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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1805.01378
Günther et al. (2018)
Unmasking the hidden NGTS-3Ab: a hot Jupiter in an unresolved binary system
(隠された NGTS-3Ab の正体を明らかにする:分解されていない連星系中のホットジュピター)
Next Generation Transit Survey (NGTS),SPECULOOS および HAPRS で得られたデータの解析を行い,新しい解析ソフトウェア BLENDFITTER でモデル化を行った.
連星は,NGTS-3A (G6V 矮星),NGTS-3B (K1V 矮星) からなり,この 2 つは 1” 未満の間隔にある.
また惑星 NGTS-3Ab は軌道周期が 1.675 日,1.48 木星半径,2.38 木星質量であり,膨張半径を持つ可能性が示唆される.
ここで強調したいのは,多色測光観測,質量中心と RV CCF 分布からのすべての情報を合わせるだけで,NGTS-3 のような系を分解することが出来るという点である.このような系は,単色の測光観測と視線速度測定だけでは分解することができない.
重要な点として,BIS 相関の存在は blend シナリオを示唆するが,三体目がどちらの恒星を公転しているのかを決定するには不十分だという点が挙げられる.さらに,BIS 相関が検出されなくても,さらなる情報が無ければ blend シナリオは除外できない.BIS を計算する方法の選択は,その相関の測定された有意性に影響を及ぼす場合がある.
広視野のトランジットサーベイの場合は視野内に混入する天体による影響を受けやすいため,ここで提供した知見は,広視野のトランジットサーベイにおいて重要である.
質量:1.017 太陽質量
半径:0.93 太陽半径
スペクトル型:G6V
距離:1010 pc
質量:2.38 木星質量
密度:木星の平均密度の 0.31 倍
軌道周期:1.6753728 日
質量:0.88 太陽質量
半径:0.77 太陽半径
軌道長半径:500 AU 以上
軌道周期:11000 年以上
arXiv:1805.01378
Günther et al. (2018)
Unmasking the hidden NGTS-3Ab: a hot Jupiter in an unresolved binary system
(隠された NGTS-3Ab の正体を明らかにする:分解されていない連星系中のホットジュピター)
概要
新しい系外惑星 NGTS-3Ab の発見を報告する.この惑星は,分解されていない連星系の主星をトランジットするホットジュピターである.多色測光観測,質量中心,視線速度の相互相関関数分布とbisector inverse slopes (BIS) の合同解析を行い,この三体問題を解いた.Next Generation Transit Survey (NGTS),SPECULOOS および HAPRS で得られたデータの解析を行い,新しい解析ソフトウェア BLENDFITTER でモデル化を行った.
連星は,NGTS-3A (G6V 矮星),NGTS-3B (K1V 矮星) からなり,この 2 つは 1” 未満の間隔にある.
また惑星 NGTS-3Ab は軌道周期が 1.675 日,1.48 木星半径,2.38 木星質量であり,膨張半径を持つ可能性が示唆される.
ここで強調したいのは,多色測光観測,質量中心と RV CCF 分布からのすべての情報を合わせるだけで,NGTS-3 のような系を分解することが出来るという点である.このような系は,単色の測光観測と視線速度測定だけでは分解することができない.
重要な点として,BIS 相関の存在は blend シナリオを示唆するが,三体目がどちらの恒星を公転しているのかを決定するには不十分だという点が挙げられる.さらに,BIS 相関が検出されなくても,さらなる情報が無ければ blend シナリオは除外できない.BIS を計算する方法の選択は,その相関の測定された有意性に影響を及ぼす場合がある.
広視野のトランジットサーベイの場合は視野内に混入する天体による影響を受けやすいため,ここで提供した知見は,広視野のトランジットサーベイにおいて重要である.
