2 Planet Radius Valley at 1.9 R⊕
(K2 をスケールする I.K2 の 222088 個の恒星の改定されたパラメータと 1.9 地球半径での K2 惑星半径の谷)

概要

ケプラーの K2 ミッションの Ecliptic Plane Input Catalog (EPIC) に収録されている恒星の特性の測定は,測光観測と固有運動の測定,それに参照可能なスペクトルと視差からの情報を加えたものに依拠している.

ここでは,Gaia DR2 による距離と有効温度の分光測定,表面重力,金属量の Large Sky Area Multi-Object Fibre Spectroscopic Telescope (LAMOST) DR5 からのデータを合わせ,K2 が観測した 26838 個の恒星の恒星半径と質量の計算値をアップデートした.LAMOST によるスペクトルが得られていない 195250 個の恒星に対しては,恒星のパラメータを LAMOST のサンプルで学習させた測光色に基づくランダムフォレスト回帰で導出した.

合計で,K2 ミッションで観測された恒星 222088 個 (A, F, G, K, M 型星) のスペクトル型,有効温度,表面重力,金属量,半径,質量を測定した.

これらの新しい恒星半径を用いて,K2 の Campaign 1-13 で発見された 299 個の K2 惑星と 517 の惑星候補の半径について,シンプルな再解析を実施した.その結果,1.9 地球半径周囲で惑星の存在個数が減少する「半径の谷」の存在を明らかにした.この半径の谷は,これまではケプラーの初期ミッションで発見された惑星でのみ確実に同定されており,K2 ミッションで発見された惑星に対してはこれまでは暫定的に同定されているのみであった

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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:2001.11048
Bourrier et al. (2020)
MOVES III. Simultaneous X-ray and ultraviolet observations unveiling the variable environment of the hot Jupiter HD 189733b
(MOVES III.X 線と紫外線の同時観測が明らかにするホットジュピター HD 189733b の変動性の環境)

概要

MOVES (Multiwavelength Observations of an eVaporating Exoplanet and its Star) プログラムでの 3 番目の論文である.ハッブル宇宙望遠鏡による遠紫外線観測と,XMM-Newton/Swift の X 線観測で,ホットジュピターを持つ恒星 HD 189733 の遠紫外線の多数のスペクトル線と,軟 X 線スペクトルを取得した.これらの測定から,HD 189733 に対する星間物質の特徴付けと,恒星の半合成 XUV スペクトルを導出し,これは 5 つの異なる時期での高エネルギー放射の進化の研究に使用した.

観測中に 2 回の恒星フレアを検出したが,惑星 HD 189733b の環境には,そのスペクトルエネルギー分布の長期間の変動が最も重要な影響を与えていることを提案する.低調なコロナ活動と恒星風活動からは,惑星の進行方向のバウショック中に高密度な Si2+ の濃集が形成されることが示唆され,これは最初の 2 回で測定されたトランジット前とトランジット中の吸収の原因である可能性がある.

Lyman-α 線でトランジット中の吸収特徴が,2, 3, 5 番目の観測で検出された.これは広がった惑星の外気圏と,惑星外気圏との電荷交換を介して中性化された恒星風陽子の尾によるものだと考えられる.惑星への X 線照射の増加と極端紫外線の減少が中性水素の光電離速度の低下をもたらし,高層大気での中性水素原子の高い密度を維持し,恒星風との電荷交換を加速することにより,これらの特徴を検出させやすくしているという仮説を提案する.

最後の観測時期で検出された深く広い吸収特徴は,惑星が異なる蒸発状態に入ったことを示唆しており,恒星活動と惑星環境の構造を結び付ける鍵となる可能性がある.

観測結果

Visit A 2010/4/6 (orbit 1-4 の 4 セット観測)
Si III (2階電離のケイ素) の分布は orbit 1, 4 で類似しており,2, 3 とは異なる分布であった.1, 4 は対称なスペクトルであり,恒星由来のスペクトルと推測される.一方で 2, 3 ではスペクトル線の形状は変形しており,1, 4 と比べると吸収は 21.2% であった.この吸収の特徴は Bourrier et al. (2013) では検出されていない.

N V (4階電離の窒素) 線の有意な変動は非検出であり,Lyα 線も有意な変動は検出されなかった.これは Lecavelier des Etangs et al. (2012),Bourrier et al. (2013),Guo & Ben-Jaffel (2016) と一致する結果である.
Visit B 2011/9/7-8 (orbit 1-4 の 4 セット観測)
ここでは orbit 1, 2 が似たスペクトル線分布を示し,3, 4 が類似しており 1, 2 とは異なる分布であった.3, 4 が恒星の Si III 線に対応すると判断される.これは visit A でのスペクトル線の分布とほぼ同一であったためである.

1, 2 ではスペクトル線が変形しており,比較した場合の吸収深さは 28.3% である.これらの減衰は Bourrier et al. (2013) で報告されており,惑星のトランジット前に発生している.

N V 二重項の最も明るい線では変動が検出されなかった.しかし Bourrier et al. (2013) の報告よりもトランジット前のフラックスは低い.

Lyα は 1, 2 では変動が見られず,この値を参照値として採用した.3 では減少が見られ減少幅は 14.1% であった.大気の影響を差し引くと,超過吸収は 11.7% となり,これが惑星を取り囲む中性水素の外気圏によるものであると考えられる.減少そのものは惑星大気の明確な特徴として考慮はできないものの,スペクトル線の blue と red wing での減少が同時に発生しており,惑星大気由来の可能性が高いだろう.

また,orbit 4 の間で明確なトランジット後の変動は検出されなかった.
Visit C 2013/5/9-10
1, 3, 4 ではどのスペクトル線でも明確な変動は見られなかった.

2 の時に Lyα と Si III 線でフレアが検出された.FUV でしか検出されないフレアは,G 型と M 型の恒星で検出例がある.フレアは恒星磁場構造内でのリコネクションによって発生する.これらのリコネクションは電子を加速し,電子ビームが恒星の高密度な低層大気に衝突し,ガスが急速に加熱されリコネクションが起きた磁気ループを満たし,フレアの軟 X 線が生成される.

紫外線のみが発生するフレアは,小さい磁場構造におけるリコネクションの結果と考えられる (Loyd et al. 2018).この場合,電子ビームは恒星の遷移領域と彩層しか加熱できない.より大きい構造の場合はよりエネルギーが大きいため高温な X 線を放射するプラズマをコロナまで押し上げることができる.このシナリオは,今回検出された Lyα と Si III 線での小さい増幅度と,より高エネルギーの線や X 線での非検出と整合的である.
Visit D 2013/11/3
1, 2 ではいずれのスペクトル線でも明確な変動は検出されなかった.3 で Lyα が明確なフラックスの減少を示し,これは Visit B のものに類似している.これは惑星トランジットの最中に発生しており,吸収深さも整合的で,減光が同じスペクトル領域に位置している.

軟 X 線では優位な変動は検出されなかった.
Visit E 2013/11/21
1, 2 では Lyα は有意な変動は見られなかった.3 では blue/red wing 共に有意な減衰を示した.

Si III と N V では有意な変動は見られなかった.

議論

恒星の磁気活動と恒星風活動が減少した時の Visit A, B の恒星風の特性は,惑星の前方にあるバウショックでの Si2+ の濃い濃集を形成しやすくする.これが Visit A, B でのトランジット前とトランジット中の Si III の吸収の原因と思われる.

また,低い X 線放射強度と惑星での大きな光電離が,Visit A での高層大気の広がりと中性水素の割合を減らし,これが visit A での Lyα の非検出の原因となっていると推測される.

今回の観測と解析を元に,以下の予測を行った.
(i) EUV が弱く X 線が強い時期は,HD 189733b の熱圏と外気圏の中性水素の量が増加する.そのため Lyα トランジット分光観測で高層大気を探査するのに適している.
(ii) 高層大気による吸収は惑星トランジットの時間帯が最大になる.
(iii) X 線が弱い時期,おそらく恒星風が弱くなっている時期は,低電離種が占め,異なる配置のバウショックが形成される.