パラメータ
NGTS-3A
有効温度:5600 K質量:1.017 太陽質量
半径:0.93 太陽半径
スペクトル型:G6V
距離:1010 pc
NGTS-3Ab
半径:1.48 木星半径質量:2.38 木星質量
密度:木星の平均密度の 0.31 倍
軌道周期:1.6753728 日
NGTS-3B
有効温度:5230 K質量:0.88 太陽質量
半径:0.77 太陽半径
軌道長半径:500 AU 以上
軌道周期:11000 年以上
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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1805.01453
Fulton & Petigura (2018)
The California Kepler Survey VII. Precise Planet Radii Leveraging Gaia DR2 Reveal the Stellar Mass Dependence of the Planet Radius Gap
(The California Kepler Survey VII.Gaia DR2 を活用した正確な惑星半径が惑星半径ギャップの恒星質量依存性を明らかにする)
これまで,恒星の半径を高分散分光観測を用いて 11% の精度で決定してきた.ここでは Gaia によって得られた位置天文学情報を加え,誤差は 2% に改善された.その結果として惑星半径の測定は 5% の精度に改善された.
精密な特性が判明している ~ 1000 個の惑星のカタログを元にして,岩石スーパーアースとガス主体のサブネプチューンの小さい惑星の 2 つの分類を分割する,惑星サイズ分布におけるギャップについて詳細に調べた.
我々の過去の研究およびその他の著者による研究では,このギャップは観測的に十分分解されておらず,本質的に分布の底は平坦で,惑星サイズの "禁止された" バンドであることを示唆していた.
新しいカタログに基づく解析ではこれを否定し,ギャップは部分的に埋められていることが判明した.
惑星の半径分布を形成する他の 2 つの重要な要素は,惑星の軌道距離と中心星の質量であり,これらはいずれも惑星が受ける X 線と紫外線の照射の履歴と関連している.
低質量星の周りでは,惑星の二峰性分布は小さいサイズへシフトしており,小さい恒星の周りでは小さい惑星コアが形成されることと整合的である.
「サブネプチューン砂漠」の広がりと,ギャップの幅と勾配を含むサイズ分布の詳細は,低密度大気の光蒸発が惑星のサイズ分布の支配的な進化的決定因子であるという見解を支持するものである.
その他には,冷却する惑星コアの光度に駆動される質量放出などのアイデアも提案されている (Ginzburg et al. 2018).
前者は,惑星の外層大気が XUV 照射によって加熱され,大気からの質量放出が駆動されるというモデルである.いくつかの理論グループは光蒸発を考慮して,Fulton et al. (2017)で報告されるより前に惑星の半径分布のギャップの存在を予測している.
後者は,冷却する岩石コアからの光度が惑星のエンベロープを加熱し,質量放出を駆動するというものである.Ginzburg et al. (2016) でこの “core-powered mass loss” が提案され,さらに Ginzburg et al. (2018) でこのモデルを考慮した種族合成計算が行われている.
光蒸発と core-powered のどちらのメカニズムも,中心星からの入射フラックスが大きいと効果的であるため,サブネプチューンの集団はスーパーアースに比べると入射フラックスが低い方にずれると予測される.
Core-powered では,惑星の特性と恒星のボロメトリック入射フラックスのみに依存する.そのため他の全てのパラメータが等しいとすると,この機構では惑星の半径分布は中心星質量への依存性はないと予測される.
対照的に光蒸発は,時間積分した XUV のフラックス,あるいは “fluence” に依存する.この物理量は恒星質量の強い関数であり,
\[
\int\left(L_{\rm X}/L_{\rm bol}\right)dt\propto M_{*}^{-3}
\]
となる (Jackson et al. 2012).
そのため光蒸発では,サブネプチューンの人口は恒星質量が小さくなるに連れて低い \(S_{\rm inc}\) (入射する恒星のフラックス) にシフトするだろうと予測される.これは,低質量星周りでは活動度が増加するためである.