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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:2001.10580
Jansen & Kipping (2020)
Detection of the phase curve and occultation of WASP-100b with TESS
(TESS による WASP-100b の位相曲線と掩蔽の検出)

概要

TESS の測光観測から,ホットジュピター WASP-100b の全軌道位相曲線と掩蔽 (二次食) を検出した.位相曲線のシグナルの振幅は 74 ppm.二次食は深さ 100 ppm を示唆する結果が得られた.

位相曲線と掩蔽のデータを,惑星大気の反射,放射,楕円体変動とドップラービーミングを考慮して解析した.その結果,この惑星の TESS のバンドパスでの幾何学的アルベドは 0.17 で,昼側の輝度温度は 2720 K,暖かい夜側の温度は 2400 K と推定した.さらに,WASP-100b は高い熱再分配効率を持っていることも発見し,これはホットスポットの 71° というの東向きのずれとして現れている

これらの結果は,これまでに TESS で観測された位相曲線中の熱位相のずれの初めての観測であり,ウルトラホットジュピターの大気中での熱輸送効率の予測と相反するものである.

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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:2001.10867
Timmermann et al. (2020)
Radial velocity constraints on the long-period transiting planet Kepler-1625 b with CARMENES
(CARMENES を用いた長周期トランジット惑星ケプラー1625b の視線速度の制約)

概要

ケプラー1625 は,その周りを公転する木星サイズの惑星候補ケプラー1625b が大きな系外衛星を持つシグナルを示したことによって注目されている.しかし惑星であるケプラー1625b の質量は独立には決定されておらず,この天体が惑星であるかどうかはこれまで実証されていなかった.さらに,軌道周期が 287 日のこの惑星のようなケプラーの長周期の木星サイズの惑星候補は,偽陽性確率が大きいことが知られている.そのため,ケプラー1625b が惑星であることの独立した確認を行うことは特に重要である.

ここでは惑星 (およびその仮説上の衛星) による視線速度シグナルを検出するか,あるいは場合によっては,トランジットする天体 (もしくは 2 天体の合計質量) の質量の上限値を与えることを目的とした観測を行った.CARMENES を用いてケプラー1625 のスペクトルを 22 セット取得した,そのうち 20 セットが解析に使用できるものであった.観測は 2017 年 10 月から 2018 年 10 月の間の 7 夜に行われ,ケプラー1625b の軌道一周分の 125% をカバーした.

恒星の視線速度と不定性を処理する自動パイプライン Spectral Radial Velocity Analyser (SERVAL) を使用して解析した.その後,視線速度曲線を単独惑星のケプラー軌道でフィットした.

その結果,単独の惑星が円軌道にあるという仮定のもとで惑星の上限質量を導出した.このシナリオでは,1σ,2σ,3σ の上限値でそれぞれ 2.90,7.15,11.60 木星質量という上限値を与えた.軌道離心率と近点を自由パラメータにしたフィッティングも行い,こちらでも惑星質量であることを示唆する結果が得られたが,こちらは統計的な確実性は高くない.

今回の結果は,ケプラー1625b が惑星である強い証拠を提示するものであり,確認された系外惑星の中では 10 番目に長周期の惑星となる.今回のデータ中では,惑星で観測されているトランジット時刻変動を引き起こしうるような,より短周期の 2 番目の惑星の存在については結論を出すことはできなかった.

ケプラー1625 系について

ケプラー1625 (KIC4760478, KOI-5084) は,その惑星 ケプラー1625b の周囲に系外衛星が存在する可能性があると提唱されたことで有名になった (Teachey et al. 2018,Teachey & Kipping 2018).もしこれが確認されれば,系外衛星の初めての発見例となる.しかし現在のところ,検出されたシグナルが系外衛星によるものだとする解釈に関しては議論がある (Rodenbeck et ak. 2018,Heller et al. 2019,Kreidberg et al. 2019).

ここでは系外衛星の問題から立ち戻り,ケプラー1625b が実際に惑星であるかどうかという調査を行った.
検出された惑星候補が偽陽性である確率を惑星半径の関数として調査した研究では,6-22 地球半径の木星サイズの範囲では偽陽性確率が 17.7% と最も高くなる (Fressin et al. 2013).また恒星および惑星の半径測定の不定性の組み合わせから,ケプラー1625b は褐色矮星やあるいは非常に低質量の恒星である可能性すらあるとの報告もされている (Heller 2018).