\(S_{\rm inc}-R_{\rm p}\) 平面における惑星の半径分布の恒星質量に伴うシフトは,光蒸発の予測と整合的である.また \(P-M_{*}\) の強い依存性がないことも,光蒸発と整合的である.
arXiv:1805.01453
Fulton & Petigura (2018)
The California Kepler Survey VII. Precise Planet Radii Leveraging Gaia DR2 Reveal the Stellar Mass Dependence of the Planet Radius Gap
(The California Kepler Survey VII.Gaia DR2 を活用した正確な惑星半径が惑星半径ギャップの恒星質量依存性を明らかにする)
概要
惑星のサイズ分布は,惑星形成と進化の情報を含んでいる.ここでは,Gaia (ガイア) によって得られた年周視差,ケプラーの測光データ,California-Kepler サーベイから推定した分光学的温度を元に,最も精密な系外惑星のサイズ分布を提供する.これまで,恒星の半径を高分散分光観測を用いて 11% の精度で決定してきた.ここでは Gaia によって得られた位置天文学情報を加え,誤差は 2% に改善された.その結果として惑星半径の測定は 5% の精度に改善された.
精密な特性が判明している ~ 1000 個の惑星のカタログを元にして,岩石スーパーアースとガス主体のサブネプチューンの小さい惑星の 2 つの分類を分割する,惑星サイズ分布におけるギャップについて詳細に調べた.
我々の過去の研究およびその他の著者による研究では,このギャップは観測的に十分分解されておらず,本質的に分布の底は平坦で,惑星サイズの "禁止された" バンドであることを示唆していた.
新しいカタログに基づく解析ではこれを否定し,ギャップは部分的に埋められていることが判明した.
惑星の半径分布を形成する他の 2 つの重要な要素は,惑星の軌道距離と中心星の質量であり,これらはいずれも惑星が受ける X 線と紫外線の照射の履歴と関連している.
低質量星の周りでは,惑星の二峰性分布は小さいサイズへシフトしており,小さい恒星の周りでは小さい惑星コアが形成されることと整合的である.
「サブネプチューン砂漠」の広がりと,ギャップの幅と勾配を含むサイズ分布の詳細は,低密度大気の光蒸発が惑星のサイズ分布の支配的な進化的決定因子であるという見解を支持するものである.
惑星分布におけるギャップ
系外惑星の半径分布の二峰性とその原因仮説
小型の系外惑星の半径分布には,惑星数が少ないギャップ領域が存在する.これは,中心星からの X 線と極端紫外線 (XUV) の照射によるエンベロープの蒸発 (光蒸発) によるという説が提案されている (Lopez & Fortney 2014,Owen & Wu 2013,Jin et al. 2014,Chen & Rogers 2016).その他には,冷却する惑星コアの光度に駆動される質量放出などのアイデアも提案されている (Ginzburg et al. 2018).
前者は,惑星の外層大気が XUV 照射によって加熱され,大気からの質量放出が駆動されるというモデルである.いくつかの理論グループは光蒸発を考慮して,Fulton et al. (2017)で報告されるより前に惑星の半径分布のギャップの存在を予測している.
後者は,冷却する岩石コアからの光度が惑星のエンベロープを加熱し,質量放出を駆動するというものである.Ginzburg et al. (2016) でこの “core-powered mass loss” が提案され,さらに Ginzburg et al. (2018) でこのモデルを考慮した種族合成計算が行われている.
光蒸発と core-powered のどちらのメカニズムも,中心星からの入射フラックスが大きいと効果的であるため,サブネプチューンの集団はスーパーアースに比べると入射フラックスが低い方にずれると予測される.
中心星質量への依存性
2 つの機構の重要な違いは,恒星質量への依存性である.Core-powered では,惑星の特性と恒星のボロメトリック入射フラックスのみに依存する.そのため他の全てのパラメータが等しいとすると,この機構では惑星の半径分布は中心星質量への依存性はないと予測される.
対照的に光蒸発は,時間積分した XUV のフラックス,あるいは “fluence” に依存する.この物理量は恒星質量の強い関数であり,
\[
\int\left(L_{\rm X}/L_{\rm bol}\right)dt\propto M_{*}^{-3}
\]
となる (Jackson et al. 2012).
そのため光蒸発では,サブネプチューンの人口は恒星質量が小さくなるに連れて低い \(S_{\rm inc}\) (入射する恒星のフラックス) にシフトするだろうと予測される.これは,低質量星周りでは活動度が増加するためである.
\(S_{\rm inc}-R_{\rm p}\) 平面における惑星の半径分布の恒星質量に伴うシフトは,光蒸発の予測と整合的である.また \(P-M_{*}\) の強い依存性がないことも,光蒸発と整合的である.
論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1805.00596
Debrecht et al. (2018)
Generation of a Circumstellar Gas Disk by Hot Jupiter WASP-12b
(ホットジュピター WASP-12b による星周ガス円盤の生成)
ここでは,惑星と恒星それぞれの表面からの惑星風と恒星風を考慮して,WASP-12 の周辺環境の三次元流体シミュレーションを行った.その結果,観測を説明できるだけの十分な高密度のトーラス構造は,およそ 13 年で形成できることが判明した.
また Ly α 波長での合成観測を,惑星が軌道上の異なる場所にいる時で作成した.その結果,惑星が軌道上のどの位置にいる場合でも,恒星周辺の物質による大きな吸収が発生することを再現した.これは観測から示唆されている現象である.
なお,トランジットを起こさないホットジュピターとしては,55 Cnc b (かに座55番星b) の暫定的な検出例がある (Ehrenreich et al. 2012).
WASP-12b に対して,ハッブル宇宙望遠鏡の Cosmic Origins Spectrograph (COS) を用いた近紫外線トランジット観測が行われている.その結果,近紫外線波長でのトランジット深さは,可視光よりも最大で 3 倍深いことが判明している.この結果は,惑星の高層大気がロッシュローブを満たしており,惑星は質量を急速に失っていると示唆するものである (Fossati et al. 2010,Haswell et al. 2012).
この観測データからは,一階電離のマグネシウムと鉄も同様に惑星の高層大気から検出されている.これらの成分は,ハイドロダイナミックエスケープの最中に水素との頻繁な衝突によって引きずられてきたものだと考えられる.
また別の可能性としては,大気散逸によって惑星から引き離された物質がトーラスと出会う場所で形成される,惑星前方の領域にある高密度の (従って光学的に厚い) 領域による吸収という仮説がある (Lai et al. 2010).
観測されているスペクトルの異常は,WASP-12 のスペクトル型と年齢を持つ恒星に対しては完全に予想外の特徴である.
Fossati et al. (2013) は考えうる起源の解析を行い,この恒星が本質的に異常に低い恒星活動を持つことがスペクトルの異常の原因であるという仮説を,初めて否定した.この結論は後に,視線速度測定結果中に存在するゆらぎの総量によっても独立に確認されている (Bonomo et al. 2017).
また,星間物質による吸収が原因という仮説も排除される (Fossati et al. 2013).
そのため,スペクトルの異常の原因は WASP-12 周囲に局所的に存在する物質による吸収によるというのが,説明としてもっともらしい.例えば,強く輻射を受けている惑星からの散逸したガスが,安定に存在する半透明の星周雲を形成しているという仮説である (Haswell et al. 2012).
arXiv:1805.00596
Debrecht et al. (2018)
Generation of a Circumstellar Gas Disk by Hot Jupiter WASP-12b
(ホットジュピター WASP-12b による星周ガス円盤の生成)
概要
WASP-12 系では,非常に高温のホットジュピター WASP-12b からの大気散逸に加え,通常は明るいはずの Mg II h&k 線での広い減衰が観測されている.惑星からの物質の流出によって,恒星の周りに透過性の星周雲が形成されることで,観測されている特徴が引き起こされているという仮説が提唱されている.ここでは,惑星と恒星それぞれの表面からの惑星風と恒星風を考慮して,WASP-12 の周辺環境の三次元流体シミュレーションを行った.その結果,観測を説明できるだけの十分な高密度のトーラス構造は,およそ 13 年で形成できることが判明した.
また Ly α 波長での合成観測を,惑星が軌道上の異なる場所にいる時で作成した.その結果,惑星が軌道上のどの位置にいる場合でも,恒星周辺の物質による大きな吸収が発生することを再現した.これは観測から示唆されている現象である.