Teachey et al. (2019) での,ケプラーとハッブル宇宙望遠鏡を用いたトランジット測光のベイズ解析では,惑星質量の事前分布は 2.99 木星質量をピークとし,中央値を 3.91 木星質量としている.これは,FORECASTER ソフトウェアでの経験的な確率的な質量・半径関係と,光力学モデルでフィットした衛星と惑星の質量比を介した惑星質量の FORECASTER による計算の 2 つに基づいている.中心星が 1.079 太陽質量と仮定すると,3 木星質量の惑星が 287 日周期にいる場合の視線速度振幅は 88 m s-1 となる.

議論

今回の観測では視線速度のシグナルはほぼ非検出であり.ここから惑星質量に上限を与えた.

視線速度の変動がほぼ非検出であったことから,検出されたトランジットが天体物理学的な偽陽性であったという可能性も依然として存在する.しかし Morton et al. (2016) では,Kepler-1625b が食連星や階層的な食連星,もしくは背景や前景の食連星による偽陽性である確率は 8.5 × 10-3 としている.さらに,検出されたトランジットシグナルが対象の恒星に起因している可能性は 1 であるとされている.またトランジットの経過は,ケプラー1625 を公転する木星サイズの天体によるものとしてよくモデル化されている.これは衛星を持つとした場合も持たないとした場合も同様である.

残る可能性は,ケプラー1625 の周囲をトランジットしている木星サイズの天体というものだけであり,今回の観測で得られた質量の上限値を考慮すると,惑星の質量範囲内であると考えられる.

系外衛星の証拠とされるケプラー1625b のトランジット時刻変動は,さらなる別の短周期の惑星が存在することによっても説明されうる (Heller et al. 2019).今回の観測では,そのような天体の存在は否定されなかった.この仮説は,新しくより高品質の,短周期惑星に感度のある視線速度観測で検証されるだろう.例えば,数週間にわたる集中的な観測などによって検証が可能であると考えられる.

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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:2001.10062
Mercer & Stamatellos (2020)
Planet formation around M dwarfs via disc instability: Fragmentation conditions and protoplanet properties
(M 矮星周りでの円盤不安定性を介した惑星形成:分裂条件と原始惑星の特性)

概要

M 型星を公転する観測された系外惑星のうち,およそ 30% は木星より重い巨大惑星である.これらは主に円盤不安定性を介して形成されたと考えられる惑星である.

ここでは M 矮星まわりでの円盤分裂の条件を調べ,円盤不安定性によって形成される惑星の特性について調査を行った.M 型矮星の原始星の円盤の流体力学シミュレーションを行い,円盤の重力分裂に必要な最小円盤質量を調査した.シミュレーションでは,異なる恒星質量,円盤半径,金属量を考慮した.またシミュレーション中では,原始惑星系円盤の質量は円盤が分裂し原始惑星が形成されるまで定常的に増加させる.

その結果,円盤の分裂が発生するためには,円盤と恒星の質量比が 0.3-0.6 である必要があることが分かった.円盤が分裂するのに必要な最小質量は,恒星質量と円盤サイズに伴い大きくなる.円盤の金属量は最小円盤分裂質量に大きく影響を及ぼさないが,金属量が高いほうが分裂は抑制される.

原始惑星は恒星から ~50 AU の距離で,数千年以内という短い時間で急速に形成され,初期は非常に高温である.これらの原始惑星の中心部は,コア降着で形成される惑星の降着衝撃波で期待されるものと同程度の温度になる (最大 12000 K).
これらの惑星の最終特性 (質量と軌道半径) は,長時間にわたる円盤と惑星の相互作用や惑星惑星相互作用で決まる.

結論としては,形成の初期段階での円盤質量が中心星の少なくとも 30% ある場合,円盤不安定性は M 型矮星の周りの巨大ガス惑星を形成するもっともらしい経路であると考えられる.M 型星まわりの重い円盤や,非常に若い M 矮星まわりの惑星の将来的な観測が,低質量星周りでの惑星形成における円盤不安定性の重要性を確立するために必要である.

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