WASP-12 系の観測的特徴
高層大気と大気散逸の観測
WASP-12b は,HD 209458b,HD 189733b と並んで,大気散逸が紫外線のトランジット観測を介して直接観測されている 3 つのホットジュピターのうちのひとつである (Vidal-Madjar et al. 2003, 2004, 2013,Linsky et al. 2010,Lecavelier des Etangs et al. 2010, 2012,Fossati et al. 2010,Haswell et al. 2012)なお,トランジットを起こさないホットジュピターとしては,55 Cnc b (かに座55番星b) の暫定的な検出例がある (Ehrenreich et al. 2012).
WASP-12b に対して,ハッブル宇宙望遠鏡の Cosmic Origins Spectrograph (COS) を用いた近紫外線トランジット観測が行われている.その結果,近紫外線波長でのトランジット深さは,可視光よりも最大で 3 倍深いことが判明している.この結果は,惑星の高層大気がロッシュローブを満たしており,惑星は質量を急速に失っていると示唆するものである (Fossati et al. 2010,Haswell et al. 2012).
この観測データからは,一階電離のマグネシウムと鉄も同様に惑星の高層大気から検出されている.これらの成分は,ハイドロダイナミックエスケープの最中に水素との頻繁な衝突によって引きずられてきたものだと考えられる.
近紫外線での早いトランジットへの入り
また,可視光に比べて近紫外線ではトランジットへの入り (ingress) が早いことも判明している.これは,惑星前方でのバウショック領域による吸収だと考えられてきた.バウショックの形成原因は,惑星の固有磁場によるものか,あるいは広がる惑星大気によるものかのどちらかであるとの仮設が提唱されている (Vidotto et al. 2010, 2015, Bisikalo et al. 2013).また別の可能性としては,大気散逸によって惑星から引き離された物質がトーラスと出会う場所で形成される,惑星前方の領域にある高密度の (従って光学的に厚い) 領域による吸収という仮説がある (Lai et al. 2010).
マグネシウムのスペクトル異常の検出とその原因
しかし,重要な興味深い点は,ハッブル宇宙望遠鏡の観測によってこの恒星の近紫外線スペクトルが明らかになり,通常は明るいはずの Mg II h&k 共鳴線が存在する場所に,広い凹みがあることが分かっているという事である (Haswell et al. 2012).このスペクトルの異常は,惑星の軌道位相 (軌道上の位置) によらず存在している.観測されているスペクトルの異常は,WASP-12 のスペクトル型と年齢を持つ恒星に対しては完全に予想外の特徴である.
Fossati et al. (2013) は考えうる起源の解析を行い,この恒星が本質的に異常に低い恒星活動を持つことがスペクトルの異常の原因であるという仮説を,初めて否定した.この結論は後に,視線速度測定結果中に存在するゆらぎの総量によっても独立に確認されている (Bonomo et al. 2017).
また,星間物質による吸収が原因という仮説も排除される (Fossati et al. 2013).
そのため,スペクトルの異常の原因は WASP-12 周囲に局所的に存在する物質による吸収によるというのが,説明としてもっともらしい.例えば,強く輻射を受けている惑星からの散逸したガスが,安定に存在する半透明の星周雲を形成しているという仮説である (Haswell et al. 2012).
論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1805.00830
Sarkis et al. (2018)
The CARMENES search for exoplanets around M dwarfs: A low-mass planet in the temperate zone of the nearby K2-18
(M 矮星まわりの系外惑星の CARMENES 探査:近傍の K2-18 の温暖な領域内の低質量惑星)
惑星 K2-18b の半径は ~ 2 地球半径,軌道周期は ~ 33 日であり,惑星は中心星周りの温暖な領域内を公転し,地球に似た強さの輻射を受けている.
ここではこの惑星の質量と密度を決定するため,CARMENES を用いて視線速度フォローアップ観測を行った
その結果,視線速度の半振幅は 3.5 m/s と測定された.これはこの惑星の質量が 9 地球質量である事に相当し,ここから推定される惑星のバルク密度は ~ 4 g cm-3 である.この結果は,K2-18b は低質量惑星で,固体コアと揮発性物質が豊富なエンベロープからなる組成であるというモデルと整合的である.
また最近,この恒星の HARPS を用いた視線速度観測から,9 日周期のシグナルが報告されている.これは,二番目の惑星によるシグナルであると解釈されている.
ここでは,CARMENES データ中に,時間と波長双方に依存する弱いシグナルが存在していることも報告する.このシグナルの起源は恒星活動によるものだと思われる.
今回の観測結果から,K2-18b は M 型矮星周りの温暖な領域に検出されている低質量惑星のグループの一員に追加されることとなった.中心星の近赤外線領域での明るさを元にすると,この系は将来的なジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡を用いた詳細な大気研究の良い対象と言える.
このトランジットシグナルは後に,スピッツァー宇宙望遠鏡を用いた 4.5 µm という異なる波長での同じトランジット深さの観測結果を元にして,惑星であると確認された (Benneke et al. 2017).
さらに Cloutier et al. (2017) では,HARPS 分光器での K2-18 の視線速度フォローアップ観測を行い,その結果から惑星質量を推定した.またこの系内の二番目のトランジットしていない惑星の存在を示唆している.
arXiv:1805.00830
Sarkis et al. (2018)
The CARMENES search for exoplanets around M dwarfs: A low-mass planet in the temperate zone of the nearby K2-18
(M 矮星まわりの系外惑星の CARMENES 探査:近傍の K2-18 の温暖な領域内の低質量惑星)
概要
K2-18 は,34 pc の距離にある太陽系近傍の M2.5 矮星である.ケプラーの K2 ミッションでトランジット惑星を持つことが初めに発見され,後にスピッツァー宇宙望遠鏡による観測によってその惑星の存在が確認された.惑星 K2-18b の半径は ~ 2 地球半径,軌道周期は ~ 33 日であり,惑星は中心星周りの温暖な領域内を公転し,地球に似た強さの輻射を受けている.
ここではこの惑星の質量と密度を決定するため,CARMENES を用いて視線速度フォローアップ観測を行った
その結果,視線速度の半振幅は 3.5 m/s と測定された.これはこの惑星の質量が 9 地球質量である事に相当し,ここから推定される惑星のバルク密度は ~ 4 g cm-3 である.この結果は,K2-18b は低質量惑星で,固体コアと揮発性物質が豊富なエンベロープからなる組成であるというモデルと整合的である.
また最近,この恒星の HARPS を用いた視線速度観測から,9 日周期のシグナルが報告されている.これは,二番目の惑星によるシグナルであると解釈されている.
ここでは,CARMENES データ中に,時間と波長双方に依存する弱いシグナルが存在していることも報告する.このシグナルの起源は恒星活動によるものだと思われる.
今回の観測結果から,K2-18b は M 型矮星周りの温暖な領域に検出されている低質量惑星のグループの一員に追加されることとなった.中心星の近赤外線領域での明るさを元にすると,この系は将来的なジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡を用いた詳細な大気研究の良い対象と言える.
K2-18 系について
ケプラーの K2 ミッション中に,2 回のトランジットが観測されている.この天体が観測されたのは,K2 ミッションの Campaign 1 の期間である (Montet et al. 2015).このトランジットシグナルは後に,スピッツァー宇宙望遠鏡を用いた 4.5 µm という異なる波長での同じトランジット深さの観測結果を元にして,惑星であると確認された (Benneke et al. 2017).
さらに Cloutier et al. (2017) では,HARPS 分光器での K2-18 の視線速度フォローアップ観測を行い,その結果から惑星質量を推定した.またこの系内の二番目のトランジットしていない惑星の存在を示唆している.
論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1805.00029
Kreidberg et al. (2018)
Global Climate and Atmospheric Composition of the Ultra-Hot Jupiter WASP-103b from HST and Spitzer Phase Curve Observations
(HST とスピッツァー位相曲線観測からのウルトラホットジュピター WASP-103b の全球的気候と大気組成)
測定された位相曲線は振幅が大きく,またホットスポットのずれの影響は無視できる.これらは,惑星の昼側から夜側への熱の再分配が非効率であることを示唆している.また,位相変化を気候マップの範囲にフィッティングさせ,球面調和モデルが最も良くフィットすることを見出した.
位相分解されたスペクトルは,WFC3 のバンドパスで黒体放射と整合的であり,輝度温度は惑星の夜側での 1880 K から,昼側での 2930 K までの範囲をとる.惑星の昼側の大気スペクトルは,スピッツァー宇宙望遠鏡のバンドで非常に高い輝度温度を持つ.これはおそらく,一酸化炭素の放射および温度逆転の存在に起因する.また,温度逆転は夜側には存在しない.
観測結果から大気組成を復元し,大気組成はやや金属豊富な [M/H] = 23 × solar (太陽の金属量の 23 倍),C/O 比は 3 σ の信頼度で 0.9 以下と推定した.
低温なホットジュピターとは対照的に,大気中から水のスペクトルの特徴は検出されなかった.これは,この惑星の大気中では水分子が部分的に解離している影響だと解釈できる.
得られた位相曲線を三次元大気循環モデルと比較した結果,観測データと適合させるためには,大気の流れに対する磁気効力の効果が必要であることを発見した.
また WASP-103b のスペクトルを,褐色矮星および直接撮像されている若い伴星天体と比較した.これらの天体はスペクトル中に非常に大きな水の特徴を持っており,ホットジュピターのスペクトルを形成するためには表面重力と輻射環境が重要な役割を果たしていることが示唆される.
これらの結果は,系外惑星大気の三次元構造を考慮する必要性を強調するものであり,それらの複雑な化学過程と物理過程を理解するためには,位相曲線の観測が重要であることを示すものである.
arXiv:1805.00029
Kreidberg et al. (2018)
Global Climate and Atmospheric Composition of the Ultra-Hot Jupiter WASP-103b from HST and Spitzer Phase Curve Observations
(HST とスピッツァー位相曲線観測からのウルトラホットジュピター WASP-103b の全球的気候と大気組成)
概要
ハッブル宇宙望遠鏡の WFC3 とスピッツァー宇宙望遠鏡の IRAC を用いて取得した,ホットジュピター WASP-103b の熱位相曲線の測定結果を提供する.測定された位相曲線は振幅が大きく,またホットスポットのずれの影響は無視できる.これらは,惑星の昼側から夜側への熱の再分配が非効率であることを示唆している.また,位相変化を気候マップの範囲にフィッティングさせ,球面調和モデルが最も良くフィットすることを見出した.
位相分解されたスペクトルは,WFC3 のバンドパスで黒体放射と整合的であり,輝度温度は惑星の夜側での 1880 K から,昼側での 2930 K までの範囲をとる.惑星の昼側の大気スペクトルは,スピッツァー宇宙望遠鏡のバンドで非常に高い輝度温度を持つ.これはおそらく,一酸化炭素の放射および温度逆転の存在に起因する.また,温度逆転は夜側には存在しない.
観測結果から大気組成を復元し,大気組成はやや金属豊富な [M/H] = 23 × solar (太陽の金属量の 23 倍),C/O 比は 3 σ の信頼度で 0.9 以下と推定した.
低温なホットジュピターとは対照的に,大気中から水のスペクトルの特徴は検出されなかった.これは,この惑星の大気中では水分子が部分的に解離している影響だと解釈できる.
得られた位相曲線を三次元大気循環モデルと比較した結果,観測データと適合させるためには,大気の流れに対する磁気効力の効果が必要であることを発見した.
また WASP-103b のスペクトルを,褐色矮星および直接撮像されている若い伴星天体と比較した.これらの天体はスペクトル中に非常に大きな水の特徴を持っており,ホットジュピターのスペクトルを形成するためには表面重力と輻射環境が重要な役割を果たしていることが示唆される.
これらの結果は,系外惑星大気の三次元構造を考慮する必要性を強調するものであり,それらの複雑な化学過程と物理過程を理解するためには,位相曲線の観測が重要であることを示すものである.
天文・宇宙物理関連メモ vol.550 Ginzburg et al. (2017) コア駆動型の質量放出による小型惑星分布の谷の説明